賃貸経営を始めるなら知っておきたい最新の金利・物価動向
公開日: 2025.08.05
最終更新日: 2025.08.06
2025年7月31日、日銀の金融政策決定会合にて最新の金融政策(0.5%の据え置き)が発表されました。
金融政策は賃貸経営にも大きめに影響を及ぼしますから、金利の変動に合わせて物価や賃料収入はどう変わるかを理解し、変動に振り回されないための諸々の準備が大事になります。
今回は、最新の金融政策の内容とともに、昨今の金利や物価についてお伝えします。
1. 金利・物件(物価)の現状について
そもそも金利とは、シンプルに言えば「お金を借りる際の手数料」のことです。
ただこれだけのものなのですが、世の中は一般の方が考える以上にさまざまなところでお金の貸し借りが行われており、だからこそ金利の変動はさまざまなところに影響を及ぼします。
その影響を及ぼす先の一つが「物価」です。
簡単にいえば、金利が上がると物価が下がる傾向にあります。
金利が上がる、つまりお金を借りる際の手数料が上がれば、当然に多くの人はお金を借りるのを控えるようになり、ひいては購入を控えるようになるため、最終的に物価が下がるわけです。
そんな金利の指標となる政策金利は、今回、日銀によって現在の0.5%を据え置く(そのままにする)と発表されました。
つまり今回の発表は、金利の変動としては、物価への影響はないものと考えることができます。
最近の物価高を考えると残念に思う方もいるかもしれませんが、仮に金利が上昇すれば、住宅ローンやアパートローンの金利も上昇することになります。
まずは冷静に今回の結果を受け止め、今後のことを考える材料にしていきましょう。
2. 最近の日本の金利・物価情勢について
現在(の金利)が高いのか安いのかというのは相対的なものなので、過去(や将来予測)と比べて見てみることが大切です。
まず住宅金融支援機構による「住宅ローンの金利推移」によると、最近の住宅ローン金利は以下のように推移しています。
なお、一般的な賃貸経営で使うのはアパートローンですが、金利の動きとしては同じなので、これで金利の推移を把握しましょう。
出典:住宅金融支援機構「住宅ローンの金利推移」
この通り、住宅ローン金利はバブル景気と言われていた35年ほど前と比べると、その後ずっとかなりの低金利を推移してきました。
しかし近年、2020年の新型コロナが始まった頃から、少しずつ上昇傾向になってきています。
また総務省の2025年「消費者物価指数」によると、最近の物価の値動き(総合指数)としては以下のような推移です。
出典:総務省 2025年「消費者物価指数」
この通り、昨年までと比べれば少しは落ち着いたようにも見えますが、まだまだ物価は上昇傾向です。なお、そもそも物価は適度に上昇してこそ正常であり、日銀も「2%の安定的な物価上昇」を目標に活動しています。
しかし近年の推移は日銀の目標を大きめに上回っていますから、そう遠くないうちに政策金利を上昇させ、物価上昇の抑制を図る可能性が考えられる状況です。
合わせて、国土交通省の令和7年「不動産価格指数」によると、近年の不動産価格は以下のように推移しています。
出典:国土交通省 令和7年「不動産価格指数」
この通り、もともと不動産価格は上昇基調でしたが、2020年の新型コロナ以降、さらなる上昇を見せています。
この大きな要因は、新型コロナによる物流の停滞、そしてロシア・ウクライナ紛争です。最近では新型コロナによる影響は落ち着きましたが、代わりに円安や職人の人件費の上昇などが影響し、不動産価格は引き続きの上昇を見せています。
ひとまず現状、金利も物価も、そして不動産価格も上昇傾向というのが実情です。まずはこのような実情を正しく把握し、今後の経営戦略に活かしていきましょう。
3. 金利や物価は今後、どのように変化していくか
先ほどもお伝えした通り、物価は金利に影響される性質があります。
だからこそ日銀は、金利を操作することで物価変動をコントロールしているわけです。
もっとも物価は需給関係など金利以外にも変動要因があるので、(まさに現状の通り)思惑通りとは限りませんが、それでもまずは金利動向が大事になります。
この金利の今後の推移については、内閣府の令和7年「中長期の経済財政に関する試算」によると、以下の通りです。
出典:内閣府 令和7年「中長期の経済財政に関する試算」
この通り、金利については国として今後、上昇する見通しを立てています。このため、物価への影響も気になるところですが、賃貸経営においては住宅ローン金利やアパートローン金利が上昇する可能性が高い点を気にすることがおすすめです。
また同じ試算によると、物価の推移としては、国は以下のように見ています。
出典:内閣府 令和7年「中長期の経済財政に関する試算」
この通り、急激な上昇は一服し、今後は日銀が目標としている2%の物価上昇となるだろうと見通しています。
とはいえ物価上昇というのは、合わせて賃金が上昇してこその適正です。
今のところ物価上昇のほうが先行している状況ですから、(未来の)入居者の経済事情を考えると、当面は賃貸経営にも一定の影響が出てくるかもしれません。
ひとまず金利も物価も、今後も当面は引き続き上昇する可能性が高いと思われます。今回の発表としては据え置きでしたが、国でさえも上昇する見通しを立てていますから、そう遠くないうちに金利が上昇する前提で、今後の経営戦略を練りましょう。
4. 賃貸経営に興味がある方や既存オーナーが考えておくべきこと
ここまでお伝えした通り、金利についても物価についても、今のところ上昇傾向にあり、そしてそれらが今後も上昇を続ける見通しというのが現状です。中でも金利については、賃貸経営とローンは切っても切れない関係であり、不動産は大金が動くからこそ少しの金利変動でも大きな影響が出てきますから、強く注意しておく必要があります。
合わせて、特に賃貸経営を始めるか検討中の方については、「建築費の動向」にも注意が必要です。建設物価調査会の2025年6月「建築費指数」によると、最近の建築費は以下のように推移しています。
出典:建設物価調査会 2025年6月「建築費指数」
この通り、不動産価格が大きめに上昇を始めた2020年頃を境に、建築費についても上昇が続いている状況です。
建物の建築には多くの資材が使われますから、物価が上昇すれば、おのずと建築費も上昇してしまいます。
この事情については、これから賃貸経営を始める新規オーナーだけでなく、既存の土地オーナーや賃貸オーナーも注意が必要です。
今後のリフォームの際や追加での物件購入を検討する際、同じように影響を受けます。今はその際に必要となる金利も上昇傾向ですから、なおさらです。
このような金利も物価も上昇傾向という局面では、分かりやすく「着手が遅くなるほど不利になる」ことになります。
もっとも、とにかく早く始めれば良いというわけではなく、賃貸経営には事前の十分なエリアマーケティングを始めとした準備が必要です。とはいえ、やはり着手が遅くなるほど不利になることは確かといえます。
このため事前準備も踏まえて考えると、いっそうの早い着手が大切です。
けして焦る必要はありませんが、少しでも賃貸経営に興味がある方、またはリフォームなどを検討中の方は、頼れる不動産業者に相談しながら、その決断を早めるよう心がけましょう。
5. いずれやるならさらに上がる前に考えるべき
今回は据え置きとなりましたが、そもそもとして、金利も物価も常に変動するものです。このため、賃貸経営を始めるタイミングも大切になりますし、既存オーナーも経営方針や物件の活用方法を常に変動させる必要があります。
■監修者プロフィール
株式会社優益FPオフィス 代表取締役
佐藤 益弘
マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】CFP®/FP技能士(1級)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)/JーFLEC認定アドバイザー(金融経済教育推進機構)
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