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土地活用のトラブル回避のために、知っておきたい土地の権利関係

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2023.03.17

公開日:2022年9月9日


「相続などで所有することになった土地を売却しようとしたら、共有者との意見が合わず手を付けることができない」など、権利関係に起因して思わぬトラブルが生じたというケースは少なくありません。また、土地の権利に関わる課題解決には多くの時間を要することも...。そのような事態を回避するためには、どのような権利関係があるのかを知り、将来のリスクを想定して、課題があるなら計画的に対策を進めていくことがとても重要です。

この記事のポイント
  • 不動産に関するトラブルは、地方裁判所で取り扱う訴訟全体の約25%
  • 不動産に関する各種権利について知り、将来のリスクを事前に確認することが大切
  • 知るだけではなく、専門家に相談して具体的な対策を計画的に進めましょう

不動産に関するトラブルはどれくらいの割合を占めるの?

不動産に関するトラブルがどれくらいあるのか、司法統計を基にご説明します。

司法統計から見る不動産に関するトラブル件数

令和2年度司法統計によると、地方裁判所における第一審通常訴訟新受事件は、133,427件にのぼります。
そのうち「建物を目的とする訴え」は27,915件、「土地を目的とする訴え」は6,391件となっており、不動産(建物・土地)に関する訴訟は、全体のおよそ25%を占めています。
このことからも、不動産をめぐるトラブルが多いことがわかります。


土地の権利にはどんなものがあるのか(法律行為を行ううえでの制限)

土地に関する権利には、さまざまなものがあります。そのなかでもここでは「所有権」・「地役権」・「借地権」について、権利の概要とその制限をご説明します。

所有権の概要および制限


所有権とは、モノを自由に使用、収益、処分ができる権利のことを言います。
所有権は、法令上の制限の範囲内で、公共の福祉に反しなければ自由に行使できます。ただし、所有権を有する土地に、他の人の権利(抵当権や借地権など)が付着している場合にも制限を受けます。
なお、ひとつの物を複数人で所有することもできます。これを「共有」と言います。

共有の制限事項


ひとつの物を複数人で所有する「共有」では、共有者それぞれが所有権の割合、共有持分を持っています。自らの共有持分を対象とする行為は、原則として各共有者が単独で行うことができます。
しかし、共有物全体を対象とする行為については、単独で行うことはできず、他の共有者の同意が必要な場合もあります。行為はその内容によって以下の3つに大別されます。


【保存行為】
共有物の現状維持のために行われるものを指します。
不動産の場合の具体例として修繕、相続による所有権移転登記などが挙げられます。保存行為は、共有者それぞれが単独で行うことができます。



【管理行為】
共有物を「利用」・「改良」するものを指します。
不動産の場合の具体例として「利用」は共有物の賃貸借契約締結・解除・賃料減額など、「改良」はリフォームが挙げられます。管理行為を行う場合、共有持分価格の過半数の同意が必要です。


※保存行為と改良の違い
保存行為は「あくまでも現状に戻す行為」であり、改良は「現状よりも価値を上げるために行う行為」である点が異なっています。



【処分(変更)行為】
共有物の物理的変化を伴うもの、法律的な処分を行うものを指します。
不動産の場合の具体例として、売却や贈与、抵当権設定、建て替えなどが挙げられます。処分(変更)行為は、共有者全員の同意が必要です。


地役権の概要および制限


地役権とは、自分の土地のために、他の人の土地を利用することができる権利を言います。地役権を設定した人の土地を「要役地」、地役権が設定された土地のことを「承役地」と言います。


地役権は、その用途ごとに通行地役権、用水地役権などと呼称されることもあり、登記できる権利ですが、話し合いだけで登記までは行っていないというケースも少なくありません。

通行地役権


建築基準法には、敷地が建築基準法の道路に2m以上接していなければならないという規定があります(接道要件)。図の土地Aは、道路に接道要件を満たしていないため、新しく建物を建てたり、既存の建物を建て替えたりすることができません。


例えば、隣地(土地B)の灰色の部分に通行地役権を設定することによって、接道要件を満たすことができます。通行地役権設定は勝手に行うことはできず、隣地所有者の同意が必要です。





インフラのために必要な地役権


水道管、ガス管など所有する土地にインフラを引き込むために、地役権を設定する場合があります。インフラ引き込みのためとはいえ、掘削工事なども必要になりますので、地役権設定は承役地となる土地所有者の同意が必要です。

借地権の概要および制限


借地権とは、借地借家法に基づく権利で、建物を建てて利用するために地代を支払って、土地を借りる権利のことを言います。借地借家法は、旧法と新法があり、新法に基づく借地権には、普通借地権と定期借地権があります。



【普通借地権】
普通借地権の契約期間は、30年以上設定する必要があり、30年に満たない契約期間を設定した場合は、その設定が無効となり、契約期間は30年となります。


また、更新後の契約期間は1回目が20年以上、それ以降は10年以上の設定が必要です。貸主、借主ともに中途解約は原則としてできません。ただし、借地上の建物が滅失したとき、および貸主に無断で借地上の建物を建て替えた場合、貸主から解約を申し出ることができます。


【定期借地権】
定期借地権には、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権があります。それぞれの概要は下表の通りです。更新がないのが定期借地権の大きな特徴です。



契約期間 契約期間終了後などの特徴

一般

定期借地権

50年以上 ・契約終了後は更地にして返還
・更新なし

事業用

定期借地権

30年以上50年未満 ・「専ら事業の用に供する建物」の所有を目的
・更新なし

建物譲渡特約付

借地権

30年以上

・契約期間終了後、建物を貸主に譲渡することで借地権が消滅



旧法・新法の概要


借地借家法は、1992年8月1日に施行された新法と、それ以前まで施行されていた旧法があります。旧法で締結された借地契約は、更新後も旧法の適用を受けます。旧法と新法の大きな違いは、契約期間です。


新法での契約期間は、構造に関わらず30年以上です。一方、旧法では、堅固な建物(SRC、RC、鉄骨造など)で30年以上(30年未満の契約期間とした場合は60年)、非堅固な建物(木造など)で20年以上とされています。旧法、新法ともに"借主保護の観点"を有していることに違いはありません。そのため、貸主からの契約更新の拒絶は「正当事由」がない限りできません。


つまり、一旦土地を貸してしまうと簡単には返してもらうことができず、貸主にとっては負担が重い契約となってしまいます。そこで、新法では定期借地権が新しく創設され、契約期間が満了したら土地が返してもらえる契約もできるようになりました。


また、貸主と借主の希望は相反していることが一般的です。借地借家法には細かな規定がないため、個人間の取り決めになるケースが多く、トラブルになることも少なくありません。そのため、地権者・借地人ともに、権利関係者の合意形成が可能なうちに、地代の設定、契約の更新および更新料など細かな点について明文化するなど、やるべきことをやっておくことが重要です。

「今、問題ないから安心」は危険

「今、問題ないから安心」と考えている方も多いと思います。しかし、あくまでも、それは「今」のお話です。将来、問題が生じる火種がないか、問題解決実績のある専門家に相談しておくことをおすすめします。


今問題がなくても、後々トラブルにつながる可能性とは?

将来的に、土地を兄弟で共有することになったり、承役地(地役権が設定された土地)の所有者が変更となって今までの取り決めを見直したいと言われたり、借地上の建物を建て替えることを代替わりした貸主に拒絶されたりなど、「今」は問題がないものの将来的にトラブルに発展する可能性はゼロではありません。


誰に相談すればいい?

相談先としては、弁護士、司法書士、不動産会社などが挙げられます。無料相談会が開催されている機会を活用し、まずは問題の火種がないか確認するとよいでしょう。

まとめ

土地をめぐる権利にはさまざまなものがあり、権利関係者が複数存在する場合、土地活用をめぐり、権利関係者同士で意見調整が必要になるケースもあります。今は問題がなくても、将来的に問題が生じてしまう可能性もゼロではありません。将来に向けて幅広い選択肢を持ち続けるために権利関係を把握して、専門家への相談を含め、課題に対して早めに対策を講じられるように心がけましょう。

大東建託の個別相談サービス

大東建託では、さまざまな背景や課題をお持ちの土地オーナー様のお悩みに対して、現状分析や、お客様が望む将来に向けての課題発見、課題解決の対策検討などのコンサルティングサービスをご提供しております。


ライフプランニングや、円満円滑な資産承継に向けた相続対策など、ご家庭ごとにさまざまな課題をお持ちだと思いますが、課題解決の手段は土地活用とは限りません。
資産背景やお客様の価値観などから、ファイナンシャルプランナーや相続業務の経験豊かな税理士などの専門家のご協力をいただき、結論を土地活用に限定しない、多角的な視野からの情報提供を行っております。


ご家庭の資産背景からどのような対策が必要なのか、資産承継上どの程度の対策が打てるのか、ご所有の土地にどのような需要・収益力があるのかなど、疑問に思っていることを一つずつ整理していくことはとても大切です。ぜひお気軽にご利用ください。



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