
アパート経営のメリットと利回りは?かかる経費やリスク、対処法
最終更新日:2022年2月1日
土地活用の方法の一つにアパート経営があげられます。アパート経営は入居者の家賃を収益源としており、安定した収入が得やすく節税効果も見込めるため、サラリーマンの副収入や老後の年金対策を目的に始める人も増えています。
しかし、修繕費や管理費などの経費が発生するほか、入居者に関わるトラブルも起こりやすいため、あらかじめ対策を考えておくことが重要です。そこで本記事では、アパート経営のメリットと利回り、経費やリスクへの対処法について詳しく解説します。
アパート経営の2つのメリット
アパート経営には主に「安定収入の確保」「節税効果」という2つのメリットが存在します。
しかし、物件の条件やその人の所得状況、運営状況などによっては、効果が得られない場合もあるため、事前に収入を得る方法や節税の仕組みを理解しておくことが大切です。
アパート経営における2つのメリットについて解説します。
安定収入の確保
アパート経営は入居者の家賃で収益を上げるビジネスです。
家賃は契約更新時などのタイミングで増減する場合もありますが、基本的に毎月固定の金額が支払われるため、入居者が確保できれば長期間にわたって安定した収入を得られます。
物件の規模が大きくなると、入居者の契約手続き、家賃の回収、建物の修繕、日常的なメンテナンス、入居者様からの問い合わせ対応といった管理業務が増加しますが、こうした業務の多くは不動産管理会社やサブリース会社などへ委託することが可能です。
したがって、運営実績が豊富で信頼のできる会社へ任せてしまえば、物件管理の手間がかからず、オーナーが自ら行うべき業務はほとんどなくなるため、不労所得に近い状態を作り出せます。
節税効果
節税効果を目的にアパート経営を始める人も多くなっています。
しかし、節税対策になるかどうかは、物件やその人の置かれた状況によって異なるため、どのような時にどの税金が節税できるのか、具体的に把握しておくことが大切です。
まず最も利用しやすいのは、減価償却費を利用した損益通算の方法です。減価償却とは、不動産の取得にかかった費用を耐用年数に応じて配分し、その年に相当する金額を経費に計上するものです。
そして減価償却費の計上により不動産経営の収支が赤字になった場合、その人の給与所得などから赤字分を差し引くことができ、課税所得額の合計を減らすことが可能です。
この際の処理を「損益通算」といいます。減価償却費の計上による赤字は、あくまで会計上の赤字であり、不動産経営のキャッシュフローがマイナスになるわけではないため、実質的な損失にはなりません。そのため、特に高額所得者が所得税・住民税の額を節税する方法として適しています。
このほかに相続税評価額を圧縮する効果もあります。相続税評価額は額面金額をそのまま扱うため、現金で保有していると100%課税されてしまいます。
一方、アパートを相続する場合、築年数や立地などの物件の条件にもよりますが、おおよそ時価の30~50%程度で評価されるのが一般的なため、現金で相続するよりも評価額を圧縮できます。
以上のことから、相続税対策としても有効な手段になり得ます。
アパート経営の利回りと経費
アパート経営で成功するためには、事前に収支計画を立てシミュレーションを行うことが有効です。
そのためには、利回りと経費を正確に計算しなければなりませんが、利回りの計算方法や経費の種類をすべて把握している人は少ないでしょう。
アパート経営の利回りの求め方や経費の種類について解説します。
アパート経営の利回り
利回りとはアパート経営に投資した金額に対する収益の割合をいいます。
アパート経営を始めとする不動産投資では、利回りの把握が成功するための重要なポイントになるため、物件選びの段階から細かくチェックすることをおすすめします。
アパート経営における利回りには「表面利回り」と「実質利回り」の2種類がある点を理解しておきましょう。
不動産業界で一般的に用いられるのは「表面利回り」ですが、実態に近い利回りを算出できるのは「実質利回り」です。
2種類の利回りの特徴や計算式は、以下の通りです。
- 表面利回り:不動産購入価格に対する「1年間の家賃収入」の割合
表面利回り(%)=1年間の家賃収入÷アパートや土地の購入価格×100 - 実質利回り:購入や1年間の運営(維持管理)に係る諸経費を考慮した利回り
実質利回り(%)={1年間の家賃収入-1年間の維持管理経費}÷(アパートや土地の購入価格+購入にかかった諸経費)×100
アパート経営を始める場合、表面利回りは参考値程度に捉えておき、実質利回りをきちんと算出して、正確な利回りを把握したうえで物件購入の判断をするようにしてください。
アパート経営の経費
アパート経営で発生する経費は、主に「初期費用」と「維持管理経費」に大別されます。
初期費用とはアパートを購入する際に必要となる初期投資額です。
物件本体の価格を除くと、主に以下の内容が含まれます。
- 仲介手数料
- 登記費用
- ローンの手数料
- 税金(不動産取得税、印紙税など)
- 測量費
- 水道分担金
維持管理経費とはアパートを維持していくために必要となる費用です。
費用項目は多数ありますが、以下に主な内容をまとめます。
- 固定資産税、土地計画税
- 火災、地震保険料
- 入居者募集費用
- ローン利息
- 修繕費用
- 管理委託費用
アパート経営の主なリスク
アパート経営はメリットばかりではなく、リスクも存在します。
事前にどんなリスクがあるかを把握して対策を講じることが、アパート経営で成功するポイントといえるでしょう。
アパート経営における主なリスク4つを以下にまとめます。
空室の発生
空室の発生はアパート経営に関わらず、不動産投資を行うすべての人が重要視すべきリスクといえます。
アパート経営における収益源は入居者からの家賃(インカムゲイン)であるため、空室率が上がると確実に収支が悪化します。
特に部屋数が少ないアパートの場合、空室が1部屋発生するだけでも収益減少の比率が大きく、空室期間が長く続けば収支が赤字に転落する可能性も考えられます。
また、近年の日本は人口減少が続いており、地域ごとの格差が激しく、入居者が集まりやすい物件とそうでない物件の差が顕著になっています。実際、2018年の総務省の調査によると賃貸用住宅の空き家数は432万7,000戸で、2013年と比べると3万5,000戸も増加していることがわかっています。
したがって、立地周辺のエリアマーケティングなどによる適切なプラン策定や、実績豊富なパートナー企業の選定が、空室対策の有効な手段といえるでしょう。
賃料下落
入居者の賃料は常に一定とは限らず、建物の老朽化や周辺環境の変化によって下落する可能性があります。賃料の下落はアパート経営の収益低減につながるため、オーナーとしては避けたい事態ではありますが、割高な賃料設定をすれば入居者が集まりにくくなります。退去者が増えたり、入居率の低下を招いたりするため、周辺相場が下落した場合は合わせざるを得ないでしょう。
実際、新築アパートを購入して賃貸経営を始め、当初は高い賃料収入が得られていたものの、数年後には大きく下落して、結果的に物件を売却しても利益が得られなくなったという事例も少なくありません。
家賃下落の主な原因は、物価の下落、競争力の低下、住環境の悪化、メンテナンス不良による機能低下などが考えられます。メンテナンス不良はオーナーの努力によって改善が可能ですが、周辺環境の変化に関しては物件購入後に回避できるものではありません。
なお、総務省の調査によると、非木造共同住宅の家賃の平均の経年変化率は-0.76%となっています。
入居者に関わるリスク
アパート経営では多数の入居者へ部屋を賃貸する必要があるため、問題を抱えていたり迷惑行為を起こしたりする人を入れてしまう可能性もあります。入居者が起因となるトラブルは、家賃滞納、騒音、悪臭、共用部分の汚染などが考えられますが、こうしたトラブルに対しては基本的に物件を所有するオーナーや管理会社が解決策を講じなければなりません。
上記のようなトラブルが頻発したり、問題が長期化したりすると、空室の増加や賃料の下落を招き、オーナーが経済的損失を被るリスクもあるため、事前審査を入念に行うなどして、問題を起こしそうな人を入居させない対策をとる必要があります。
自然災害
地震、台風、洪水などの自然災害や火災などが原因となり、建物が損壊する災害リスクも考えられます。自然災害はオーナーの努力で防止できるものではありませんので、事前に火災保険や地震保険に加入して対策することをおすすめします。
しかし、保険を利用して損失分を補填できたとしても、建物が全壊、全焼するようなケースでは、賃貸経営の継続が困難になります。
また、火災保険や地震保険は損失の100%を保証するわけではないため、修繕費などの支出が膨らみ、収支が赤字に転落したり、空室の発生を招いたりしてしまうケースも予想されます。
アパート経営のリスク対策
アパート経営にさまざまなリスクがあることは、ご理解いただけたのではないしょうか。
リスクへの対策を何も考えずにアパート経営を始めれば、取り返しのつかない失敗をしてしまうこともあるでしょう。
アパート経営で成功するには、リスクと対策の把握に加え、長期的な経営戦略を立てることが重要です。
アパート経営のリスク対策を3つ解説します。これからアパート経営を始めたいと思っている人は、ぜひ参考にしてください。
建物計画(建築計画)
建物計画とは、土地によって異なる法規制をクリアすることと、周辺の賃貸物件と比較して付加価値の高いアパートを建築することを目的に立てられる計画です。
土地や建物には都市計画法、建築基準法などさまざまな法令による規制があるため、アパートを建築する際は、まずその建物が各種法令に適応した建物であるかどうかを確認しなければなりません。
また、市場のニーズや需要状況、エリア特性に適した間取りや設備、外観などを明確化することも大切です。
例えば、学生向けはワンルーム・1K、特に女学生が多い場合はバス・トイレ別にする、20代後半~30代の独身会社員が対象であれば充実した収納や、ゆとりのある間取りを設けるなど、入居対象となる人に適した造りにすると良いでしょう。
事業計画
事業計画とは、アパート経営で長期的に収益を上げ続けるための計画のことです。アパート経営においては、自己資金のみで物件を購入できる人は少なく、ほとんどの人がローンを組んで購入することになります。
そしてローンを組む際に提出する審査書類の一つが事業計画であり、事業性が高いと認められた物件では金融機関からの融資を受けやすくなります。ただし、事業計画は客観的なデータに基づいて作成する必要があり、根拠のない数字を記載しても信用は得られないことを理解しておいてください。
事業計画書に記載する主な内容は以下の通りです。
- 事業内容(賃貸事業)
- 事業の目的や目標
- 市場規模
- 競合分析
- 経営プラン
- 収支計画
事業計画書は決められた書式があるわけではなく、自由に作成することが可能です。
しかし、一から作成するのは大変なので、以下に紹介するページなどからダウンロードする方法もあります。
>参考リンク
借入申込書等ダウンロード | 日本政策金融公庫
事業計画書テンプレート|bizocean
パートナー選定
アパート経営のリスクへの対策は、自分なりに勉強して基礎知識をつけることが大切ですが、個人のオーナーが専門的な内容を把握するのは困難です。ここまで紹介した計画書の作成に関しては、専門的な知識を要するため、優れたパートナー(不動産会社)の選定が必要不可欠といえます。
安心した賃貸経営を行うには、パートナーが培ったノウハウやサポートがオーナーにとって大きな助けになります。
そのため、優れたパートナーを選ぶにはオーナー自身がしっかりと知識をつけ、選定することが重要です。
パートナーを見極める際は、以下の3点をポイントに着目すると良いでしょう。
- 顧客目線で長期的な運用のアドバイスしてくれる
- リスクについても事前にしっかりと説明してくれる
- アパートの建築後のフォローやサポートも充実している
>>大東建託のカタログセットはこちらから
アパート経営で成功するには事前準備が大切
アパート経営では入居者から毎月固定の家賃収入が得られるため、オーナーは安定した収益をあげることが可能です。しかし、賃貸経営にはさまざまなリスクが存在するため、事前準備を整えたうえで始めなければ大きな損失を被るケースも考えられます。そのためには信頼のできるパートナーからアドバイスを受けることが大切です。
大東建託では、土地活用に関するさまざまな相談を受け付けています。
専門知識を有するスタッフが、オーナー様の要望に合わせた事業プランを提案しますので、土地活用でお悩みの方はお気軽にご連絡ください。
土地活用の相談をしたい方はこちら
宅地建物取引士・FP3級の知識を活かし、不動産専門ライターとして活動。賃貸経営・土地活用に関する記事執筆・監修を多数手掛けている。ビル管理会社で長期の勤務経験があるため、建物の設備・清掃に関する知識も豊富。
【保有資格】
・宅地建物取引士
・FP3級
・建築物環境衛生管理技術者
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- アパートローン
- 一括借り上げ
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- 管理会社
- 管理費
- キャッシュフロー
- 減価償却費
- サブリース
- 敷金
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- 自己資金
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