賃貸併用住宅のメリットとデメリットは?賃貸部分の経営で大切なこと
公開日: 2022.10.28
最終更新日: 2023.11.22
最終更新日:2022年7月22日
近年、リスクを抑えた自宅取得手法の一つである賃貸併用住宅の人気が高まっています。
賃貸併用住宅は、二世帯以上の住戸をつくることができる建物を建てて、その一部を賃貸物件として貸し出す手法です。
条件を満たせば金利の低い住宅ローンを組むことができ、かつ将来的には親や子との二世帯住宅などにも活用できるメリットがあります。
また、部屋を貸している人から家賃収入を得ることもできます。得られた家賃収入はローン返済に充てられるので、手元資金を減らさずに自宅を取得したい方が選択するケースが多く見られる土地活用方法です。
しかし、成功するためのポイントを押さえておかなければ、入居者が入らないという落とし穴にはまってしまうこともあります。
そこでこの記事では、賃貸併用住宅のメリット・デメリット、賃貸併用住宅を成功させるためのコツを説明します。
目次
1-1.オーナーの自宅に賃貸住宅をプラスした物件
1-2.賃貸併用住宅のタイプ
2-1.自宅と賃貸物件を個別に建てるより費用を抑えやすい
2-2.家賃収入でローンを返済できる
3-1.貸している部屋の安定した経営が求められる
3-2.入居者の確保が難しい
4-1.地域の賃貸ニーズを把握する
4-2.収支のシミュレーションを立てる
1.賃貸併用住宅とは?
はじめに賃貸併用住宅の概要を解説します。
1-1.オーナーの自宅に賃貸住宅をプラスした物件
賃貸併用住宅とは、オーナー自身が住む住宅の一部を第三者に貸し出し、家賃収入を得る賃貸経営のことを指します。
自宅の一部を貸し出すという点では下宿も同じですが、下宿が食堂や風呂トイレなどの共同設備を設けるのに対して、賃貸併用住宅はオーナーと入居者の住戸が単独で成立するようになっているのが特徴です。
自宅に必要なスペースを確保し、余ったスペースを活用して賃料収入を得ることができるため、自宅の床面積以上の施工面積を確保できる敷地を所有されている方を中心に人気の土地活用です。
1-2.賃貸併用住宅のタイプ
一棟に住居を2つ以上作ることで、持ち家(戸建て住宅)もマンション・アパートでも賃貸併用住宅にすることが可能です。
賃貸併用住宅は家族構成やライフプランに合わせ、柔軟な建築プランを立てます。
例えばマンションやアパートの場合、オーナー家族が住む居住スペースは最上階か1階に設け、残りを賃貸スペースとすることが一般的です。
最上階では眺望に優れた景色を、1階なら広々とした専用庭での時間を満喫することができます。
戸建ての場合では、1階を賃貸、2階や3階を自宅に分ける横割りというパターンもあれば、それぞれの住戸に1・2階を設ける縦割りというパターンもあります。
2.賃貸併用住宅のメリット
賃貸併用住宅の代表的な3つのメリットを紹介します。
自分の理想の実現につながる利点があるか確認してみましょう。
2-1.自宅と賃貸物件を個別に建てるより費用を抑えやすい
自宅と賃貸物件を兼ね合わせることで、建築費用を抑えることが可能です。
屋根と基礎は建物の建築時に特に費用がかかる箇所の1つですが、賃貸併用住宅の場合、1つの物件分で済むため、初期投資を抑えることができます。
それ以外にも、壁や配管などを共有することで、建築費用を抑えられるメリットがあります。
初期費用が少ないという点は、投資において大きなメリットです。
賃貸併用住宅は、その点において他の不動産投資より優れる選択肢と言えるでしょう。
2-2.家賃収入でローンを返済できる
自己資金がよほど多くない限り、不動産投資に融資の利用は必須です。
入居者から得た家賃収入を自宅のローン返済に充てることで、ローン負担の軽減が可能です。
ローン完済後は家賃収入を収益の軸にすることもできるため、将来の副収入や老後の年金対策としても有効です。
賃貸アパートなど自ら居住しない収益物件では、原則として金利の高い不動産投資ローンしか利用できません。
しかし、賃貸併用住宅では、金融機関の条件を満たすことで金利の低い住宅ローンを利用することができます。
多くの金融機関が条件として、「自宅としての居住部分の床面積が50%以上を占めている物件」と定めているため、面積の確認はしっかりと行いましょう。
ただし、金融機関によっては、賃貸併用住宅の住宅ローン利用を認めていないケースや、適用できるのが住宅部分のみのケースもあります。事前に利用条件や制約の確認をするようにしましょう。
また、賃貸併用住宅で借りた住宅ローンは、自宅部分の面積割合に応じて「住宅ローン控除」を利用できます。
2-3.ライフスタイルの変化に対応できる
賃貸併用住宅は、二世帯住宅や三世帯住宅としても活用しやすいメリットがあります。
入居者が退去したタイミングでリフォームを実施し、家族を呼べば二世帯用住宅への切り替えが可能です。
住まいがそれぞれ独立しているため、一般的な二世帯住宅よりプライバシーを守ることができます。
将来二世帯住宅を検討している方は、一時的に賃貸で家賃収入を得るために賃貸併用住宅を選択する方法もあります。
ライフスタイルの変化に対応することができる賃貸併用住宅は、良い選択肢と言えるでしょう。
3.賃貸併用住宅のデメリット・リスク
メリットの多い賃貸併用住宅ですが、もちろん注意点も存在します。
賃貸併用住宅のデメリットやリスクを、その対処方法とともにご説明します。
3-1.貸している部屋の安定した経営が求められる
賃貸併用住宅に限らず、どのような賃貸物件においても、空室や家賃下落による収入減少、修繕などによる出費の増加などのリスクは存在します。
賃貸併用住宅で貸し出せる部屋の数が少ない場合、空室が発生すると家賃収入がゼロになってしまうリスクがあります。
家賃収入の有無に関わらず、ローンは毎月返済しなければなりません。
空室リスクは少なからず存在することを踏まえ、貸している部屋を安定稼働するための運用が求められるでしょう。
具体的には、入居者募集のノウハウに長けたパートナー選びが重要です。
3-2.入居者の確保が難しい
賃貸併用住宅は、通常の物件より入居者の確保が難しい可能性があります。
気を使いたくないという理由から、他人であるオーナーと同じ家に住むことに抵抗感を覚える入居者は少なくありません。
特に戸建てなど戸数が少ない賃貸併用住宅の場合、その意識は強く出るでしょう。
そういった層から賃貸併用住宅を敬遠されてしまうことは、賃貸併用住宅のデメリットと言えます。
しかし、このデメリットも対処は可能です。
お互いのプライバシーが守られる設計にすることで、入居者は安心します。
具体的には、玄関などの出入口を別にすることや、騒音が伝わりづらい構造にすることなど、日常生活においてお互いの存在が気にならないような工夫を取り入れましょう。
3-3.オーナーと入居者の距離が近くなりやすい
考え方によっては、オーナーと入居者の距離が近くなりやすいこともデメリットと言えます。
オーナーからすると、入居者はお隣さんであると同時にお客様となります。
入居者が出す足音などの生活音やマナー違反に対して、注意することが億劫になるオーナーもいるでしょう。
賃貸併用住宅の管理を不動産管理会社に委託している場合でも、入居者は近くにいるオーナーに対応を求めることがあります。
管理に慣れていないオーナーの場合、適切な対処方法が分からず、トラブルを生んでしまうこともありえます。
こういった問題に対しても、不動産管理会社に管理を依頼し、不動産管理会社に間を取り持ってもらうことで回避することが可能です。
自らは良き隣人であることを貫き、対応や返答はプロである不動産管理会社に任せましょう。
4.賃貸部分の経営を成功させるために大切なこと
賃貸併用住宅で快適な暮らしを実現するには、様々な環境変化にも対応でき、賃貸部分を安定して経営することが必須です。
そこで、賃貸部分の経営を成功させるために大切なことをお伝えします。
4-1.地域の賃貸ニーズを把握する
まずは、物件の周囲の賃貸ニーズを把握することが大切です。
賃貸併用住宅はオーナー自身が居住することから、つい自らの理想とする入居者を想定した間取りで建物を設計してしまいがちです。
また、二世帯住宅として利用する想定もある場合は、その将来像に寄せすぎた設計になることもあるでしょう。
しかし、こういった設計が地域の賃貸ニーズと合っていない場合、入居者が決まりづらい建物ができてしまう可能性があります。
賃貸併用住宅も、れっきとした不動産投資です。物件を購入・建築する場合に「儲かるか」という視点は必須です。
その為には、物件のあるエリアの賃貸ニーズをきちんと調べ、そのニーズに寄り添った物件を設計することが重要です。
4-2.収支のシミュレーションを立てる
大切なことの2つ目は、綿密な資金計画 を正しく立てることです。
物件の取得に必要な資金はもちろん、賃貸収入や 税金を含めた管理費、修繕費などの長期的な「支出(イニシャルコスト・ランニングコスト)」も踏まえ、収支シミュレーションを実施し ましょう。
不動産投資で失敗しがちなのが、諸費用を把握していないことにより甘い収支シミュレーションを作成してしまうことです。
不動産投資にかかる以下のようなコストは、必ず収支に織り込むようにしましょう。
<初期費用>
・建物にかかる消費税
・不動産取得税
・印紙税(不動産売買契約書・ローン借り入れにかかる消費貸借契約書など)
・住宅ローンにかかる各種手数料(ローンを借りる場合)
・水道加入負担金
<ランニングコスト>
・不動産収入に対する所得税・住民税
・固定資産税(都市計画区域に物件がある場合は、別途都市計画税)
・管理委託費(物件の管理業務を不動産管理会社に委託する場合)
・ローン返済元本・支払い手数料
・建物の定期検査・メンテナンス代
・修繕費(数十年に1度の大規模修繕含む)
・火災・地震保険料
4-3.専門家やプロの力を借りる
大切なことの3つ目は、プロの力を借りることです。
地域の賃貸ニーズを把握するのも、収支のシミュレーションを立てるのも、個人だけで行うには限界があります。
賃貸事業に長けた土地活用の専門会社や、不動産会社の担当者など、信頼できる相談先を見つけましょう。
特に収支シミュレーションにおいては、自らが把握していなかった費用で後々苦しめられることも多々あります。
空室期間が長引いたときのプランも含めて、パートナーと協力して検討しましょう。
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5.賃貸併用住宅でリスクを抑えた不動産投資をはじめよう
今回は、賃貸併用住宅のメリット・デメリットや、成功するために大切な要素をご説明しました。
賃貸併用住宅は自宅を建てる延長線上の不動産投資として、初心者の方にもおすすめしやすい土地の活用方法です。
自宅共用のため賃貸用アパート経営やマンション経営と比べ、初期投資を少なく抑えることができ、自宅としての割合を50%以上とするなど、金融機関が設定した条件を満たせば、住宅ローンを組むことも可能でメリットの多い不動産投資といえます。
しかし、自らも居住することから、つい周囲の物件ニーズなどを確認せずに建物を設計してしまう場合があります。
初心者の方が適切な収支シミュレーションを作成するのは困難なので、計画段階から不動産のプロに相談することをおすすめします。
大東建託では、賃貸併用住宅も含めて、土地活用に関するさまざまなご相談に対して、包括的なサポートを提供しております。税理士などの専門家と連携し、様々な節税対策をご提案することも可能です。まずはお気軽にご相談ください。
■監修者プロフィール
宅地建物取引士/FP2級
伊野 文明
宅地建物取引士・FP2級の知識を活かし、不動産専門ライターとして活動。賃貸経営・土地活用に関する記事執筆・監修を多数手掛けている。ビル管理会社で長期の勤務経験があるため、建物の設備・清掃に関する知識も豊富。
【保有資格】
・宅地建物取引士
・FP2級
・建築物環境衛生管理技術者
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