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「建築物省エネ法」が賃貸オーナーに与える影響とは?

公開日: 2024.11.08

最終更新日: 2024.11.08


2050年のカーボンニュートラル、2030年度の温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)の実現に向け、政府は2021年10月に地球温暖化対策等の削減目標強化を決定しました。

具体的には、エネルギー消費量の約3割を占める「建築物分野」における取り組みが急務となっています。

つまり、土地オーナーや賃貸オーナーにとって無視できない内容です。

今回は、この国の取り組みと、土地オーナーや賃貸オーナーに与える影響についてお伝えします。

1.建築物省エネ法について


建築物省エネ法とは、正しくは「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」の事を言います。

この法律は、「今後、新築住宅を建築する際には省エネを意識してね」という内容になります。

また、ここでいう省エネを意識した住宅とは、
「高断熱・高気密に作られ、エネルギー消費量を抑える設備を備えた住宅」の事を言います。

 

この法律によって、まず2025年以降に新築住宅を建築する際には「現在の省エネ基準」に適合させる必要があり、同様に2030年以降に新築住宅を建築する際には「ZEH水準」に適合させる必要が出てきました。

 

最終的には下表の通り、国は「太陽光パネル付の省エネ住宅」を視野に入れており、
2030年には「(任意ながら)新築戸建て住宅の6割」で、太陽光パネルが設置されることを政策目標にしています。

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出典:国土交通省「建築物省エネ法のページ



現在のところ、諸々の水準を満たさない住宅建築であっても建築は可能です。

ただ、これらの水準を満たすとさまざまな優遇(詳しくは後述)が受けられます。


つまり、政府としては「将来のルールに先に適合する住宅を増やしたい!」と誘導を図っている段階です。
賃貸経営上支障が無ければ、素直に国の要望には従うことをおすすめします。

2.改めて注目されている「ZEH」「LCCM住宅」とは?


ZEH(ゼッチ)
とは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略です。

これは、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとする、つまり使う以上のエネルギーを作ることで消費収支をゼロにすることを目指した住宅(国土交通省のサイトより部分的に引用)」を意味しています。

 

ZEHの他LCCM住宅(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)もあります。

こちらは、「建設時、運用時、廃棄時において出来るだけ省CO₂に取り組み、さらに太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーの創出により、住宅建設時のCO₂排出量も含めライフサイクルを通じてのCO₂の収支をマイナスにする住宅国土交通省のサイトより引用)」です。

 

つまり、LCCM住宅とはZEHを上回る性能を有する住宅であり、前述の表なら「太陽光パネル付の省エネ住宅」のことです。
ひとまず求められているのはZEH水準ですが、先々を見据えるなら、一気にLCCM住宅を検討するのも一案です。

 

 

政府の視点からZEHLCCM住宅を普及させる意味合いは、冒頭の通りカーボンニュートラルの実現や温室効果ガスの削減を狙っているためです。

 

一方で、これらの住宅は消費者の視点からも歓迎されています。

その最大の理由は「光熱費が割安になるから」です。


これらの住宅は高断熱・高気密なので冷暖房を効率的に使用できるうえ、高効率な設備を使うことで使用エネルギーを少なくできます。
その結果、地域や個々人にもよりますが、年間で10万円以上、光熱費が下がるという試算もあるほどです。

 

多くの方が感じている通り、昨今は物価高に加えて光熱費も上昇基調になっています。
今後もまだまだ不安定な動きをする可能性があるからこそ、まさに今、光熱費が割安になるZEHLCCM住宅が注目されているわけです。

 

また発電システムや蓄電装備を備えた住宅は、「災害対策にも繋がる」点も魅力的に思われています。
昨今の日本は大規模な自然災害が多発しており、地震や台風・水害などで電気が使えない...などという事態も頻繁に見聞きしがちです。
そのような災害が起きても、これらの住宅なら相応に快適な生活を維持できます。
そのような事態への「一種の保険」にもなる点が魅力的です。

 

さらに、これらの住宅は各部屋の温度差が少なくなる点から「家族の健康」に繋がったり、
断熱性が高い点から「カビやダニの発生防止」にも繋がったりする点も見逃せません。

これらの理由で、ZEHLCCM住宅が注目されています。

2-1.実際にどれだけ増えている? 今後どれだけ増える?

経済産業省の2023年「ZEH実証事業調査発表会」によると、注文住宅において、2016年には11.9%だったZEH普及率が、2022年には33.5%と、順調に伸びている結果になっています。

少なくとも注文住宅については、今後も順調に増えるでしょう。

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出典:経済産業省 2023年「ZEH実証事業調査発表会」

 


この資料によると、顧客にZEHが好まれる理由は、
先ほどお伝えした「ZEHLCCM住宅)の利点」とともに、「多くの補助金が使えるから」が大きく出ています。


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出典:経済産業省 2023年「ZEH実証事業調査発表会」

※自社ZEH普及とは、自社が受注する住宅のうちZEHが占める割合を50%以上とする目標を掲げたメーカーを指します。

 

補助金の一例を挙げると、ZEH基準を適用した新築戸建て住宅を建築・購入する個人に対しては、その内容によって一戸あたり55100万円が補助されます。

さらに、ハイグレードにするほどに補助金が追加されたり、設備を追加するほどに補助金が追加されたりする設計です。

 

他にも、すでにさまざまな補助金や税金優遇がありますから、気になる方は2024年の経済産業省と環境省のZEH補助金についてや、国土交通省のご注文は省エネ住宅ですか?などを一度、見てみましょう。

なお、ZEH補助金は国だけでなく、自治体などが出していることもありますから、合わせて確認してみることをおすすめします。

 

一方で上の表の通り、建売住宅では普及が伸び悩んでいます。

この点は資料によると、「顧客の予算の都合」によるところが大きい様子です。
ZEHに適合した住宅は、相応の高品質な資材や設備を使うことになるため、どうしても建築時・購入時の値段は少し割高になります。
まだまだ今は不況ですし、最近は物価高による困窮もよく聞きますから、どうしても周囲と比較されやすい建売だと苦戦するのかもしれません。

3.建築物省エネ法が土地オーナー・賃貸オーナーに与える影響は?


このZEHLCCM住宅)の推進事業は、賃貸住宅も対象です。
細かな建築基準や補助内容は戸建てと少し違いますが、「一定のZEH基準を満たせば補助金が出る」という点は似通っています。

 

一例を挙げると、3階以下の集合住宅に適用される「低層ZEH-M(ゼッチマンション)促進事業」では、一戸あたり40万円が補助されます。

さらに蓄電システムなどの設備を導入するほどに、補助も追加される内容です。

詳しく知りたい方は、先ほどの「2024年の経済産業省と環境省のZEH補助金について」などをご確認ください。

 

ここまでお伝えした通り、ZEH基準を適用した場合は、まず「光熱費が割安になる」という大きなメリットがあります。

また「災害対策にも繋がる」点も、最近では防犯・防災意識の高い方も増えていますから、魅力に感じる方も少なくないはずです。
何より、まだまだZEH基準を適用した賃貸物件は少ないですから、「(周辺物件との)大きな差別化」に繋がるかと思われます。

 

これらを総じて考えれば、「家賃アップの許容」や「入居率の向上」に大きく繋がる可能性があります。
「補助金による建築費などの削減」も考えれば、検討の余地は十分でしょう。

 

一方で、ZEH基準を適用するには、補助金が使えるとしても、どうしても「相応の割高な初期費用」が発生します。
一例を挙げると、広さや内容にもよるものの、戸建てでおよそ100300万円程度が追加で必要です。

もちろん相応に補助金などで補うことはできますが、気になる人は気になるかと思われます。
また初期費用だけでなく、さまざまな高品質な設備を導入するからこそ、消耗品の交換費用や故障時の修理費用など「ランニングコストが割高になる」のもデメリットです。

3-1.土地オーナー・賃貸オーナーが考えておくべきこと

建築物省エネ法において、土地オーナーや賃貸オーナーが考えておくべきことは、シンプルに「ZEHLCCM住宅)を導入するかどうか」でしょう。あるいは導入するにしても、「いつ(どのタイミングで)導入するか」でしょうか。

 

導入するか否かは、「現在の経営状態次第」かと思われます。
今後も含めて経営状態が今一つ、またはすでに建て替えなどを検討中なら、優先的に検討すべきでしょう。

気になる方は、補助金などの細かな利用要件も含めて、お付き合いのある不動産業者に相談されることをおすすめします。

 

一方で、今は何かと物価が上昇している状況です。
これは建築費も例外ではなく、ひいてはZEHの導入費用についても同様といえます。


参考までに、最近の建築費の推移は以下の通りです。

今後もまだまだ上がる可能性がありますから、導入するつもりならなるべく急いだほうが賢明かもしれません。

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出典:建物物価調査会 20248月「建築費指数

 

ZEH基準適合は"BELS認定"を取得することで第三者の評価を取得することができます。

国の補助金を使うためには「ZEHビルダー/プランナー/デベロッパー」と呼ばれる、登録が必要となります。

登録業者かどうかは、「ZEHビルダー/プランナー一覧」「ZEHデベロッパー一覧」で確認できますから、しっかり確認して相談しましょう。

 

4.少しでも気になるなら、まずは土地診断で判断材料を増やそう


建築物省エネ法からくるZEH基準やLCCM住宅は、土地オーナーや賃貸オーナーにとって無視できない内容です。

光熱費が下がるなどの消費者ニーズや補助金などの優遇を考えれば、むしろ優先して検討すべきものとも言えます。

少しでも気になる方は、まずはお付き合いのある不動産業者に土地診断をしてもらい、判断材料を増やしましょう。
 

5.大東建託のZEHLCCMについて


大東建託では地球温暖化防止に貢献するために太陽光設備による再生可能エネルギーの創出に取り組んできました。

この創出した再生可能エネルギーを当社が管理している賃貸住宅に有効利用すること、そして入居者様に快適な住空間を提供したいとの思いからZEH賃貸住宅の開発に取り組んできました。

このZEHLCCM賃貸集合住宅は地球温暖化防止とオーナー様の事業性向上にも貢献できる次世代の賃貸集合住宅です。

 

大東建託が提供する太陽光パネルを設置したZEHLCCM賃貸集合住宅は、大東建託パートナーズが太陽光パネルを設置、管理し、発電した電気を京セラ株式会社に売電しています。

これにより、オーナー様は設置やメンテナンスの費用負担なく太陽光パネルを設置できるほか、オーナー様の屋根をお借りしている賃料として屋根借り賃料を35年間継続してお支払いします。

このように大東建託ではオーナー様の負担とリスクがないZEH賃貸住宅を提供しています。

>>関連ページ:ZEH開発のあゆみ

>>関連ページ:大東建託のZEH仕組み

 

■監修者プロフィール

株式会社優益FPオフィス 代表取締役
佐藤 益弘

マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】CFP®/FP技能士(1級)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)