
アパートやマンションの建て替えを判断するポイントや注意点を徹底解説!
最終更新日:2021年6月7日
アパートやマンションなどの賃貸建物を長年保有していると、「いつかは必ず建て替える時期はくるものの、いつまでリフォームでつないでいくべきなのか」といったことで、悩んだことはないでしょうか?
そういった時に、どのような点に注意して検討するべきなのか、本記事では、賃貸建物の建て替え時期を判断するポイントや、注意点をご紹介します。本記事を読むことにより、漠然とした不安を少しでも解消することができれば幸いです。
この記事のポイント
- 家賃や修繕費用、所得税など建て替えせずに運用し続けた場合、どのように経営状況が推移するかを予測したうえで、建て替えを検討することが大切
- 老朽化した賃貸建物は災害時のリスクが高くなってしまう点に注意
- 賃貸建物の建て替えにより相続税の節税効果を期待できるのに加え、相続人が経営しやすくなるといったメリットが生まれる
賃貸建物の建て替えを検討する5つのポイント
老朽化した賃貸建物の建て替え時期を判断するには、以下のような観点で検討することがポイントです。
- 今後の家賃収入と修繕費用などの経費を予測
- 今後の所得税の推移を予測
- 貸主責任を全うするうえでの今後のリスクを検証
- 円満に資産承継するうえでの課題を検証
- 入居者様の転居など、建て替えをすることとなった場合のリスクを検証
それぞれ解説します。
今後の家賃収入と修繕費用などの経費を予測
まずは今後の家賃収入や修繕費用などの経費を予測して建て替えを検討しましょう。
一般的に老朽化した賃貸建物は募集家賃の減少や、入居状況の悪化が予想されます。また、築年数の経過により、修繕が必要な箇所も多くなり、修繕費用も積み重なってきます。
それら、収益面の悪化と修繕などの必要経費の上昇を見込んで、想定している可処分所得が今後も実現できるのか予測しましょう。実現できない場合、新築物件に建て替えることで賃貸経営の状況が改善できるかどうかが、大きなポイントのひとつです。
【今後の所得税の推移を予測】
アパート経営・マンション経営では、確定申告時に建物の取得金額を全額まとめて必要経費とするのではなく、その建物の法定耐用年数に応じて分割して計上していきます。必要経費として計上することで、不動産所得を減らすことができ、所得税の節税につながります。
法定耐用年数は建物の構造により違い、例えば木造の場合は22年、RC造は47年と定められているので、その期間内は減価償却することができます。
しかし、期間経過後は減価償却分を毎年の経費から差し引くことができなくなり、所得税が急激に増加する可能性も...。
新しく建て替えることで、再び減価償却を利用できるようになるため、この点も含めて計算しておくべきだといえます。
また、複数棟の賃貸建物を所有している場合は、同時期に複数棟を建て替えると、減価償却期間が終了するタイミングも重なってしまうので、将来の収支計画を立てたうえで、建て替えるタイミングを調整することも必要です。
貸主責任を全うするうえでの今後のリスクを検証
建物が老朽化したままだと、台風や地震などの災害時、建物が倒壊したり、一部破損したりして通行人や近隣の住民に被害を与えてしまう可能性があります。
こうしたケースでは、所有者が適切な管理をしていたかどうかが問われ、老朽化した建物をそのまま放置していたと判断された場合、損害賠償請求される可能性もあります。特に建築基準法が改正された昭和56年(1981年)6月1日以降に建築された建物については注意が必要です。
この場合、改正後の建築基準法が適用され、新耐震基準を満たさないと違法建築となるため、災害時の倒壊や損傷により被害を出してしまった場合、所有者責任が発生します。
このようなリスクも鑑みて、耐震補強工事をおこなうべきなのか、建て替えた方がいいのか費用対効果を検証したうえで検討することが大切です。
円満に資産承継するうえでの課題を検証
建て替えは、相続対策としても有効であり、将来の資産承継を見越して建て替えの時期を決めるのもひとつのポイントです。「継続的な収入源が欲しい」「現金が欲しい」など、複数の相続人で意見が相違するケースも少なくありません。
資産を受け継ぐ相続人にとって新築物件に建て替えられた状態の方がスムーズに賃貸経営を引き継げるという点もメリットだといえるでしょう。
建て替えは、相続対策にどう有効なのか
相続対策におけるアパートやマンションの建て替えのメリットとしてはこれらの点が挙げられます。
- 相続税対策につながる
- 新築状態の方が入居率、募集家賃も高く見込める
- メンテナンスをすぐにしなくてもいい
まず、アパートやマンションなどの賃貸建物は相続税評価額や固定資産税評価額が現金より低く評価されるため、相続税額を節税することができ、遺産分割対策含め、相続対策につなげられます。
また、賃貸経営を受け継ぐ側としても、老朽化したアパートやマンションより新築状態の方が入居率や募集家賃を高くすることができ、比較的スムーズに経営できるでしょう。相続人は賃貸経営について経験が浅いことが多く、できるだけ不安のない状態で始められるという点は大きなメリットだといえます。
そのためにも、ご家族に賃貸経営の状況を逐一共有しておくことも効果的でしょう。
順風な賃貸経営を継続するうえでは効率的なメンテナンスも重要なポイントとなりますが、建て替えをすることでしばらくは大規模なリフォームやリノベーションなどのメンテナンスをしなくてもよいといったメリットも生まれます。また、昔と比べ、現在は高耐久な資材も開発されているので、長い目で見ても、メンテナンスコストも抑えられます。
入居者様の転居など、建て替えをすることとなった場合のリスクを検証
建て替えをおこなう際には、現入居者との立ち退き交渉をしなければなりません。日本の法律では入居者側の権利が強く保護されており、立ち退き交渉は骨が折れるものです。
また、不動産会社では弁護士法の規制により、立ち退き交渉でできる範囲は限られています。立退料を支払うことで円滑に退去してくれればよいですが、場合によっては裁判に発展してしまうといった可能性も。
余分な立退料を支払わずに手続きを進めるために、普段から入居者との関係を密にしておくことも大切です。また、現入居者の年齢などによっては、転居先に制限が生じることもあり得ます。建て替えを検討する際はこうした点も検証しておくことが大切です。
建て替え時はトレンドを取り込むことも意識してみよう
老朽化したアパートやマンションを建て替える際には、トレンドを取り入れることで競合物件に対して差別化することも検討しましょう。具体的には、以下のようなものです。
- 在宅リモートワークの方に向けたワークスペース
- デュアルライフ
在宅リモートワークの方に向けたワークスペース
新型コロナウイルスの影響により在宅リモートワークの方が増えました。こうした方に向けて、自宅で快適に仕事ができるように賃貸物件の居室内にワークスペースの需要が増え、実際に導入する物件も増えてきています。
ワークスペース導入については、建て替え時だけでなく、リフォームやリノベーションでの対応も検討し、賃貸物件としての価値を上げることも必要です。
デュアルライフ
都心で働きつつ、週末は自然豊かなセカンドハウスで暮らすといったデュアルライフも最近のトレンドです。
例えば、アパート建て替え時にデュアルライフを検討されている方に向けて、都心であれば必要最低限の生活ができるワンルームマンション、地方であればセカンドハウスとして趣味を満喫できたり、リフレッシュできる空間を演出する間取りを検討したりするといったことが考えられます。
また、現在の新型コロナウイルス感染症拡大防止の影響もあり、移動や人との接触を避けられるオンライン内見やIT重説が普及し始めています。
ネット環境が整っていれば、自宅や外出先から物件見学や重要事項説明を受けることができるため、このようなニーズに対応していくことも重要視されています。
まとめ
賃貸建物の建て替えの判断ポイントや注意点などをお伝えしました。
築年数の経過により発生するリフォーム費用や、減価償却がなくなることで上昇する所得税、空室率や家賃下落の入居・管理状況などによって想定している可処分所得から、かけ離れてしまっている場合は、築年数に限らず建て替えを検討した方がよい可能性があります。
少しでも気になる点があれば、まずは専門家に相談することが大切です。
また、次の世代への資産承継においても、古い状態の建物より新築の状態の建物の方が、受け継ぐ側にとって喜ばれるケースが大半です。円満な資産承継・ライフプランの実現のためにも、ご家族内で早いうちに話し合っておきましょう。
大東建託では、土地診断を含めた建て替えのシミュレーションをはじめ、建て替え後の相続税シミュレーションや、ライフプラン診断など無料でおこなっております。また、専門の税理士とのオンライン相談をおこなうことも可能です。ご興味がある方は、こちらまでお気軽にお問合せください。
1983年福岡生まれ。上海復旦大学卒。
商社、保育園、福祉施設での勤務を経て、現在は不動産の記事を中心に手がけるライター兼不動産経営者。
実際に店舗・住宅を提供している立場から、不動産に関する記事を執筆中。趣味はフットサル、旅行、読書。
最新コラムの更新情報以外にも、少しでも皆様のお役に立つ
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