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入居者が満足する賃貸住宅のポイント

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2023.03.24

公開日:2022年7月21



新築の賃貸物件は常に求められているものの、一方で現在の日本は人口減少が起きています。

このため、今まで以上に需要の質や内容・量などを的確に読み取り供給をコントロールできる事業者をうまく利用することが、賃貸経営の長期安定に繋げるうえで大切です。

そこで今回は、賃貸住宅市場における実需と物件供給の基本についてお伝えします。

1.物件供給の基本的な考え方

今後の事業計画を練る時には、まずは過去や現在の市場動向を知ることが大切といえます。

地域毎に特徴は大きく異なるものの、そうして大局が見えてくれば、おのずと今後の物件供給の基本が見えてくるはずです。
関係しそうなさまざまな情報を紐解き、大局を把握するよう努めましょう。

1-1.現在の賃貸住宅市場を取り巻く環境について

国土交通省の平成30年「住宅・土地統計調査の集計結果」によると、最近の各住宅に住んでいる方の総数と割合は以下のように推移しています。

出典:国土交通省「住宅・土地統計調査」



人口減少が言われている中ですが、実際には持ち家・貸家ともに少しずつ住んでいる方は増えている結果になっています。
原因は一概には言えないものの、昔とは違って親と別居する方が増えたり、日本に住む外国人が増えたりしたことも理由のひとつです。

また持ち家率が約6割、貸家率が約3割で、良くも悪くもともにほとんど変化が見られないのも特徴的といえます。


次に、先ほどの住んでいる方を、住んでいる物件の建築年代毎に見た場合は以下のような結果です。

出典:国土交通省「住宅・土地統計調査」



貸家(共同)部分を見ると、その多くが「建築後30年程度以内」の物件に住んでいることが伺えます。

視点を変えれば、建築後3040年程度以内なら、十分に賃貸物件としてのニーズがあることが伺える結果です。

一方で表の下部にある棒グラフから、建築後40年を超えた物件が200万戸ほど減少しつつ築浅物件が400万戸ほど増えている、つまり新築や建て直しが起こっているという結果になっています。

さらに、全国賃貸住宅新聞の2020年「人気設備ランキング」によると、最近の賃貸住宅設備は以下のようなものが人気になっています。

出典:全国賃貸住宅新聞 2020年「人気設備ランキング」



そもそも昔と違って最近では実にさまざまな住宅設備が登場していますが、単身者とファミリーではさらに求めている設備に違いがあることが伺える結果です。

その一方で(詳しくは後述しますが)、最近では家賃負担を気にする方が増えている傾向のため、とにかく設備を整えた結果、家賃も高くなるようでは入居者に避けられてしまうかもしれません。

単純に高価な設備を取りそろえるということではなく、設備についても入居者ニーズを多角的に分析したうえで、実需に沿った形で供給するよう努めましょう。

1-2.今後の賃貸住宅市場への物件供給について

改めて先ほどの<図表2>を見てみると、まもなく老朽化で建て替えが必要になるであろう物件が約300万戸(19811990年建築分)もあることが分かります。

しかもその後も10年毎に約380万戸(19912000年建築分)、360万戸(20012010年建築分)と続いている状況です。

その一方で<図表1>の通り、今後も賃貸物件を必要とする3割程度の層は変わらず発生しそうな傾向といえます。
少なくとも当面は一定量の滅失があることを前提として、引き続き、新規供給が必要だと考えられます。

しかし一方で、やはり物件事情には地域差があるのが基本です。
また<図表3>の通り、求められる設備は単身者・ファミリーでも違いがありますし、もちろん個々にも違ってきます。
闇雲に新規供給するだけでは周辺の他の物件に負けてしまうかもしれません。


このため、その地域の需要を超えない範囲での物件供給を行うことと、入居者ニーズに合致したプランニングなどにより、競合する周辺物件に対する競争力を持つことが安定継続した賃貸経営のカギとなるといえます。
入居者ニーズを的確に汲むことはけっして簡単ではありませんが、必要に応じて専門家の力も借りつつ、励んでいきましょう。

2.立地の最有効活用について

一般財団法人住宅改良開発公社の令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測調査」によると、現在居住する賃貸住宅の満足度においては以下のような結果になっています。

出典:一般財団法人住宅改良開発公社令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測調査」



入居者が最優先で満足しているのは「駅・中心部との距離」という結果です。

続けて「住宅の広さや間取り」「採光」「家賃・管理費の負担水準」「収納の多さ・使いやすさ」という結果になっています。
つまり純粋な場所・住所という立地を重視しつつも、合わせて住環境や住みやすさと家賃なども考えて現在の物件を選んだことが伺える結果です。


これは冷静に想像すれば、当然の結果かもしれません。
今や1億総活躍時代であり、結婚しても共働きが主流となっています。
一方で、コロナでリモートワークが浸透していると言われるものの、総務省の令和3年「テレワークの実施状況」によると、実際には企業単位で見ても34割程度、社員単位で見れば25%程度しか実施していないのが実情です。


このため、まだまだ多くの人が「通勤」を意識していることが伺えます。
ただ一方で、最近ではワークライフバランスも提唱されており、プライベートを充実させたい意向もよく聞く時代です。
少数派とはいえリモートワークの方も増えつつありますし、現代でも3割程度は専業主婦世帯となっています。住みやすさが強めに意識されているのも納得です。


一方で先ほどの調査によると、以下のような結果もあります。

出典:一般財団法人住宅改良開発公社令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測調査」



転居先を選ぶ際に、基本的には家賃が相場程度ならという条件が付くものの、新築以外に「災害対策・維持管理・防犯対策・環境配慮」が上位に来ている結果です。

つまり、実際に住めば一つ前の調査のように直接的な住みやすさに満足感を持つものの、物件を選ぶ段階では安全性や環境的な住みやすさを意識していることが伺える結果になっています。

これも、ある意味で納得できる結果かもしれません。

最近では東日本大震災を筆頭に、毎年のように地震や台風など大規模な災害に見舞われています。
また強盗や放火などの凶悪犯罪もよく聞く時代です。個人でも最低限の自衛・警戒をしたいと思うのは当然といえます。
家賃には反映させにくいものの、選ばれやすさという観点から、積極的に導入するのも一つの判断です。


他方で、最近ではいわゆる「ゴミ屋敷」や、ゴミでなくとも景観や衛生を損なう状態の部屋や建物も少なくありません。
実際、これらの問題は国でさえ重く見ており、2015年には「空家等対策の推進に関する特別措置法」が成立しています。やはり一般的には少しでも綺麗な環境で暮らしたいと考えるのが普通です。


つまり、どんなに室内の環境や設備を整えていても、災害や防犯への対策が不十分だったり、維持管理や環境への配慮が足りなかったりすれば、そもそも入居者の選択肢に入れてもらえないことが伺えます。今後は、このような面への対策や配慮は当然としつつ、そのうえで設備や住みやすさが求められている...と考えておいたほうが無難かもしれません。


もっともこれらも住みやすさと同じく、最終的には入居者次第です。とにかく家賃の安さを求める方もいれば、いわゆるコスパを意識する人もいます。
少しくらい割高でも良質な環境を欲する方もいるはずです。どのような属性の方が多いかは、それこそ立地次第といえます。
大局的な分析の次は実際の立地に関して十分にマーケティングを行い、できる限り入居者のニーズを汲み取りましょう。

3.入居者の変化

最近ではどのような事業であっても、何らかの「コロナの影響」が起きています。直接的な影響がなくても間接的な影響があることもありますし、自分には影響がなくても業界的に影響が起きていることもありがちです。
今後、起きるかも...というのも気がかりといえます。


一般財団法人住宅改良開発公社の令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測調査」によると、そんなコロナの影響については、以下のような結果が出ているのが実情です。

出典:一般財団法人住宅改良開発公社令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測調査」

出典:一般財団法人住宅改良開発公社令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測調査」



まず収入面においては、影響がない方が66.8%であり、およそ7割程度の方がさしたる影響を受けていないという結果になっています。
3割程度の方は大なり小なりマイナス影響が出ているものの、それでも96%の方が特に家賃の減額などは求めていない結果です。
コロナの影響は刻一刻と変わっていますが、ひとまず安心できる結果といえます。


一方で先ほどの調査において、今後の住居を選ぶ時に重視するポイントについては、以下のような結果です。

出典:一般財団法人住宅改良開発公社令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測調査

<図表4>と比べると、先ほど一位だった「駅・中心部との距離」が大幅に後退していることが伺えます。
これはやはり、リモートワークの影響や可能性が強く感じられる結果です。また広さや間取りに続いて、「家賃・管理費の負担水準」が強く気になる傾向になっています。

一概には言えませんが、直接的な引っ越しや家賃交渉まで至らなくても、コロナによって今まで以上に費用を気にする方が増えたのかもしれません。


また転居先での居住人数や希望する間取りは、それぞれ以下のようになっています。

出典:一般財団法人住宅改良開発公社令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測調査」

出典:一般財団法人住宅改良開発公社令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測調査

入居人数は1人ないし2人という方が7割を超える一方で、住居の広さや間取りとしては2LDK以上を望む方が7割程度を占めている結果です。

これらの点から、なるべく広い住環境が欲しい、ひいては快適な住環境が欲しい、といった思惑が読み取れます。

総じて、家賃や管理費などは気になる一方で、なるべく快適な住環境が求められているのが今後の一つの方向性といえそうです。

これはつまり、今まで以上に「入居者の目が厳しくなった」と言えるのかもしれません。視点を変えれば、「些細な違いでも気にする・気になる」ともいえます。
今後の競争は、まさに細部の戦いになるというのも一つの見方です。


しかしこれは逆手に取れば、「些細な努力にも気づいてもらえる」ともいえます。
ただ、そのような些細なことほど慣れた専門家でないと気づけないのも一つの現実です。今後は、頼れる専門家の力を借りることが必要不可欠かもしれません。

そもそものマーケティングも、専門家のほうがより正確にニーズを汲み取れるはずです。なるべく物件供給をしようと思う時には、その前に頼れる専門家探しに力を入れましょう。

4.まとめ

最近の動向から考えると、今まで以上に綿密なエリアマーケティングから将来的な実需を捉え、事業計画に反映させていくことが望ましいといえます。
それにより競争力が高まり、築年数が経っても高い入居率を継続できるはずです。必要に応じて専門家の力も借りつつ、細部に至るまで徹底的に努力を重ねていきましょう。

執筆者プロフィール
【山本FPオフィス 代表 山本昌義】

商品先物会社、税理士事務所、生命保険会社を経て、2008年8月8日に開業。
現在は日本初の「婚活FP」として、恋愛・婚活・結婚・離婚×お金をメインテーマに活動中。婚活中の方や新婚夫婦、または独身を貫きたい方など、比較的若い方向けのご相談や執筆、講演を行っています。趣味は漫画(約6,000冊所有)。物の設備・清掃に関する知識も豊富。

【保有資格】

・CFP®(婚活FP)

監修者プロフィール
【株式会社優益FPオフィス 代表取締役 佐藤 益弘】

マイアドバイザー®。Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、

主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。

NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。


【保有資格】

・CFP・FP技能士(1級)・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

・住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)

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