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賃貸事業の収益性を決める3要素(収益性)

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2023.03.22

公開日:2022.08.03

事業には計画性が大切です。

そして事業計画には、できる限りの収益性を高める工夫が大切であり、そのためのポイントや動向、対処法などを知っておく必要があります。

今回は、賃貸事業における収益性の3要素についてお伝えします。

1.賃貸事業の収益性を決める3要素について

賃貸事業の収益性を決める主な3要素とは、「建築費・金利・家賃」です。

建築費と金利で支出(経費)の大部分が決まり、家賃で収入が決まります。

そして収入を大きくしつつ支出を小さくすることで収益性が向上するのが基本です。

それぞれの要素を一つずつ見ていきましょう。

1-1.建築費について

アパート等を建てるための建築費は、大きく「本体工事費・付帯工事費・外構工事・その他の費用や税金」に分類できます。

まずは、それぞれの費用を通して全体像をイメージしてみましょう。

本体工事費について

本体工事費とは、建物そのものを建てるための費用です。

この費用は、建てようとする建物の規模や地域などによって本当に様々ですが、中でも「構造」による違いが大きくなります。
構造とは「建物をどの素材で造るか」であり、それぞれの構造で単価に違いがあります。

これと建てようとする建物の坪数(延べ床面積)を掛け合わせたものが基本的な本体工事費となります。

ただし、素材の値段は流通や需給バランス、為替など資材調達環境の影響を受けますし、道路付けといった工事環境の違いは人件費(運搬費)などに影響を及ぼします。
また昨今はコロナの影響によって、特に値段が動いている状況です。そして同じ構造(素材)でも、装飾や地域、建築業者などによって値段は大きく変わってきます。


構造の違いは、単純な値段や性質の違いだけでなく、「法定耐用年数の違い」にも繋がってきます。

法定耐用年数とは、実際の耐用年数ではなく、国が定めている税金計算上の耐用年数です。それぞれの法定耐用年数は以下のようになっています。

構造

法定耐用年数(店舗・住宅用)

木造・合成樹脂造

22年

木造・モルタル造

20年

鉄骨造(4mm超)

34年

鉄骨造(3mm超4mm以下)

27年

鉄骨造(3mm以下)

19年

鉄筋コンクリート造

47年(店舗用は39年)


かかった建築費は、この法定耐用年数で割った金額を「減価償却費」として毎年、経費として計上します。

たとえば5,000万円で木造・モルタル造のアパートを建てた場合は、5,000万円÷20年で250万円が毎年の減価償却費です。
より詳細な法定耐用年数は、国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」でご確認下さい。


さらに、法定耐用年数の違いは「アパートローンの融資期間」にも繋がってきます(詳細は後述)。
このあたりまでを視野に入れて、構造をどうするか考えていきましょう。

付帯工事費について

付帯工事費とは、「建物の設備」に関する費用のことです。
電気・ガス・給排水や空調、エレベーター、避雷針などの設備を取り付けるための費用になります。

ほかに駐車場や塀などの環境を整備するための費用など、建物に関係する(付帯する)工事全般が付帯工事費です。


実際にどの程度の設備を整えるかは事業計画次第ですが、一般的とされる設備を一通り揃える場合、おおむね建築費総額の20%程度を占めると言われています。

外構工事費について


外構工事費とは、「家の外側」に関する工事費用のことです。エクステリア工事とも呼ばれます。

具体的には庭や駐車場をはじめ、堀や壁、フェンス、植栽などを造設する工事にかかる費用です。
この工事は上記の通り、付帯工事費に含まれることもありますが、別で考える場合もあります。

また当然に、敷地における建物面積が小さいほど、この工事の対象となる範囲が広がるため、割高になります。
それでも一般的には、建築費総額の10%程度が一つの目安です。

その他の費用や税金について

建物を建てる場合、主に以下のような関連する費用が必要です。

    • 設計費    (建物を設計するための費用)
    • 現況測量費 (設計のための方角や高低、面積などを測るための費用)
    • 地盤調査費 (地盤の状況や深さを測るための費用)
    • 水道分担金 (水道を引くときに必要となる費用)

建物が完成したら、以下のような費用(税金)も必要になります。

    • 不動産取得税            (不動産を取得したことに対する税金)
    • 印紙税                (契約書などに必要となる税金)
    • 登録免許税+司法書士手数料 (登記のために必要となる税金と手数料)

ほかに火災保険料や地震保険料、入居者を募集するための費用なども必要になります。

またローンに関する手数料や解体のための工事費などがかかることもあります。これらの費用や税金が、一般的に建築費総額の5~10%程度必要です。

なお、建築費は総じて人件費の影響を大きく受けます。
そして人件費は、建築業界の工事量に対する職人不足という日本の構造的な問題の影響が大きいのが実情です。

つまり現状、人件費は値下がりする要素が見当たらず、ひいては建築資材の価格も下がりにくい状況になっています。

一方、無暗に建築費を抑えることだけに意識が集中してしまうと、それだけ物件の質が低下し、肝心の以後の賃貸経営に大きな悪影響が出ることも少なくありません。
このため、建築費はある程度かかるものと認識しておくことが大切です。

1-2.金利について

この場合の金利とは、アパートローンの金利のことです。

賃貸用のアパートやマンションを建てる場合、銀行などからお金を借りて建築をおこなう方が多くおられます。
お金を借りたら、手数料とは別に金利を付けて毎月、完済するまで返済しなければなりません。

前項でご紹介したとおり、建築費については大きく下がってくる要素が乏しいので、賃貸事業における収益性を高めるには、このアパートローン金利を如何に低く抑えるかということがとても重要な要素となってきます。

まずは、アパートローン金利の基本について見ていきましょう。


基本的にアパートローンの金利は住宅ローンと比べて割高です。
昨今の住宅ローン金利は0.5%を下回るものもありますが、アパートローンは1~3%を上回るところも少なくありません。

金利とともに、アパートローン利用時は融資期間にも注意が必要です。
同じ金利であれば期間が長くなるほど月々の返済額は小さくなる半面、支払う金利総額が増えます。

融資期間の選択については、目標とする利回りや可処分所得、資産承継など多角的な観点から慎重に考えましょう。

なお、アパートローンの融資期間は基本的に先ほどの「構造の法定耐用年数」などから、金融機関が上限を定めています。

一例として、1億円を借りて元利均等返済で返済する場合の返済額や金利総額は以下のようになります。

融資条件

月々の返済額

金利総額

30年返済・金利1%

32万1,600円

1,579万200円

30年返済・金利3%

42万1,600円

5,177万7,500円

20年返済・金利1%

45万9,900円

1,037万4,600円

20年返済・金利3%

55万4,600円

3,310万3,400円


金利には大きく固定金利・変動金利があり、固定金利は変動金利より金利が高くなる傾向があります。
対して変動金利は金利が低くなる傾向がありますが、変動を加味して計画をしなくてはいけません。

変動金利を選ぶ場合、事業計画・返済計画は余裕を持って立てましょう。

なお、詳しくは後述しますが、現在の金利は過去最低水準で推移しています。

これは日本の政策の影響(ゼロ金利政策・マイナス金利政策)が大きいものの、一方で海外では金利が上昇傾向です。
このため、いずれ日本の金利も上昇する可能性が高いといえます。

できれば金利が上がる前に、より有利な状況で事業をスタートさせることも意識しておくとよいでしょう。

1-3.家賃について

家賃はそのまま、建てようとする賃貸物件をいくらで貸し出すか、です。
事業者の都合(利回りや利益)で設定したいものですが、賃貸事業の場合は一般的に「周辺の家賃相場」を元に設定します。

つまり、賃借人の都合や考え(ニーズ)を読んで決めるのが一般的です。

賃借人は様々な都合や考えの中で物件を選びますが、代表的な要素として以下のポイントと家賃を比較しながら選ぶ傾向にあります。

    • 駅からの距離や築年数
    • 面積(間取り)や階数、採光、設備や構造など
    • 敷金や礼金の有無や金額


なお、一般財団法人住宅改良開発公社の令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測調査」によると、現在の賃貸住宅の満足度が高いポイント(重視したポイント)は、以下の通りです。


出典:一般財団法人住宅改良開発公社 令和2年「賃貸住宅市場の同行と将来予測調査」


賃借人にとって都合が良いほど割高な家賃でも借りてもらえる可能性が高い反面、都合が悪いほどに割安な家賃にしないと借りてもらえません。

周辺の家賃相場を十分に吟味し、借りてもらえる範囲で高収益を目指しましょう。


なお、実際の家賃(相場・水準)は、「物価」と連動するような動きを見せています。
つまり物価が上昇している場合は家賃も上昇してきた流れです。
家賃相場を予測するうえでは、物価の動向に注目しておくと良いでしょう。

2.3要素の過去の動向と今後の見通しについて

賃貸事業の収益性3要素の過去から現在までの動向は、それぞれ以下のようになっています。


<建築費>
出典:一般財団法人 建設物価調査会 2021年1月建設物価建築費指数

<金利>

出典:フラット35「民間金融機関の住宅ローン金利推移」

<家賃>

出典:公益財団法人不動産流通推進センター「2020不動産業統計集」より抜粋

過去から現在までの推移を見ると、建築費は上昇基調、金利は最低水準、家賃は直近でコロナ過の影響を受けているものの、おおむね上昇基調となっています。

このような過去の推移から考えると、建築費は職人不足などの影響で、家賃は物価上昇に伴って、以後もしばらくは下落してくる要素が見当たりません。

また金利は、「政策(ゼロ金利政策・マイナス金利政策)」によって最低水準を維持してきたものの、少しずつ海外では上昇基調となってきたので、今後はいずれ上昇する時期が訪れる可能性が高いです。
このような先々を見据えて、賃貸事業を始めるタイミングを考えることをおすすめします。


ただし、先々の見通しというのは些細なことで変化するのが基本です。
また賃貸事業は極めて長期に渡るのが基本なので、経営途中で状況が変わることもよくあります。

このため、なるべく賃貸事業に詳しい専門家・専門業者に相談しながら、そういった先々の変化も見据えた経営を心がけましょう。

3.まとめ

実際に事業を興す場合は、時期・タイミングも大切です。

適切な時期を考える上では、大きく「外部要因・内部要因」に分けられます。

「外部要因」としては、近年は建築費が上昇していますが、金利がそれ以上に下落傾向です。事業収支はかえってよくなっており、今後の金利動向を考えると、今は悪い時期ではないとも言えます。
家庭の事情などの内部要因を踏まえたうえで、まずは十分な事業計画を練り上げ、あとは適切なタイミングを見計らいましょう。





執筆者プロフィール
【山本FPオフィス 代表 山本昌義】

マイアドバイザーR
商品先物会社、税理士事務所、生命保険会社を経て、2008年8月8日に開業。
現在は日本初の「婚活FP」として、恋愛・婚活・結婚・離婚×お金をメインテーマに活動中。婚活中の方や新婚夫婦、または独身を貫きたい方など、比較的若い方向けのご相談や執筆、講演を行っています。趣味は漫画(約6,000冊所有)。


【保有資格】
・CFPR(婚活FP)

監修者プロフィール
【株式会社優益FPオフィス 代表取締役 佐藤 益弘】

マイアドバイザーR。Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、

主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFPRとして活動している。

NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。


【保有資格】

・CFP・FP技能士(1級)・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

・住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)

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