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リフォームの流れと注意点【費用編】

公開日: 2023.03.10

最終更新日: 2023.03.13

「入居者が入りにくくなってきた」  「もう少し設定家賃を上げたい」という問題が発生した場合、効果的な対策の一つに「リフォーム」が挙げられます。

ただ、何から手を付けていいか分からない・・・という方も少なくないでしょう。

 

10回の連載の形で、リフォームの基本から現状、今後についてお伝えしています。

今回は第6回目・・・「リフォームの流れと注意点の費用編」・・今回もタイトル通り、リフォームをしようと思った場合の流れと注意点を費用の観点から見ておきましょう。

 

1.リフォームの基本的な流れと注意点

別のコラムでもお伝えしましたが・・・リフォームの基本的な流れは、おおよそ以下の通りになります。

 

  • STEP①:賃貸経営に精通している不動産業者に相談
  • STEP②:プラン比較や詳細な見積もり
  • STEP③:正式に依頼+その他

 

事前に注意が必要なのが「費用の支払い時期」です。

金額の多寡によって変わってきますが、補修程度であれば、工事完了後「一括支払い」が基本になります。

 

ただし、近年の計画的なリフォームは大規模なリフォームになっています。大規模なリフォーム工事は他の工事もまとめて行った方が工事費用を下げることができるためです。その場合、着手金と合わせて2回、場合によっては中間金の3回に分けて支払うケースもあります。

 

この点は、不動産業者への依頼(契約)の際にしっかり確認し、資金繰りなどが無理にならないよう事前に準備しておきましょう。

2.価値向上のためのリフォーム費用の目安は?

リフォーム費用のおおよその目安は「室内を元通りに戻す"原状回復"よりは高く、間取りなどを大きく変更する"リノベーション"よりは安い」ということになります。

 

実際にいくら必要になるかはケースバイケースで変わります。

 

具体的には、「どの程度の"規模"と"品質"のリフォームをするか?」で答えが変わってきます。規模が大きく、価値向上の度合いが高くなれば、費用も多額になります。

例えば、規模の観点から考えると、1部屋だけリフォームをするケースと全部屋のリフォームをするケースで当然に答えが変わってきます。

 

また、価値向上の観点から考えると、最新で最高品質の設備を取り揃えるのか?型落ちの一般レベルの品質の設備を取り揃えるのか?により、変わることは理解できると思います。

最終的な費用もかなりの開きが出てくるはずです。

 

十分な予算を計画的に確保できたケースとそうでないケースでは、結果は変わってきます。もちろん、不十分でもやらないよりはやった方が良いとは思いますが、十分な効果が期待できるかは時と場合により変わってくるでしょう。

 

1つの基準ですが・・・リフォームの予算は「周辺の物件次第」でも変わります。

新築が立ち並ぶような地域なら相応のリフォームが必要な反面、同じ築年数の賃貸物件が多い地域なら、わずかなリフォームでも十分な効果が見込める可能性があります。実際は、そういう地域ほど、他の賃貸物件と差別化できるので、リフォームを進めるべきだと考えられます。

 

 

2-1.国交省のガイドブックから知る参考価格!?

前回もお伝えしましたが、民間賃貸住宅の健全な運営のために、国土交通省から「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」が公表されています。このガイドブックでは「修繕」について書かれています。修繕よりもリフォームの方が費用が掛かるので、「最低限、この程度の費用は必要!」という意味で、理解していきましょう。

 

この中に、以下のような「リフォーム費用の目安」が掲載されていますから、是非、参考にしてみてください。

画像①.png

出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」

 

例えば、木造10戸(1LDK2DK)のケースを参考にすると、30年間で一戸あたり「216万円」掛かると想定されています。時期次第でかかる金額は変わりますが・・・期間平均で均すと・・・1年当たりでは「7.2万円」、1ヶ月当たりでは「6,000円」になります。つまり、一戸あたり1ヶ月当り「6,000円」を確保しておけば、足りる計算になります。

 

ただ、近年は、耐久性の高い資材や高品質な設備も続々と誕生しています。また、折からの物価高により資材価格も上昇しています。実際のリフォーム費用とは相応の開きが生じています。

 

また、以前の記事:リフォームが求められる理由とその対応③「カネ編」でもお伝えした通り、費用対効果が高いリフォームをしようとするほど、どうしても1回あたりのリフォーム費用は高くなりがちです。例えば、仮設費が必要な工事はまとめて1回で済ませた方が効率的なのですが、その分、1回あたりの費用は高くなります。

「入居率の改善」など、ご自身がリフォームを行う費用対効果が高い目的(必要性)を再確認し、計画的にリフォームを行うようにしましょう。

 

 

3.リフォーム費用と金利の動向

資材価格も含めた建築費(ひいてはリフォーム費用)が上昇しています。以前にもお伝えした通り、一般財団法人、建設物価調査会の2022年12月「建設物価建築費指数」によると、建築費は以下のように推移しています。

 

画像②.png

出典:建設物価調査会 202212月「建設物価建築費指数」

 

この通り、2019年後半から徐々に上がり始め、特に2021年以降はコロナ禍の長期化による影響もあり、建築費はどんどん値上がりしてきている状況です。2022年以降はロシアのウクライナ軍事侵攻や円安による物価高の影響を受けて、建築費もより一層上昇傾向になっています。現時点で、この値上がり基調は、どこまで続くか予測がつかない状況です。

 

もちろん、建築費も含めた物価は基本的に需給関係で決まりますから、値上がりが永遠に続くことは考えにくいので、いずれ落ち着くはずです。しかし、一度上がってしまった物価は簡単には値下がりしないのが経済の原則でもあります。

つまり、費用の観点から考えると、リフォームを実行する時期が遅くなるほど不利になる可能性が高いわけです。

 

また、リフォームローンなどを使うことを検討されているのなら、金利の動向にも注意が必要です。長らく、日本の金利は「ゼロ金利政策や低金利政策」の下、長期金利・短期金利とも極めて金利が安い状態でした。

しかし202212月に、日銀が事実上の金利上昇を容認する姿勢に変化しました。

今回の発表は固定金利の基準となる長期金利に関することでしたが、いずれ変動金利の基準である短期金利にも影響が広がる可能性は否定できません。

3-1.「空室」は費用!?

リフォームをするとなると、どうしても相応のリフォーム費用が必要になります。

すでに十分な費用を確保できているならともかく、物件が古くなり入居者が入りにくくなる中、空室が増え、家賃収入も減ってくるので、どうしても大きな出費を控えたいのは当然です。

 

しかしこのような時こそ冷静に考えるべきです。

例えば、賃貸経営において「空室」以上の費用は存在しないと言えます。

なぜなら、空室は一切の利益を生み出さないばかりか、維持管理のコストは賃貸している物件同様、発生します。その空室がリフォームを必要とする状況なら、どんなに時間が経っても自然に解決などしません。むしろ時間が経つほど、さらに外観や設備の経年劣化が進み、状況は悪化していくはずです。

 

 

別のコラム「リフォームが求められる理由とその対応③「カネ編」」でもお伝えした通り、家賃の減額さえ有効な手段にならない以上、適切なタイミングでリフォームや建替えを行い、品質を向上させることは必要不可欠な対応だといえます。いわば、リフォームや建替えは、長期の安定した賃貸経営をおこなうために重要な「先行投資」と考えられます。

4.今回のまとめ

リフォームの費用は、リフォームの規模と品質によって変わってきます。

金額が大きくなるほど、工事後の一括ではなく分割払いになることがある点に注意が必要です。

費用対効果が高いリフォームをしようとするほど1回あたりの費用は大きくなる上、今はリフォーム費用自体が上昇傾向な点も気にすべきといえます。

それでもリフォームをしないと入居率は改善できませんから、賃貸経営に精通している不動産業者にも相談しながら、早めに対処していきましょう。

 

いずれにしろ、ご自身の価値基準を大切にしつつも、時流に沿った世の中の価値基準でリフォームが行えないと、結果的に賃貸経営自体が改善できず厳しい状況になる可能性もあります。そのためにもリフォームの必要な時期を常に意識しつつ、費用面の準備を常に進めておきましょう。

■監修者プロフィール

株式会社優益FPオフィス 代表取締役
佐藤 益弘

マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】CFP®/FP技能士(1級)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)