
懸念される「2022年問題」と生産緑地の行方
最終更新日:2021年6月18日
昨今、不動産業界を賑わせているトピックのひとつに「2022年問題」というものがあります。主に都市部にて指定されている「生産緑地」が、2022年に指定を解除され住宅用地として大量に供給され、それによって不動産価値が急落する可能性を指摘するものです。今回のコラムでは、この「2022年問題」の経緯と動向について詳しく説明します。

この記事のポイント
- 1991年の法改正によって生産緑地に指定された多くの土地が2022年に期限満了となるため、近年、注目されている。
- 農業に従事する人が減っているため、生産緑地としての指定更新が難しい土地が多い。
- 生産緑地としての指定を解除されると税制上の優遇を受けられなくなるため、売却される土地が増える可能性が高いと予測される。
生産緑地をめぐる「2022年問題」の経緯
そもそも、「生産緑地」とは何でしょうか?そして、2022年になぜ突然解除されるのでしょうか?
話の発端は1974年にまで遡ります。当時の日本では、住宅不足が深刻な社会問題になっていました。そのため、市街化区域内の農地の宅地化を促す目的で「生産緑地法」が公布されました。その後、1991年に、今度は進みすぎた開発から良好な都市環境を確保する目的で「生産緑地法」の改正が行われました。1991年の「生産緑地法」改正では、市街化区域内の農地のうち、次の①~③に該当する農地について、都市計画で生産緑地に指定することができるとされました。
① 良好な生活環境の確保に相当の効果があり、公共施設等の敷地に供する用地として適しているもの
② 500㎡以上の面積があるもの
③ 農林業の継続が可能な条件を備えているもの
生産緑地に指定された農地は、継続して農業を行うことが前提とされており、農業を営むために必要となる施設等の設置以外は行うことができません。そのため、固定資産税や都市計画税の減額、相続税や贈与税の納税猶予といった税制上の優遇を受けることができました。
市街化区域内農地の区分 | 宅地化農地 | 生産緑地 |
---|---|---|
行為の制限 | なし | 建築等の設置に制限がある |
固定資産税 | 宅地並み課税 | 農地課税 |
相続税 | 納税猶予が適用されない | 納税猶予が適用される |
生産緑地の管理 |
農地等として管理する必要がある |
---|---|
行為の制限 | 建築物など、施設の設備に制限がある |
税制特例・固定資産税 | 農地課税 |
税制特例・相続税など | 贈与税及び相続税の納税猶予が適用される |
この税制面での優遇措置を受けることを目的として、当時、多くの土地オーナーが生産緑地指定を受けたという経緯があります。この、生産緑地法の適用は30年が一つの区切りとなっています。生産緑地の所有者が農業に従事できなくなっている場合、指定を受けてから30年が経つと、行政に対して土地を買い取るように求めることが出来るようになります。しかし財政難などの理由から実際に買い取るケースは稀なようです。
そうなると、それらの土地は生産緑地としての指定を外され、これまで以上に多くの税金などがかかることになってしまいます。改正生産緑地法が施行された1992年に生産緑地指定を受けた多くの農地が、2022年にちょうど30年を迎えます。昨今、農業従事者はどんどん減っていく一方ですので、生産緑地の指定が解除された土地が一斉に売却され、やがて宅地化されるだろうと考えられています。これが「2022年問題」が起こる仕組みです。
不動産価値暴落の懸念
現在のところ生産緑地はどれくらいあるのでしょうか。規模についてのイメージが出来れば、問題の深刻さがより一層現実味を帯びて感じられるかもしれません。平成27年都市計画現況調査によると、生産緑地指定を受けた土地は全国に13,442haも存在しており、関東だけでも7,737haに及びます。関東の生産緑地を地域ごとに東京ドームで換算してみると、下記のようになります。
膨大な面積のこれらの土地が、順次市場に供給された場合、不動産価格が急落してしまう危険性が叫ばれているのは当然のことだと言えるでしょう。
「生産緑地法」の動向に注目!
2022年に向けて、さまざまな問題が顕在化しています。また、時代とともに人々の生活スタイルも少しずつ変化しています。このような社会的背景もあり、「都市緑地法等の一部を改正する法律」が2017年6月に施行されました。この一連の法改正には、生産緑地法における建築規制や指定面積要件の緩和なども盛り込まれました。
面積要件の緩和 |
500㎡→300㎡ 面積要件の下限を引き下げた |
---|---|
建築規制の緩和 | 生産緑地地区内に直売所や農家レストラン等の設置が可能に |
特定生産緑地制度 | 買取り申出時期を基準日から10年後に延期できる |
このように、時代の流れに合わせて、着々と法改正も進んでいますので、その動向について随時確認し、常に新しい情報を持っておくようにしましょう。
今後の土地活用
もし、生産緑地でなくなってしまうと、それまで土地オーナーが受けていたあらゆる税制面での優遇が得られなくなってしまいます。固定資産税や相続税などの金額が一気に跳ね上がり、現在の数倍から数十倍になってしまうといった状況が生まれてもおかしくありません。そのため、2022年に生産緑地でなくなった土地のオーナーの多くが、自らの納税負担を軽減する目的で土地を手放したり、あるいは、その土地に賃貸住宅を建てたりするなど、損失を最小化できるような土地活用の方法を検討しはじめているといわれています。都市部で土地活用やアパート経営、マンション経営等を検討されている方は、生産緑地の動向について特にしっかりと注目しておきましょう。2022年になるまでには、まだ時間が残されています。そのため、今後も新たな展開があるかもしれません。どのような展開になるかはいまだ不透明ですが、幅広い選択肢を持っておくためにも、常に社会にアンテナを張り、日頃から十分な情報収集に努めておくことが大切です。
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