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リフォームが求められる理由とその対応①「ヒト編(人口や世帯数)」

公開日: 2023.02.16

最終更新日: 2023.02.24

「入居者が入りにくくなってきた」「もう少し設定家賃を上げたい」という問題が発生した場合、効果的な対策の一つに「リフォーム」が挙げられます。

ただ、何から手を付けていいか分からない・・・という方も少なくないでしょう。

 

そこで・・・これから10回の連載の形で、リフォームの基本から現状、今後についてお伝えしたいと思います。全てのコラムが関連してきます。少しずつでも目を通していただき、みなさんの保有物件(賃貸物件)のリフォームに役立ててください。

 

まず、第1回目の今回は・・・「ヒトの変化」によってリフォームが求められる理由と対応方法について見ていきましょう。

1.人口減少にともなう「一世帯あたりの居住人数」の減少

まず、将来予測をする上で、最も基本となる人口の推移を見ていきましょう。

厚生労働省の平成27年「厚生労働白書」によると、日本の人口は2008年を境に減少傾向で、以下のように推移するという予想がされています。

 

 

画像①.png

出典:厚生労働省 平成27年「厚生労働白書」

 


このデータは8年ほど前のデータですが、20227月時点の日本の人口は約12,512万人となっていますから、おおよそ見通し通りに推移しています。

今後、この通りに推移するとすれば、2050年頃には約2,500万人減の1億人を割り、2070年頃には約4,000万人減の8,000万人をも下回ることになります。

つまり、人口動態だけを見ると数字的に既存の住宅ニーズは減少し続けます。

 

ただ、賃貸経営・・・住宅ニーズを把握するには人口よりも世帯ベースで見るのが適切でしょう。
総務省統計局の令和2年「国勢調査によると、世帯数と一世帯あたりの人員数は以下のようになっています。

記事②.png

出典:総務省統計局 令和2年「国勢調査」

 

 

2008年をピークに人口自体は減少していますが、世帯数は増えている状況です。
ただ、その実態は「一世帯あたりの居住人数」が減ってきています。つまり、世帯数は増えているものの、同じ部屋に同居する人の数が1人に近づいてきている=単身世帯が主流になってきているわけです。
当然に必要になる居住面積や間取りなど、入居者に求められている基本的なニーズも変わってきています。

 

ちなみに、「2023年に世帯数が頂上を付け、以後は減少する」という政府の別統計=予測があることも認識しておきましょう。

 

まずは、量的な観点・・・人口減少、ひいては一世帯あたりの居住人数が減ってきていることによって、住宅に対するニーズにも変化が起きているという点を、しっかり理解しておきましょう。

1-1.実は・・・「賃貸へのニーズ(量)」はほとんど変わっていない!?

総務省統計局の平成30年「住宅・土地統計調査」によると、過去約45年の持ち家数・借家数・持ち家住宅率の割合は、以下のように推移しています。

 

 

画像③.png

出典:総務省統計局 平成30年「住宅・土地統計調査」

 

 

持ち家数は右肩上がりに増加しているのがわかります。
ただ、持ち家住宅率はほとんど変化がなく、おおよそ60%程度で推移しています。

視点を変えれば、常に40%程度の方は借家住まいの方であるとも言え、そのニーズの受け皿として借家も必然的に数が増えているわけです。

 

先ほどの厚生労働白書にもあるのですが、1970年頃から2000年頃にかけては・・・上昇率は低くとも、今と違い人口が増加していた時代です。そして、マイホーム取得が特に社会的に推奨されていた時代でしたから、持ち家数が増加していたのは自然ともいえます。


それでも40%程度の方は借家に住んでいたことを考えると、仮に今後、見通し通りに人口が減少したとしても、今後も40%程度の方は借家に住む可能性が高いと思われます。

 

このため、仮に人口減少が進んだとしても、決して賃貸ニーズがなくなるわけではありません。
ただ、一世帯あたりの人員数が減少し、既に単身世帯が多数派になっている以上、賃貸住宅へのニーズも変化するのが当然です。

 

変化していく入居希望者のニーズを確実につかむためにも、常に賃貸物件という「商品力の強化」が今まで以上に重要になってくるわけです。

 

 

2.高齢化にともなう「ニーズ(質)の変化」

先ほどの厚生労働白書をもう一度見てみましょう。今後の各年齢区分の推移が分かりやすく確認できると思います。

画像①.png

 

出典:厚生労働省 平成27年「厚生労働白書」

 

 

少子化の影響を受けて、働き手の中心である生産年齢人口(1564歳人口)は既に減少が著しく、結果として65歳以上の高齢者人口の割合が増加している状況です。この状況に今後も大きな変化は起きないでしょう。

これは視点を変えれば、「高齢者」をターゲットにしてニーズを取り込めば、賃貸経営も含めて商売がしやすいということになります。

 

ただ、現役世代と高齢者では「求める居住環境」が大きく違うのが当然です。

たとえば、国土交通省の2022年「高齢者の住まいに関する現状と施策の動向」に、以下のように「高齢者向けの改修ガイドライン」が示されています。

 

画像➃.png

出典:国土交通省2022年「高齢者の住まいに関する現状と施策の動向」

 

 

活動がアクティブで身体的にも健康的な若年層と比べて「日常生活空間の合理化(コンパクト化)」や「バリアフリー」などが特徴的な違いとして示されています。

 

一般的にも、コロナ禍以降は、今までよりも広い居住面積や間取りが多い物件が求められています。
高齢者層が増加している中、バリアフリーはいやが上でも気になる項目です。実際、高齢者の入居に及び腰の大家さんもいらっしゃいますが、現役世代の全体数が少なくなる中で、高齢者層は確実に大きな比率になってきます。誰もが歳を取る以上、現役世代と比べ行動しにくくなりますから、加齢に配慮した賃貸物件を準備することも一案です。

2-1.合わせて「未婚化」も見逃せない変化

現役世代にも視点を移してみましょう。内閣府の令和4年「少子化社会対策白書」によると、昨今の日本の婚姻件数・婚姻率は以下のように推移しています。画像⑤.png

出典:内閣府 令和4年「少子化社会対策白書」

 

 

年々、結婚している方が減少してきているのが確認できます。そうすると、少子化による高齢者の増加だけでなく、「未婚化による単身世帯の増加」という側面も合わせて確認できるわけです(これが世帯数の増加の一因でもあります)。

 

全体の割合で見れば、まだまだ結婚する人のほうが多いものの、国立社会・人口問題研究所の予測では、2040年頃の50歳の方は男性の約3割、女性の約2割が未婚のままでいる見通しになっています。

 

そして、少子化の元になるこの未婚化については、国が危機感を抱いているポイントです。今のところ特に有効な対策手段は見つかっていないのが実情で、未婚化については、国の見立てより早いペースで進行し、連動して少子化も加速しています。これは仮に結婚しても晩婚化や経済的な問題を背景に、「子どもを作らない(作っても1人ないし2人)」という夫婦が増えていることも影響しているようです。

 

人口減少によって一世帯あたりの人員が減る中で、少子化・未婚化によって高齢世帯・単身世帯が増加する。誰もが結婚して子供は23人が当然とされてきた時代からすれば、極めて大きな変化といえます。

 

今後、時間が経てば経つほどみなさんの保有物件とニーズの乖離が起きかねません。

早い段階で今後の時代の変化を見据えて、リフォームによって受け入れ態勢を整えておくと良いでしょう。

3.具体的な「高齢者や単身者向けリフォームの例」について

国は高齢者の「介護問題」に注力しています。

先ほどの国土交通省の2022年「高齢者の住まいに関する現状と施策の動向」によると、介護問題への具体的な対策の一つとして、住居のリフォームとともに「サービス付き高齢者向け住宅」の建設を推奨していることが伺えます。

 

住居のリフォームの具体的なイメージは、以下の通りです(一戸建ての場合)。

 

画像⑥.png

出典:国土交通省2022年「高齢者の住まいに関する現状と施策の動向」

 

 

サービス付き高齢者向け住宅とは、「(要介護度の低い)高齢者を受け入れる賃貸住宅」です。単に賃貸するだけでなく、安否確認や生活相談などのサービスも必要となり、設備基準や人数基準などもあります。ただ、サービス付き高齢者向け住宅として登録されると、例えば、リフォームを行う場合に補助金や優遇融資など制度が充実している可能性が高いです。また当然、高齢者の入居も見込みやすくなります。

 

まだまだ高齢者を受け入れる賃貸物件は多くない状況です。サービス付き高齢者向け住宅にしなくても(登録を受けなくても)、高齢者の生活利便性を高めるリフォームをするだけでも空室対策には有効といえます。

 

増加する単身者は多様化が進んでいます。例えば若年層はスマホなどを普通に使いこなすので、以前より容易に情報を得て、比較して判断することが当然になっています。以前のように画一的な賃貸住宅よりも、自分が持っている一定のニーズにあった・・・特化した住宅が求められるようです。地域の事情によりますが、ひとまず最近の入居者は、「単なる住まい以上に、住まい+αを求めている」という点を意識しておきましょう。

 

ですから、パートナーとして選ぶ不動産業者も、地域の実情に精通した業者を味方に付けておくのが一番といえます。そういった専門家から定期的に情報を収集し、リフォームといった今後を見据えた対応を早期にしていきましょう。

 

 

4.今回のまとめ

昔とは違い、現在の日本の人口は減少し、一世帯あたりの人員も減ってきています。
そして、高齢者や単身者の割合も増えています。ヒトの観点からは・・・人口・世帯の人員数の減少など量的な視点と入居者のニーズの変化などの質的な視点から将来を予測して対応する必要があります今は問題がなくても入居者確保と適正家賃を恒常的に実現していくわけです。そのためにも、まず、保有物件が競争力を保ち続けられる状態かを検証し、課題があれば、修繕やリフォームを行い、長期的視点から対応する必要があります。

築年数がたっている建物の場合、建て替えで解決するのも一つの方法ですが、状況に応じて少なくともリフォームをして、改めて入居者のニーズを取り込んでいきましょう。

 

■監修者プロフィール

株式会社優益FPオフィス 代表取締役
佐藤 益弘

マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】CFP®/FP技能士(1級)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)