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法人化の種類とメリット~なぜ税金対策になるか?~

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2023.03.24

公開日:2022年7月29

不動産賃貸業をおこなっている方もしくはお考えになっている方の中には所得税対策に法人化が良いという話を聞いたことがある人は少なくないのではないでしょうか。

このコラムでは不動産賃貸業における法人化の方法とメリットや手順を説明します。

1.不動産事業の法人化とは

不動産賃貸事業の法人化とは、個人の名義で行っていた不動産賃貸事業等を投資家自ら設立した法人(会社)に移行し、その法人が不動産賃貸事業を行うことを言います。

不動産賃貸事業を法人化する際の種類としては大きく所有型と管理型、その他に分けられます。

1-1.所有型

所有型は一般的に建物の所有権を法人に移行し、法人がその建物を賃借人に貸し出します。

土地も法人所有にすることは可能ですが、法人名義にした時に個人に土地売却益が発生することが多いため、一般的には建物のみを法人名義にすることが多いです。

このスキームの時、法人の売上は建物の賃貸料となり、法人で計上できる各種費用を差し引いた後が法人の利益となります。
なお、土地の権利金や相当の地代を支払わない場合には土地の無償返還に関する届出書を税務署に提出しないと権利金の認定課税が行われますので注意が必要です。

目的

建物を法人に移行することによって、建物賃貸管理や補修修繕業務が全て法人で行われることや法人にすることによって複数の役員就任が可能となることから、
法人の目的に沿った経費の計上や役員報酬の支払いが可能となり、収入(収益)と費用について法人と個人が明確に区別できます。

また、運営上においても法人で運営していれば、法人代表者がもしもの時には他の役員が代わりに運営することとなることから、長期安定した運営が可能となり、賃借人にとっても突然退去させられる心配が少なくなります。

手順

不動産賃貸事業を行う法人を設立し、この法人に賃貸不動産(主に建物)を移行(売却することによって所有者が法人となり、
その法人が不動産を賃借人に貸し出すことによって法人に売上が計上されます。
なお、法人設立時に不動産を現物出資する方法もあります。

1-2.管理型

管理型は建物の管理(建物の清掃、家賃集金、入居者募集など)を法人が担当し、法人は不動産所有者から管理手数料を受け取ります。

この管理手数料が法人の売上となります。

目的

不動産所有権を個人名義から法人名義にする際には時間がかかるため、第一段階として不動産管理の部分だけを法人化し、不動産の所有権については時間をかけて行う場合や、手続きや手間のかかる不動産の日常の管理を法人に移行することにより、不動産所有者である個人の収支は単純に賃貸収入から管理委託コストを差し引いた部分だけとなるため個人の収入管理が容易になることが掲げられます。

手順

不動産管理を行う法人を設立し、その法人と管理委託契約を締結することにより不動産管理を法人に移行することができます。

1-3.その他(サブリース)

サブリース型につきましては、賃貸物件である不動産(土地及び建物)を一括して自ら設立した法人に貸し出し、その法人が賃借人に賃貸物件を貸すという形になります。

目的

土地、建物を含めた不動産を一括で法人に貸し出すことにより、個人の不動産管理事業部分は一括で貸し出した収益のみとなることや、一括で借り上げた法人については、複数の役員等で運営できることから、不動産の管理運営面での安心、安定感が上昇します。

手順

不動産を一括借り上げする不動産法人を設立し、この法人に所有している不動産を一括で貸す契約を締結します。

2.法人化による期待効果

ここでは上記法人化の種類ごとの期待効果(所得税対策、相続税対策、争族回避など)について解説します。

2-1.所有型

所有型においては、所得税対策と相続税対策が期待できます。

所得税対策としては不動産の所有権(建物)が法人にあるため、賃貸借契約の全額が法人の売上に計上されることから、
「管理型」や「サブリース型」よりも売上規模が大きくなり、各種経費等を差し引いた利益額も大きくなります。

法人税の税率は所得税の税率(累進課税)よりは大きくないため節税効果が期待できます。
※ 例えば所得800万円のときの法人税は15%ですが、所得税は23%となっています。

相続税対策としては、法人所有分の不動産については、法人の株式を相続する形になるため、不動産を分割するという手続きが必要なく、いわゆる争族が発生する可能性は低くなります。

これは、法人を相続する際は法人の発行している1株当たりの評価額が同じ株式を相続人が相続するため不動産のように個別具体的な不動産について誰がどの不動産を相続するか検討することがなくなることから、争い(争族)が発生する可能性が低くなります。

また、法人の評価(株式)は不動産だけでなく各種負債も加味して評価されることから、法人の評価が下がれば相続税の節税につながる可能性もあります。


2-2.管理型

管理型においては、所得税対策として有効ではありますが、上記所有型に比べてその効果は少なくなります。

これは、不動産管理のみとなりますと1戸あたりの管理費用(売上)が数千円程度となり、必要なコストを差し引いた残り(利益)がそれほど大きくないため、節税の効果も大きくはなりません。

2-3.その他(サブリース)

サブリースについては、不動産物件について所有権は個人が保有し、その不動産を一括して設立した法人に貸し出すため、
収益のほとんどは個人に入ることから大きな節税効果は期待できません。

また、不動産の所有者が個人のままであるため相続税(争族)対策としても大きな期待は望めません。



法人化の効果が最も高いのは所有型となりますが、手続きに時間がかかるなどの理由から少しでも早く法人化を進めたい場合には「管理型」などの方法を先行することも考えられます。

3.「法人化」検討のポイント

法人化の期待効果について、採用すべき条件について考えてみたいと思います。

3-1.所得税の視点から

個人で不動産賃貸事業を行っている時の税金(所得税)が法人化した時の税率や税額を超えている場合には法人化を検討すべきと考えます。

これは、例えば課税所得が800万円の時の個人事業主の税率は23%であるのに対し、法人化した場合の法人税は15%となり、個人事業主のほうが8%の税金負担が増加することからです。

ただし、法人設立には設立費用や経理業務、法人としての納税手続きなど専門家に依頼して行う費用の発生もありますので、
そのコストを加味しても節税効果等があるのであれば法人化を検討してみても良いと思います。

法人化するメリット・デメリットを下表に簡単に記載しましたので参考にしていただければと思います。



法人化するメリット・デメリットについて主な項目の比較表

法人化するメリット

法人化するデメリット

・個人と法人の税率の差で節税できる

・事業的規模に関係なく節税できる

・損失について10年間繰り越すことができる

・相続時に有利になる場合がある

・物件の売り時を逃さない

・赤字であっても税金がかかる

・法人へ名義変更すると税金がかかる

・法人税申告について手間とコストがかかる

・個人の不動産を法人に容易に移せないことがある

・個人の時に組んだ事業ローンを法人名義に変更できない場合がある

3-2.相続税の視点から

相続人が複数いる場合に不動産を簡単に分けることができない、難しい、争いが発生しそうなことが予測される場合に不動産事業の法人化を検討すべきと考えます。

例えば、不動産を複数人で分割するとなると、単純に分割できない場合が多かったり、②相続人間で誰がどの不動産を相続するのかで争いが生じやすかったり、③相続税の申告期限に間に合わなくなったりすることが考えられます。

相続での争いについては予測が難しいため、相続人が複数いる場合には争いが発生しないような準備は基本的に行っておくべきとか考えます。

また、相続税においても法人化により法人の相続税評価が下げられれば法人税の節税も期待できます。

4.まとめ

大きなポイントとしては、不動産事業の規模などの現況、不動産事業の今後の見通し(拡大もしくは現状維持)など不動産事業についての方向性と法人化する目的(所得税対策なのか?相続税対策なのか?など)を鑑みながら法人化する時期、形態などを検討いただくことが重要となります。

また、一度決定した内容につきましても、(一年ごとなど)定期的な現状分析や課題抽出・整理を行うことが不動産事業を行う上で必要となります。






執筆者プロフィール
【株式会社くらしと家計のサポートセンター 代表取締役 大間 武】

マイアドバイザー®
飲食業をはじめ多業種の財務経理、株式公開予定企業などの経理業務構築、ベンチャーキャピタル投資事業組合運営管理を経て、2002年ファイナンシャル・プランナーとして独立。2005年株式会社くらしと家計のサポートセンター、NPO法人マネー・スプラウト設立。「家計も企業の経理も同じ」という考えを基本に、「家計」「会計」「監査」の3領域を活用した家計相談、会計コンサル、監査関連業務、講師・講演、執筆など幅広く活動。

【保有資格】
・日商簿記 1 級・税理士試験 3 科目合格(簿記、財務諸表、消費税)・CFP®
・1 級ファイナンシャル・プランニング技能士・プロフェッショナルCFO

監修者プロフィール
【株式会社優益FPオフィス 代表取締役 佐藤 益弘】

マイアドバイザー®。Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、

主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。

NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。


【保有資格】

・CFP・FP技能士(1級)・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

・住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)

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