借地権の相続に関する基本知識
公開日: 2022.10.28
最終更新日: 2022.11.08
借地権が設定された土地でも、借りた土地の上に自己所有の建物を建てることができますが、もし借地権の存続期間中に借地人(土地を借りている人)が亡くなってしまった場合、借地権はどのように相続したらよいのでしょうか?
今回のコラムでは、借地権の相続に関する基本知識をご紹介します。

この記事のポイント
- 借地権は、土地の所有者(地主)に承諾を得なくても相続できる
- 借地権は相続財産の一部として、相続税の課税対象となる
- 土地の所有者(地主)の承諾があれば、借地権の譲渡や、第三者への売却ができる
借地権も相続財産になる
借地権とは、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」のことであると、借地借家法において定義されています。より細かく分けると、以下の5種類の借地権が存在します。
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- ?借地権 (旧借地法、借地借家法第3条)
- ?定期借地権 (借地借家法第22条)
- ?事業用定期借地権等 (借地借家法第23条)
- ?建物譲渡特約付借地権 (借地借家法第24条)
- ?一時使用目的の借地権 (借地借家法第25条)
よく見聞きする「借地権」は、上記?の借地権です。契約により期間が定められている場合でも、更新することも可能です。それに対して、?の定期借地権は契約の更新ができず、期間終了後に土地を更地に戻して土地の所有者に返却する必要があります。
いずれにしても、借りた土地に自己所有の建物を建てるということは共通しています。
では、借地人が亡くなった場合、借地権と借地に建てられた建物はどうなるのでしょうか?
民法では「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と規定されています。つまり、借地権も相続財産として、相続人に承継されます。
借地権にも相続税がかかる
借地権にも相続税の課税評価がされます。借地権の相続税評価は、借地権の種類によって計算方法が異なり、「借地権(普通借地権)」、「定期借地権等」、「一時使用目的の借地権」の3種類に区分けされます。(地主が所有している部分を底地といいます。)
前述した5種類の借地権において、借地権を評価する際には?を「借地権」、???を「定期借地権等」、?を「一時使用目的の借地権」に区分して評価します。
借地権の相続税評価額
通常「借地権」の評価は自用地としての評価額に借地権割合を乗じて算出します。「自用地」とは他人に貸していない自ら利用あるいは未利用の土地を指します。 借地権割合は路線価図や評価倍率表で確認することが出来ます。路線価図や評価倍率表は、国税庁ホームページにて閲覧することが可能です。
借地権の相続税評価額=自用地の評価額×借地権割合
一方、「借地権」以外の「定期借地権等」、「一時使用目的の借地権」の評価は、財産評価基本通達などで定められた所定の割合にもとづいて行われるため、計算方法がやや複雑です。 「定期借地権」の価額は、自用地の評価をもとに借地人の経済的利益および残存期間の割合から算定します。実務上は「定期借地権等の評価明細書」を使用して評価することができます。また、「一時使用目的の借地権」は自用地ではなく、雑種地の賃借権の評価方法と同じように評価します。
借地権を相続した時に確認しておきたいこと
借地権を相続した時に相続手続きをおこなう際に確認しておくべき点を2つ下記にまとめました。
借地契約書の確認
土地の所有者の中には、借地契約を締結した本人が亡くなったことを理由に、立ち退きを要求したり、更新料や承諾料、権利金などの名目で金銭を請求したりするような人がいるかもしれません。
しかし、借地人の法定相続人がその借地権を相続することに対して、土地の所有者は原則的にそれを拒否したり、金銭を要求したりすることはできません。金銭の支払いは不要ですし、ましてや借地権の返還などは不要です。借地権を相続した際には、法律に基づく正しい知識を得たうえで、土地の賃貸借契約の内容(借地契約の期間、地代、増改築や建て替えについての取り決めなど)を改めて確認しておきましょう。
建物の登記の確認
また、借地上の建物の登記について確認しておくことも大切です。 例えば、父親が契約した借地上に父親名義の建物が建っており、その建物と借地権を息子が相続したという場合には、借地権の名義人(借地権者)と建物の名義人(所有権)とが同一になるので特に問題はありません。
しかし、父親が契約した借地上に母親名義の建物が建っており、父から借地権のみを息子が相続するなど、借地権とそこに建つ建物の名義人が同一でない場合には権利関係が複雑なので、専門家へ相談しておいた方がよいでしょう。
借地権の名義変更について
前述したように、法定相続人が借地権を相続する場合、土地所有者の承諾は必要ありません。しかし、法定相続人以外が受け継いた場合は「譲渡(遺贈)」とみなされ、土地所有者の承諾が必要となります。さらに、土地所有者の承諾があれば、借地権を第三者へ売却することも可能です。
承諾を得る際には、承諾料や名義変更のためのコスト(名義変更料/名義書換料)が必要となる可能性もありますので、専門家のサポートを受けながら検討を行うと、より安心でしょう。
まとめ
借地権の譲渡の他にも、増改築および建て替えなどには、土地所有者の承諾が必要となります。実家が借地の上に建っている場合など、将来的に借地権を相続する可能性があるようならば、遺産分割協議の際にも必要になることなので、あらかじめ借地権を将来に渡って保有するか否かを家族の負担とならないようと話し合いをしておくとよいでしょう。
実際の借地権の相続や借地権付きの不動産の活用はトラブルが発生する事例も少なくなく、解決するために弁護士が介入したというケースもあり注意が必要です。
自分で交渉するのではなく、税理士、司法書士などの専門家や経験に長けた不動産会社や建築会社に事前にご相談ください。
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