アパート経営で得られる年収はどれくらい?シミュレーションで算出
公開日: 2023.08.26
最終更新日: 2024.06.04
働き方に関する価値観が変わり、副業を認める企業が多くなってきました。これを機に給与所得以外の収入が得られないか考えたことのある人もいるのではないでしょうか。マンションやアパートなどの不動産経営を行ってオーナーになれば年間所得を増加させることができます。
しかし、そのためには賃貸経営の基礎知識を把握し、適切に判断できるようになることが重要です。
本記事では、主な土地活用である賃貸アパート経営について、その特徴や収支を説明します。
後半では、具体的な事例を用いて収支計画の計算方法についても説明します。ぜひ最後までチェックしてください。
>>関連記事:「アパート経営完全ガイド|建築プラン立てから完成後の業務まで」
>>関連記事:マンション経営の種類|それぞれのメリット・デメリットは?
1.アパート経営の特徴
アパート経営にはさまざまなメリットがあります。
まずは、基本的な特徴を紹介していきましょう。
1-1.安定した収入が得やすい
アパート経営の特徴はやはり安定した収入を得ることができることです。
賃貸住宅の需要は景気に左右されづらい特徴があり、不景気であっても安定した入居を見込むことができます。
また、アパートの一棟建ては戸数が多いことから、どこかの部屋に空きが生じても、別の部屋から家賃収入が得ることができます。
そのため、安心して長期的な収入を得ることができます。
1-2.インフレの影響を受けにくい
アパート経営は、資産価値の保全の点でも利点があります。
不動産と株式やFXなど他の資産との違いは、その資産価値の変動の大きさです。
不動産は価値の上下が比較的緩やかに変動することから、資産形成に向いています。特に居住用の賃貸物件は生活に必要な資産とみなされていることから、お金の価値が低くなるインフレが起きても、価値が落ちづらい特徴があります。
1-3.自分で投資効果をコントロールできる
アパートの一棟所有は、オーナーが自由に設定できる要素が多いのもポイントです。
同じ賃貸住宅の投資では、マンションの1部屋を区分所有で購入し、賃貸する手法もあります。
しかし区分所有では共用部の維持管理や修繕を区分所有者から集めた共益費や修繕積立金で実施するように規約で定められており、オーナーが独自に決められる事項が少ないというデメリットがあります。
アパートの一棟所有であれば、入居率を高めるための施策をオーナーが決めることができます。
賃料の変更、共用部分に宅配ボックスを設置する、快適に使えるインターネット回線を引くなど、サービスや工夫次第でより賃貸経営を成功に導くことができます。
2.アパート経営における収入と支出
アパート経営を始める上で、オーナーが負担する支出を知っておくことは重要です。
ここでは、いくらくらいかかるかの目安とともに、収入内訳と支出内訳を説明します。
2-1.アパート経営の収入
主な収入源は入居者からの家賃です。
物件の立地や広さにより、家賃相場は変動します。
それ以外の収入として、共益費、入居時に支払われる礼金(家賃の1~2ヶ月分が相場)、契約更新時に支払われる更新料(家賃の1~2ヶ月分が相場)があります。
敷金も含め、これらはすべてオーナーが設定することができます。不動産会社と相談して決めましょう。
2-2.アパート経営の支出
アパート経営にかかる必要経費は以下の通りです。
・ローン返済費
アパート建築にかかる初期投資額を銀行から住宅ローン、不動産投資ローンを借りて賄う場合、ローン返済が大きな支出を占めることとなります。
金融機関や融資条件にもよりますが、投資用アパートに利用できる投資用不動産のローン金利は1~2%ほどが平均相場です。
返済期間が終了するまで支出があることを見込んでおきましょう。
・建物修繕費用
建物は時間が経過するにつれて劣化します。
室内については入居者の退去時に点検と修繕を実施しますが、共用部や屋根・外壁などは、十数年に一度のタイミングで大規模修繕を実施する必要があります。
大規模修繕は足場を作る必要があることからアパートでも数百万円と高額になりがちです。大規模修繕に備え、少しずつ積み立てておきましょう。
・税金
賃貸アパートにかかる各種税金は、主に不動産そのものにかかる固定資産税・都市計画税と、得た不動産所得額(利益)に対してかかる所得税・住民税があります。
固定資産税・都市計画税は所有する固定資産の評価額(課税標準額)に対して課税されます。税率はそれぞれ1.4%、0.3%です。
所得税・住民税はその年の課税所得金額に対して課税されます。
所得税は所得が多いほど税率が上がる累進課税となっており、5~45%の税率です。住民税の税率は10%であることから、所得の15%以上が税金として支払わなければならないことになります。
・管理委託料
アパートの管理業務は多岐にわたります。
清掃や点検、入居者のクレーム処理や深夜の呼び出しなど、手間がかかる上にノウハウがなければさらなるトラブルとなることも。こういった管理業務は、専門の管理会社に管理費を支払うことで委託することができます。委託管理手数料は家賃収入の5%ほどが相場です。
その他、賃貸アパートにはサブリース方式という手法もあります。これはアパート一棟をまるごとサブリース会社へ賃貸するというもので、それぞれの部屋の入居者募集や契約、管理は全てサブリース会社が行うというものです。サブリース方式の手数料は、家賃収入の10~20%ほどが相場です。
こういった賃貸物件の管理形態については、以下のコラムで詳しく解説しています。
関連記事>>自主管理・管理委託・サブリースを比較!~知っておきたいサブリース新法~
・保険料
災害発生時の修繕・建て替え費用を補うため、火災保険・地震保険へ加入することをおすすめします。
火災保険は火事だけでなく、特約をつけることで台風などの水害、入居者が起こした水漏れなどの事故による損害も補償します。河川のそばなど、物件のあるエリアに応じて最適な特約をつけましょう。
3.アパート経営の年収シミュレーション
アパート経営にかかる諸費用の平均は、おおよそ家賃収入に対して10~15%と言われています。
ここからは、既に所有する土地にアパートを建築し得られる収入で、どの程度の可処分所得(手取り年収)が得られるか、試算してみましょう。
パターン1 東京23区内単身者用1ルームアパート(空室なし)
物件価格 |
8,000万円(ハウスメーカーによる建築) |
資金計画 |
自己資金500万円・借入7,500万円/借入金利1.5%期間35年間 |
部屋数・家賃設定 |
1ルーム 6部屋・100,000円 ・空室なし |
諸経費率 |
家賃収入に対する15% |
年間の収支は以下の通りとなります。
家賃収入7,200千円ー諸経費1,080千円ー返済額2,755千円=手取り3,364千円
⇒表面利回り9.0%
⇒実質利回り7.7%
⇒自己資金に対する利回り67.3%
パターン2 地方の1ルームアパート(空室1部屋)
物件価格 |
6,000万円(地方工務店による建築) |
資金計画 |
自己資金500万円・借入5,500万円/借入金利1.5%期間35年間 |
部屋数・家賃設定 |
1ルーム 6部屋・70,000円 ・空室1部屋 |
諸経費率 |
家賃収入に対する10%(地方なので安い) |
年間の収支は以下の通りとなります。
家賃収入4,200千円ー諸経費420千円ー返済額2,020千円=手取り1,760千円
⇒表面利回り7.0%
⇒実質利回り6.3%
⇒自己資金に対する利回り35.2%
パターン3 地方都市の1ルームアパート(空室2部屋)
物件価格 |
9,000万円(ハウスメーカーによる建築) |
資金計画 |
全額借入/借入金利1.5%期間35年間 |
部屋数・家賃設定 |
1ルーム 8部屋・85,000円 ・空室2部屋 |
諸経費率 |
家賃収入に対する13% |
年間の収支は以下の通りとなります。
家賃収入6,120千円ー諸経費795千円ー返済額3,308千円=手取り2,017千円
⇒表面利回り6.8%
⇒実質利回り6.0%
4. アパート経営で得られる年収を増やすには
アパート経営で手取り収入を増やすためには、月々の収入・支出項目を精査し、キャッシュフローを改善することが重要です。
ここでは、年収を増やすために参考にしたい注意点を説明します。
4-1.空室リスクを極力減らす
満室時のうちから、空室対策を行っておくことは重要です。
上記シミュレーションでも示した通り、空室の有無はアパート経営の収入に大きく影響します。
空室率は年数とともに増える傾向にあるため、適切な修繕を実施したり、状況に応じて家賃設定を見直したりすることは重要です。
また、物件が持つ価値をより高め、複数ある賃貸物件の中から選んでもらえるようにするためにリノベーションも有効です。
4-2.税金対策をしっかり行う
手取り収入を増やすためには、税金対策も重要です。
所得税・住民税は所得金額に課税されます。経費として計上できる支出を、漏らすことなく計上することが重要です。
不動産投資で認められる経費については、以下のコラムで詳しく解説しています。
関連記事>>不動産投資の経費まとめ|認められるものと認められないものは?
また、所得税は所得が多くなるほど税率が上がる特徴があることから、所得が多い場合は法人化し、法人税を収めたほうが支払う税金の総額が少なくなるケースがあります。
税理士などの専門家と相談し、対応しましょう。
不動産投資の法人化については、以下のコラムで詳しく解説しています。
関連記事>>不動産投資の法人化から手続き終了後までの手順|法人化する基準は?
4-3.需要の変化にも目を向ける
アパートの入居率はその地域の需要と供給のバランスが影響します。
始めた当初は賃貸需要があっても、周辺に賃貸物件が増えた、新しい設備が入っている賃貸物件が建ったなどの要因で競争力を失う可能性があります。
入居者が選びたい、住み続けたいと思える状態を維持するために、需要に応じてリフォームを実施しましょう。
リフォームの例としては、セキュリティ強化でモニター付きインターホンを導入する、自宅にいなくても荷物が受け取れるよう宅配ボックスを設置する等が挙げられます。
不動産仲介会社から入居者の需要をヒアリングし、収益性を維持できるリフォームを検討しましょう。
5.アパート経営で年収を増やそう
今回は、アパート経営にかかる収入と支出で、年収をどの程度増やすことができるのかについて解説しました。シミュレーションで算出した通り、アパート経営を行うことで、ローンの返済を差し引いても毎年の手取り収入を増やすことが可能になります。
ただし、利益が残る不動産を購入するためには、不動産会社からさまざまなプランの提案を受け、判断できる目を養うことが重要です。まずは、不動産会社へ相談するところから始めましょう。
■監修者プロフィール
宅地建物取引士/FP2級
伊野 文明
宅地建物取引士・FP2級の知識を活かし、不動産専門ライターとして活動。賃貸経営・土地活用に関する記事執筆・監修を多数手掛けている。ビル管理会社で長期の勤務経験があるため、建物の設備・清掃に関する知識も豊富。
【保有資格】
・宅地建物取引士
・FP2級
・建築物環境衛生管理技術者
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