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2019年の路線価発表!キーワードは「インバウンド」と「二極化」!

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2023.03.17

公開日:2019.07.27

2019年7月1日に国税庁から、相続税や贈与税を計算する際の基準となる2019年の路線価(1月1日時点)が発表されました。全国の平均変動率は前年比で1.3%上昇して、4年連続の上昇となりました。
本記事では、2019年分の路線価の特徴である「インバウンド」と「二極化」の2つのポイントについて解説した上で、2019年分の路線価の全体的な傾向とその要因についてお伝えしていきます。

この記事のポイント
  • 全国平均路線価は4年連続の上昇傾向
  • 東京銀座では、1平方メートルあたり4,560万円の過去最高路線価を記録
  • インバウンド効果によって各主要都市・観光地の路線価が上昇

路線価とは?

そもそも路線価とはどんなものでしょうか。 不動産には「一物四価」といわれる、実勢価格、公示価格、相続税評価額(相続税路線価)、固定資産税評価額(固定資産税路線価)の4つの指標があります。

実勢価格はいわゆる時価であり、実際の不動産市場で取引されている不動産価格や、過去の取引事例を参考に決められています。

公示価格は国土交通省が毎年1月1日時点の土地を算定して発表している価格で、実勢価格を参考に不動産鑑定士が決定します。一般の土地取引の指標として扱われ、実勢価格の90%程度になるとされています。

路線価は、相続税路線価と固定資産税路線価の2つがあり、一般的に路線価といえば、相続税路線価のことを指します。

相続税路線価は毎年7月に国税庁から発表される、相続税や贈与税を計算する際の基準となる金額で、その年の1月1日時点の評価価格となります。

インターネット上では、国税庁の「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」というサイトで路線価を確認できます。
相続税路線価は、公示価格の70~80%程度を目安に価格が定められています。
固定資産税評価額は、固定資産税を計算するための基準となる価格で、市区町村によって3年に一度、前年1月1日を基準にして~6月に発表されています。固定資産税評価額は公示価格の60~70%程度を目安に価格が定められています。

2019年までの路線価の推移と2019年分の路線価データ解説

2019年までの路線価の推移と、2019年分の各都道府県の路線価について詳しく解説していきます。

下記のグラフは、2005年から2019年までの公示価格の推移を表したグラフです。先述のとおり、路線価は公示価格を基に算定されているので、公示価格の推移をみることで路線価の推移も分かります。


1992年にピークを迎えバブルが崩壊後、日本の路線価は下落傾向に入りました。その後、経済の上昇傾向によって徐々に回復していき、2007~2008年頃のミニバブルでは上昇傾向に転じました。

しかし、その後のリーマンショックによる影響で、全国平均の路線価は再び下降に転じます。公示価格のグラフを見ると、2016年以降、4年連続で上昇傾向に転換し、2019年には前年比で1.2%の上昇を示しています。路線価も公示価格と同様の推移を見せました。
全国的な路線価の上昇要因は、インバウンド需要、および都市部やアクセス、環境の整った地域の開発が進んでいることが挙げられます。

全国的な路線価の推移

次の表は、変動率のトップとワーストの上位をグラフで表したものです。


2019年の47都道府県別の対前年変動率において、もっとも高い上昇率をみせたのが沖縄で、8.3%の上昇率でした。沖縄は2年連続で全国一位の伸び率を見せています。2位は東京で伸び率は4.9%、3位は宮城県の4.4%となっています。

一方、対前年変動率の全国下位は、福井県がワースト1位で▲1.4%、2位が和歌山県で▲1.3%となっています。

2019年の路線価のポイントは 「インバウンド」と「二極化」

ここからは、2019年の路線価のポイントである 「インバウンド」と「二極化」について解説していきます。

路線価データからのポイント-1-「インバウンド」

路線価は4年連続で上昇しましたが、すべての地域で同じように路線価が上昇しているわけではありません。上昇している地域は、主要都市や観光地、インバウンド(外国人旅行者)の影響が大きいといえます。

全国でもっとも高い伸び率だったのは、北海道の倶知安町山田の道道ニセコ高原比羅夫線通りで、前年比50%の伸び率でした。
ニセコの伸びの要因としては、スキー観光などが目当ての外国人旅行者増加に伴うホテル建設や、それに伴って、観光業に従事する外国人従業員向けアパートなどの開発が増えていることが挙げられます。

全国の県庁所在地の中で最高路線価の伸び率が1位であったのが、沖縄県那覇市久茂地3丁目国際通りで、前年比39・2%の上昇率を記録しています。
これはアジア諸国からのクルーズ船や、LCC路線の新規就航などによって沖縄を訪れる外国人観光客が増加し、それがホテルや飲食店などの建設ラッシュをもたらしたことが主な要因となっています。

東京地区で、もっとも高い上昇率を示したのは浅草の台東区浅草1丁目の雷門通りで、前年比で35%の上昇でした。この地域も他のエリアと同様、訪日外国人数の増加に伴う、ホテルや飲食店などの需要が高まっていることが要因とみられます。

以上のように、高い路線価の上昇をみせている地区はいずれもインバウンドの影響がみてとれます。

路線価データからのポイント-2-「二極化」

日本全ての路線価が上昇しているわけではなく、今回を含む、近年の路線価推移の特徴が二極化です。これは主要都市と地方という二極化の意味もありますが、さらに地方の中の二極化も進んでいます。

次の表は、都道府県別の路線価の平均変動率(2019年分・2018年分)をグラフで表したものです。
都道府県別にみると、前年比上昇は19都道府県、一方、下落したのは27県、横ばいは1県でした。


ただし下落している27県でも下落率自体は減少しています。また下落している県内においても、人気のある観光地、アクセスの良い駅周辺などの都市部、住宅需要により開発が進んでいる地域などは上昇傾向にあるなど、地方の中の二極化も進んでいるといえます。

2019年分の全国の路線価で、日本一高い路線価となったのは、東京都中央区銀座5丁目銀座中央通りの路線価で、1平方メートルあたり4,560万円でした。
これは3年連続の最高額更新であり、34年連続で過去最高額を記録しています。

都道府県庁所在都市の最高路線価の対前年変動率を見てみると、最高路線価が上昇したのは33の都市で、13の都市は横ばい(変動率0%)であり、下落したのは鳥取(▲4.5%)だけでした。このように都道府県庁所在地などの主要都市部に限っては全国的に路線価が上昇傾向にあります。

注目すべきはその上昇率で、14の都市における最高路線価の対前年変動率はプラス10%を超えており、5つの都市(那覇市、大阪市、神戸市、京都市、熊本市)では、20%を超える伸び率を示しています。

インバウンドと二極化の背景

今回の路線価の発表は、インバウンドという大きな要因と、そのインバウンドの影響も含めた人口集中の二極化という2つの流れを示しているといえます。

全国的な傾向としても、ニセコや沖縄などの観光地、東京、京都や大阪といった観光資源があり、アクセスも良い大都市に対して、人口集中とそれに伴う開発投資の傾向は続くと思われます。これらの都市に対する地方からの人口流入が続くと、二極化はさらに広がっていくでしょう。

今後のゆくえ

今後の日本の地価はどうなるのでしょうか。
まず下落する可能性がある要因としては、2020年の東京オリンピックを機に、オリンピックまでの地価上昇を見込んでいた投資家が利益確定のために、土地の売却に転じることが挙げられます。また、オリンピックによる設備投資がなくなることによる、景気の冷え込みなども懸念材料といえます。

ただしオリンピックについては、アトランタやシドニー、ロンドン、北京など、過去オリンピックが開催された都市で、不動産への影響はみられなかったというデータもあります。インバウンドなどのその他の要因が大きいことから、オリンピック後に地価が大きく下落する可能性は低いのではないかと思われます。

下落する別の要因としては、いわゆる「生産緑地の2022年問題」があります。これは2022年に、都市部における農地の税制上の優遇が切れて、宅地並みに課税されることから、大量の農地が宅地に転用されて需要と供給のバランスがくずれ地価を下げる可能性があるというものです。しかしこの問題については、2017年の生産緑地法改正により、引き続き農地が税制上の優遇を受けられることになり、宅地に転用される土地はそれほど多くないとの予測も立てられています。

インバウンドの傾向としては、外国人旅行者の需要は、今後も世界的に伸びていくことが予測されています。
国連世界観光機関(UNWTO)による2010年時点の予測では、2020年における世界の海外旅行者数は14億人でした。しかし実際は2019年2月の発表で、2018年の海外旅行者数は推定で14億人であると発表され、予測されていた旅行者数を2年前倒しで達成しています。
日本でも東京オリンピックや大阪万博に加え、世界的な旅行者の増加が見込まれることで、今後も路線価の上昇は続くと予測されます。

日本の地価の二極化傾向は今後も進むと思われます。しかしリピーターの海外旅行客の場合、リピート数が増えれば増えるほど、大都市よりも地方への旅行を好む傾向があります。
日本政府が掲げる訪日外国人観光客数の目標人数として、2020年に4,000万人、2030年には6,000万人という数字があります。インバウンドの力をうまく地方へ取り込めるかどうかが、今後の地方活性の分かれ目になりそうです。

まとめ

ここまでは2019年の路線価について解説してきました。記事でも解説した通り、全国的な路線価は上昇傾向にある一方で、インバウンドや開発、人口流入の恩恵を受けられない地域の路線価は、今後は下降傾向が続くと見込まれます。
路線価が上昇する場合、土地をお持ちの方は資産価値の上昇が見込める一方で、固定資産税の支払い負担が増えるなどの懸念もあります。また各都市部によっても地価推移の特徴は異なります。専門家に相談するなどして、定期的な資産診断を行っていくことが賢明といえるでしょう。



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