リフォームの流れと注意点【周期編】
公開日: 2023.03.01
最終更新日: 2023.03.02
「入居者が入りにくくなってきた」 「もう少し設定家賃を上げたい」という問題が発生した場合、効果的な対策の一つに「リフォーム」が挙げられます。
ただ、何から手を付けていいか分からない・・・という方も少なくないでしょう。
全10回の連載の形で、リフォームの基本から現状、今後についてお伝えしています。
今回は第5回目・・・「リフォームの流れと注意点の周期編」・・今回はタイトル通り、リフォームをしようと思った場合の流れと注意点をリフォーム周期の観点から見ておきましょう。
目次
1.リフォームの基本的な周期について
一般的にリフォームという言葉は広い概念で利用されていますから、誤解をされるケースが多々あります。例えば、元の状態に戻すという概念である①保守・原状回復≒「修繕」と、②レベルアップ・価値向上する≒(本来の意味の)「リフォーム」や「リノベーション」という言葉を包括する概念として利用されています。
ですから、本来の意味の「リフォーム」とは、経年劣化した外観や設備を最新のものにする工事です。
つまり、外観や設備を新築と同等レベルにし、ニーズを満たすことで、入居率の改善が期待できるようになります。場合によっては、相応の賃料アップも期待できるかもしれません。
経年劣化に対応するための保守=「修繕」は、実施時期を想定することができます。モノは必ず古くなるからです。そして、民法606条に「賃貸人は、賃貸物の使用および収益に必要な修繕をする義務を負う」という規定があるように、大家(家主)として管理責任があります。例えば、箇所にもよりますが、一般的な目安として「10年~15年に1回程度」の周期で行われることが多いです。
最近では耐久性の高い資材なども次々と登場していますから、周期は参考程度とお考え下さい。実際、それだけの時間が経っても、機能に問題がなければ、リフォームする必要はありません。
ただ、経年劣化により外観の見栄えが悪くなり、設備も古く陳腐化やニーズから外れてしまっていることもあるので、入居希望者は相対的に減少することにつながります。また、必然的に賃料の値下げなどの要求が強くなるはずです。
リフォームで改善できることがあれば、検討してみましょう。
1-1.初めての方は国土交通省のガイドブックも参考にしよう
意外と知られていないのですが・・・民間賃貸住宅の健全な運営のために、国土交通省から「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」が出されています。
このガイドブックでは、広い意味でリフォーム(メンテナンス)を取り扱っています。つまり、前述の通り、保守・原状回復=修繕、レベルアップ・価値向上=リフォーム、リノベーションは本来、別々の概念です。ただ、初めてリフォームを検討される際には参考になることも多いので、確認していきましょう。
まず、このガイドブックでは、平成25年時点で新耐震基準となった1980年代に建築された民間賃貸住宅が多く、一定の築年数を経ているため、保守・原状回復=修繕が必要であることを伝えています。
出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」
また他にも、各部位のリフォーム時期の目安が以下のように示されています。
出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」
最近、住宅分野では省エネや環境資源循環型の資材を使った耐久性の高いエコな設備も増えています。このことからももう少し長い期間、耐用年数としてはあると思われます。
ただ、具体的に、いつ、どのようなリフォームするか?は、管理サポートをお願いしている賃貸管理会社などの専門家と相談しながら考えていくと良いでしょう。個々の物件の状況、周囲の環境、大家さんご自身の経済状況などにより、取れる対応が変わってくるからです。
なお、このガイドブックには、そもそもの発想として、以下のことも示されています。
出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」
現在、住宅保有と賃貸の割合は6:4の状況です。気候変動問題が叫ばれる中、建物を含めたモノを長期間、大切に使うという発想は、個々人の大家さんだけでなく、国全体の問題として捉えられていることから、このようなことが示されているのでしょう。
具体的には、保有している住宅だけでなく、賃貸住宅に関しても、一定周期毎のリフォームが必要だということです。現状でも補助金などはありますが、今後、さらなる補助金や優遇制度などの創設も期待されるところです。
そのような時流ですから、賃貸経営の一環としてしっかりリフォームに取り組めるよう準備をしておきましょう。
2.リフォームの基本的な流れについて
とはいえ、特に未経験者にとっては、どのようにリフォームをしたら良いか?わからないのは当然です。
ざっくりになりますが、以下のような流れで進めていくと良いでしょう。
・STEP①:信頼できる不動産業者に相談
まず、費用の目安やリフォームの必要性などを知るためにも、賃貸経営に精通している不動産業者に相談してみることです。
賃貸経営に精通している不動産業者がいない場合、知らない場合は、複数の専門家に相談したり、実績数の多い業者を探したりする必要があります。賃貸経営に精通している業者であれば地域の調査やニーズの把握に基づいたリフォームの提案は、より信頼のあるものとなります。
そして、次に「賃貸物件の現状調査・地域や最新のニーズ調査・予算の準備方法の模索」など、リフォームをするための基礎情報を揃え、現状の理解と目標=希望条件を明確化するようにしましょう。
"スタート"である現状と"ゴール"である目標を明確化しないと、これ以後のステップで決める具体的な対応方法≒方針にブレが生じてしまうためです。
・STEP②:プラン比較や詳細な見積もり
STEP①:大家さんの現状と目標を基に、不動産業者が(いくつかの)リフォームプランを提案してくれるはずです。
根拠のある内容の提案を選びましょう。大きな方針を決定させる大事な局面です。詳細な見積書も出してくれるはずですから、その内容に少しでも疑問点があれば、納得するまで確認することをお勧めします。
とても面倒な作業かもしれませんが、大きなお金を使うことになりますし、後でこんなはずではなかった・・・と後悔しないためにも、この作業は大切です。特に賃貸経営に大きく影響を与える・・・「当初の予算を(大きく)超えていないか?」という点はしっかり確認しましょう。
・STEP③:正式に依頼+その他
STEP②で問題がなければ、あとは正式に依頼(契約)することになります。
賃貸併用住宅などの場合は仮住まいの準備、また、地域の情報収集も兼ねて近隣への挨拶などもされると良いでしょう。リフォームが完了したら、改めて賃貸経営に精を出しましょう。
最大のポイントは、「賃貸経営に精通している不動産業者」を探し出せるか?どうかです。しっかりした業者であれば、不必要なリフォームは不要だとしっかり言ってくれるはずですし、賃貸経営という大きな視点で、実施するリフォームを捉え、提案してくれるはずです。例えば、他のコストの低い対応方法やリフォーム後に必要な入居者募集の工夫などを教えてくれるはずです。
そのような点も踏まえ、「リフォームした方がいい」と最終的に判断したら、ワンチームで話を進めていきましょう。
2-1.「次のリフォーム」を見据えた準備も大切!
一般的にリフォームは「10~15年周期」など長期的な視点で対応を検討することが大切です。そういう意味からも、今現在だけでなく、できれば未来の入居者ニーズの変化も考えたうえで、リフォームをするのが理想です。
今回、リフォームを考えられたことで何となくお気づきかと思いますが・・・リフォームは思い立ったらいつでもできるのですが、勢いで行おうとすると、どうしても準備不足の状態で行うことになりがちです。
例えば、賃貸経営に精通している不動産業者を探すことも容易ではありませんが、費用面も重くのしかかります。仮にリフォームローンが使えても、今後も継続的に利用できるか?その保証はどこにもありません。昨今の経済状況から、今までのような低金利がいつまでも続かず、将来的には今以上に金利が割高になっている可能性も否定できません。
だからこそ、賃貸オーナーなら補修や修繕のための資金準備を常に意識して行動するのが大切です。万が一のための予備資金を確保しつつ、収入のうち一定額は積立の形で、準備しておくことが大切です。
準備方法としては、一定の条件が必要ですが、例えば、非課税枠のある「小規模企業共済」の活用や「管理型の法人設立」などといった対応も可能です。残念ながら、今のところ大家さん向けに修繕費を有利に準備する専用的な制度は存在しません。今後、新たな制度が誕生することに期待したいですね。
このような少し難しい対策を進めるためにも、やはり賃貸経営に精通している不動産業者とお付き合いしておくと良いでしょう。
3.今回のまとめ
賃貸経営におけるリフォームとは、基本的に外観や設備を最新の状態にすることであり、おおむね10~15年周期で行うことが一般的です。
築年数が経っている建物の場合は、建替えで解決するのも一つの方法ですが、状況によってはリフォームの検討が必要となるでしょう。そして、リフォーム工事をしたいと思った際には、賃貸経営に精通している不動産業者に相談してみることが出発点になります。その後のニーズ調査なども考えると、リフォーム前から準備をしておきましょう。
■監修者プロフィール
株式会社優益FPオフィス 代表取締役
佐藤 益弘
マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】CFP®/FP技能士(1級)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)
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