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これだけは押さえておこう!賃貸における注意点とポイント

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2022.11.08

最終更新日:2022年7月12

この記事では土地の利用方法の一つとして、「賃貸」の活用方法について説明します。
土地そのものを貸すことばかりではなく、土地に自分で賃貸物件を建築して貸すことに関しても説明します。

1.土地の利用方法の一つ「賃貸」とは

遊休地の土地利用は大きく分けて、自己利用、売却、賃貸の3つに分類されます。そのうちの賃貸は「土地を貸し、地代収入を得る方法」、「土地に収益物件を建築して家賃収入を得る方法」の2つに分かれます。

土地活用で収入を得るためには、投資額・自己資金・借入額・ランニングコスト・収支とその変動もさることながら、相続時にかかる税金なども含めて、総合的に検討することが必要です。

また、土地に借入で収益物件を建設してレバレッジ効果を出すことも可能です。しかし注意しなければならないのは金利変動のリスク。借入が変動金利のローンであれば、金利が上昇して当初の効果が減少することも。想定した利益を減らすことは、ぜひ回避したいところです。

次の表で土地を貸す場合の利用法を大まかに示しました。場所によってこのとおりには行かないケースも有るでしょうが、ご参考にしてください。

2.事業形態の選択肢

土地で収益を得る方法は、土地そのものを貸すケースと、土地に建物を建てて賃料を得るケースに分かれます。

さらに土地そのものを貸す場合は、駐車場や資材置き場などで、建物を建築しないで賃料を得るケースと、土地賃借人が建物を所有する目的で借り、地主が地代を得るケースに分けられます。

2-1.土地そのものを貸す

建物を所有しない目的で土地を貸す

土地の賃貸でも、建物の所有を目的としない場合は借地借家法の適用は受けませんので、地主側からの更新を拒絶する時は借地借家法に定める正当事由は必要としません。
ただし、農業者等に農地等として賃貸する場合は、原則として農地法により農業委員会の許可、農地以外の用途として賃貸する場合は都道府県知事等の許可が必要です。

駐車場として利用者に貸す場合、商店街や住宅地では駐車場の需要は一定程度あります。土地が自宅の近隣で管理可能なら月極駐車場とし提供することも可能です。
一方、近隣でも商店街などで時間貸し駐車場として提供する場合や、遠隔地で月極め及び時間貸し駐車場として提供する場合は、個人で管理することはかなり面倒です。
その場合は駐車場運営会社との一括契約で、運営も業者に任せるというのが現実的になるでしょう。契約形態や収益の配分、機器類の設備資金の負担など、いろいろな方法があります。適切な方法を業者と交渉しましょう。


また、土地が農地法上の農地に該当し、自分で営農せず、他の農業者に貸す場合は農業委員会の許可が必要です。
さらに契約を解除する場合は都道府県知事の許可が必要になります。


土地が市街化調整区域の場合は、住宅の建築が規制され、またそのような地域は郊外となることが多いので、駐車場などの利用も困難な場合が多く、資材置き場等として貸すなど選択肢は少なくなるかもしれません。
最近は、太陽光発電事業者へ賃貸することも考えられます。この場合は契約期間が長期にわたるケースが多く、今後の土地利用も視野に入れることが必要です。

建物を所有する目的で土地を貸す

建物の所有を目的とする土地の賃貸は借地借家法の適用を受け、地主の一方的な契約の解除には大きな制約を受けます。
建物の所有を目的とする賃貸契約は、普通借地権と定期借地権に分かれます。

    • 普通借地権
      (ここでは、借地借家法の新法に沿って説明します)
      普通借地権の契約で存続期間は30年以上とされ、更新期間は10年以上(最初の更新では20年以上)とされます。
      借地権設定者(地主)が更新を拒絶するためには、正当事由が必要になります。現実的には建物が存在する限り地主側からの一方的な意向では借地権の終了は困難です。
      更新を拒絶するときでも、借地権者から請求があれば、土地の上の建物を買取する必要が有ります。

      次に借地権契約の特殊な形態として地上権についてご説明します。

    • 地上権
      土地を利用する権利として、借地権の他に民法では地上権・永小作権・地役権が物権として規定されています。
      その中でも、地上権の例はそれほど多くありませんが市街地でも見かけます。地上権で建物の所有を目的とする場合は借地借家法の適用を受けます。
      地上権には借地権と次のような違いがあります。

      ⅰ)地上権は地主の許可なく転売や転貸できる。
      ⅱ)借地権も登記は可能ですが、地上権の場合、第三者に権利を主張するためには登記が必要。地主はその登記に協力する義務がある。
      ⅲ)地上権そのものに地主の許可なく抵当権を設定することができる。

      分譲マンションで、各戸の所有者が頻繁に変わる場合、地主の同意も不要なため、地上権を設定しているケースも見受けられます。
      また、借地権者は地上権を担保に提供できるので住宅ローンにも都合が良いです。
    • 一般定期借地権
      存続期間を50年以上として、契約の更新をしない、借地権者からの建物の買い取り請求をしない、という特約を定めることができます。
      なおこの場合は、契約は公正証書で行う必要があります。
    • 事業用定期借地権
      居住部分が無い事業用建物の所有を目的とする場合は、存続期間を10年以上50年未満として定期借地権契約を結ぶことが可能です。
      こちらも同様に公正証書が必須です。
    • 建物譲渡特約付借地権
      存続期間を30年以上、契約は更新しないが建物は地主が買い取る、と契約することも可能です。公正証書は必須ではありません。


2-2.自分で賃貸住宅を建てて、部屋を貸す

次に、自分の土地に賃貸住宅を建築して貸し出す場合についてご説明します。

    • 普通建物賃貸借と定期建物賃貸借
      建物賃貸借は一時使用の場合を除いて、更新期間を定める場合は1年以上とされています。
      一般に更新期間を2年とさだめている例が多いです。家主側から更新拒絶をする場合は、借地権と同様に正当な事由が必要とされています。

      契約時に、更新をないことを定める定期建物賃貸借契約を結ぶことも可能です。この場合は土地と同様に公正証書による契約が必要です。
      将来の一定の時期に、賃貸借契約を終了させる必要がある場合には、定期建物賃貸借契約も選択肢になります。
    • 建物賃貸借の手法
      賃貸人の募集と賃貸契約の実務は、一般には不動産会社に依頼する場合が多いです。そのほかに日常の管理は自分で行うことも可能です。
      しかし物件が自宅の遠隔地にある、または自分が忙しく自由に時間を調整できない場合などは、管理会社に委託することも可能です。

      賃貸契約の手法でサブリースというものがあります。

    • サブリース
      サブリースとは、賃貸事業者が建物をオーナーから一括で借り上げ、借り上げた部屋を賃借人に転貸するというものです。
      一般には一定期間の家賃保証を行う例が多いですが、期間内で家賃の減額もないとは言えません。契約時には、契約書と事業者をしっかりと確認する必要があります。なお、オーナーと事業者の契約関係は賃貸借契約として借地借家法の適用を受けますので、オーナーからは正当事由がなければ契約の解除は困難となります。

3.賃貸事業を安定継続させるための主なポイント

3-1.安定継続のためには家族間の合意形成が必要

一時的に駐車場として貸し出すようなことを除いて、不動産経営は長期にわたる事業です。
状況によっては世代交代も見据え、親ばかりではなく子供たちのライフプランを視野に入れて日常から話し合い、将来の方向性について大筋の合意形成をしておくことも大切です。


不動産は相続税評価額が実勢価格より低くなるため、節税対策としても有効です。
しかし、金融商品のようにすぐに現金化して分割することは困難です。相続対策のつもりが、遺産分割協議時に争うようなことになっては、本末転倒です。

3-2.賃貸事業のリスク

賃料がきちんと入らないリスクもありますが、それ以外のリスクもあります。

まず、貸す相手方をしっかりと確認することが必要です。資材置き場等の場合は土壌汚染の可能性、賃貸住宅の場合は入居者の属性、特に相手方が反社会的勢力に関係していた場合は、最低でも法的には契約を解除できる旨を契約書に記載しておくべきです。

賃貸住宅では、不意の事故に備え、建物に火災保険を付けることはもちろんですが、入居者には個人賠償特約、借家人賠償特約の付いた火災保険の加入を義務付けておくべきでしょう。
また、家賃の滞納も考えられます。入居者に保証人を求めることもありますが、保証人もすんなりと支払いに応じてくれるとは限りません。
その場合に備え、家賃保証会社との契約をすることも選択肢に入ります。

災害等で賃貸住宅が損壊しても、家主は修繕の義務を負います。建物の火災保険は当然として、建物の管理不備等で他者に損害を与えることも想定して、施設賠償責任保険を契約しておくことが望ましいです。

さらに、賃貸経営は長期にわたります。建物の老朽化による家賃の下落も想定しておくべきでしょう。また建物の建設にローンを使用している場合、そのローンが変動金利であれば、金利の上昇も想定しておくべきです。

3-3.ランニングコストを含めた事業計画を

家賃収入を得るためのコストは、物件の取得費だけではありません。必ず必要なものとして他に主に次のようなものが考えられます。

    • 固定資産税、都市計画税
    • 損害保険料
    • 修繕費
    • 原状回復費用
    • 管理費 他


貸室の損傷も、経年劣化に伴うものは家主の負担です。それらを踏まえて、賃貸事業の実質利回りを考えましょう。そして将来的に発生する可能性がある原状回復費用を見積もっておくことが必要です。さらに長期的な修繕計画に沿った修繕積立金も用意し、利回り計算の諸費用として考えることが望ましいでしょう。

実質利回り=(年間家賃収入-諸費用)/物件価額

一般にこの利回りは4%〜6%程度が標準的と言われています。
預金利息よりもかなり高いように見えますが、賃貸事業には、前述のリスクが伴います。
この程度の収益性は確保する必要がありそうです。

この利回りは、実際の現金を伴う収支を基準として、税務上の費用となる建物の減価償却費は含んでいません。
しかし、建物が老朽化すると資産価値を維持するためにも将来的には大規模な修繕が必要となります。そのための修繕積立金は準備しておくことが望ましいでしょう。

4.まとめ

賃貸事業には契約・税務・不動産管理など面倒な要素が多く存在します。

経験のない方、あるいは、普段は別に仕事を持っており、事業に割り当てる時間が限られている、このような場合は、一連のノウハウを持つ経験豊富なパートナーを持つことも大事でしょう。

そして、家族間の合意、子供たちが賃貸事業を引き継いでくれるのか?賃貸事業につき、日常から家族で話し合っておくことも必要です。

執筆者プロフィール
【NPO法人北海道未来ネット 代表理事 有田 宏】

マイアドバイザー®。金融機関勤務を経てFPに、2005年"北海道未来ネット"設立。2021年より代表理事。
主に、金融資産、住宅ローン、相続などについて講演や執筆・相談などで活動中。趣味は音楽鑑賞、主にクラシック・ジャズ。クラシックはどちらかと言えば古典派。
好きな事、学校の授業でいえば、数学、物理、地学、地理、歴史関係に興味が有ります。

【保有資格】
・CFP®
・1級FP技能士
監修者プロフィール
【株式会社優益FPオフィス 代表取締役 佐藤 益弘 マイアドバイザー®

株式会社優益FPオフィス 代表取締役 佐藤 益弘 マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®/マイアドバイザー®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。

【保有資格】
・CFP®・FP技能士(1級)・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
・住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)

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