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2019年の家賃動向と今後の需給予測

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2023.03.17

公開日:2020.05.26

全国賃貸管理ビジネス協会の調査による2019年「全国家賃動向」が発表されました。2019年の家賃動向はどのような動きで、2020年以降どのように推移していくのでしょうか。賃貸経営を考えているのであれば、まずは地域ごとの賃料相場を把握することが欠かせません。

この記事のポイント
  • 家賃動向は主要都市を中心に昨年に引き続き増加傾向(全国では横ばい?やや微増)

  • 新築分譲マンション高騰の影響もあり買い控えからやや売り手市場状態となり家賃が微増

  • 2020年は新型コロナの影響が懸念されるが居住物件の家賃への影響は限定的と予想

2019年の家賃動向

2019年の家賃動向はどのように推移したのでしょうか。

全国賃貸管理ビジネス協会の調査結果によると、総平均賃料は2018年から引き続き全国で横ばいからやや微増傾向にあることが分かります。

ただし、エリア別で見てみると首都圏を中心に都市部では増加傾向の地域が多いなど、エリアごとに多少の違いが見られます。

参考:全国賃貸管理ビジネス協会 全国家賃動向

ここ数年における家賃の上昇傾向は、円安や東京オリンピックなどにより外国人入居者が増える、インバウンド需要の大幅な増加が理由として考えられます。また、その他には、新築分譲マンションの価格高騰により買い控えが進み、賃貸住宅への需要が高かったこと等も背景にあるようです。

一方、2020年に入り世界各国で新型コロナウイルス感染症による外出自粛や企業の営業自粛を理由とした経済不安が続いていますが、このことは家賃相場にどのような影響を与えるのでしょうか。

これより上記について、地域ごとや間取り別の平均賃料推移を見ながら考察していきたいと思います。

主要都市の平均賃料推移

まずは主要都市の平均賃料推移を見ていきましょう。

ここでは、東京都と大阪府、愛知県の主要3都市2018年末から2019年末までの推移を見てみるといずれも微増傾向にあることが分かります。

都市名 平均賃料 変化率
2018年12月 2019年12月
東京都 71,288円 71,967円 100.90%
大阪府 58,893円 60,437円 102.60%
愛知県 53,880円 54,294円 100.70%

これらの都市においては、円安によるインバウンド需要の増加や東京オリンピックや大阪万博、東京から名古屋(愛知)、大阪を結ぶリニア新幹線に備えた再開発等が活発で、ここ数年は新築分譲マンション成約価格や地価の高騰が見られており、家賃の増加傾向もこうした流れによるもののひとつだと考えることができます。

参考:【2020年版】公示地価ランキング発表!

一方、全国宅地建物取引業協会連合会の「不動産市場動向データ集年次レポート(2019年)」によると、2019年の新築マンションの価格(分譲平均㎡単価)は7年連続で上昇しているのに対し、供給戸数は前年を15.9%も下回っていることが分かります。

参考:全国宅地建物取引業協会連合会「不動産市場動向調査」

上記の通り、分譲住宅の供給戸数が減っているのにも関わらず、賃貸住宅の家賃が微増傾向となっている理由として、新築分譲マンションの価格や地価が高騰したことにより、買い控えが起こっていることが考えられます。つまり、賃貸マンションに住んでいる人が新しくマンションや戸建てを購入せず賃貸に住み続けることで、賃貸住宅の需要に対して供給が少なくなり家賃が微増となっていると考えられるのです。

つぎに、東京都と大阪府、愛知県についてそれぞれの賃料推移を見ていきましょう。

東京都の賃料推移

全国賃貸管理ビジネス協会による直近7年間の12月の総平均賃料を見てみると以下のようになっています。

[東京都]12月の総平均賃料推移
2013年 72,245円
2014年 73,257円
2015年 74,451円
2016年 70,934円
2017年 71,001円
2018年 71,288円
2019年 71,967円

2015年から2016年にかけて賃料が大きく下がっていることが分かります。これは、2015年に相続税の基礎控除額が縮小されることに向けて、節税効果の高い賃貸住宅が多く建てられたことが理由として考えられるでしょう。賃貸住宅が多く建てられたことで競合が増え、家賃を下げざるを得ない物件が増えたと考えられます。

長いスパンでみると、東京都においては横ばい傾向が続いているといえるでしょう。

大阪府の賃料推移

次に、大阪府の直近7年間の12月の賃料推移は以下の通りです。

[大阪府]12月の総平均賃料推移
2013年 57,002円
2014年 56,981円
2015年 57,501円
2016年 58,551円
2017年 58,770円
2018年 58,893円
2019年 60,437円

大阪府においてはこの7年間、一貫して微増傾向にあることが分かります。

東京都の地価や新築マンション価格がすでに高騰しているのに対し、大阪府ではまだ上昇の余地があり、ここ数年にわたって大阪万博に向けた再開発やインバウンド需要増加に向けたホテルやオフィス開発等による地価の上昇が見られます。また、2025年には大阪万博の開催を控えており、引き続き開発等が期待できることから、賃料推移も上昇傾向が続いていると考えられます。

愛知県の賃料推移

最後に愛知県の賃料推移です。

[愛知県]12月の総平均賃料推移
2013年 54,274円
2014年 53,658円
2015年 54,443円
2016年 54,723円
2017年 54,567円
2018年 53,880円
2019年 54,294円

7年間の賃料推移はおおむね横ばい傾向にあると言えるでしょう。

愛知県においては、2027年にリニア中央新幹線の開通を控えており、今後も名古屋駅やリニア中央新幹線沿線を中心に開発が進むことが考えられ、賃料相場が上がっていく可能性があります。

大阪府の大阪万博に向けた再開発も同様で、開発が進むエリアでは以下のような理由で賃料相場が上昇するのが一般的です。

  • 商業施設等が開発されることで雇用が創出され賃貸ニーズが高まる
  • 人気が高まることでオフィスや店舗の価値が高まり、オフィス賃料が上昇することに合わせて居住施設の賃料も上昇する

間取り別賃料の推移

次に、全国賃貸管理ビジネス協会の調査結果から、全国の間取りごとの賃料を見てみると、2018年12月と2019年12月の賃料とではいずれも大きな変化はありません。

間取り 全国の平均賃料 変化率
2018年12月 2019年12月
1R 50,346円 50,426円 100.20%
1K/1DK/1LDK等 57,623円 57,534円 99.80%
2DK/2LDK等 65,023円 65,640円 100.90%

これは、首都圏をはじめとした都市部においては増加傾向となっているものの、地方では横ばいかやや微増程度にとどまっていることが多いことが理由です。

主要都市の間取り別賃料推移

ここでは、東京都、大阪府、愛知県それぞれの間取り別賃料推移を見てみましょう。

間取り 東京都の平均賃料 変化率
2018年12月 2019年12月
1R 67,691円 68,805円 101.60%
1K/1DK/1LDK等 86,887円 85,580円 98.50%
2DK/2LDK等 93,968円 90,136円 95.90%

間取り 大阪府の平均賃料 変化率
2018年12月 2019年12月
1R 54,253円 54,926円 101.20%
1K/1DK/1LDK等 65,733円 67,692円 103.00%
2DK/2LDK等 72,645円 74,616円 102.70%

間取り 愛知県の平均賃料 変化率
2018年12月 2019年12月
1R 48,313円 48,049円 99.50%
1K/1DK/1LDK等 55,922円 56,985円 102.00%
2DK/2LDK等 61,401円 63,278円 103.10%

上記通り、東京都においては1Rなど1部屋の賃料がやや微増したものの1DKや1LDKなど2部屋と2DKや2LDKなど3部屋については減少。一方、大阪府と愛知県においては2部屋や3部屋を中心に賃料が増えていることが分かります。

地方の間取り別賃料推移

一方、地方の間取り別賃料推移においては、おおむね横ばい傾向か微増傾向となっています。
ただし、地域によっては、例えば新駅ができるなどして一時的に地価や賃料相場が上昇しているエリアもあります。実際に活用を検討する際には、個別にしっかり調査することが大切です。

今後の需給予測

2020年は東京オリンピックにより地価や賃料相場に影響が及ぶことが想定されていましたが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により従来の予測とは大きく違ったものになることが考えられます。
新型コロナウイルスにより、今後の需給予測や賃料推移はどのように推移していくのでしょうか。

賃貸住宅の新設住宅着工数推移

まず、国土交通省が発表している「平成30年度 住宅経済関連データ」から借家の新設住宅着工戸数を見てみると、以下のように推移していることが分かります。

年度 総戸数(千戸) 持家(千戸) 借家(千戸)
2012年度 893 566 327
2013年度 987 612 375
2014年度 880 514 366
2015年度 921 531 390
2016年度 974 541 433
2017年度 946 531 416
2018年度 953 555 398

参考:国土交通省「平成30年度 住宅経済関連データ」

上記の通り、ここ数年間は賃貸物件の新築が年々増えていたものの、2017年度、2018年度と減少しています。

全宅連の調査結果でも、居住用賃貸の売買契約成約件数は2016年以降減少しており、中古と新築という違いはあるものの、同様の傾向が見て取れます。
これは地価や建設費の高騰、金融機関の融資判定基準の厳格化などが理由として挙げられるでしょう。

新型コロナウイルスの家賃に対する影響は限定的

2020年に入り新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、これまで地価の上昇を支えてきたインバウンド需要は大幅にダウンすることになります。これに付随して地価は各地で大きく下がることが予想できるでしょう。

一方、居住用施設においては新型コロナウイルスの感染が拡大したからといってすぐに家賃が下がるといったことは考えにくいです。

実際に、最近の大きな不況としては2008年のリーマンショックが挙げられますが、全国ビジネス賃貸管理協会の調査結果を見てみると、2008年4月時点の全国の総賃料平均は56,138円に対し、2009年12月の全国総賃料平均は53,363円と5%程度の下落にとどまっています。
確かに下落しているものの、例えば日経平均株価が2007年の高値18,300円から2008年の安値6,994円にまで下がったのと比べると、小さな影響だったと見ることができるでしょう。
これは、経済不安に陥ったとしても居住用物件から人がすぐに退去するわけではないからです。

土地活用というより、投資用物件の購入という点において、地価や物件価格は下がる可能性が高い中、家賃は大きく下がらないのであれば、資金力のある投資家からすると買い時だと判断することもできるでしょう。

実際に、リーマンショック後に投資を始めて今では多くの収益物件を取得されている方も少なくありません。

まとめ

2019年は金融機関の融資体制の変化などにより借家の新設着工戸数がやや減少していますが、一方で家賃動向については主要都市を中心に微増傾向、全国でみても横ばいか微増傾向となっています。
これは、新築分譲マンションの価格高騰等を理由に買い控えが見られたことが、ひとつの理由と考えられます。また、2020年は新型コロナウイルスにより不動産市場も大きな影響を受けることが予想されますが、リーマンショック時の賃料相場を見てみると居住用物件についてはそこまで大きな影響を受けない可能性が高いといえます。
とはいえ、新型コロナウイルスによる経済への打撃はまだまだ未知数のものがあるため、今後の動向をしっかり見ていくことが大切です。

監修者プロフィール
中村裕介(宅地建物取引士、保育士)

商社、保育園、福祉施設での勤務を経た後、現在は不動産記事を中心としたライター業と、店舗・住宅を提供する不動産経営者としても活動中。

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