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【事例あり】土地共有・通行地役権のトラブルと回避方法

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2022.12.16

更新日:2022年12月8日


権利関係者間の意見が合わないことによって所有する土地の活用が困難となってしまうなど、土地の権利関係に関わるトラブルは少なくありません。そうしたトラブルを回避するためには、権利関係についての理解を深め、将来的に発生し得るリスクがあれば、時間をかけて備えておくことが大切です。今回は、「共有」・「通行地役権」をめぐるトラブル事例とその対策について、ご紹介します。

この記事のポイント
  • 「不動産を共有すること」、および「地役権」とは
  • 【事例】「共有」は、後々問題になる可能性が高い
  • 暗黙の了解になりがちな地役権の設定は、関係者間での合意や、明文化しておくことが大切

1.共有および通行地役権のおさらい

共有および通行地役権の概要についてご説明します。

1-1.共有とは?

「共有」とは、ひとつのモノを複数人で所有する状態を言います。共有者はそれぞれが所有権の割合、共有持分を持ち、個々の共有持分を対象とする行為は、原則として各共有者が単独で行えます。しかし、共有物全体を対象とする行為については、単独で行えず、他の共有者の同意が必要な場合があります。

1-2.通行地役権とは


地役権とは、自分の土地のために、他人の土地を利用できる権利を言います。そのうち通行という目的のために、他人の土地に設定する地役権を「通行地役権」と言い、「通行地役権」の設定は勝手に行えません。隣地所有者の同意を得れば、登記も可能です。

共有および通行地役権について、より詳しい内容については、下記記事をご参照ください。

>リンク:「土地活用のトラブル回避のために、知っておきたい土地の権利関係」

2.共有名義をめぐるトラブル

■事例概要

両親が他界し、実家を相続することになった兄弟。どちらも妻子とともに遠方の持ち家に住んでいます。相続財産の大半は自宅が占めています。


【兄の考え】
親が残してくれた、自分自身が育った家だし、地価が高く収益性のよい立地なので、一時的に現金を得て消費してしまうよりは、形は変わっても賃貸建物を建築して、長期的な収益源として次世代にも引き継いでいきたいと考えています。

【弟の考え】
既に自宅を所有しているが住宅ローンも残っているし、これから大学に進学する子どもに多額の教育費もかかるので、実家を売却して、売却収入で相続税を納税し、残りを2分の1ずつ相続したいと考えています。


兄が弟の権利分を買い取ることも検討したが、納税しなければならない相続税が高額であることに加え、周辺の取引価格も立地条件によって大きな差異があるため、買取価格などが折り合わず、兄弟間での話し合いは平行線となり、相続申告期限までに調整がつかず、ひとまず共有名義にして相続手続きを済ませました。

しかし、その後も意見の調整がつかないまま、月日が流れている状況。今後兄弟が他界した場合、新たに相続が発生する度に、共有持分を有する相続人が増える一方となり、益々解決しにくい状況となることが懸念されています。

2-1.どのように対策を講じたらよいか



相続開始前から、親の意向も踏まえて話し合いをしておくことが必要!

相続となると、兄弟仲がよくても、家庭の事情もそれぞれ異なるため、話し合いがまとまらないこともあります。相続財産の概要を把握し、どのように分割するのか、親の意向を軸としてご家族内で話し合い、大まかな合意形成をしておくことをおすすめします。

「親の意向を軸として」というのは、相続後の話よりも優先すべきは、両親が安心して暮らせる老後であり、その先に相続財産の分け方があるということです。
そういった課題解決の手順を家族全員が認識していることで、話し合いの場が持ちやすくなるでしょう。また、話し合いの際、弁護士など相続に詳しい専門家を交えるのもスムーズに話し合いを進めるための一案です。

今回の事例でいえば、例えば、ご両親が安心して老後を過ごすことを目的として、手持ち資金を減らさず快適な自宅を手に入れるために、賃貸併用住宅への建て替えを実行していたとすると、相続税は大幅に軽減され、代償分割の話し合いも比較的容易に進められたかもしれません。

相続発生後、話し合いの時間は限られている


分割協議には時間の限りがあり、ひとまず「共有」という選択をするケースは少なくありません。
具体的に言うと、相続を知ったときから3か月以内に単純承認、相続放棄、限定承認を選択し、10か月以内に相続税の申告を行う必要があるということも知っておきましょう。



「共有」は、問題の先送りと言われることも!?


「共有」状態の土地を活用するには、共有者の同意が必要となります。

兄弟間でどのように資産を分割するか合意できればよいのですが、ひとまず共有名義とした状態で兄弟にも相続が発生した場合、その共有持分は兄弟の妻子が相続します。そのような相続が繰り返されると、やがて顔も名前も知らない共有者が増え、権利関係が複雑化していきます。

その状態になってから、土地を売却するなどの活用をしようと思っても、同意の取り付けはもとより、話し合いの場を設けることすらも困難になる可能性があります。「共有」が問題の先送りと言われる所以はここにあります。

そういったことを理解したうえで意図的に共有とするのでなければ、共有を回避する手段を講じておくのが無難かもしれません。


遺産分割は「現物分割」、「共有」だけではない

遺産分割の方法は、モノの物理的な形を変えずに分割する「現物分割」や「共有」だけではありません。
相続財産を売却して得たお金を分割する「換価分割」や、特定の相続人が他の相続人の相続分相当額を自己資産で支払うことで分割する「代償分割」という方法もあります。

早めに話し合いを行えば、さまざまな選択肢の中から自分たちに最適な方法を検討できるので、トラブルを回避するためでなく、スムーズに遺産分割などを行うためにも、相続開始前から話し合いをしておくことが大切です。

3.【事例】通行地役権をめぐるトラブル

■事例概要

両親とともに住む住宅は公道ではなく、私道に面しています。両親とも話し合い、将来のために土地を活用することを考え、駐車場付きの賃貸物件への建て替えを検討しています。接道する私道は、周辺の住宅所有者で共有しており、両親と近所の人間関係は良好に保たれていました。

賃貸物件への建て替えに際して、私道の共有者へ同意を取得していたところ、真向いの住宅を相続することになった方から自動車が頻繁に通るようになることや、工事で発生する騒音などを懸念して、私道の通行同意を得ることができませんでした。

その他、私道は共有して管理を行っているため、掘削同意など必要な承諾をとれるまで私道を利用した工事の着手はできないため、自宅を賃貸物件へ建て替える計画は頓挫してしまいました。

3-1.どのように対策を講じたらよいか

私道の共有者で通行権など、管理や使用について契約や合意を交わしておく!

私道を「共有」している人で、話し合いを行い、弁護士などの専門家を交えて私道の管理や利用についての合意書を作成してみるのも一案です。
私道の共有者相互が納得できる内容を合意書にまとめておくことで、将来、私道に接する土地を売却、賃貸物件として活用する場合にも、飼い主や入居者などに私道利用のルールを明確に提示できます。



明確な管理等の取り決めがないケースもある

国道や市区町村道などの公道は、一般的に管理は行政が行います。
一方、私道は、個人所有の場合と、周辺住民が複数で「共有」して管理を行うケースもあります。

しかし、私道の管理はもとより、通行に関して、明確な同意や契約書のないままに、暗黙の了解のもとに「共有」しているケースが多くあります。
そのため、今回の事例のように、権利者が変わってしまい、暗黙の了解にズレが生じて、トラブルに至ってしまうというケースは少なくありません。


権利の存在根拠を残しておく

今回の事例で問題になっているように、私道に接する土地を活用する際には、地役権をめぐって通行同意だけでなく、水道管やガス管などインフラ引き込みのための工事を行う場合に、必要な掘削同意など、さまざまな同意取得が必要になるケースが大半です。

近所同士だから「今さら、明文化するのは気が引ける」と考える方もいるかもしれません。しかし、土地の所有者は、相続や譲渡などで考え方が変わってしまう可能性はゼロではありません。近所の人間関係を良好に保ち、不要なトラブルを回避するために、権利の根拠を持っておくことは大切です。

また、先にもご説明しましたが、地役権は登記できる権利でもあります。登記手続きに費用はかかりますが、登記の専門家である司法書士に相談して、地役権の登記を検討してみてもよいでしょう。

4.トラブル回避のためには、早めの相談を!

「共有」、「通行地役権」は、自らの権利だけでなく、他人の権利への配慮が必要となります。つまり、自らの意向だけでは権利を行使することはできません。また、今は問題がないように見えても、相続や譲渡などによって土地所有者が変わってしまうと、たちまち問題が生じてしまう可能性もあります。

自らが所有する、または所有する予定のある土地について、将来に向けて幅広い選択肢を持ち続けるために、早めに課題を把握しておくことが大切です。一人では課題把握が難しいケースも多いため、抱え込まず専門家に相談するようにしましょう。

5.まとめ

今回ご紹介した事例のように、将来、土地を活用したいと思っても、権利関係をめぐる意見調整がまとまらず、土地活用が実現できない可能性もあります。そのような事態を回避するためには、考えられる問題点を把握してその対策を早めに講じておくことをおすすめします。


税金については税理士、遺産分割協議については弁護士、登記については司法書士、おおまかな全体把握についてはファイナンシャルプランナーなど、それぞれの分野に明るい専門家に相談し、取り掛かれることから、一つひとつ実行していくとよいでしょう。

大東建託の個別相談サービス

大東建託では、さまざまな背景や課題をお持ちの土地オーナー様のお悩みに対して、現状分析や、お客様が望む将来に向けての課題発見、課題解決の対策検討などのコンサルティングサービスをご提供しております。


ライフプランニングや、円満円滑な資産承継に向けた相続対策など、ご家庭ごとにさまざまな課題をお持ちだと思いますが、課題解決の手段は土地活用とは限りません。
資産背景やお客様の価値観などから、ファイナンシャルプランナーや相続業務の経験豊かな税理士などの専門家のご協力をいただき、結論を土地活用に限定しない、多角的な視野からの情報提供を行っております。


ご家庭の資産背景からどのような対策が必要なのか、資産承継上どの程度の対策が打てるのか、ご所有の土地にどのような需要・収益力があるのかなど、疑問に思っていることを一つずつ整理していくことはとても大切です。ぜひお気軽にご利用ください。



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