アパート経営を始めたときにかかる費用と続ける際にかかる費用は?
公開日: 2023.08.23
最終更新日: 2024.08.08
アパート経営において、初期費用と継続的にかかる費用(ランニングコスト)は、物件の収益性を左右する重要な要素といえます。
初期費用を抑えつつ、適切なランニングコストで経営を続けることが、アパート経営で利益を上げるコツといえます。
そのためには初期費用とランニングコストの内訳や、費用の目安を知っておくことが大切です。
そこで本記事ではアパート経営の初期費用と、続ける際にかかる費用について解説します。
>>関連記事:「アパート経営完全ガイド|建築プラン立てから完成後の業務まで」
>>関連記事:マンション経営の種類|それぞれのメリット・デメリットは?
目次
1.アパート経営にかかる初期費用
アパート経営では物件の建築費用だけでなく、調査費、測量費や登記費用などさまざまな初期費用がかかります。
また、各種税金や保険料がかかる点も忘れてはいけません。
ここではアパートにかかる初期費用の種類を紹介します。
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本体工事費
本体工事費は構造のほかに建物の規模などによっても変化します。
基本的に全体の規模が大きいアパートであるほど、工事範囲が広くなるため費用も高額になりやすいことを、注意点として覚えておきましょう。
このほか、建物の形や立地条件によっても工事費は変化します。
例えば同じ条件で比較すると、複雑な形の建物のほうが施工が難しくなるので、工事費も高額になりがちです。
また、狭い道路に面している場所や住宅密集地では工事が難しく、多くの時間や労力がかかるため、費用は割高になります。
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建物附帯工事費
建物に附帯する工事費用としては、塀、庭、駐車場などの外構工事費と、アパートに別途取り付ける家具・設備の取り付け費用が挙げられます。
大手の建築会社であれば本体工事費に含めて一体で工事するのが一般的ですが、中小の建築会社はこれらの附帯工事を行うことができない場合もあり、別途工事業者を発注する必要があります。
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上記に該当しない工事費用
- 土地の調査費、測量費
アパートの設計を行う上で、測量図がない場合は、土地の調査費と測量費が必要となる場合があります。
費用相場は30万円ほどですが、現況により増減します。
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- 家屋調査費
アパートを建築する予定の場所の近隣に家屋がある場合、家屋調査をすることがあります。
家屋調査とは工事の前後で近隣の家屋の状態を確かめることを指します。
例えば、工事前から近隣の住宅に小さな亀裂があったとします。もし家屋調査をせずにアパートの建築を始めたら「工事のせいで家に亀裂が入った」とトラブルに発展する可能性があります。そういったトラブルを未然に防ぐために家屋調査を行います。
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- 登記費用
宅地建物に設定されている所有権や抵当権などの権利は、法務局に保管されている不動産登記簿に登記されています。
建物を新築する場合には所有権保存登記、不動産を購入した場合は所有権移転登記を行い、その不動産が自身のものであることを設定することが必要です。
この登記費用として、登録免許税という税金を納める必要があります。
登記を司法書士へ依頼する場合は、司法書士報酬が別途必要です。
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その他の税金
- 消費税
非課税である土地購入費などを除く費用に、消費税10%の税額が発生します。
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- 不動産を取得したことに対して課せられる不動産取得税
土地や建物などの不動産を新築や購入で取得した場合、固定資産税評価額×3%の不動産取得税が発生します。
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- 取得の際に結んだ契約書に対して課せられる印紙税
印紙税とは、文書を作成した際に納付しなければならない税金です。
文書に収入印紙を貼り付け、割り印を押印することで納付します。不動産投資においては、不動産の売買契約書や建物の建設工事請負契約書を作成する際、契約金額に応じた印紙代が必要となります。
その他、土地にかかわる税金については、以下のコラムで詳しく解説しています。
関連記事>>土地にかかわる税金について(不動産取得税・登録免許税・印紙税編)
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保険料
災害発生のリスクに備え、修繕や建て替えの資金を確保する目的で、火災保険の加入は必須です。
地震保険料・火災保険料などの各種保険料は分割支払いもできますが、契約時にまとめて支払うこともできます。
保険費用は建物の構造や立地により増減します。
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ローンの手数料
地方銀行・信用金庫・信用組合などの金融機関から住宅ローンなどの融資を活用する場合は、ローンを借りる際に事務手数料が発生します。
手数料は定額の場合と借入金額に応じて増減する定率の場合があります。数万円から数十万円が相場となります。
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入居者募集にかかる費用
完成したアパートに、入居する人を集めるための費用が必要です。入居者募集は不動産仲介会社へ依頼するのが一般的です。
仲介手数料は成約賃料の1か月分が上限となります。
通常の募集活動に加え、オーナーの希望で広告を出したい場合には、広告料が別途必要です。
2.アパート経営を始めた後に発生する主な費用
アパート経営で多くのコストが発生するのは、始めたときだけではありません。
経営を始めた後も、維持管理費用、修繕費用、水道・光熱費、税金、リフォーム費用、メンテナンス費用などのランニングコストがかかります。
各項目に対して、どの程度のコストがかかるか事前に把握し準備しておくことが、失敗しないためのポイントといえます。
ここではアパート経営を始めた後に発生する主な費用を紹介します。
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維持管理費
アパートには、さまざまな管理業務が発生します。
管理業務には共用部の清掃や点検、家賃の回収、入居者からの問い合わせ・トラブルなどがあり、大家が自主管理で行うのは手間がかかるでしょう。
これらの管理業務は、不動産管理の専門会社へ委託することができます。
管理費用の目安は家賃収入の5~10%ほどですが、信頼のできる委託業者を見つけることができれば、手間をかけずに不労所得を得ることができるでしょう。
管理委託とは別の手法として、建物を一棟まるごとサブリース会社へ貸し出し、業者が入居者へ転貸するサブリース方式というのもあります。
サブリース方式は目安として家賃収入の10~20%ほどのサブリース料がかかってしまいますが、サブリース会社が各入居者との転貸借契約を締結し、転貸人として管理を行ってくれるメリットがあります。
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修繕費
アパートは老朽化に伴い修繕箇所が増えていきます。
将来にわたっても収益を生み出す物件であるために、放置せずに維持費用をかけましょう。
賃貸アパートでは、入居者が入れ替わる度に室内のクリーニングと小修繕を実施します。
また、およそ10年~20年ごとに屋根・外壁塗装を中心とした大規模修繕が必要です。
通常の修繕とは別途、リノベーションを行うことで、資産価値をより高めることもできます。
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税金
賃貸経営で毎年発生する税金は、建物・土地にかかる固定資産税・都市計画税です。
建物は固定資産税評価額(課税標準額)に標準税率である1.4%、土地は0.3%を乗じて算出します。
土地や建物の種類、地域によっては、特別控除や軽減措置を適用できる場合もあるので、事前に確認するようにしましょう。
3.アパート経営に必要な資金を用意するには
アパート経営を始めるためには、多くの費用がかかります。
自分の資金だけですべての費用を捻出するのは困難なので、不動産投資ローンやアパートローンなどを利用するのが一般的です。
以下に必要な資金を用意するための方法を紹介します。
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アパートローンを活用する
アパートローンは、投資用不動産を取得する際に利用できるローンの1種です。
アパートローンでは、融資対象となる投資用不動産の収益性や資産価値、契約者の資産状況が審査されます。
ローンを活用するメリットは、レバレッジ効果です。
レバレッジとは「てこの原理」の「てこ」の意味で、小さな労力で大きな効果を発揮することを指します。
例えば1億円、年間家賃500万円の物件を全額自己資金で購入した場合、自己資金に対する表面利回りは500万円÷1億円で5%です。
しかし、自己資金1,000万円・ローン借入額9,000万円で購入した場合、自己資金に対する表面利回りは500万円÷1,000万円で50%まで跳ね上がります。
実際の実質利回りはローン返済額などでこの通りとはなりませんが、少ない自己資金で効率良く資産運用できるのがレバレッジ効果の強みです。
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ローンを組むときのポイント
- ローンの審査基準を満たす
金融機関は、借入期間中融資の返済が滞りなく行われるかを判断するために、オーナー自身の年収などの返済能力・信用情報と物件の収益性、事業計画書の正確性を審査します。
金融機関の認可が下りないとローンは利用できないことから、審査基準を事前に把握し、クリアするよう心がけましょう。
融資で金融機関が重視する条件や、活用する流れ、必要な書類については、以下のコラムで詳しく解説しています。
関連記事>>不動産投資で融資を活用する流れや必要な書類は?
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- 綿密な返済プランを立てる
アパート経営の資金をローンで借り入れる場合、多くは長期的に返済を続けることになります。
融資限度額まで借入額を増やすと、ローン返済額が膨らみ、月々の負担が増えてしまうため、アパート経営で起こり得るリスクを把握した上で資金計画を検討しましょう。その上で重要なのが物件価格の上限を想定することです。
また、固定金利、変動金利のどちらを利用するかも重要なポイントなので、返済期間や将来の金利の動向なども考えながら、慎重に検討するようにしましょう。
物件を購入した不動産会社へ相談すれば、提携する金融機関の提携ローンを紹介してもらえたり、アドバイスをくれたりするケースがあります。
さらに不動産管理会社やハウスメーカー、税理士など専門家の意見を参考にすることも大切です。
アパート経営で起こり得るリスクは、主に以下のものが挙げられます。
*経年劣化による修繕の発生・空室増加・家賃収入の減少
建物の経年劣化を放置すると競争力を失い、周辺の競合物件に入居者が取られてしまいます。
収支シミュレーションにおいては、修繕やリノベーションを実施するための費用を見込んでおきましょう。
*災害発生リスク
地震・火災・台風・水害など、災害発生を避けることはできません。
災害により物件に損傷が発生しても安心できるよう、各種損害保険に加入し、その費用を見込んでおきましょう。
4.アパート経営の初期費用を抑える方法
アパートローンを活用すれば、全額自己資金を用意する必要が無く、自己資金が不足している状態でもアパート経営は始められます。
しかし、経営のリスクを最小化するためには、自己資金で用意できる頭金(費用)の割合を無理のなく目的にそぐわない範囲で増やしたり、建設費用などの初期費用を抑える努力をしたりすることが大切です。
以下にアパート経営の初期費用を抑える方法を紹介します。
4-1.外観や設備をシンプルにする
アパート建築時に特殊な外観や設備を採用すると、建設費の増加につながる傾向があります。
特殊な外観や設備は高価な材料を使用するケースや、施工難易度が高いケースが多いためです。
例としては、特注のキッチンを設置する、海外製の設備を使う、共用部分や部屋の内装に高価な床材、壁材を使う、複雑な間取りの部屋を作るなどがあげられます。
そのため、初期費用を抑えたければ、外観や設備は入居者が求める標準的でシンプルなもので揃えるようにしてください。
もし豪華な設備があっても、入居者が求めているとは限らないので、必ずしも空室対策につながるとは限りません。
できるだけ入居者の目線に立ち、適切な外観や設備を採用することが理想的な対応といえます。
4-2.相見積もりを取る
相見積もりとは、複数の会社から見積もりを取得し、価格の比較をすることをいいます。
複数の会社の見積もりを見て価格を比較すれば、平均的な価格が見えてくるので、より納得できる判断がしやすくなるでしょう。
また、同程度の内容でより安価な金額で実施できる業者が見つかった場合、工事費の価格交渉がしやすくなるメリットもあります。
ただし、価格に加えて、品質や信頼性なども検討材料にすることが大切です。
いくら安価であっても、施工業者の技術が低く、環境の悪いアパートが建築されてしまった場合、入居率の悪化を招き、結果的に大きな損失を招くリスクがあります。
ローコストのアパートは、初期費用は安価ですが、修繕やメンテナンスなどランニングコストが高くなりやすいという可能性もあるので気を付けましょう。
4-3.中古のアパートを購入する
中古アパートは新築アパートに比べて物件価格が安いため、購入時の負担を軽減できます。
不動産は基本的に築年数が経過すると資産価値が下落し、その分価格も下がるためです。
したがって、新築物件よりも安く購入できることが多く、高利回りになりやすいメリットがあります。
ただし、中古アパートは新築アパートのように最新設備が整っておらず、入居付けの面では不利になりがちです。
築年数の古い物件においては、リフォームやリノベーションを施して、新築時のような真新しい環境を提供するなどの対策が求められます。
>>関連記事:中古アパートの経営とは?新築と比べたメリットや物件選びのポイント
5.初期費用を理解してアパート経営をスムーズに行おう
今回は、アパート経営にかかる費用について説明しました。
アパート経営をする上で重要なのが収支計画です。
今回ご紹介した諸費用を具体的に試算し、不動産投資会社が提案する建築プランが本当に成功するのかを検討しましょう。
また、管理や工事については、複数の業者に相談し、その内容と価格を比較することが重要です。
費用をうまくコントロールして、手取り収入を増やしましょう。
特に初期費用は収支計画を考えるうえでの重要なポイントです。初期費用を抑えられれば、収支は大きく向上するでしょう。
しかし、初期費用を抑えすぎると、維持管理費が高額になりやすく、長期的に考えると逆に損失となる可能性もあります。
さらに最近は職人不足や賃上げなどによる建築費高騰で、初期費用を抑えることが以前より難しくなっています
そのため、初期費用だけではなくランニングコストも考慮して経営を続けることが、より重要になったといえるでしょう。
もしアパート経営に関する悩みがあれば、信頼できる不動産会社へ収支の計算方法やシミュレーションの相談をしてみることをおすすめします。

■監修者プロフィール
有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。
【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者
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