建物の広さや高さを決める建ぺい率・容積率とは?計算方法と緩和条件
公開日: 2022.10.31
最終更新日: 2023.07.28
建物を新築する場合、法律で定められたさまざまな規制を遵守しなければなりません。特に広さを規制する建ぺい率・容積率は、防災対策、風通し・採光の確保、景観の維持といった観点から極めて重要です。
もし定められた規制に違反すると、違法建築となり厳しい罰則を受ける可能性もあるため、土地活用を検討している方は特に内容を理解しておく必要があるでしょう。
本記事では複数ある規制のうち、建ぺい率と容積率について解説します。
目次
1-1建ぺい率とは
1-2容積率とは
1-3建ぺい率・容積率に一定の基準が定められている理由
1-4建ぺい率・容積率の上限
2-1建ぺい率の計算方法
2-2容積率の計算方法
2-3道路幅が狭いときの容積率上限の計算方法
3-1建ぺい率の上限を緩和する方法
3-2容積率の上限を緩和する方法
建ぺい率(建蔽率)・容積率の基礎知識
建ぺい率と容積率の規制は、建築基準法により定められています。
建築基準法とは建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めた法律のことです。
以下で建ぺい率、容積率の基本的な考え方や押さえるべきポイントを解説します。
建ぺい率とは
建ぺい率とは、建物の建築面積の敷地面積に対する割合です。建築面積とは建物を真上から見たときの外周で求めた面積のことで「水平投影面積」ともいいます。敷地面積とは土地全体の広さのことを指しています。
したがって、建ぺい率の規制は敷地に対して建てられる建物の広さと深い関わりがあるのです。
容積率とは
容積率とは、建物の延べ面積(延べ床面積)の敷地面積に対する割合のことです。延べ面積とは、複数のフロアの床面積を合計したものです。
例えば3階建ての住宅の場合、1階と2階、3階それぞれの床面積を合計した数値が、建物の延べ面積となります。
したがって、容積率の規制は、敷地に対する3次元的空間の制限であり、最高限度が高いほど敷地面積に対して、大きな建物を建てることが可能となります。
建ぺい率・容積率に一定の基準が定められている理由
建ぺい率は隣り合う建物が接近しすぎないよう規制することを目的に定められています。建物同士が一定の距離を確保すれば、火災や地震などにより建物が延焼、倒壊した場合に、周囲の建物への被害拡大の防止につながります。
また、建物の日当たり確保や、景観の美しさを保つ目的もあります。
一方、容積率は高い建物の乱立を防ぐために定められています。建ぺい率と同様、建物の日当たりを適切に確保する目的のほか、人口の密集を防ぐ役割もあります。
もし容積率の規制がなければ、どんな大きさの建物も建築できるため、特定のエリアに人口が集中してしまう可能性があるということです。
建ぺい率・容積率の上限
建ぺい率と容積率は、行政が定めた用途地域の種類によって上限が決められています。
用途地域とは建築できる建物の種類や制限を場所ごとに定めたものです。
用途地域は住居系8種類、商業系2種類、工業系3種類の計13種類に分類され、それぞれに建築できる建物の種類や用途の制限を定めたルールのことで、住みやすい街づくりを行うために制定されています。
どの土地がどの用途地域に定められているかは、各地区町村の都市計画図で調べられるので、事前にチェックするようにしてください。
なお、都市計画区域のうち、市街化区域では必ず用途地域が定められますが、市街化調整区域では用途地域を定めないこととされています。
※市街化区域とはすでに市街地を形成している区域、およびこれから市街化を図るべき区域のことで、市街化調整区域とは市街化を抑制すべき区域のことです。
建ぺい率・容積率の求め方
建ぺい率と容積率は建築面積と延べ面積の意味が理解できていれば、容易に計算できるでしょう。
以下に具体的な事例をあげ、計算する方法を解説します。
建ぺい率の計算方法
建ぺい率は以下の計算式により求められます。
・建ぺい率=建物の建築面積÷敷地面積×100
例えば100㎡の土地に70㎡の建物が建っている場合、敷地に対する建ぺい率は70%です。ここで算出した建ぺい率が行政であらかじめ定められている建ぺい率を超えることはできません。
建築面積は建物を真上から見たときの外周で求めた面積のことなので、もし建物の階数によって面積が異なる場合は、最も広い階の面積を算入して計算します。
なお、建築面積が敷地面積を超えることは不可能なので、建ぺい率はどんな土地においても、100%以下になることを覚えておきましょう。
容積率の計算方法
容積率は以下の計算式により求められます。
・容積率=建物の延べ面積÷敷地面積×100
延べ面積は複数のフロアの床面積を合計して算出します。
例えば1階が80㎡、2階が60㎡の2階建て住宅であれば、140㎡が延べ面積です。敷地面積が100㎡の場合で計算すると、容積率は140%になります。
ここで算出した容積率が行政であらかじめ定められている容積率を超えることはできません。
容積率の場合は建ぺい率と違い、100%を超えることは珍しくありません。特に高層ビルやタワーマンションなど何十階もの階数がある建物では、1,000%や1,500%を超える数値になるケースもあります。
なお、指定容積率は商業地域の1,300%が最大ですが、特例容積率適用区域(大手町・丸の内・有楽町地区)では、同じ区域内の敷地であれば、容積率の一部を他の敷地の建物に上乗せできるため、例外的に指定容積率を上回ることが可能となっています。
道路幅が狭いときの容積率上限の計算方法
建物の前面道路の幅員が12m未満の場合、道路の幅員に一定の乗数を乗じることで求められます。
容積率を求める乗数は、住居系地域(第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域)および田園住居地域と、それ以外の地域(近隣商業地域や準工業地域など)によって異なります。
・住居系地域および田園住居地域の容積率=前面道路の幅 × 0.4 ×100
・住居系以外の地域の容積率=前面道路の幅 × 0.6 ×100
上記計算式を利用すると、例えば前面道路の幅が5mの場合、住居系地域の容積率の上限は200%になります。
一方、住居系以外の地域では300%となり明確に差が表れます。
ただし、ここで求めた数値と各用途地域の都市計画で定められた指定容積率と比較して、より数値の小さいほうが採用される点に注意してください。
なお、建ぺい率・容積率ともに敷地が異なる地域にわたる場合は、それぞれの地域の面積により、加重平均された割合が採用されます。
建ぺい率・容積率の制約を緩和する方法
建ぺい率と容積率は一定の条件を満たすと、緩和規定が適用されます。
緩和規定を上手に使えば、生活スペースや賃貸面積を増やすことにつながるため、住宅や土地の購入を考えている方はしっかりと理解しておきましょう。
建ぺい率の上限を緩和する方法
建ぺい率の上限が緩和される対象として、まず特定行政庁が指定した角地にある建物があげられます。角地とは2方を道路に囲まれた土地のことをいい、この場合、規定より建ぺい率の上限が10%上乗せされます。
※2つの道路に挟まれた敷地も同様に限度が10%増加します。
次に防火地域内の敷地に耐火建築物(またはこれと同等以上の延焼防止性能を有するもの)を建てた場合と、準防火地域内の敷地に耐火建築物および準耐火建築物(またはこれと同等以上の延焼防止性能を有するもの)を建てた場合、同じく建ぺい率の上限が10%上乗せされます。
「防火地域」とは、火災が発生した際の被害を極力抑えるため、防災対策が必要と指定された地域のことです。多くの建物や商業施設が密集している地域や幹線道路沿いが指定されていることが多くなっています。
さらに以上2つの条件を両方満たした場合は、建ぺい率の上限は20%上乗せされることになります。
容積率の上限を緩和する方法
容積率の場合、建ぺい率のように場所による緩和規定はありませんが、一部の部屋構造は容積率の計算から除外できるとされています。
大きな緩和が適用できる構造としてあげられるのは、地下室がある住宅です。
この場合、住宅として使用する部分の床面積の1/3までが容積率の計算から除外できます。
また、ロフトや屋根裏部屋については、直下床面積の2分の1までが容積率の計算から除外されます。
ただし、ロフトや屋根裏は高さが1,400mm以下とされているため、通常の居住空間ではなく、収納スペースなどとして使用するものと考えなければなりません。
このほか、バルコニーやベランダは建物の外壁から1m以上出ていなければ、延べ面積に含まれないというルールもあります。
注文住宅など自由な間取りの家づくりを検討している方は、こうした緩和措置を上手く活用することで理想的な住宅を建てることもできるでしょう。
建ぺい率・容積率と併せて押さえたい建築制限の例
建物を新築する場合において、建ぺい率・容積率のほかにも、覚えておきたい規制がいくつかあります。
ここでは特に注意すべき規制として、日影規制、斜線制限、絶対高さ制限の3つを詳しく解説します。
日影規制
日影規制とは、建築物の高さの上限を定める決まりです。
周囲の敷地の日照を確保することを目的としており、日照時間が1年で最も短い冬至の日を基準にして、日陰になる場所の上限を定めています。
日影規制を受ける建物は、用途地域ごとに高さや階数で定められていますが、対象となるのは商業地域・工業地域・工業専用地域以外の用途地域です。
また、具体的な基準は都市計画法により各自治体で定められることから、役所への事前確認が必要になります。
斜線制限
斜線制限とは、隣に立つ建物の風通しや採光を確保することを目的とした決まりです。
建物の高さを制限しており、建物の北側の日照を確保する「北側斜線制限」や道路の幅の1.25倍または1.5倍以下(傾斜勾配)まで高さを規制する「道路斜線制限」などがあります。
北側斜線制限は第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、田園住居地域のみ適用されます。
ただし、日影規制があるときは、第一種・第二種中高層住居専用地域に北側斜線制限は適用されません。
一方、道路斜線制限はすべての用途地域および用途地域の指定のない地域においても適用される点に注意しましょう。
絶対高さ制限
絶対高さ制限は、建築物の高さを制限する決まりです。規定に該当する土地においては、指定された高さを超える建物を建てることが禁じられます。
絶対高さ制限は、用途地域が第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域に該当する敷地に適用されます。
なお、容積率より優先度が高いため、容積率で計算された数値よりが絶対高さ制限の数値を上回っていても、指定された高さを超える建物は建てられないことになります。
建ぺい率・容積率を正確に理解しよう
建ぺい率・容積率は日常的に用いられる指標ではないため、家づくりに関わった経験のない方は、何を表した数値なのかイメージしにくいかもしれません。
しかし、計算式そのものは難しくなく、建築面積と延べ面積が理解できれば、容易に求められます。
また、緩和規定やその他の制限を見極める際は、その土地の用途地域の種類や防火地域に該当するかどうかを調べる必要があります。
このような情報はインターネット上で検索したり、各自治体へ問い合わせたりすれば明らかになりますが、調べ方がよくわからない方は、信頼のできる専門家へ相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
大東建託では土地活用に関する相談を無料で受け付けていますので、お悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。
宅地建物取引士・FP2級の知識を活かし、不動産専門ライターとして活動。賃貸経営・土地活用に関する記事執筆・監修を多数手掛けている。ビル管理会社で長期の勤務経験があるため、建物の設備・清掃に関する知識も豊富。
- 【保有資格】
- ・宅地建物取引士
・FP2級
・建築物環境衛生管理技術者
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