狭小地におすすめの土地活用8選│メリット・デメリット・注意点
公開日: 2023.05.16
最終更新日: 2023.12.26
狭くて小さい土地「狭小地」の扱いに悩む人は少なくありません。面積の大きさに明確な定義はないものの、土地活用においては一般的に敷地面積が30坪以下の土地を狭小地ということが多いです。狭小地は一般的に市場に流通する広さの土地と比べると、売却や土地活用が難しい傾向があります。しかし、しっかりと立地や周辺環境、ニーズに適した活用方法であれば、収益化することも不可能ではありません。そこで本記事では、狭小地におすすめの土地活用やメリット・デメリットについて解説します。
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目次
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1.狭小地におすすめの土地活用法
狭小地は都心部、首都圏といった坪単価の高い地域に多い傾向があります。同地域は30坪以下の狭小地であっても坪単価が高く、活用方法によっては資産性を高められるケースも十分に考えられます。
また人口密集地であれば、狭小地であっても居住用のニーズが見込めるでしょう。同様に人口が多いということは、需要を満たせる方法で土地活用できれば高い収益性の確保も図れます。
ただし、狭小地は敷地面積が小さいだけでなく、台形、三角形といったきれいな長方形、正方形以外の形状をした「不整形地(変形地)」であるケースも多いです。
そのため土地の大きさや場所だけではなく、形状にも配慮した活用が求められます。
1-1.アパート経営
土地活用の代表的な手法の1つである「アパート経営」は、30坪どころか旗竿地や不整形地の15~20坪の狭小地でも建物を建築できる可能性があります。もちろん、収益化も夢ではなく周辺環境、立地条件に加えてターゲットとなる入居者が求める間取りやデザインを取り入れることで、安定性の高い収入を得られる可能性も高まります。
例えば、都心部の住宅街なら狭めのワンルームや1Kのような狭小住宅であっても「利便性」を重視する単身の若者のニーズに合致するでしょう。さらにロフトやメゾネットタイプなどを取り入れて床面積を増やすほか、戸建賃貸(戸建て賃貸)にするなどして限られた土地を有効的に使うことで、人気の高い物件にすることも不可能ではありません。
一方、人口密度の低い地域など「狭い賃貸住宅」の需要が低い狭小地であれば、収益性が見込めないケースも考えられます。また、建築基準法や都道府県の安全条例、民法規定によって、そもそもアパートを建築できない可能性があることも覚えておきましょう。
>>関連記事:アパート経営のメリットと利回りは?かかる経費やリスク、対処法
1-2.月極駐車場経営
一定の期間、駐車場として土地を貸し出す「月極駐車場経営」はアパート経営と比べると大きな利益を得ることは難しいですが、車1台分を止めるスペースがあれば始められるのが魅力です。
国土交通省の「駐車場設計・施工指針」によると、軽自動車、小型自動車、普通自動車の駐車場のサイズは以下のように示されています。
■駐車場設計・施工指針
|
駐車場のサイズ |
|
長さ |
幅員 |
|
軽自動車 |
3.6m |
2.0m |
小型自動車 |
5.0m |
2.3m |
普通自動車 |
6.0m |
2.5m |
※出典:国土交通省「駐車場設計・施工指針について」
https://www.mlit.go.jp/road/sign/kijyun/pdf/19920610tyuusyajou.pdf
上記の指針を参考にしつつ、狭小地の坪数と駐車スペースの数などを算出してみましょう。固定資産税を支払っても収入が見込めるケースも十分考えられます。
>>関連記事:駐車場経営のメリット・デメリット
1-3.コインパーキング経営
都心部であれば月極駐車場より収益性の高い「コインパーキング(時間貸し駐車場)」も検討する価値が高いです。
コインパーキングも車1台から活用可能ですし、看板や精算機などの配置を工夫することで不整形地(変形地)であっても導入できるケースもあります。
駐車スペースの大きさは、一般的には月極駐車場と大差はないとされており1台あたり縦5m×横2.5m、設備の設置スペースとして2~3坪が必要なため2台の場合は約10坪程度とされています。
1-4.トランクルーム経営
コンテナボックスを設置し、使用契約を結んだ人に保管スペースを貸し出す「トランクルーム」も狭小地の土地活用の1つです。
コンテナボックスの大きさによって求められる周辺環境、ターゲット層も異なりますが、30坪程度あればトランクルーム経営はできますし、必ずしも大きな道路に面している必要もありません。
そのため近隣にマンションやオフィスビルがあれば、奥まった日当たりの悪い土地など、アパート経営といった他の土地活用方法には適さない狭小地でも選択肢に挙げられることがあります。
ただし、必ずしも大きな道路が必要ないとはいえ、コンテナハウスを敷地内に運び込むためには一定の敷地の間口(6m以上)と前面道路の幅員(6m以上)が求められるケースが多いです。旗竿状などの間口が狭い土地は、コンテナハウスに不向きの可能性もあります。
>>関連記事:トランクルーム経営とは?需要の推移、できないケース、初期費用
1-5.コインランドリー経営
コインランドリーを設置して運用する「コインランドリー経営」も、10~15坪程度あれば可能とされています。
ただし、駐車場を設けるにはさらに大きなスペースが求められます。
マンションの多い住宅地など学生・単身者の多い地域で車を所有していないなど、駐車場の付置が不要であれば、狭小地でのコインランドリー経営でも収益性を確保しやすいでしょう。
1-6.自動販売機などの設置
「自動販売機を購入して設置する」もしくは「自動販売機業者にスペースを貸し出す」ことで、狭小地であっても収益を上げられます。自動販売機の設置スペースに基準はありませんが、一般的なサイズの場合は幅100cm×奥行70cmとされることが多いです。
ゴミ箱の設置スペースを考慮しても、駐車場と比べて非常に省スペースで土地活用できるのがメリットです。
10坪未満でも購入者が安全に購入できるスペースを確保しながら、複数のサイズ、台数を設置して商品のバリエーションを増やしたり、品切れリスクを低減したりすることで収益向上を図れます。ただし、元々の収益性は他の土地活用方法と比べると高くないうえ、狭小地の前の道路の歩行者の交通量などによっては十分な売上高を見込めない可能性もあります。さらにゴミの散乱を防ぐための配慮、管理が求められることも考慮しておく必要があるでしょう。
1-7.自動証明写真機の設置
自動販売機と同じくサイドビジネスとして注目されている土地活用方法が「自動証明写真機」です。基本的に業者に設置スペースを提供し、売上の歩合に応じた金額を受け取るビジネスモデルが主流です。必要な設置スペースはおよそ1㎡程度。
電気代など一部のランニングコストがかかるものの、設置費用から消耗品の補給、売上金の回収、管理は業者が負うのが一般的なため、少ない労力で収益を上げられるのが特徴です。
変形地の一部など、自動販売機と同じようにアパート経営や駐車場など他の土地活用と組み合わせて検討する価値もあるでしょう。
1-8.野立て看板の設置
野建て看板とは、野外に支柱を立てて掲示する看板の一種です。支柱と看板のスペースだけ確保すれば設置できるうえ、土地の一区画だけしか使わないので狭小地、変形地でも導入しやすいのがメリットです。設置費用は業者が負担するケースがほとんどなので、初期費用が安く、年単位で広告主と継続できれば安定した収益を確保できます。
ただし、看板の設置をめぐっては建築基準法、屋外広告物法、景観法、道路法などでルールが定められているうえ、看板の本体サイズが4mを超える場合は工作物確認申請を提出しなければなりません。さらに都市部で多くの人に見られる場所などのニーズが高い立地条件でなければ、広告主を見つけづらく収入も低くなるリスクが高いのが注意点です。
2.狭小地を土地活用するメリット
狭小地の土地活用は「規模が小さい」ことによるメリットを受けやすいのが魅力的なポイントといえます。
また、狭小地を放置することで発生するリスクやコストの低減にもつなげられます。
詳細を以下で解説します。
2-1.少ない収益でも固定資産税の税負担の軽減効果が大きい
狭小地は敷地面積が少なく、評価も高くなりにくいため固定資産税が安くなりやすい傾向があります。
そのため収入の金額が少なくとも、税負担分もしくはそれ以上の収益の確保を図れるのがメリットといえるでしょう。
例えば、広い敷地で規模が大きめのアパート経営を行えば収益額は大きくなりますが、元々の固定資産税の負担額も増大するため、より多くの利益を確保し続けなければなりません。
一方、コインパーキング駐車場2台分の収益で狭小地の固定資産税分を賄えるのであれば、後者を「魅力的」と感じる人も少なくないのではないでしょうか。
また、活用されていない狭小地が空き地となっており荒れ放題になっていたり、ゴミが不法投棄されていたりする光景を見たことがある人も多いと思います。特に都市部の一角にある空き地は、人通りも多くそのリスクに対する管理コストも無視はできません。狭小地を適切に整備して土地活用すれば、そのようなリスクの軽減にもつなげられます。
大きな収益、利益の確保は難しいけれど、大きな土地と比べると導入費用・維持費用が少なくても「税負担分の元を取れる可能性がある 」ことが土地活用の目的である人にとっては、十分に狭小地の土地活用を検討する価値はあるでしょう。
2-2.整備などの初期費用を抑えやすい
元々、それほど大きな収益の獲得を狙わないのであれば、少ない初期費用で「税負担の軽減」などを図れるのが狭小地のメリットといえるでしょう。
もちろん例外はありますが、基本的にいずれの土地活用方法であっても、整地のように規模が大きくなるほど初期費用は大きくなります。
初期費用が低いことは特に初めて土地活用する人にとっては、ハードルが低くなるため前向きに検討できるポイントです。
3.狭小地を土地活用するデメリット・注意点
狭小地を適切に土地活用することで多くのメリットが得られる一方、コストや融資、法規制などの点で注意しなければならないポイントも少なくありません。その詳細を解説します。
3-1.建築コストが高くなるリスクがある
小規模で初期費用を低減しつつ始められやすいのが狭小地の土地活用のメリットですが、建物を建築する場合は逆にコストが高額になる可能性が高いので注意が必要です。
狭小地での建設工事では、隣地とのスペースが十分に確保できない場合、狭所でも作業できる職人に対する技術料などを上乗せした「特殊作業工賃」を支払わなければならない可能性があります。
さらに土地に資材を置けないケースでは、別途、近隣に資材置き場を確保しなければならず、離れた場所から都度、資材を運ぶための運送費も加算されるかもしれません。
また、非効率的な作業になればその分、作業日数が伸びて人件費が増大し、結果的に工賃が高くなってしまうリスクも考えられます。
もちろん、床面積を増やすために3階建て以上にすると、同じ戸数であっても2階建てのアパートよりも工賃は高くなるでしょう。
3-2.融資を利用しにくい
狭小地が売却、土地活用が難しい理由としては「住宅ローン」や「土地活用のための融資」の審査が通りにくいことが挙げられます。
その理由としては、狭小地の価値が低く融資の担保として認められづらいことです。
例えば、住宅ローンの場合は担保の条件として「土地面積」や「建物面積」の下限が設けられており、30坪程度の狭小地では対象にならないケースがあります。
一方、住宅ローンのような仕組みの不動産担保ローン以外であれば、「条件を満たせない」というケースは少ないです。具体的にはアパートローンやプロパーローンような公的、民間から受けられる融資(借入金)が挙げられます。
ただし、狭小地や変形地の活用法については厳しく審査される可能性があるため、土地の評価を受けたうえでしっかりと事業計画書を作成する必要があるでしょう。
3-3.法規制に注意する必要がある
*建築物の用途制限(都市計画区域にある土地の場合)、建ぺい率・容積率など
狭小地においては特に法規制に注意する必要があります。
例えば都市計画区域に狭小地がある場合、用途地域によって建築物の用途制限が設けられているうえ、店舗や事務所は各地域によって面積要件が異なります。
土地活用の方法によっては要件を満たしていないケースがあるので、あらかじめ確認は必須でしょう。
建築基準法では用途地域ごとに「建蔽率」と「容積率」の上限も設定されています。さらに2m以上の接道義務を満たしていない土地は、そもそも建物を建てることができません。
このような法規制に則ったうえで、狭小地の活用方法を模索するのが大前提といえるでしょう。
4.狭小地は周辺環境によって最適な土地活用方法は異なる
狭小地を上手に活用できれば、固定資産税の税負担を軽減することが可能です。
ただし、小さな土地を効率的に活用して収益を上げ続けなければならないため、周辺環境や立地条件に適した方法を選択する重要性は非常に高いといえるでしょう。
特に初めての土地活用を検討している人は判断が非常に難しいため、狭小地の土地活用の経験、ノウハウが豊富なプロの専門家を頼ることをおすすめします。
■監修者プロフィール
宅地建物取引士/FP2級
伊野 文明
宅地建物取引士・FP2級の知識を活かし、不動産専門ライターとして活動。賃貸経営・土地活用に関する記事執筆・監修を多数手掛けている。ビル管理会社で長期の勤務経験があるため、建物の設備・清掃に関する知識も豊富。
【保有資格】
・宅地建物取引士
・FP2級
・建築物環境衛生管理技術者
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