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建物賃貸経営安定化のコツ~エリアマーケティングとは~

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2023.07.03

公開日:2022年4月21日

建物賃貸事業の長期安定経営を実現するためには、「エリアマーケティング」が欠かせません。

しかし初めて建物賃貸事業に取り組む方からは、これが何なのかよく分からないという声をよく聞きます。

そこで今回は、エリアマーケティングの基本についてお伝えします。



動画で分かる!
エリアマーケティングレポート

エリアマーケティングとは

どのような事業であっても、ビジネスは必ず需要と供給の関係が成り立ちます。需要と供給のバランスがとれることで事業が成り立つわけです。

少し視点を変えれば、需要が無ければ事業は成り立たず、需要を超えるビジネスは成立・存続しないことになります。このため何らかの事業を始める際には、その事業における現在・将来の需要を調べる・調査することが極めて重要です。


エリアマーケティングとは一般的に、「ビジネスにおいて、全国一律の戦略ではなく、地域(エリア)の需要・特性に応じた戦略を展開すること」を言います。

建物賃貸事業における需要とは、居住者やテナント企業などのニーズの量ということになりますが、それらを測るためには、地域の特性や計画地の立地条件など、さまざまな角度からデータを集め、分析していくことがとても重要です。

まずはざっくりとどのようなものなのか、幅広く知っておきましょう。



建物賃貸事業におけるエリアマーケティングとは


仮に、あなたが自宅近くで建物賃貸事業を始めたとしたら、どのような方の入居が見込めるでしょうか?どのような年代・どのような家族構成の方が住むのに適した立地ですか?

近くにはどのような生活関連施設や公共施設、学校や、会社、その他施設がありますか?駅までの距離はどのくらいですか?


一見しただけでは、どのような場所も似たようにしか見えないこともありますが、注意深く見てみると、どのような地域・立地にも「一定の地域性・特性」があるものです。

現在やこれから先の、この地域・立地の特性を調査することが適切な事業計画には欠かせない要素となります。


たとえば、駅に近く深夜まで営業している店舗が多数ある立地では、多少狭くても単身者の需要が見込めるでしょうし、駅から遠くても閑静で、周辺に大きな公園やスーパーがあるような立地であれば、小さなお子様がいるファミリー世帯の需要が見込めるでしょう。

また、事業用におけるテナント誘致においては、そのテナントが扱う商材がその地域に住まう入居者のニーズにマッチしているかどうかが、長期入居のカギとなります。


いずれにしても、建物賃貸事業は入居需要があってのものです。事前にしっかりエリアマーケティングを行い、最大限にニーズを汲み取り、実需に応じた事業計画を策定することが安定経営のスタートとなります。



エリアマーケティングの基本要素


建物賃貸事業の場合は、以下の内容を様々な統計や資料、地図などを使い調査します。

また、実際に自分の足で回ってみることも大切です。実際に入居者として自分がそこで暮らすこと、物件を選ぶことを想定し、何を調査すべきかを理解したうえで、多角的に情報を集めていきます。

人口動態(年収・年齢・家族構成など)


まずは、どのような方々がその地域に集まり、住んでいるのかが大切です。

年収はいくらくらいか、年齢はどのくらいか、結婚や子供はどうなのか、それらの傾向が昨年と比べてどうなのかなど、将来的な入居者となりそうな世帯の属性や需要の推移などを分析します。


たとえば地域別の平均年収は、シゴトリサーチ(ハローワーク)の「市区町村別の平均年収」などで調べることが可能です。

また東京都港区の場合、「港区の区民の消費に関する調査報告書」によって世帯人員数や年収分布・収入源、居住年収などが網羅されています。


全国平均や県単位であれば国の統計で調べるのが基本ですが、より小さな地域ごとの場合は、役所の統計や民間企業の調査結果、または建築業者の積み上げてきたデータなどを活用するのが基本です。様々なデータを並べ、精度を高めましょう。


こうして年収が分かれば、家賃に充てられそうな金額も見えてきます。年齢や家族構成が分かれば、物件に求めている間取りや大きさ、設備なども見えてくるはずです。

これらの情報は、支払えそうな家賃の範囲で最適と思ってもらえる住環境を整えるなど、供給する建物の仕様検討などに活かせるでしょう。

近隣施設や近隣商店・交通機関


建物周辺の生活環境も大切なポイントです。

どのような施設やお店があるのか、最寄り駅までの距離やどのような交通機関が通っているのか、自転車や自動車などの交通手段、学校や保育所、病院、スーパーなど、入居者の日常生活に関係しそうなさまざまな要素を調べます。


生活環境については地図を確認するとともに、自分で歩いてみると分かりやすいです。最近ではグーグルアースを活用する方法もあります。

同時に、役所のホームページなどを活用して、統計的な観点で街並みを把握することも大切です。これらは、単身者層やファミリー層など、供給する間取りの検討などに活かせる情報となります。

まずは自分自身や自分の家族がそこで暮らすことを想定して、普段使いそうなお店や施設などを考え、自分がここに住んで良かったと思える住環境を思い描いてみましょう。


主な調査項目をご紹介しましたが、これらの情報を合わせて考えれば、おおよその入居者ニーズが見えてきます。
建物賃貸事業を検討する際には、計画地周辺の生活環境など入居者目線で少しでも住みやすい住環境を考えて、事業計画を立てましょう。

周囲の賃貸状況


入居者ニーズそのものの分析とは異なる視点として、需給バランスを見ることも大切です。

今現在、その地域にはどのような賃貸物件がどの程度あるのか、家賃や設備はどうなっているのか、空き家率はどのくらいか、新築が多いのか築古が多いのかなど。それらの情報から今後どの程度の新規供給が必要か、などが見えてきます。

ただし、空き家が発生する理由は需給バランスだけではなく、立地に適した仕様か、適切な募集・管理がされているか、適切な賃料設定かなど、さまざまな要素によって決まります。

また、たとえば「大規模災害の発生」や「大手企業・大型施設・大学などの設立や撤退」など、少し特殊な(一時的)要因が絡むこともありがちです。多角的な分析から、総合的に判断するように心がけましょう。

賃貸入居者のニーズ変化について

ニーズというのは、一度掴めば良いものでもありません。時代は常に変わっており、それに合わせて環境や人間もどんどん変化していきます。

従来のデータに基づく供給では、いつか需要を満たせなくなるかもしれません。このため、建物賃貸事業においても居住用・事業用を問わず、定期的な市場分析から最新のニーズを掴み続けることが大切です。

どのような変化がありうるのか、まずは簡単にでも知っておきましょう。

住まいに対する価値観や地域環境の変化


たとえば、少し前は相応の年齢になれば結婚して子供がいるのが当たり前でしたが、最近では未婚化・晩婚化・少子化が進行中です。

「夢のマイホーム」などの言葉が流行ったのも昔の話で、今ではあえて持ち家を避ける声も増えてきたといわれています。

昭和の仕事人間は廃れてワークライフバランスが推奨され、住まいを充実させたい声が増えているのも最近の傾向です。


一方で、大型の商業施設の出店や撤退で、地域事情が変わることもよくあります。新駅や新しい道路の開通で交通事情が変わる、大学や大手企業が近くにできる、時が流れて高齢者ばかりになってきた、などということも時折ありがちです。

飲食店などにおいては、一時的なブームもよく起こります。従来のままの供給で現代・現在のニーズに合っているのか、常にチェックを続けましょう。

コロナの影響


新型コロナは、本当に各地でさまざまな影響を及ぼしました。企業や店舗の倒産、施設の閉鎖、そしてリモートワークあたりは代表例です。都心部から地方への移住などもよく聞きます。


これらは、入居者需要にもさまざまな影響を及ぼしています。一般財団法人住宅改良開発公社の令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測調査」によると、リモートワークに伴って駅近でなくてもよくなった、(失業や減収・今後の仕事への不安などから)家賃に対する負担感が強まった、などが特に強く伺えるのが実情です。




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まとめ

不動産の使い方は大きく「自己使用」「売却(現金化)」「賃貸」の3つに分類されますが、その土地の特性・地域性を把握していなければ適切な判断が難しいものです。

また、土地の特性は社会環境の変化により変動することもあります。だからこそ、定期的にエリアマーケティングを実施しておくことが大切です。

必要に応じて専門家の力を借りて、エリアマーケティングを効果的に活用していきましょう。




執筆者プロフィール
【山本FPオフィス 代表 山本昌義】

マイアドバイザー®
商品先物会社、税理士事務所、生命保険会社を経て、2008年8月8日に開業。
現在は日本初の「婚活FP」として、恋愛・婚活・結婚・離婚×お金をメインテーマに活動中。婚活中の方や新婚夫婦、または独身を貫きたい方など、比較的若い方向けのご相談や執筆、講演を行っています。趣味は漫画(約6,000冊所有)。


【保有資格】
・CFP®(婚活FP)

監修者プロフィール
【株式会社優益FPオフィス 代表取締役 佐藤 益弘】

マイアドバイザー®。Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、

主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。

NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。


【保有資格】

・CFP・FP技能士(1級)・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

・住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)

「賃貸住宅経営」関連用語集

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