リフォームの基礎知識・人気のリフォームについて
公開日: 2023.02.27
最終更新日: 2023.02.27
「入居者が入りにくくなってきた」 「もう少し設定家賃を上げたい」という問題が発生した場合、効果的な対策の一つに「リフォーム」が挙げられます。
ただ、何から手を付けていいか分からない・・・という方も少なくないでしょう。
全10回の連載の形で、リフォームの基本から現状、今後についてお伝えしています。
今回は第4回目・・・「人気のリフォーム」・・今回はここまでの簡単なまとめとして、「ヒト・モノ・カネ」の変化にともなうニーズの変化を再確認しつつ、具体的な最近人気のリフォームについて見ておきましょう。
1.最近の入居者ニーズは?
一般財団法人、住宅改良開発公社の令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測(展望)調査」を見るとわかります。
出典:住宅改良開発公社 令和2年「賃貸住宅市場の動向と将来予測(展望)調査」
もっとも大きな入居者ニーズは「災害対策に優れた」賃貸住宅です。そして、新築は当然として、「住宅性能」「維持管理」「防犯対策」が続いています。
東日本大震災以降、毎年のように大規模な自然災害に見舞われています。また、このコロナ禍によって、在宅時間が延びた影響もあり、快適な住環境を求める声も高まっています。
そして、気候変動対策として、国を挙げて「2050年のカーボンニュートラルの実現」に向けて取り組んでいますから、おのずと環境配慮への関心も高まっています。
下位に位置していますが、それ以外にも「ペット可」「菜園付き」「サービス付き高齢者向け」など差別化しやすいポイントも垣間見えます。つまり、ペット対応や家庭菜園、高齢者向けサービスなど具体的かつ個性的なニーズも無視できないほどに高まっているわけです。
多様性社会の到来!と言われているとおり、入居者ニーズは多岐に渡っています。ですから、何か一つのニーズに特化するのも良いですが、なるべくなら多角的なニーズに応えられるよう、オーナー側も種類の違う賃貸物件を準備しておくのも一考かもしれません。
1-1.今後は「高齢者や単身者」が増える傾向
別のコラムでお伝えしました、厚生労働省の平成27年「厚生労働白書」を見ると、今後の各年齢層の人口は以下のように推移すると予測されています。
出典:厚生労働省 平成27年「厚生労働白書」
既に少子化の時代に入っていることはご存じだと思います。その結果、今後も15~64歳の生産年齢人口≒現役世帯が減り、相対的に65歳以上の高齢者世帯の割合が増加する見通しです。
現時点で、現役世代をターゲットに賃貸経営をされている大家さんにとっては、賃貸住宅数に変更がなければ、相対的に競争が激化するのは確実です。むしろ、経年劣化してしまう分、不利となります。
それに対して、相対的に増加する高齢者世帯向けの賃貸経営は、孤独死などネガティブな要素もあり、中々踏み込めていない大家さんも多いと聞きます。
また、少子化の元になっているのが「未婚化」です。内閣府の令和4年「少子化対策白書」によると、昨今の日本の婚姻件数は以下の通りです。
出典:内閣府 令和4年「少子化対策白書」
婚姻件数は下落の一途を辿っています。つまり、未婚者が増加しているわけです。
また、高齢者世帯に話を戻しますが、こちらも夫や妻に先立たれ、単身者になる方も多いでしょう。内閣府の令和3年版「高齢社会白書」によると、65歳以上の一人暮らし世帯も以下のように推移し、今後も増えていくと予想されています。
出典:内閣府 令和3年版「高齢社会白書」
単身世帯は、世帯数・割合ともに増加していくことになります。
2人以上の世帯と単身世帯とでは、住居に求める間取りや広さ、使い勝手など根本的なニーズが異なります。
また、現役世代と高齢者世代でもニーズが異なります。たとえば、高齢者世代はバリアフリーやコンパクトな居住空間を好むといわれています。このようなニーズへの対応ができているか否か?も今後の賃貸経営には大切な視点です。
時代のニーズにマッチしていなければ、入居者が集まりにくくなるのは当然といえば当然です。賃貸経営は長期投資である以上、現在の状況だけでなく、未来を意識した対応をしていくことが望まれますので、例えばリフォームなどをして、時代に即した賃貸物件へと生まれ変わらせましょう。
2.具体的な最近、人気のリフォームについて
賃貸物件のリフォームは、「入居者が入りにくくなった」ために行われることが多いでしょう。
では、なぜ、入居者が入りにくくなったのか?その理由を整理すると以下の2点に絞れるはずです。
- 建物や設備の経年劣化
- 入居(希望)者のニーズとのミスマッチ
ですから、リフォームを行う場合は中途半端に対応するのではなく、しっかり行う必要があります。例えば、最近の入居者ニーズに合わせて外観や設備を最新の状態にすることです。
感じ方は人それぞれですが、それでも一般的にはリフォーム前だと少し古臭さや暗さを感じてしまうでしょう。しかしリフォーム後は、それらが一新され、まるで新築のようにさえ感じられるかと思います。少なくとも、一般的にどちらのほうが好まれるかは歴然です。
1つ例を見てみましょう。
どうしても左側のリフォーム前の物件写真は古臭さや暗さを感じる方が多いでしょう。それに対して右側のリフォーム後の物件写真は新築のような新鮮さが感じられるかと思います。
最終的には地域の状況にもよりますが、このように、設備と外観を刷新したり、最新のニーズに合わせることが、人気のリフォームの基本です。
2-1.新型コロナによるテレワーク需要の増大
2020年の初頭頃から世界を騒がせている新型コロナウィルスは、世界中に様々な変革をもたらしました。
中でも大きな変革の一つが「テレワーク」の普及と定着です。
最近の企業のテレワーク実施率は、総務省の令和3年「情報通信白書」で確認できます。
出典:総務省 令和3年「情報通信白書」
内容を確認すると、大手企業で6~8割、中小企業でも3~5割程度がテレワークを実施しています。テレワークを実施しているということは、当然に自室で仕事をしている可能性が高いということです。おのずと「テレワーク環境の整った賃貸物件」へのニーズが高まることに繋がります。
テレワーク環境とは、おおよそ「生活空間とは違う、パソコンなどを設置できて、一人で仕事や勉強に集中できる環境」を指します。
実際、以下のような賃貸住宅も普及しつつあります。
このこと自体は数年前より政府も「働き方改革」の名の下、普及を促進してきましたから、動きが止まることはないでしょう。
また並行的に、抗菌や非接触などへのニーズも高まっています。
ただ、新型コロナやテレワークに対応している賃貸物件はまだ少ない傾向ですから、早めにリフォームで準備できれば大きなニーズを取り込めるかもしれません。
いずれにしても、賃貸物件への入居者ニーズは早いペースで変わってきています。そのニーズとの乖離があるほどに入居者が入らなくなることは自然ですから、なるべく早い段階でリフォームをして、改めて入居者に喜ばれる賃貸物件を用意しましょう。
3.今回のまとめ
最近の入居者ニーズは多岐に渡っているうえ、昔と比べて高齢者や単身者が増加するなどの構造的な社会変化も起きています。
このため、老朽化を直すのは当然として、テレワークなど最新の入居者ニーズを的確に汲み取ったリフォームをすることが大切です。
ただし、入居者ニーズは「地域性」にも大きな影響を受けます。このため、その地域の事情に詳しい頼れる不動産業者の力を借りることが必要不可欠です。
ぜひ、そのような不動産業者に相談しながら、一緒になって時代に即した賃貸物件へと生まれ変わらせましょう。
■監修者プロフィール
株式会社優益FPオフィス 代表取締役
佐藤 益弘
マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】CFP®/FP技能士(1級)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)
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