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災害リスクに備えて押さえておくべき対策のポイント

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2022.11.09

前回、前々回と「賃貸経営のリスクとその対策の考え方金利変動リスク(融資環境の変化)」をテーマに、リスク(=不確定要素)に対する基本的な発想や対処方法、特に影響の高い融資環境について見ていきました。

今回は、ライフプランFP®としての見地から、近年多発化&激甚化している「自然災害」の対応について考えていこうと思います。



参考URL
>>「賃貸経営のリスクとその対策の考え方 ~金利変動リスク(融資環境の変化)を例に考える~」
>>「ウィズコロナの不動産投資ローン/融資環境の変化への対処」

そもそも、何が問題なのか?

土地活用(≒賃貸経営)の災害対策を考えるうえで、大事な視点が2点あります。

1点目は、賃貸物件が倒壊や毀損してしまうことで、賃貸経営が予定通りにできなくなってしまうことです。
賃貸物件は、オーナーから見れば、長期安定的な収入の源泉であり、テナントである借家人から見れば、生活の場(=生活の中心)です。被災した場合、その軸(=基準)を災害により突然失うことになります。

「何をどうしたら良いか?」判断ができなくなってしまうのは当然でしょう。そして、「今後、どのように対応していけば良いか?」わからず、精神的な面での不安やダメージは計り知れません。

2点目は、災害によって一瞬にして何千万円、何百万円という資産価値があった保有資産を一瞬で失ったり、価値が減少したりしてしまうことです。

通常、賃貸経営では投資効率や節税の観点から、借入(=ローン)を起こしているケースがほとんどです。災害対策を講じていなければ、大きな借金が残ることになってしまいます。被災後もテナントの収入状況やライフラインの復旧の遅れなど災害に伴う影響も含め、今後の賃貸経営(収支バランス)にも大きな影響を受けることとなります。

災害への備え・・・基本的な考え方

リスク対応を考える際に私が最も怖いと思えるのは、自分自身で制御できなくなることです。

そういう意味では、災害は土地活用(≒賃貸経営)をする際に考えられる「究極かつ最大のリスク」だと言えます。

以前、リスク対応の基本として4つの対処法がある事をお伝えしました。

例えば、災害を例にすると、以下の通りになります。

回避=「災害の発生するエリアに物件を持たない」など
保有=「被災することをありのまま受け入れる」など
移転=「火災保険などに加入する」など
損失制御=「事前に災害対策を行い、被害の程度を抑える」など

後述しますが、日本では何かしらの災害に遭う可能性があるので「回避」による対処は難しくなります。
また、ありのままに受け入れる「保有」も、オーナーの責任としてあってはいけないことです。
そうすると、具体的な対応方法としては、「移転(保険)」「損失制御」の組み合わせで対応することとなります。


参考URL
>>「賃貸経営のリスクとその対策の考え方 ~金利変動リスク(融資環境の変化)を例に考える~」



現状は・・・日本は災害大国?!


まず、現状を認識しましょう。

海に囲まれ自然環境に恵まれている日本ですが、地理的、地形的、気象的諸条件から、地震や津波に加え、台風、豪雨、豪雪等の自然災害も受けやすい国土になっています。

例えば、日本は、火山活動が活発な環太平洋火山帯に位置し、4枚のプレートの上に位置している関係で、世界の活火山の約7%が存在し、世界で起こっている地震のおよそ1割にあたる地震が発生しています。



出典:内閣府「防災パンフレット」より



また、日本南東の海上では台風の卵である熱帯低気圧が発生しやすく、国土の7割が山地で、河川は急勾配で流れも速いので、水害=氾濫が起きやすい地形です



●各国と日本の河川縦断勾配の比較




●洪水の継続時間 と 単位流域面積あたりの洪水流量

出典:国土交通省「河川データブック2021」




近年は、気候変動の影響もあり、地震、津波、火山噴火、台風、洪水、土砂災害、雪害など、さまざまな自然災害が発生し、被害も大きくなっています。

対応策を考えるうえでのハードルは?

3点ほどポイントがあるでしょう。

1. 地震、台風や洪水など水害、崖など土砂災害などさまざまな災害があり、災害により適切な対応が異なること
2. 災害自体がいつ起きるか?明確にはわからないということ
3. そもそも、どれくらいの被害を受けるのか?個々人により違い、画一的な対応が取れないということ

以上の点から、災害対応に関しては、個々人が置かれている環境により対応が異なる事を認識する必要があります。物件の仕様も違う以上、お隣と同じことをしているから、大丈夫・・・と言うわけにはいきません。

私たちは都合の悪い情報に関しては、「自分に無関係だ」と過小評価してしまう傾向があります。実際に、具体的な情報や知識、優先順位を決めるという決断ができないと明確な対応ができず、結果として、対策自体を躊躇したり、遅らせたりしてしまうことになってしまいます。

このことは、「日常生活における防災に関する意識や活動についての調査結果」(内閣府防災担当:2016年5月)を見ても想定できます。

災害が発生する可能性が高いと思っている人は6割以上もいるにも関わらず、6割以上の人がほとんど防災の取り組みをしていないと回答しているからです。



「日常生活における防災に関する意識や活動についての調査結果」(内閣府防災担当:2016年5月)



このデータは2016年のモノなので、近年の多発化&激甚化している「自然災害」を加味していないでしょうから、もし、今、調査すれば、状況は変わるかもしれません。災害はいつ起きるか?わからないため、いつまでに対策をすれば良いか? そもそもその対策が本当に有効なのか?明確に言えないという点が難点です。

実際に、想定される災害は1つだけということはないでしょう。複数の災害に被災する可能性もあり、場合によっては同時に被災する可能性すらあります。ですから、優先順位の高い個別の災害対策が決められないと、飲食料の備蓄など複数の災害に対応できる事柄しか行えないことになります。

災害を予測するために必要なツール 『ハザードマップ』

自分自身が被災しそうな災害=問題を認識する方法として使えるツールが「ハザードマップ」です。

ハザードマップとは、被災が想定されるエリアや避難場所の位置等が表示された地図で、自然災害による被害の軽減や防災対策に使用するために作られた地図です。

洪水・内水、土砂災害、地震など災害ごとに分けられており、近年の防災意識の高まりや東日本大震災や西日本豪雨などでもその有効性は認識されています。

確認方法は、お住まいの市区町村から配布された紙ベースの地図か、もしくはインターネットで国土交通省「ハザードマップポータルサイト」( https://disaportal.gsi.go.jp/ )で確認することができます。

例えば、洪水用ハザードマップでは、河川の周辺地域など浸水する恐れのある区域と想定される浸水深(浸水レベル)が、色の濃淡で分けて表示されています。濃い色ほど被害度合い(想定)も高いと言うことです。

注意点としては、地図が小さすぎて見づらかったり、通常、四角いドットで被害予測が示されているので、微妙な位置だと判別がつきづらかったりすることです。

また、ハザードマップは一定の条件で自然災害が起こったケースを基に作成されています。ですから、目安として使い、被害予測が微妙な場合、厳しい方だと認識したうえで災害対策を検討すると良いでしょう。

ハザードマップを見ると、「保有物件がどのような災害に遭いやすいエリアにあるのか?」「どれくらいの被害に遭いそうなのか?」がわかり、被害の程度か想定できます。専門家に確認すれば、被害額も想定できるでしょう。このように目的が明確化すれば、次にどのようなことすれば良いか?具体的に取るべき行動を想定することができます。

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そもそも災害対策の目的は...

1.「命」を守ること
2.「生活」を守ること
3.「資産価値」を守る


災害対策の主な目的としては上記の3つになります。

まず、何と言っても、お金よりも生命や家族の安全確保が大切です。そのためには、災害発生後の72時間、1週間、1ヶ月の過ごし方(=生活)を想定しておく必要があります。

これは自分自身だけでなく、テナントである入居者様についても配慮できると、復旧後の信頼関係が増すこととなり、賃貸経営がやりやすくなるでしょう。東日本大震災などを見てもわかるように大規模な自然災害の場合、経験則上、災害発生直後から一定期間は資本主義が通じない、いわゆる「災害ユートピア」という互助社会が誕生します。忙しい現代社会でなかなか難しいかもしれませんが、そのためにも日頃から自治会や管理組合などのご近所付き合いも大切にしましょう。

そのうえで、この「①命」「②生活」「③資産価値」の3つを守るために、防災上の技術的な条件を満たした住宅に住むことがとても大切なことだとわかります。

防災対策から見てしっかりとした住宅に住めれば、「①命」を守りやすくなりますし、現在の防災計画(特に都市部)では、在宅避難を前提に計画されていることもあるので、「②生活」を守ることにもつながります。仮に被災後に土地や建物が毀損しても、生活に支障がない最低限の損失で済むならば、「③資産価値」を守ることにもなります。


そういう意味からも、住宅を定期的に保守(修繕や補強)していくことが必要ですが、そのためには一定の費用がかかります。住宅という資産価値を究極的に守るには、建て替えることを前提に必要な費用を定期的に把握し、その不足額を積み立てたり保険に加入したりして用意し、不足額が生じる場合は必要な融資を受けやすい状況にしておくことが望まれます。


時間軸から災害対策を考えると...

災害発生前に行う「予防(事前対応)」、発生直後に行う避難生活時の「応急(事後対応)」、生活再建に向けて行う「復旧(事後対応)」の3つの局面があります。

ただ、「予防(事前対応)」については、災害対策という点ではその発生原因を防ぐことはできませんから、災害を受け入れることがスタートになります。実際に「災害がいつ起こるか?わからない」という特性がある以上、意識的にかつ計画的に対応しないと災害対策を実行するのはかなり難しいのが現実です。

台風のような進行性の災害の場合は、多少は避難準備などの時間的な余裕を持てるので、対応は比較的容易です。それでも2019年の台風15号や19号の時のように早め早めに対応しておかないと、生活に支障が出る可能性があります。

地震のような突発性の災害の場合は、準備するための時間的な余裕はありませんから、意識的かつ計画的に事前対応する必要があるため、「仮に、いつ起こったら...」という想定をして進める必要があります。

例えば、建物は経年劣化により、徐々に耐久力も落ち、性能も陳腐化しますので、建物補強や補修などの防災計画を定期的な修繕計画に加味し、対応されることをお勧めします。補助金など公的サポートの有無も確認し、該当するモノがあれば、実施時期を調整し、自己負担額も減らすこともできるでしょう。


参考URL
>>アパートやマンションの建て替えを判断するポイントや注意点を徹底解説!」



また、地震に対して家具の転倒防止などしたり、水害に対して土嚢(どのう)やブルーシートを準備したり、自分でできる防災対応については、 "できるだけ楽しく"行いましょう。
例えば、ただ単に防災訓練に参加するだけでなく、情報収集という意味で参加してはどうでしょうか? 最近は流行のアウトドアや必要性の高い介護サポートは、防災と親和性が高いと言われていますから、趣味と実益を兼ねて被災時に活かせる知識や情報を得ることも可能です。

食料や飲料を計画的に備蓄するにしても、災害用のモノだけでなく、期限の近いモノから消費し入れ替える「ローリングストック法」を活かせば、日々の食生活で利用する食材なども活用できるでしょう。


まとめ

災害は土地活用(≒賃貸経営)をする際に考えられる「究極かつ最大のリスク」だと言えます。災害への対策・対応に関しては、個々人が置かれている環境により異なりますので、まずはハザードマップなどから、ご自身のお住まいや、所有している土地の地域は災害が発生する可能性が高いのかなど現状の可能性をしっかりと把握することが大切でしょう。

住宅(≒賃貸物件)を所有されている場合、「災害の影響度(=被害度合)」も築年数など建物の状況や被災した際の投資や財務の状況によって異なります。

住宅はそこに住まう方にとって「命」「生活」を守る大切な基盤ですので、災害発生時に備えて日頃から定期的な修繕や点検など行うようにし、「資産価値」を維持できるよう心がけましょう。
そのために、管理会社などの専門家にご所有の物件の状況を定期的に検証してもらうことも大切です。



(参考)各種情報サイト


・気象警報・注意報(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/warning.html

・記録的短時間大雨情報(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/kirokuame.html


・土砂災害警戒情報・土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/doshakeikai.html


・川の防災情報(国土交通省)
https://www.river.go.jp/kawabou/ipTopGaikyo.do


・洪水警報の危険度分布(気象庁)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/riskmap_flood.html


・国土交通省ハザードマップポータルサイト(国土交通省)
https://disaportal.gsi.go.jp/


・避難勧告等の判断・伝達(内閣府)
http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinankankoku/index.html


・市町村のための水害対応の手引き(内閣府)
http://www.bousai.go.jp/taisaku/chihogyoumukeizoku/index.html


・災害・避難カード事例集(内閣府)
http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinankankoku/saigai_jireisyu.html


・水害・地震から我が家を守る 保険・共済加入のすすめ(内閣府)
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/hokenkyousai/index.html


・みんなでつくる地区防災計画(内閣府)
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/chikubousai/index.html


・風水害対策(内閣府)
http://www.bousai.go.jp/fusuigai/index.html


・防災・危機管理e-カレッジ(消防庁)
https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/


出所:内閣府「水害・土砂災害から家族と地域を守るには」から抜粋

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監修者プロフィール
株式会社優益FPオフィス 代表取締役 佐藤 益弘

Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、

主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。

NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。


【保有資格】

・CFP・FP技能士(1級)・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

・住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)

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