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リフォームが求められる理由とその対応③「カネ編」

公開日: 2023.02.27

最終更新日: 2023.02.27

「入居者が入りにくくなってきた」  「もう少し設定家賃を上げたい」という問題が発生した場合、効果的な対策の一つに「リフォーム」が挙げられます。

ただ、何から手を付けていいか分からない・・・という方も少なくないでしょう。

 

10回の連載の形で、リフォームの基本から現状、今後についてお伝えしています。

今回は第3回目・・・「カネの変化」・・経済状況などが原因でリフォームが求められる理由から対応方法について見ていきましょう。

 

1.現在の入居者層の経済状態について

まず、お客さまである入居者の懐事情を確認しましょう。

厚生労働省の令和2「厚生労働白書」に、過去約30年の平均給与の推移が以下のように掲載されています。

画像①.png

出典:厚生労働省 令和2年「厚生労働白書」

 

ニュースでも言われている通り、最低となったリーマンショック(2008年)直後の頃から見れば少しずつ上がってきていますが、現在の平均給与は30年前よりも低い水準です。

 

バブル以前のように、黙っていても、今後給与が上がっていくと期待できる状況なら、人々は安心してお金を使うので、物価も上がり、結果として、家賃も上がっていくという流れになります(事実、バブル前まではそういう状況でした)。

 

ただ、バブル以後はお給料が上がっていない≒水準が下がっていることから、多くの人々が「今後もあまり収入が上がらないだろう」と感じているはずです。

 

そのような状況下では、人はおのずと「節約」を意識しますから、物価も上がりづらく安定するので、家賃も上がりづらくなった・・・そういう状況が30年近く続いていたのかもしれません。

 

 

1-1.近年の物価上昇による実質賃金の低下

ただ、後ほど理由はしたためますが、昨年2022年は久々にこの状況に変化が起き、収入が上がらない中でも、物価が少しずつ上昇してきている状況です。

 

総務省統計局の2022年11月「消費者物価指数」によると、最近の物価は以下のように推移しています。

画像②.png

出典:総務省統計局202211月「消費者物価指数」

 

明らかに物価が上昇していますね。

この直接的な原因は「円安」です。この円安をもたらした要因は「ロシアのウクライナ軍事侵攻」と「新型コロナ禍の長期化」により需給が逼迫し、資源も含めたさまざまな価格に転嫁されたためです。 軍事侵攻だけでなく、新型コロナ禍については2023年1月時点でも終わりが見えづらい状況ですから、しばらくの間、物価は上昇し続けるかもしれません。

 

家賃を視点に考えると、収入が増えない中で(家賃以外の)支出が増えれば、必然的に家賃に回せるお金(余裕)は少なくなってしまう・・・つまり、家賃相場は弱含みということになってしまいます。

 

2.現在の家賃動向について

では、実際の家賃の動向を見てみましょう。

 

総務省統計局の平成30年「住宅・土地統計調査」によると、以下のようになっています。

画像③.png

出典:総務省統計局 平成30年「住宅・土地統計調査」より筆者作成

 

見ていただくとわかるのですが、この統計を見ると、1973年から今まで、家賃が下がったことはないことがわかります。1991年に始まったとされるバブル崩壊以降は上昇具合が緩やかになっていますし、2008年にはリーマンショックもありましたが、それでも家賃は緩やかながら上がり続けています。

 

別の統計もあります。住宅改良開発公社の令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測(展望)調査」によると、転居先に希望する家賃と、実際の家賃変動は以下のような結果です。

画像➃.png

出典:住宅改良開発公社 令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測(展望)調査」

 

この統計は、上の棒グラフが過去と比べての実態を、下の棒グラフが転居先に求める未来の希望を示しています。
説明の順序が逆になりますが、下の棒グラフによると48.9%・・・約半数の人がより割安な家賃を求めています。しかし、おもしろいことに上の棒グラフを見ると、実際には65.1%もの人が家賃が高くなるところへ引っ越していることがわかります。

 

つまり、入居者は単に家賃が安いか高いかだけでは賃貸物件を選んでいないということです。

 

実際は、大家として入居者が入りにくくなった場合に、考えるのが「家賃を下げる」という対策でしょう。
しかしただ家賃を下げれば入居者が見つかるかと言われればそういうわけではありません。

 

2-1.技術革新など「モノの変化」との兼ね合いがある

その1つの理由が「モノの変化」との兼ね合いです。

例えば、最近では、誰もが「スマホ」を持っています。格安スマホが主流になっていますが、経済苦を理由に「スマホを持たなくなった」という方は滅多に見かけないのが実情です。

つまり、どんなに経済的に厳しくても、日頃からスマホを使っている方からすれば、スマホのない生活など考えられないことが伺えます。

 

これと似た理屈が、賃貸物件にも起こっています。

前回の記事でもお伝えした通り、20年ほど前とは違い、時代の要請に応えて、トイレの温水便座やインターネット無料サービス、防犯カメラや宅配ボックスなどの設備のある賃貸住宅は増えています。

 

これらの機器を使ったことがない、経験の少ない世代にとっては無くても気にならないかもしれません。ただ、すでにそれらを当然のように使っている世代であれば、ないことで不便さを感じて、その物件にネガティブな心象を与えます。つまり、人は便利さを享受すると、スマホと同じく、相応のお金がかかろうとも「ない生活など考えられない」ということになるのです。

 

これが、経済的に厳しくとも家賃が下がらない、家賃を下げるだけでは入居率が改善しにくい理由になります。

 

大家の視点に立つと、何とか入居者が納得できる家賃の範囲で、入居者が求める最低限の住環境を整えることが大切になります。

 

 

3.カネの変化に合わせた対応=費用対効果の高いリフォーム

そのために必要な方策が、「リフォーム」になります。

 

特に、"費用対効果の高い"リフォームが大切です。

 

工事を行うに当たり、大切になるのは「費用対効果」になります。

たとえば、耐用年数15年の物件A(価格3000万円)と、耐用年数30年の物件B(価格5000万円)なら、どちらのほうが、費用対効果が高いでしょうか?

価格だけ見れば、安い物件Aの方が、投資額が小さく、投資効率が高いと思いがちです。

 

費用対効果が高いとは、保有期間当たりの価格=時間単価で考えるべきです。1年当たりの価格で比較すると、物件Aなら1年あたり200万円、物件Bなら1年あたり約167万円となります。

つまり、この理屈なら、当然に選ぶべきは物件Bになります。

 

実際に、「どこをどのようにリフォームするか」を決めるのは、大家の趣味趣向ではなく、入居者ニーズに合致させるべきです。ですから、入居者ニーズの調査をしっかり行い、状況に応じて適切なリフォームをしていきましょう。

4.今回のまとめ

現在の日本は、30年前と比べても平均年収が下がっている状況です。
そこに追い打ちのように、円安による物価高が起こっています。しかし一方で、それでも家賃は下がっておらず、ひいては入居者が満足する最低限の住環境は質が上がってきている傾向です。

家賃を安くするだけでは入居者対策にならない時代ですから、賃貸経営のノウハウをもつ業者に相談しながら自分の物件に一番合う方法を模索し、入居者に選ばれる賃貸物件にしていきましょう。

■監修者プロフィール

株式会社優益FPオフィス 代表取締役
佐藤 益弘

マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】CFP®/FP技能士(1級)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)