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【最新】原状回復の考え方の変化と費用の目安

最終更新日: 2023.07.28

公開日:2022.06.01

賃貸経営には経費がつきものです。

特に、入居者が退去した後の補修、修理などの「原状回復費」をめぐっては、東京都の条例、いわゆる「東京ルール」の波及が進み、オーナーの負担が増える傾向にあります。

どんな好立地であっても入居者の入替りは必ず継続的に発生します。賃貸経営を安定継続させるためには、この経費をはじめから考慮しておくことが大切です。

<<この記事のポイント>>

・東京ルールの波及により、オーナーの原状回復費における負担が増えている。
・原状回復費は賃貸事業の収益を圧迫する要因の一つとなっている。
・原状回復費をいかに軽減するかが賃貸事業成功の重要な要素となっている。

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オーナーの嘆き

「え!そこも直さなければならないんだ!」
3DKのマンションを貸していたオーナーのある日の驚き。

入居者が退去することになり、すぐに次の借り手を探そうと思っていた矢先、キッチンに組み込まれている食器洗い機が動かないことが判明。
業者に点検を頼んだら「故障しているんで、交換が必要です、新しい食器洗い機に交換すると18万円かかります」といわれる。やむなく「では交換をお願いします」といわざるを得なかった。

こうした思わぬ突然の出費は、賃貸経営をしていると、よく遭遇する事態です。

このケースの場合、食器洗い機の故障は入居者の責任ではないので、当然オーナーが費用を負担することになったわけですが、実は、入居者が退去する際に発生する、壁紙の張り替え、畳の表替え、改装などの経費について、オーナーが負担するのか入居者が負担するのか、トラブルになりやすいのも事実です。


そのようなオーナーと入居者との間のトラブルを減らすために、経費負担のルールを明確にしようとしたのが、2004年10月にスタートした東京都の「賃貸住宅紛争防止条例」です。いわゆる「東京ルール」といわれるものです。


このルールができたことで、オーナーの側の経費負担の範囲が明確になった反面、オーナー負担が増えるケースもあり、あらかじめ、この経費をどう見積もるかが、賃貸事業の収益を考える上で重要なポイントになってきています。

原状回復費用とは

入居者が退去する際に、「原状回復」の義務があると決められています。その「原状回復」とは何か、国土交通省は、ガイドラインで次のように定義しています。


「原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」
(筆者註:善管注意義務違反=善良な管理者の注意義務の違反、の略)


つまり、「原状回復」とは、初めに借りたときの状態に戻すことではなく、入居者が、借りていた部屋で生活をしている間に、故意に、または間違って、あるいは通常ではない使い方によって、入居者の責任で発生した汚れ、傷、破損部分などについて、補修、復旧することをいいます。

退去の際の補修、復旧については、一般的には、以下のような項目があります。
(「東京ルール」の例より)

オーナーの負担

    • 壁に貼ったポスターや絵画の跡
    • 家具の設置によるカーペットのへこみ
    • 日照等による畳やクロスの変色

借り手の負担

    • タバコによる畳の焼け焦げ
    • 引越作業で生じた引っかきキズ
    • 借り手が、結露を放置したために拡大したシミやカビ


それぞれ、どれくらい費用がかかるのか、工事業者の価格表などを見ると、

どの程度のレベルのものを使うのか、材料や仕様によってさまざまですが、

    • ハウスクリーニング  ワンルームもしくは1Kの部屋で2万円から3万円
    • 畳1枚交換       4000円前後から3万円
    • 壁紙交換        1㎡あたり850円から1,500円
    • カーペット交換     1㎡あたり4,500円から8,500円


などとなっています。

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「東京ルール」の普及

1万6,926件

これは、賃貸に関して、1年間に東京都に寄せられた電話、窓口での相談件数です。
このうち、38%が、退去時の敷金の精算で、最も多い相談でした。


(東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」より)

(東京都都市整備局が公表している2016年のデータ)

ガイドラインのダウンロードページ

ガイドラインの前半部分へのリンク(上記円グラフの掲載場所)


実は東京都区部の全世帯数のうち、40%以上は借家に住んでいます。それほど部屋を借りることは当たり前なのに、借り手が退去する際に、補修や復旧をどちらが負担するのか、なかなかオーナーとの間のトラブルが減らないことから、国や東京都ではさまざまなルール作りをしてきました。

1998(平成10)年 3月 国土交通省(旧建設省)
原状回復におけるトラブルとガイドライン(初版)作成
2004(平成16)年 2月 国土交通省ガイドライン改訂
(その後の裁判例等を踏まえた)
2004(平成16)年10月 東京都「賃貸住宅紛争防止条例」いわゆる「東京ルール」
2011(平成23)年 8月 国土交通省ガイドライン再改訂
(原状回復費用等の退去時のトラブルが減少しないため
 ガイドラインの一層の具体化を進めたほか、手順を明確化する)
2017(平成29)年10月 「東京ルール」改正
2020(令和2)年 4月 民法改正

(原状回復についての負担ルールが明文化された)


東京ルールに先駆けてつくられた、国土交通省のガイドラインでは、部屋の汚れ、傷、破損部分などについて、分かりやすく以下の3つに分けています。


1.経年変化

2.通常損耗

3.賃借人の故意・過失など、その他通常の使用を超えるような使用による損耗


このうち、3.についてのみ入居者の責任なので、入居者が補修、復旧の費用を負担する、としています。つまり、入居者が、普通に生活していて、古くなってきて、傷んだり、摩耗したり、という1.や2.のケースは、入居者の責任ではないと考え、直す費用はオーナーの負担となることが明記されています。

ただ、どこまでを通常損耗と考えるのか、2.と3.の間が曖昧なケースもあるため、その場合には、設備の経過年数に応じて、負担割合を考えるなど、一定のルールがガイドラインで示されています。


国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より

ガイドラインのダウンロードページ
ガイドラインへのリンク

「東京ルール」は、この国土交通省のガイドラインを踏まえて、実際の賃貸業務の現場に即して、分かりやすく作られています。
賃貸契約の際、仲介役の宅地建物取引業者は賃貸契約を締結する前に、重要事項説明書の説明と併せて、「東京都紛争防止条例」(東京ルール)の書面を交付し説明する必要がありますが、その説明項目についても具体的にあげています。

さらに、実際の修理、修繕で、オーナーが負担する部分と入居者が負担する部分の区分けについても、修理箇所ごとに図解しながら分かりやすく説明しています。


こうした流れを受けて、2020年の民法改正では、オーナーの責任範囲が明確に示されました。


・経年変化、通常損耗は、入居者の原状回復義務に含まないことが明文化され、入居者の過失による破損などを除き、オーナーの負担となることが民法上でも明確になりました。

・住宅設備の故障の際は、入居者はオーナーに対し、使用できなかった部分の割合に応じて、要求なしに家賃を減額することができるようになりました。


そういった流れの中で、オーナー側が負担しなければならない費用は、大きくなってきていることも確かです。一般的な首都圏の平均値を踏まえながら、試みに負担がどれくらいになるかを計算してみました。


<間取り別のオーナーの費用負担と売り上げに対する比率>

(ローンを組む期間として35年間の全期間での収支を計算)

住まい方 ひとり住まい ファミリータイプ
部屋のタイプ 1K、ワンルーム 2DK、3DK
賃料 8万円 15万円
退去時ごとの オーナー負担の原状回復費(※1) 4万円 7万円
入居期間(※2) 3年 5年
35年賃料 3,360万円 6,300万円
35年更新回数 11.7回 7回
35年の原状回復費総額 (※3) 88.8万円
(4×11.7+20+20+2)
111万円
(7×7+20+20×2+2)
家賃総額に対する 原状回復費総額の割合 2.6% 1.7%

※1 不動産会社複数の試算をもとに設定(ハウスクリーニングと壁紙一部交換程度)

※2 平均入居期間をもとに設定
※3 35年間の原状回復総額については、退去時ごとの修繕費に加えて、35年の間に、給湯器交換(10万円)2回、エアコン交換(10万円)2回、トイレ(修理1万円)2回がありうるとして、計算しています。ファミリータイプの場合はエアコンは2台設置として計算。


この試算は、退去時の原状回復は比較的小規模なもので考え、設備についても、一般的に必要となるといわれている、給湯器、エアコン、トイレの交換、修繕だけを計算に入れているので、実際には、これ以外にも、冒頭でご紹介した「食器洗い機」の交換のように、想定外の不定期な経費が発生する可能性もあります。

あくまでも試算ということで、家賃も当初のまま維持する前提で考えていますので、そのためには年数が経って古くなる、あるいは劣化する部分をメンテナンスしていく経費も実際には別途かかると思います。

ということで、35年間入居者を確保し続けるためには、この試算よりは、もう少し修繕やメンテナンスに費用をかける必要があるかもしれません。


原状回復費を下げるための工夫

では、オーナーが負担する経費を減らすにはどうしたらいいのか。前段の経費の試算の表を見ていただくとわかるように、オーナーの負担に関係する項目は、


・退去の際に、その都度かかる経費

・修繕費全般
・入居期間


の3つです。


まず、その都度かかる経費については、例えば壁紙、床材でも、傷がつきにくいものにするとか、傷ついてもその部分だけ簡単に交換できるものにするなど、修理、補修を簡単に、安い経費でできるように、あらかじめその辺のこともを考えておくことも大切です。

また管理会社に任せるのではなく、オーナー自身が、手間と時間をかけられるなら、工事業者を探して複数の見積もりを取って業者を決める方法もあります。


修繕費全般については、設備の交換が大きな経費になるので、例えば給湯器の交換なら、保証期間がいつまでなのか、修理と交換のどちらが長期的には経費節約になるのかを考えておく、とかエアコンならば、いくつかの業者に見積もりをもらうなど、少しでも安くできる方法を検討することもお勧めします。


また、入居期間も大きなポイントです。入居者の入れ替わりが頻繁だと、退去の際のクリーニングなど回数が多くなるので、入居者に長くいてもらえるよう、物件の魅力を高める工夫もしてみる価値はあります。不具合があったらすぐに手配して直すようにするとか、ハード、ソフト両面で長く住みたい部屋にする努力も大切です。


管理会社との契約の際に、退去後のハウスクリーニング代を一定額で契約するか、かかった実費で清算するか選べるところもありますし、また最近では、いわば補修費の保険のようなサービスとして、ひと月当たり定額の料金を払うと補修費の毎回のオーナー負担が少なくなるサービスなどもあります。

こうしたランニングコストを下げるきめ細かい努力も、賃貸経営を軌道に乗せるためには欠かせないポイントです。

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まとめ

賃貸住宅は、オーナーにとっては賃貸経営というビジネスの対象ですが、入居者にとっては、日々の生活の場、快適な住環境を確保する場になります。

オーナーから見れば、補修、修理などの「原状回復費」は、経費以外の何物でもありませんが、入居者から見れば、月々の家賃を払うに値する快適な住環境を維持するために必要なもの、ということになります。

実は入居者が求めている快適な生活の場を提供することは、オーナーにとっても、悪いことではありません。快適な住環境を用意できれば、入居希望者は後を絶たないでしょうし、そうなれば家賃も下げる必要がなく、空き室になるリスクも少なくなるからです。

オーナーと入居者が、お互いに満足し、双方がウィンウィンの関係になれれば、賃貸経営は黙っていても安定してくるはずです。
そういう意味で、補修、修理などの「原状回復費」の費用支出は、避けるべきものではなく、快適な住環境を保証し、ひいては賃貸経営の安定にもつながる大事な経費と考えてみてはいかがでしょうか。

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執筆者プロフィール
「オフィス いけだ」主宰 池田 龍也

マイアドバイザー®。ライフワークは「夢と笑顔あふれるシニアライフ」を実現すること。シニア世代がイキイキと暮らすにはどうしらいいのか、をテーマにファイナンシャルプランナーとして活動。
1981年 慶応大学経済学部卒業、2006年 CFP資格を取得、2013年 桜美林大学大学院老年学研究科修士課程修了、2014年 開業。
大学卒業後、放送記者として報道の現場で内外の経済情勢、最新動向について記事を多数執筆。開業後は独立系FPとして、おもにシニア層を対象にセミナー、相談などを通じて情報提供に努めている。

【保有資格】
・ファイナンシャルプランナー(CFP®)
監修者プロフィール
【株式会社優益FPオフィス 代表取締役 佐藤 益弘】

マイアドバイザー®。Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、

主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。

NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。


【保有資格】

・CFP・FP技能士(1級)・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

・住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)

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