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2019年の基準地価 傾向と分析レポート

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2023.03.17

公開日:2019.10.24

2019年9月19日に7月1日時点の「基準地価(都道府県基準地価標準価格)」が発表されました。その内容は「下落から上昇に転じた昨年に引き続き、上昇傾向にある」というものです。特に商業地では、2020年東京オリンピックに向けた観光地の店舗・宿泊施設の需要の高まりや、インフラ整備の影響が強く出ています。今回発表のあった基準地価について、その概要や特に上昇値の高い地域、そのプラスの要因などをお伝えします。

この記事のポイント
  • 全用途平均では前年比で0.4%上昇と2年連続のプラス
  • 全国の住宅地は前年比0.1%下降だが6年連続で下落幅は縮小
  • 全国の商業地では前年比1.7%上昇、地方圏も28年ぶりに上昇

基準地価は昨年に続いて2年連続上昇。その理由とは?

国土交通省より発表された内容によると、2019年7月1日時点の全用途平均は2年連続で上がり、上昇基調を強めています。対前年平均変動率は、住宅地のみ0.1%下落しましたが下落幅は6年連続縮小、全用途がプラス0.4%、商業地はプラス1.7%です。

三大都市圏(東京・大阪・名古屋)は昨年を上回る伸び率で、全用途でプラス2.1%、住宅地がプラス0.9%、商業地はプラス5.2%でした。地方圏では住宅地の下落幅の縮小傾向が継続しており、商業地が1991年以来28年ぶりに上昇に転じています。

2019年7月1日 基準地価対前年比
全用途 住宅地 商業地
全国平均 0.4%(0.1%) ▲0.1%(▲0.3%) 1.7%(1.1%)
三大都市圏
(東京・大阪・名古屋)
2.1%(1.7%) 0.9%(0.7%) 5.2%(4.2%)
地方圏 ▲0.3%(▲0.6%) ▲0.5%(▲0.8%) 0.3%(▲0.1%)
※( )内数値は前年数値

今回の基準地価上昇の要因は3つあります。

基準地価上昇の要因

    1. 1.外国人観光客増加による宿泊施設の需要の高まり
    2. 2.交通利便性に優れた地域を中心とした住宅需要
    3. 3.3. オフィス市場の活況による再開発事業の進展


外国人観光客の数は年々増加傾向です。日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2013年の約1,000万人に対して2018年は約3,100万人と、およそ3倍になっています。2019年も6月時点で1,600万人を超え、全国の観光地でホテルや商業施設の需要が高まり地価も上昇しています。

また、全国的に交通の利便性の良い都市中心部へ人口が流れており、職住近接のニーズによる住み替えが顕著に表れています。総務省のデータによると、全国的に人口は減少し続ける中で、東京都をはじめとする神奈川県、千葉県などの首都圏、愛知県では人口が増加しています。 働き方改革を受けて労働環境を改善する動きが見られ、生産性を向上させるオフィス環境を整える動きが目立っています。これに伴い、都市中心部のオフィス需要も高まっており、東京都では大型オフィスビルの空室率が2%を切るなど、より便利な都市中心部へと需要が集中していることがわかります。

基準地価とは?

「基準地価」は、土地の価値を示す公的な指標の一つです。各都道府県が指標となる「基準地」を定め、不動産鑑定士が7月1日時点の土地価格を調査し、その判定が9月下旬頃に公開されます。

土地の価値を示す公的な指標は「基準地価」の他に「公示地価」と「路線価」があります。「公示地価」は「基準地価」とほぼ同じですが、国土交通省が主体となっており、評価時期は1月1日時点で、発表は3月下旬頃、鑑定される土地は毎年同じといった違いがあります。

「路線価」は、国税庁が発表する土地の価値を示す指標です。固定資産税や相続税額の算定を目的としたもので、「公示地価」の鑑定評価を基準に決定されます。

土地に関する3つの標的な指標
基準地価 公示地価 路線価
調査主体 都道府県 国土交通省 国税庁
発表時期 9月下旬 3月下旬 7月頃
調査時点 7月1日 1月1日 1月1日
評価目的

土地取引の指標

(都市計画区域外も対象)

土地取引の指標

(公的補償金の算定基準)

固定資産税や相続税の算定基準
評価割合 鑑定評価による 鑑定評価による 公示地価を基準としておおむね8割の水準

2019年基準地価の傾向

全国の住宅地では、超低金利による資金調達コストの低下が影響して、都心回帰のニーズが高まったことで、より利便性の高い都市中心部への住み替えが起こっています。

地方圏は商業地がバブル崩壊後の1991年以来28年ぶりの上昇となり、訪日外国人観光客が多く再開発の進む人気観光地や、中核都市が回復の要因です。

三大都市圏

三大都市圏(東京、名古屋、大阪)では全用途平均、住宅地、商業地のいずれを見ても上昇しており、上昇幅も拡大傾向にあります。

東京圏は全用途平均の上昇率が+2.2%と7年連続で上昇しており、上昇幅も年々拡大しています。住宅地が+1.1%、商業地も+4.9%で上昇するなど、全体の回復をけん引しています。特に変動が顕著な商業地では、訪日外国人観光客の多い台東区浅草や、再開発の進む港区虎ノ門の地価上昇が顕著です。

大阪圏は商業地の上昇率が2018年の+5.7%を上回る+6.8%となり、都道府県ではリゾート地として人気の高い沖縄県に次いで2位の上昇率となりました。

名古屋圏は商業地が+3.8%、住宅地は+1.0%の上昇率です。商業地は東京・大阪に比べると緩やかな上昇率となっています。

地方圏は全用途、住宅地ともに下落が続いていますが、下落幅は縮小傾向にあります。また、商業地が28年ぶりに上昇に転じています。人気観光地に地価の上昇が集中する一方で、調査地の48%では下落が続いており、地価上昇の広がりは限定的なのが特徴です。

上昇率の高い地域とその要因は?

基準地価上昇率ランキング(住宅地)
順位 住所 上昇率 価格(円/?)
1 北海道虻田郡倶知安町字樺山65番132外 66.70% 60,000
2 北海道虻田郡倶知安町南8条西1丁目3番22 62.50% 39,000
3 北海道虻田郡倶知安町南4条東5丁目1番67 35.00% 27,000
4 沖縄県那覇市壷川2丁目11番1 27.20% 229,000
5 沖縄県那覇市松尾1丁目245番9『松尾1?15?11』 25.70% 225,000
6 愛知県名古屋市錦1丁目324番1『錦1?3?28』 25.40%

1,060,000

7 沖縄県国頭郡金武町字屋嘉村内144番 25.00% 26,000
8 沖縄県那覇市壷川1丁目4番6 24.60% 223,000
9 沖縄県中頭郡読谷村字古堅古堅原74番3 20.10% 82,400
10 沖縄県中頭郡読谷村字楚辺後原1279番47 18.10% 63,500
基準地価上昇率ランキング(商業地)
順位 住所 上昇率 価格(円/?)
1 北海道虻田郡倶知安町北1条2丁目18番 66.70% 75,000
2 沖縄県那覇市松山1丁目14番11外『松山1?14?19』 50.30% 580,000
3 大阪府大阪市中央区宗右衛門町46番1外『宗右衛門町7?2』 45.20% 24,400,000
4 沖縄県那覇市久茂地3丁目9番14『久茂地3?9?8』 42.70% 605,000
5 大阪府大阪市淀川区宮原3丁目5番7外『宮原3?5?24』 42.30% 1,850,000
6 京都府京都市東山区四条通大和大路東入祇園町北側277番 41.90%

3,080,000

7 沖縄県那覇市天久2丁目18番13『天久2?18?11』 38.10% 428,000
8 沖縄県那覇市松山1丁目1番4『松山1?1?14』 37.30% 1,100,000
9 大阪府吹田市江坂町1丁目23番18『江坂町1?23?43』 35.10% 1,540,000
10 東京都台東区浅草1丁目17番9『浅草1?29?6』 35.50% 2,220,000

東京圏

東京圏での商業地では23区の台東区で上昇率が30%を超えました。上昇率が30%を越えたのは、2007年以来12年ぶりのことです。1位が浅草1丁目で上昇率34.5%、2位が浅草2丁目で上昇率31.1%。トップを訪日客に人気の浅草が独占する形となり、物販や宿泊施設の需要が高まっています。出店計画やホテルの開発が相次ぎ、さらなる地価上昇が予想されます。

名古屋圏

名古屋圏での住宅地で、名古屋駅東側の中区錦1丁目で25.4%の大幅な上昇がみられました。より利便性を求めた回帰の傾向が強く出ており、「職住近接」ニーズの高まりや高齢者の住み替え需要が重なっていることが要因として挙げられます。

この都市中心部への回帰の流れは全国的にも広まりつつあります。地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)でも駅近物件への需要が高まり住宅地の上昇率が拡大して郊外の戸建てから駅近の利便性のよいエリアに住み替えるといったライフスタイルの変化が起こっています。

また、リニア新幹線開業に向けた土地開発が見込まれることから、名古屋駅西側の中区、中村区、東区、熱田区などでは高い上昇率となっています。

大阪圏

大阪圏の商業地の上昇をけん引しているのは中央区宗右衛門町で、上昇率は45.2%、1平方メートル当たり2,440万円でした。大阪圏では上昇率、価格ともにトップであり、全国で見ても価格順位は21,540地点中6位と高水準です。背景には、住友商事が今年4月に米投資ファンドから同土地の商業ビルを取得したことで地価が押し上がったとされています。また、大阪駅前の「グランフロント大阪南館」がある大阪市北区大深町も34.0%上昇しており都市中心部への訪日外国人のインバウンドの勢いとオフィス需要が強まっていることが見てとれます。

地方は急上昇と下落の二極化

地方圏でも、訪日外国人観光客が多く訪れる土地は基準地価が急上昇しています。商業地の上昇率全国トップはスキーリゾートでも知られる北海道の道央に位置する倶知安(くっちゃん)で、66.7%上昇と群を抜いた数字になりました。新幹線や自動車道の延伸が予定され、宿泊施設の建築も続くなど、インバウンド需要が期待されています。商業地の中核都市では、札幌が11.0%、仙台が10.5%、広島が5.7%、福岡が12.8%と、商業地が大幅な上昇となっています。

都市中心部や人気観光地の上昇率が高い一方で、郊外では下落率が増加している地域も見られます。全体の下落幅は縮小傾向にあるものの、商業地の48%の調査地点で下落が続くなど、人気観光地とそうでない地域で上昇率に極端な差があり、地方圏では二極化が進んでいます。

まとめ

この記事では2019年の全国基準地価の傾向、都市別の上昇値の傾向とその背景についてまとめました。昨年に引き続き、訪日外国人観光客による観光需要の増加が大きな要因となっています。2020年のオリンピックを境に、基準地価がどのよう推移していくのか、土地所有者にとって見逃せないポイントとなりそうです。

また、住宅地やオフィスの都市中心部への需要が高まることで、基準地価は今後も上昇傾向が続きそうです。地価や評価額が上昇することは、相続税へも影響がおよびます。売却、賃貸経営、土地貸しなど、自分に有利な土地活用をしていきましょう。

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