賃貸派が増えている?統計データから賃貸需要について考えます。
公開日: 2022.07.25
最終更新日: 2023.01.31
公開日:2022年7月25日
今回は、建物賃貸事業の今後の需要を考えるため、持ち家と賃貸の戸数の推移や持ち家派および賃貸派のメリット、デメリットを確認し、さらに持ち家・賃貸に影響を及ぼす要素を説明していきます。
1.・ 持ち家と賃貸の戸数推移
賃貸派と持ち家派にかかわる実際の統計を見ていきます。
1-1.持ち家派は増えている?減っている?
まず、建物賃貸事業を行う際に重要となる総住宅数および総世帯数の変化や住宅ストック数と世帯数の推移を確認して、賃貸住宅の全体像を考えてみましょう。
平成30年の住宅・土地統計調査(総務省)によると、2018 年10月1日における我が国の総住宅数は 6,240 万7千戸、総世帯数は5,400万1千世帯となっています。
前回調査の2013年と比較すると総住宅数は177万9千戸(2.9%)増加、総世帯数は154万9千世帯(3.0%)の増加となっています。
日本の総人口は2008年をピークに減少に転じていますが、総住宅数および総世帯数は現在も増加の傾向が見られることが確認できます。
総世帯数が増加している理由としては、ライフスタイルの変化による核家族化や未婚率の増加による単身世帯の増加が挙げられます。
ただ、今まで総世帯数は増加していましたが、徐々にその伸びも減少しています。
前述の調査によると、住宅の持ち家は3,280万2千戸で持ち家住宅率は61.2%となっており、2013年と比べ0.5%低下しています。
持ち家住宅率の推移は、1973年以降の調査によると1983年の62.4%が最高となり、その後は60%前後で推移を続けています。
一方、借家は平成30年の調査では1,906万5千戸となり、住宅総数に占める割合は35.6%となっており、2013年と比べ0.1%上昇となっています。
このことから持ち家住宅率は今も60%前後で推移をしている一方、借家数も徐々にですが増えていることが確認できます。
*総務省 平成 30 年住宅・土地統計調査 P4
これらの状況は、共働きなどに比べ収入源が少ない単身者世帯が増加している影響が大きいと感じています。
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2.持ち家派と賃貸派について
ここからは、住宅の所有についての調査を確認して、どの世代にどんなニーズがあるのかを調べ、持ち家派と賃貸派のメリットとデメリットについて考えることで、今後、消費者がどのような賃貸物件を求める傾向にあるのかを考えていきます。
我が国の住生活をめぐる状況等について(国土交通省)によると、住宅の所有についての希望の調査で住宅を所有したいと考えている人の割合は6割を超えていました。
年代別でみると、どの世代も住宅を所有したいと考えている人の割合は半数を超えています。
2-1.持ち家派のメリットデメリット
では、まず持家派のメリット、デメリットを考えていきます。
持家派のメリットとしては、住宅ローン控除の活用ができ、住宅ローンを払い終えれば自分の財産として保有することが考えられます。
さらに不動産価格が上昇し売却することによってキャピタルゲインを得ることもあります。
また、大きなガレージやピアノが弾ける防音の部屋が欲しいという自分の好みに合わせた住宅を作ることが可能です。
デメリットとしては、近年、人気の場所は地価の上昇が起こっていてなかなか住宅の購入が難しくなっています。
次に子供の独立に伴い、部屋が余るなどライフスタイルの変化への対応が難しい点や災害が発生した際の復興費用発生リスクなども考えられます。
資産となる一方で、どうしても長期の固定費が多額になる≒流動性に欠けてしまう側面もあります。
我が国の住生活をめぐる状況等について(国土交通省)
一方で、年代別の居住志向によると20代~40代の比較的若い層では賃貸派が2割を超えていました。
2-2.賃貸派のメリットデメリット
では、ここからは賃貸派のメリット、デメリットを考えていきましょう。
賃貸派のメリットとしては、20代および30代では仕事の都合や結婚による家族構成の変化などライフイベントの変化が大きいため、住み替えのハードルが低くライフスタイルの変化にあわせやすい賃貸が好まれる傾向があることが確認できます。
災害のリスクがある地域からの移動も賃貸なら比較的住み替えがしやすくなります。
また、住宅ローンの長期にわたる返済や住宅設備のメンテナンス費用の負担などの支払いがないこともメリットと考えられます。
では、賃貸のデメリットはどうなのか考えていきます。
賃貸は家賃を永遠に払い続けることになります。
また、収納や部屋数が少ない、壁が薄くリモートワークの際に隣人の声が気になるなど持家に比べると住宅の質が劣る場合があることです。
我が国の住生活をめぐる状況等について(国土交通省)
住宅のニーズは様々な要因で変化をしていきます。
持ち家と賃貸のメリット、デメリットを確認し、消費者のニーズを生かした賃貸住宅の提供をすることが重要となってきます。
今後、選択の幅として賃貸住宅が注目されてきており、賃貸住宅を考えるにはいい時代となってきているのではないかと考えられます。
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3.持ち家・賃貸に影響を及ぼす要素
ここからは、建物賃貸事業の安定経営を実現するために今後の持ち家と賃貸に影響を及ぼすと考えられる要素について考えていきます。
3-1.全国区の地価動向が影響している?
まずは、全国の地価動向を確認しましょう。
国土交通省の令和4年地価公示の概要によると全国の地価動向は、景況感の改善を背景に、低金利環境の継続、住宅取得支援施策等による下支えの効果もあり、住宅需要は回復し、地価は上昇に転じました。 また、地方四市は上昇率が拡大し、その周辺部にも波及しており、地方圏の主要都市で下落から上昇および下落率の縮小が見られました。
長期にわたる金融緩和による不動産投機の増加も地価上昇に影響を与えていると考えられ、都市部を中心として希少性の高い住宅地および交通利便性等に優れた住宅地では、地価の上昇が続いており住宅購入が難しくなってきています。
賃貸住宅のニーズもここにあるのではと考えられます。
令和4年地価公示の概要(国土交通省)
地価が上昇をしている一方、日本経済2018~2019(内閣府)によると可処分所得がどの年齢層でも2000年以降減少傾向にあり、これはパートやフリーランスなど雇用環境の変化による非正規雇用の増加が考えられ、持ち家を購入したくても長期の住宅ローンを計画することが難しいことが考えられます。
3-2.家族構成が影響している?
続いて、日本の世帯数(家族構成)について確認をします。
令和2年の国勢調査によると、一般世帯数は5,570万5千世帯となり、2015年より238万1千世帯の増加で4.5%増となっています。
1世帯当たりの人員は2.21人となっており、前年度の2.33人と比較するとさらに単身および核家族が増加していることが確認できます。
つまり、賃貸住宅市場のニーズとしては核家族や単身世帯が大きいと考えられます。
令和2年国勢調査P16
また、コロナ禍を起因としたリモートワークの推進により通勤の必要が減る一方、リモート用の部屋のニーズの増加が考えられます。
リモートワークとともにデュアルライフといわれる都会と田舎、それぞれに拠点を持ち行き来する生活様式の変化も見られます。
さらに高齢化により比較的利便性の高い地区への高齢者の住み替え、人口減少によるコンパクトシティ化などさまざまな社会要因があり、もう一つ、増加の一途を辿っていた外国人人口も賃貸物件のユーザーとして確認したい要素です。
2020年よりコロナ禍となり技能実習生など外国人労働者の伸びが鈍化しているのが現状です。しかし、外国人労働者は今後も増えることが予想され、今後の経済再開が外国人人口の増加のキーとなってきています。
持ち家や賃貸住宅へのニーズもその度時代の変化と共に変わっていきます。
賃貸住宅の安定経営を実現させるためにも将来的な消費者のニーズの確認が不可欠な要素となります。
4.まとめ
総住宅数および総世帯数は現在も増加の傾向がありますが徐々にその伸びも減少していきます。
持家派、賃貸派どちらが良いと一概には言えませんが利便性の高いエリアの地価の上昇やライフスタイルや社会環境の変化に伴い賃貸派は増加傾向と考えられます。
建物賃貸事業の安定経営を実現させるためには実需に応じた供給が必要です。安定経営のためには、賃貸住宅のメリット、デメリットを理解した物件の供給が不可欠となります。
今後は世帯数や地価動向など社会的変化やライフスタイルやトレンドなど将来的な入居者のニーズを捉えた物件供給および賃貸経営が継続してできるパートナーを選定することがより重要となってきそうです。
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マイアドバイザー®。印刷会社で資材担当から社内で初の女性DTPオペレーターに。結婚退職後、自動車関係の仕事に従事。自動車保険の取り扱いを機会にFPを取得。
お客様に寄り添うあなたサイズのFPコンサルタントとして活動。
地域でファシリテーションを学ぶ会の立ち上げに関わり5年、毎月勉強会を運営委員として企画、実施中。あわせて防災イベントや災害支援活動に参加。
ます。趣味は漫画(約6,000冊所有)。物の設備・清掃に関する知識も豊富。
- 【保有資格】
-
・AFP・FP技能士(2級)・相続診断士・2級キャリアコンサルティング技能士・国家資格キャリアコンサルタント
マイアドバイザー®。Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、
主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】
・CFP・FP技能士(1級)・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
・住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)
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