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借地権の相続税と名義変更や地主の承諾などの注意点

公開日: 2022.10.28

最終更新日: 2023.03.16

親が借地権付きの自宅に住んでいる場合、「相続トラブルが生じやすいのではないか?」と気になる方も多いのではないでしょうか?

実際、遺産相続の際は不動産が自用地なのか、借地なのかによって注意すべきポイントや手続き内容が変わってきます。

この記事では、借地権の相続税や名義変更、相続手続きの注意点などについて解説します。
早めの相続対策をしたい方や、借地権付きの不動産相続をすることになって悩んでいる方は参考にしてください。

民法上の借地権の定義と種類

そもそも借地権というのは民法上で定められている土地の賃借権のようなものですが、いまいちよく分かっていないという方もいるのではないでしょうか?

ここでは、改めて借地権という言葉の定義と種類について確認しておきましょう。

借地権とは

借地権とは、建物を所有するために他人の土地を借りる権利のことを言います。
借主は借地上に戸建てなどの建築物を新築するケースが一般的で、建物を所有する目的以外で土地を借りる場合は借地権は成り立ちません。

借地上に自宅を建てることで、高いお金を支払って土地を購入する必要がなくなるメリットがある一方、土地そのものの所有権は地主側にあるため、建て替えや増改築をする場合は地主の許可を得る必要があるほか、地代を払い続けなければなりません。

借地権には3種類あり、契約更新の可否や存続期間がそれぞれ異なりますので、権利関係と合わせて確認しておく必要があります。

借地権の種類

借地権には「普通借地権」「旧借地権」「定期借地権」の3種類があり、それぞれ借地契約を結ぶのは同じですが、契約期間などに違いがあります。

普通借地権は1992年8月1日から施行された「新借地借家法」に基づいており、更新料として一定の金額支払いにより契約更新が可能な借地権です。基本的な契約の存続期間は最短30年ですが、契約で30年以上の存続期間を設定することも可能です。
契約を更新した際の最初の更新の存続期間は20年、以降は10年となり更新回数によって期間が減少する特徴があります。
ただし、更新後の期間も最短の年数であり、これより長い期間を定めることも可能となっています。

旧借地権はその名の通り、現在の借地権が適用される以前の「旧借地法」に基づく借地権で、存続期間の対象や期間が普通借地権と異なります。特に大きな違いは、借地期間を定めなかった場合の取り決めです。

新借地借家法では借地期間の定めのない契約はすべて30年となりますが、旧借地法では非堅固な木造建物で30年、堅固な建物は60年というように建物の構造によって契約期間が異なります。

定期借地権等は、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権の総称のことであり、あらかじめ決めておいた契約期間が終了したら借地権者は貸主に借地を返還しなければならない借地権となっています。
土地所有者が安心して土地を貸せるようにするため、平成4年に創設されました。

定期借地権等の種類

一般定期借地権
存続期間50年以上で、用途制限がない定期借地権。

事業用定期借地権
事業用建物が対象の借地権。存続期間は10年以上50年未満。

建物譲渡特約付借地権
30年以上の借地権が対象。契約満了後に土地の所有者が貸借人の建物(構築物)を買取るという特徴がある。

自分が相続する土地が上記のどの借地権に分類されるかは、賃貸借契約の内容を把握し、専門家に相談するなど将来的な課題を確認しておきましょう。


借地権についてこちらの記事でも解説しています

>>借地権の相続に関する基本知識

相続税法における借地権と相続の注意点

実際に借地権付きの不動産を相続する場合は、相続税法においていくつか注意すべきポイントがあります。
相続財産に関わることですので、しっかりと確認しておくのがおすすめです。

民法と税法では借地権の範囲が異なる

第一に民法と税法では借地権の範囲が異なることに注意しましょう。
借地権では建物の所有を目的としなくてはいけませんので、駐車場や資材置き場などの使用では借地権は認められません。
また、地代を無料で借りている場合は「使用貸借権」と呼ばれ、借地権が成立しないことを覚えておきましょう。

相続は地主の承諾が必要ない

借地権は貸借人の財産ですので、相続に地主の許可は必要ありません。

基本的に相続放棄をしない限り相続をすることになりますが、貸借料や賃貸期間などもそのまま引き継がれる形で相続します。また、地主への承諾料を支払う義務も不要です。

ただし、法廷相続人以外の第三者に借地権を譲渡するような遺贈の場合は、地主の承諾・承諾料・契約内容の変更が必要になります。

遺産分割中も貸借料が発生する

相続先を遺族などで決めるための「遺産分割協議」の最中でも貸借料が発生します。もし賃借料を滞納してしまえば、賃貸借契約を解除される可能性があり、地上権や賃借権を含む借地権そのものがなくなってしまう恐れがあります。

借地権付きの不動産を相続することが分かったら、まずは借地権の契約書を確認し、定期的に地主に支払わなければならない金額がいくらなのかを確認するところから始めるのがいいでしょう。

相続時の借地権の評価方法

相続が発生した時には、相続対象の財産評価がいくらなのかを把握しなければいけません。
ここでは、相続時の借地権の評価方法についてご紹介します。

借地権の相続税評価額とは?

相続税は財産を相続・贈与された際に発生する税金のことで、課税遺産総額をもとに計算することになります。

詳しい計算方法は、「各人の財産の課税価格の合計?基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)=課税遺産総額」で求めることができます。

課税価格の計算には「財産の時価」を評価しなければならず、財産ごとに細かい時価の評価方法として「相続税評価額」が定められています。

借地権価格の評価方法

借地権の種類によって、評価方法が異なります。
普通借地権の評価額は「自用地評価額(路線価図で確認可能)×借地権割合」で算出する単純なものであり、定期借地権は普通借地権と比べると計算式が複雑になります。


>参考リンク:国税庁「借地権の評価」


個人で計算することは難しいため、最寄りの税理士法人事務所などに相談することをおすすめします。

借地権の相続手続き

ここからは借地権の相続手続きの流れについて解説します。
しっかり対応しないとトラブルに発展し、税務調査を受けるなんてことになりかねませんので注意しましょう。

地主に連絡する

相続が発生したら、まずは地主に連絡する必要があります。
法人利用や宅地の転貸などがない通常の相続であれば、口頭で伝えるだけで問題はありません。

土地の賃貸契約書の名義変更も不必要ですので、特に大きな問題なく進められるはずです。
もし地主との承諾を口頭で済ませるのは不安という方は、別途変更契約を締結する提案をしてみてもいいかもしれません。

借地権の名義変更

借地権の名義を変更しなければならない法律義務はありませんが、地主との良好な関係を維持することや、将来建て替えの可能性があることを考えると、名義変更について対応すべきです。
また、相続を起因とする名義変更は特に必要ありませんが、売買や贈与を起因とする名義変更の場合には名義変更料がかかります。建て替えの場合は別途、建て替え承諾料がかかることを理解しておきましょう。

なお、借地権の名義変更が必要な場合は、下記の必要書類を準備しなければいけません。

    • 被相続人の出生?死亡の戸籍謄本
    • 相続人全員の現在の戸籍謄本
    • 被相続人の住民票の除票
    • 相続人の住民票
    • 遺言書もしくは遺産分割協議書
    • 相続人全員の印鑑証明
    • 固定資産税評価証明書


それぞれの書類取得や手続きにかかる費用の目安は以下の通りです。

    • 戸籍謄本:1通450円
    • 除籍謄本:1通750円
    • 住民票/戸籍の附票:1通300円
    • 建物所有権の名義変更に関する登録免許税:固定資産税評価額×0.4%
    • 借地権の名義変更に関する登録免許税:固定資産税評価額×0.2%
    • 司法書士に手続き代行を依頼した場合は所定の司法書士費用



借地権の名義変更のためには、正しい知識や手間のかかる書類集めなどが必要になりますので、可能な限り司法書士に手続きを依頼することがおすすめです。

借地権の相続について正しい理解をしよう

借地権にはいくつか種類がありますので、相続を考える際は必ずどの借地権に属するかを一度は確認しておくことがおすすめです。また、借地権付きの土地だからと言って身構える必要はありません。

通常の相続であれば地主に連絡をすることで手続きは完了しますし、もし名義変更が必要になったとしても、司法書士に手続きの代行を依頼することができます。


しかし、場合によっては不動産を単純に相続する以外に適している方法があるかもしれません。
大東建託では、さまざまな背景や課題をお持ちの土地オーナー様のご状況に応じて、課題解決や対策検討のためのコンサルティングサービスをご提供しています。

気になる方はこちらのリンクより、大東建託の個別相談サービスをご利用してみてください。

執筆者プロフィール
株式会社もっとグッド 伊野文明(いの ふみあき)

宅地建物取引士・FP3級の知識を活かし、不動産専門ライターとして活動。賃貸経営・土地活用に関する記事執筆・監修を多数手掛けている。ビル管理会社で長期の勤務経験があるため、建物の設備・清掃に関する知識も豊富。

【保有資格】
・宅地建物取引士
・FP3級
・建築物環境衛生管理技術者



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