月極・コインパーキングのそれぞれの特徴
公開日: 2022.10.28
最終更新日: 2023.11.16
不動産の有効活用にはさまざまな方法があります。例をあげると、アパート(マンション)経営・戸建賃貸(シェアハウス)経営・トランクルーム経営・太陽光発電経営などですが、今回はその中において、「駐車場経営」について説明していきます。
駐車場経営のメリット・デメリットについて
<駐車場経営のメリット>
建物賃貸事業と比較して初期投資額を大幅に押さえることができ、その後の建物維持の修繕が不要となり、借主からの雨漏りなどのクレーム処理もありません。というのも、建物所有を目的としていないので、借地借家法の適用外になり規制が緩やかになります。このことより、解約して、転用もしやすいことにあります。
<駐車場経営のデメリット>
更地扱いになるため、固定資産税など税金の軽減や減額の恩恵はなく、減価償却費などの経費が少ないので所得税が比較的多くなります。また、土地を所有していれば、誰でも駐車場経営へ参入しやすいため、近隣に競争相手となる駐車場が増える可能性があります。
なお、駐車場経営にかかる税金として、固定資産税や都市計画税、事業税や償却資産税や消費税といった税金は発生します。
人口推移と駐車場の需要について
わが国の人口推移を見てみますと、人口は年々減少しており、令和3年11月1日現在の総人口は約1億2,500万人で、今後の予測ではさらに減少する見込みとされています。自家用車の保有台数をみても、上昇から横ばいになっており、減少も予想されます。
自家用車を所有すると自動車税や燃料代などの維持費用が発生しますので、昨今では、自動車を所有するよりも、他人と共有すること(≒カーシェア)への価値が高まってきています。自家用車の保有台数がこのまま減少していけば、駐車場の利用ニーズも減少するということになりますが、自家用車の保有台数が多くなるには、運転ができる人口の増加が必要になってきます。
(出典)一般財団法人自動車検査登録情報協会をもとに筆者作成
次に、「駐車場経営」の形式を見ていきたいと思います。「月極駐車場形式」か「コインパーキング形式」のどちらかを選択することが多く見受けられます。
月極駐車場とは
利用する方と毎月の利用契約を結んで、賃料を受け取るものです。土地さえあれば、いつでも始めることができますが、最低限の設備として、整地・ライン引き・車止めは必要です。
月極駐車場では3つの方法があります。
① 自己経営
募集から賃料回収まで、すべてを自分で行う
② 管理委託方式
募集や管理を業者に手数料を支払って、委託する方式
③ 一括借り上げ方式
業者に手数料を支払うが、空車・満車といった稼働状況に関わらず、毎月一定額がもらえる方式
3つの方式を比較してみます。
①と②は自己あるいは業者が、利用者の募集をすることから始まります。つまり、契約者がいなければ収入を得ることはできません。
一方、③は業者が、利用者がいなくても、借り上げるので、一定額はもらえます。
このことより、収入面においては、収益の安定性を考えるのであれば、③>②>①となります。
また、①はすべてを自分でする方式なので、トラブルやクレームなどの対応もしなければなりません。
月極駐車場の利用者は誰なのか?〜適した立地とは?〜
月極駐車場の場合は利用者が固定になります。
1 駐車場がない(足りない)戸建て世帯の方
2 マンション・アパート世帯であれば、その敷地に駐車できない方
3 近隣の企業に従事する方
主にこの3つが挙げられます。
また、周囲にいくつかの月極駐車場があっても、深夜や早朝時間に満車であれば、自宅周辺で駐車場が空いておらず、困っている方がいる可能性もありますので、検討してみてもいいかもしれません。
コインパーキングとは
時間貸しの駐車場のことで、利用する方が駐車していた時間に応じて、設定された料金を支払うシステムです。24時間無人の時間貸しの営業が大半で、屋外式と屋内式があり、駐車台数は数台から数十台となっています。
駐車場の管理は駐車台数により、方式が分かれます。
- 小規模(10台程度)の場合はロック式(フラップ板)
- 大規模(20台以上)の場合はゲート式
コインパーキングでは主に2つの方法があります。
① 一括借り上げ方式
運営会社が用地を一括で借上げ、オーナーに毎月固定賃料を支払う方式
舗装費用はオーナー負担にすることが多い。
② 共同運営方式
運営会社とオーナーが共同運営をして、契約で決めた利益をそれぞれ受け取る方式
駐車場用地の賃貸借契約期間は 2~3年契約が実務的に多く見受けられ、利用契約が終了すればやめることはできます。
①が一般的に多い方式と思います。
コインパーキングの利用者は誰なのか?〜適した立地とは?〜
コインパーキングの利用者は不特定多数の方になりますので、いかに認知してもらえるかが、ポイントになります。
今はスマホで簡単に検索できるので、候補場所の周辺で、「1時間あたりいくらで利用できるのか」、「上限金額の設定があるのか」などを調査してから行動をすることが多いようです。
運営者からすると、相場の金額には敏感で、他社が金額を変動すると、追従する傾向にありますので、地域によっては、金額に大きな乖離はないことが多いです。
立地として一般的に、駅前周辺や繁華街の立地は最有効となりますが、一定の交通量があり、車の流れが速すぎず、前面道路が広く、間口が広くとれる場所や、周辺に病院などがある場所、あるいは、商業施設がある場所などはコインパーキングには適している立地と言えます。
コインパーキングの箇所数の推移
(出典)一般社団法人日本パーキングビジネス協会 2020年度版駐車場便覧
人口と自家用車の保有台数が減少化傾向にある中で、コインパーキングの需要は逆に増加傾向にあることが読み取れます。理由のひとつには、カーシェアの需要が増えたことなどにより車の利用そのものは減っている訳ではないことが考えられ、今後ますます普及していくことが予測されています。
ただし、導入を検討するにあたり、駐車の用に供する面積が500㎡未満は届出が不要ということや、増減が著しいこともあり、競合実態の把握が難しいという実情があることはご注意ください。
初期費用について
<月極駐車場の場合>
最低でも整地・ライン引き・車止めの費用は発生します。できるだけ費用を抑えたいと思っても、更地では草が生えていたり、地面がデコボコしていると車の重量に耐えることができないので、どうしても整地は必要です。
立地などの条件や施工業者により金額は変わりますが、安価な方法として、砕石を敷きつめて重機で転圧し、区画ロープ(通称トラロープ)で区画する未舗装タイプと言われるもので3,000~4,000円/㎡程度が一般的です。
未舗装タイプは区画ラインが引けないので、区画ラインを引くのであればアスファルト舗装が必要となり、4,000~6,000円/㎡程度の舗装費用が発生します。さらにコンクリート舗装というものもありますが、8,000~10,000円/㎡程度の舗装費用になります。
<コインパーキングの場合>
機械設置や配線が必要のため、通常はアスファルト舗装タイプになり、整地費用の他に機械の設置費用が発生します。先ほど写真で見ていただいたロック式とゲート式に分かれますが、初期費用を抑える観点からロック式の費用を見ていきます。
ロック式の場合はフラット板・精算機・照明・看板・車止めが必要になります。
フラット板が10万円/台・精算機が40~50万円・照明・看板設置が60~70万円・車止めが4,000円/台程度の金額です。また、場合によっては歩道の切り下げが必要になります。費用は30~60万円程度かかります。
この他にも立体駐車場がありますが、費用は階高により、数千万円~数億円はかかります。
(一括借り上げ方式では初期費用が掛からないこともあります)
まとめ
月極駐車場形式であれ、コインパーキング形式であれ、土地所有者はご自身なので、固定資産税や都市計画税、事業税や償却資産税や消費税といった税金は発生します。また、所得税や住民税といったものも所得に応じて発生します。
駐車場経営はアパート経営などとは違い、対象となるのが「物である」ので、立体駐車場は除き、借地借家法の適用外になり規制が緩やかになります。
ポイントは稼働率(=実際の売上高÷すべて埋まった場合の売上高)をいかにして高くするかによって利益率が変わってきますので、土地の周辺環境に駐車場の実需があるのかどうか見極めることと、運営後の仲介力や管理力が重要になります。
参考にしてみてください。
■監修者プロフィール
株式会社優益FPオフィス 代表取締役
佐藤 益弘
マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】CFP®/FP技能士(1級)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)
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