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アパート経営を始めて30年後に起こり得ることは?出口戦略の例

公開日: 2023.09.11

最終更新日: 2023.12.20

土地活用や相続対策を考えたとき、不動産投資に興味がある方も多いのではないでしょうか。
中でもアパート・マンションなどの賃貸物件への投資は、家賃収入を得ながら相続税対策もできるとあって、検討される方も多い方法です。

 

しかし、アパート経営は長期間に渡るため、「不動産経営は計画通りに行くのか」「将来的に利益は出るのか」不安になる方もいるでしょう。そこで本記事では、アパート経営の30年間に起こり得る問題を把握したうえで、30年後も安心して経営できるリスク対策のポイントと、先を見すえた出口戦略を詳しく解説します。

>>関連記事:「アパート経営完全ガイド|建築プラン立てから完成後の業務まで」

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1.アパート経営を始めてから30年の間に起こり得る問題

アパート経営を長く続けていると、建物の老朽化以外にも、金利の上昇や人口減少、時代の変化に伴うニーズの変化など、さまざまな問題が出てくることが予想されます。

これらのリスクに備える対策をするためにも、まずは30の間     に起こり得る問題点を、事前に把握しておきましょう。

 

1-1.大規模修繕の発生


アパートは建築して10年~30年の周期で、定期的な修繕が必要になるケースが多く、大規模修繕になった場合、多額の費用がかかることが考えられます。

まず10年~15年で劣化する外壁の塗装、屋根の修繕工事は、見た目の印象だけでなく、建物の構造部分を守るためにも必要な工事です。

    

ほかにもベランダの防水工事や、給排水管の点検工事などが考えられるでしょう。

外壁が剥がれて通行人に被害が出たり、雨漏りの影響で基礎部分まで老朽化が進んだりするなど、実際の被害が出る前に、あらかじめ予算も含め準備しておきましょう。

大規模修繕は、もともと多額の工事費用が必要と考えられますが、さらに工事の時期によっては、人件費や建築部材の高騰など、予測していないことが起こる可能性があります。

予定よりも支出がかさんで、経営が苦しくなるケースもあるので、あらかじめ修繕費を多めに積み立てるなど、注意が必要です。

 

1-2.アパートの老朽化 


築年数の経過に伴ってアパートは建物も、付帯設備も古くなっていきます。

トイレやお風呂、キッチンなどの水回りも、入居者が変わるたびに原状回復されていても経過年数に伴って、汚れや損傷が目立つようになります。

大規模修繕と違って、必ずしも工事やリフォームをしなくてはならないわけではありませんが、もともと築年数や物件の第一印象を気にする入居者は多く、新築や築浅物件に人気が集中しがちです。


そのため、
建物や室内の古さが目立つようになっても、修繕や改修が適切に行われなければ、入居者に敬遠され、アパートは空室が増加していく恐れがあります

老朽化の対策として、修繕や改修を行うわけではなく、家賃を下げて空室率を下げようとするケースが多くりますが、その場合、他の部屋まで値下げせざるをえなくなり、結果、さらに収益が悪化するという悪循環に陥ってしまうことも考えられるので注意が必要です

 

1-3.入居者ニーズの変化


時代が変わると共に、入居希望者が賃貸住宅に求めるサービスや条件も変化しています。

例えば、防犯意識の高まりから、オートロックの玄関や防犯カメラの設置、防犯ガラスの窓などセキュリティ対策に優れたアパートを求める人も多くなっています。

またコロナ禍以降には、人との接触を避けるため、宅配ボックスの設置を検討する人が増えました。

さらに、現在では当たり前になっているインターネットですが、在宅勤務の増加により、光回線の設置は賃貸物件でも必須のものとなりました。

このように、20年・30年後のアパート経営でも、入居者ニーズの変化は考えられます。

これに応えられない物件は、入居者から敬遠されやすくなり、収益悪化を引き起こす可能性が高くなるでしょう。

 

1-4.金利の上昇


金融機関からの融資を受けて、賃貸経営をしている大家さんも多いかと思います。

現在はアパートローンの金利は低い状態が続いていますが、2022年12月には、日銀が長期金利の上限を0.25%から0.5%に拡大し、「事実上の利上げか」と騒がれました。

実際には30年後はローンを完済しているケースが多いですが、長期的な視点から、30年の間に起こり得る問題として、金利変動のリスクに対してもあらかじめ理解しておくことも必要です。

 

2023年4月には日銀総裁が植田総裁へと変わりましたが、「現時点では、物価の安定を図るために物価安定目標を維持するため、金融緩和政策を維持する」  と明言しています。

しかし、同時多発的に起こっている世界的インフレにより、アメリカやイギリスなど多数の国は 2022年からすでに利上げが始まっていました。

 

将来的には日本も、物価の動向や海外経済・世界情勢の変化など、動向次第では、いつの時点か利上げに転換する可能性は高いと言えるでしょう。

その場合、金利変動型のアパートローンを利用している大家さんにとっては、毎月の返済額がふくらむリスクがあります。

 

1-5.周辺環境の変化


30年が経過すると、街並みもガラッと変わってしまうことがあります。

 

大学のキャンパスがあったはずが、移転してしまった結果、あてにしていた学生の数が減ってしまったり、近くの工場が閉鎖して、住んでいた従業員が大量にいなくなったりするなど、好立地だったはずのアパートの条件が変わることが現実に起きています。

 

実際に2023年、2024年にかけても、中央大学 の法学部、東洋大学 の生命科学部・食環境科学部等の移転が決定しており、今後も少子化の影響による大学の再編や都市部への移転は続く見込みです。

 

のように周辺環境の変化によって、想定していた家賃を下げざるを得ないといったことも起こるかもしれません。

 

2.30年後も安定してアパート経営を続けるためのポイント


ここまで、30年後に予想されるアパート経営の問題点をチェックしてきましたが、賃貸経営の場合、リスクを知ることで、事前にしっかり対策を立てることができます。

 

それでは、30年先も安定したアパート経営をするための、具体的なポイントをひとつずつ確認しましょう。

 

2-1.アパート経営を始める前に土地の立地条件を確かめる


やはり長期的にも安定して入居希望者を集め、高い入居率を維持するには、立地条件は最重要ポイントと言えます。 

具体的には「駅から徒歩10分以内」といった最寄駅から近い物件や、保育園や小学校が近い、スーパーが近所にあって買い物しやすいファミリ
ー向けの立地など、条件の良い場所を選ぶのが大切です。

 

立地条件の良い場所は、築年数が経過していても、入居者のニーズは高く、安定した入居率が期待できます。

 

まずアパート経営を始める前に、「どんな入居者をメインターゲットにしたいのか」、「その土地には入居者ニーズを満たすどんなメリットがあるのか」専門家とよく 良く分析してから、土地の立地条件を詳しく確認しましょう。

 

2-2アパート経営を始める前にローン返済のスケジュールを綿密に計画する


アパートローンの融資を受けるには、綿密な事業計画が必要です。

高額な融資を受ける可能性が高く、住宅ローンよりも金融機関の審査が厳しいということもありますが、何よりも自分自身がしっかり返済できるように、準備しておくためでもあります。

 

中には家賃収入を当てにして、フルローンを考えている人もいるかもしれません。

しかし、大規模修繕費が高額になってしまったなど、突発的な出費でローンの返済が厳しくなることもありますし、退去時の入居者トラブルの発生など、収支計画通り どおりに進まない可能性もあります。

 

予定していたローンの返済ができないといった不測の事態にも対応できるよう、一定額の自己資金を投入するなど、将来を見据えた資金計画を心掛けましょう。

 

2-3.リフォームやリノベーションを行う


賃貸物件は、立地条件が同じ場合、どうしても築年数が浅く、見た目のきれいな物件に人気が集まります。

古くなったアパートを入居者ニーズのある物件にするには、アパートのリフォームやリノベーションがおすすめの方法です。

入居者の入れ替えごとに行っている原状回復の修繕やメンテナンスだけでなく、トイレやお風呂、キッチンなど、古くなって時代を感じる室内設備を一新することで、物件の価値が上がります。

また畳やふすまがある和室を台所とつないでLDKに間取り変更するリノベーションや、真新しく外壁を塗装したり、屋根を修繕したりする改修なども考えられます。

防犯カメラや宅配ボックスの設置、防犯ガラスに入れ替えるなど、安全性に考慮したリフォームも需要があるでしょう。

このようなリフォームやリノベーションには、工事の規模に関わらず費用がかかってきます。

あらかじめ、家賃設定をする際にも、大規模修繕費を考慮して資金計画を立てておきましょう。

 

なお、「費用が20万円以上」で「資産価値や耐久性が明らかに上がる修繕」に関しては、「資本的支出」として減価償却の対象になります

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3.アパート経営を始めてから30年後の出口戦略


アパートが 30年経過後のタイミングで、活用方法をどうするのか?

最後の方向性を決定し、最終的な利益を確定させるのが、アパート経営30年後の出口戦略になります。

 

ここでは、出口戦略に有効な3つの方法をご紹介します。

アパート経営を始める前に、最終的な出口を想定しておくことは、相続を考えるうえでも大切なことですし、不動産投資を成功させるためにも重要なポイントと言えるでしょう。

 

3-1.アパートの売却


購入から30年後、アパートローンが終わっている場合、売却を選んだ結果、 まとまった金額を手にする可能性は高くなります。立地が良く都市部にあるマンションの場合であれば、家賃収入によるインカムゲインだけでなく、キャピタルゲイン(アパートの売却益)も手にすることができるかもしれません。

しかし、不動産会社に仲介を依頼しても、簡単には買い手がみつからないこともあります。建物や設備が古いまま売りに出しても、 建物の価値を評価してもらえないことも少なくありません。

その場合、内装や設備などをきれいにリフォームすることで、見た目の印象が変わり、売れやすくなります。
建物本体がしっかりしていて、資金に余裕がある場合に考えられる方法です。

 

3-2.アパートの建て替え


アパートの建て替えも有効な方法です。

立地に魅力があるエリアに土地があるなら、建て替えてしまうことで、収益のアップが見込めます。
基本的に新築時は、需要が見込めるため、人気がありますから、古いアパートで賃貸経営を続けるよりも、メンテナンスの手間を気にする必要もなく、キャッシュフローが改善される可能性は高いでしょう。

また相続税対策を考えている場合、現金や株式などで持つよりも、アパートやマンションなどの不動産に変えたほう方が評価額が低くなります。そのため、売却して現金を手にするよりも建て替えを選択したほうがメリットが大きくなる可能性があります

ただし、もう一度アパートローンを借入したり、住んでいる入居者と立ち退き交渉しなくてはならない場合もあるため、建て替えが最善の選択肢とは言い切れません。
自分ひとりで決断せず、不動産会社やハウスメーカーなどの専門家にご相談のうえ 上、今後の活用法を検討してください。

 

3-3.アパートの解体後に土地を売却


3つ目は、アパートを解体して更地にしてから売却する方法です。
このままでは今後の賃貸需要が見込めないと判断した場合、アパート付きでの売却やリフォーム工事も有効な手段にはならないでしょう。

この場合は、建物の価値が評価されず、アパートを解体して更地にしたほうが、高値で売れるケースが多くなります。

 

ただしアパートに入居者がいる場合は、余裕を持って無理のない時期に退去の交渉をする必要があり、希望の時期に売却できないこともあります。

不動産会社や管理会社と事前によく相談して計画的に進めていきましょう。

 

また更地のままだと住宅地の特例が適用されず、最大で固定資産税は6倍、都市計画税は3倍にまで上がってしまうデメリットがあります。
節税のためには、取り壊し時期に注意が必要でしょう。

4.アパート経営は30年後も見すえた入念な事業計画が重要


この記事では、30年後のアパート経営で起こり得る問題とリスク対策、出口戦略について解説しました。
アパート経営などの不動産投資は、長期に経営して収益が確定するものです。安定した賃貸経営は、30年後も見据えた入念な事業計画から始まります。建設前から最後の出口まで、しっかりした戦略を立てることで、リスク対策は可能になります。

なお、この先30年後は社会情勢の変化や税制改革・物価の変動など戦略の見直しが必要になることもあるかもしれません。
その際には、パートナーとなる不動産の専門家に、詳しい情報や土地活用の詳細なノウハウを確認するなど、相談しながら軌道修正していきましょう。

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■監修者プロフィール

有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一

関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。

【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者