連載「サブリースとは?」第4回:サブリースのメリット・デメリット
公開日: 2022.10.28
最終更新日: 2022.11.04
自分にピッタリな賃貸経営の形とは...? サブリースのメリット・デメリットを徹底解説!!
連載第1回~第3回では、「サブリースの基礎」から「サブリース新法」、「実際にサブリースを利用する際の流れ」までを、メリット・デメリットを含めて説明してきました。
今回はもっと詳しく、メリット・デメリットについてじっくりと解説していきます。
>連載第2回「サブリースって、何がそんなに魅力なの...?」はこちら
賃貸経営の基本!管理形態ごとのメリット・デメリット
賃貸経営を行うには、さまざまな業務が発生します。入居者募集、建物の美観を維持するための修繕工事手配、住宅設備のメンテナンス対応などといった管理業務(大家さん業務)です。
賃貸経営の管理を委託する方法には、「自主管理」「管理委託」「サブリース」の3つの形態があります。まずは、それぞれの管理形態の違いを確認していきましょう。
管理形態① 自主管理
すべての管理業務を大家さんが自分で行う方法です。
【メリット】
- 家賃設定や入居者の審査など、オーナー自身で決める
- 管理業務に掛かる実費を除き、管理会社へ支払う管理委託費用の支出を抑えることができる
【デメリット】
- 入居者からの問い合わせ対応や修繕・原状回復のための業者手配など、時間や手間がかかる業務を自ら行わなければならない
- 夜間や外出時など、入居者対応ができない
- 立地条件や建物の状態に合わせた入居者の募集方法や家賃の設定や、入居者からのクレーム対応、家賃滞納への対応などを自ら行わなければならず、専門知識が求められる場面で最適な判断ができないと、適切な賃貸経営ができなくなるケースがある
管理形態② 管理委託
賃貸経営に関わる管理業務の一部、またはすべてを管理会社に委託する方法です。
【メリット】
- 家賃収支に合わせて、入居者募集や建物管理など委託する業務の取捨選択を行うことができる
- 管理業務ごとのプロフェッショナルに業務を委託することも可能
- 管理業務を委託することで、自分の時間を確保することができる
【デメリット】
- 複数の管理会社へ依頼する場合、管理業務によって窓口が分散してしまう
- 委託する業務の分だけ、管理委託費用などの支出が必要
管理形態③ サブリース
サブリース事業者がオーナーより、建物まるごと借上げ、転貸する方法です。
【メリット】
- オーナーとしての賃貸相手はサブリース事業者であり、実入居者との契約関係から解放される。家賃滞納などトラブルが発生した場合でも専門知識を持ったプロフェッショナルが常に賃貸人として実入居者に対応してくれるため、効率の良い賃貸経営が可能
- 空室の有無にかかわらず、一定の家賃収入が得られる
- 実入居者への管理業務を行う必要がなく、自分の時間が確保できる
【デメリット】
- 家賃の設定や入居者の審査など、必ずしもオーナーの希望通りに設定できない場合がある
- 実質的に、管理委託や空室保証などの手数料に相当する収入減がある
- 場合によっては、賃貸経営の実態が見えにくい場合がある
このように、管理形態にもそれぞれメリット・デメリットがあります。
賃貸経営にかけられる手間や時間はどのくらいあるのか、所有する土地は何かあった際にすぐ駆け付けられる場所なのか、相続した際に管理業務を引き継げるのかなど、さまざまなケースを想定し、自分に合った管理形態を選びましょう。
サブリース契約のメリット
ここからは、特にサブリースのメリットに焦点を当てて、説明をしていきます。
サブリースのメリット① 管理業務の負担を軽減することができる
前述した通り、賃貸経営は、手間や時間がかかるだけではなく専門知識が必要となる場面も多くあるため、賃貸経営をしたことがない方にとっては大きな負担となります。
自分自身が実入居者に対する直接の賃貸人になることなく「ほとんどすべての管理業務を任せる」ことができ、「プロフェッショナルが常に実入居者に対する貸主として対応」してくれるサブリースは、手間や時間、心理的負担などを減らすことができ、かつ効率的な賃貸経営ができる点において、大きなメリットであるといえるでしょう。
サブリースのメリット② 空室・滞納リスクを回避できる=安定収入につながる
賃貸経営を行うにあたり、大きなリスクとなるのが「空室」そして「家賃の滞納」です。
空室を生まないためには、立地に合うターゲットはどのような入居者か、ターゲットが求める設備や内装は何か、それらが築年数によってどう変化するのかといったマーケティング力が不可欠です。
また、地域特性・市場環境の変化に伴う入居需要の減少などのリスクに対して、安定して入居者を確保し得る入居者募集の仕組みなども、安定経営継続のためにはとても重要な要素となります。
サブリースによる賃貸経営では、サブリース事業者が建物を丸ごと借り上げるため、これら専門性の高い業務をお任せできます。
また、空室や家賃滞納の有無にかかわらず、契約時に定めた家賃が必ず振り込まれるため、安定した収入を得ることができます。
サブリースのメリット③ 事務作業の負担を軽減できる
賃貸経営を行う際には、入居者募集のための広告費、修繕費用など、さまざまな費用がかかると同時に、見積依頼や領収書の作成、振り込みなどといった細かい事務作業もついて回ります。
これら"見えない事務作業"についても、サブリース事業者が対応してくれますので、手間の軽減につながります。
【ポイント】
費用負担の範囲は、サブリース事業者ごとに異なります。契約時には、どこまでが入居者やサブリース事業者の負担なのか、どこからがオーナー負担となるのか、必ず確認しましょう。サブリースのメリット④ 賃貸経営による相続対策とスムーズな事業承継
自用地(他人が利用する権利のない土地、「じようち」と読みます)に、賃貸住宅や賃貸併用住宅などを建てて運営し、土地の種類を貸家建付地(他人が利用できる土地、「かしやたてつけち」と読みます)に変えることで、他人に土地を利用する権利を譲渡する分、土地の評価が下がるため相続税を節税することができます。
貸家建付地の節税効果は、管理形態を問わず適応されますが、賃貸割合によって節税効果は変動します。賃貸割合とは満室状態を100%とする入居割合のことで、賃貸割合が高いほど、つまり空室が少ないほど相続税評価額は下がるのです。サブリース契約の場合は実際の入居状況に関わらず、常に賃貸割合は100%となるので、最大限の評価減を受けることができます。
また、サブリースでの賃貸経営を行う場合、相続税の節税効果だけでなく、「相続や事業承継がスムーズに行われる」というメリットが加わります。例えば、 自主管理による賃貸経営を相続する場合、相続したその日から、相続人が管理業務のすべてを引き継がなければなりません。
しかし、相続人が詳しい管理状況を知らなければ、どのように賃貸経営を行えばいいか全くわからないでしょう。また、管理委託による賃貸経営の場合も、どの業務を、どの業者に、どのくらい委託しているのかを事前に整理し、引き継ぐ必要があります。サブリースによる賃貸経営であれば、管理業務を一括して委託しているため、サブリース事業者1社を引き継ぐだけで、相続後も変わらず賃貸経営を行ってもらえます。またサブリース事業者によっては、相続時の所有者変更に伴うサポートを行ってくれる会社もあるため、より安心して資産を残すことができるでしょう。
サブリースのデメリット
多くのメリットがあるサブリースですが、確認すべきデメリットもあります。ここからは、サブリースのデメリットを確認していきましょう。
デメリット① 満室でも家賃収入を満額もらうことができない
ほとんどのサブリース事業者は、家賃の10~20%を借上手数料として設定しています。そのため、オーナーに支払われる家賃は、当初設定家賃の80%~90%となります。ただし、空室の有無を問わず支払われ、また、実際の入居家賃が下がっても一定期間は当初設定した家賃に基づいて支払われるのが一般的です。
空室でも一定の収入がある点はサブリースのメリットですが、一方で満室の場合でも、受け取れる金額は変わりませんので、満室が続いた場合には、管理業務に実際掛かる費用を度外視した場合、自主管理で賃貸経営を行う場合に比べて、表面的な手取り額が下がってしまいます。
デメリット② 家賃が保証されない「免責期間」がある
連載第3回「サブリース契約までの流れ」でも説明した通り、ほとんどのサブリース事業者が「免責期間」を設けています。免責期間とは、建物完成・引き渡し後、または入居者が退居するごとに数日~数か月間、入居者が入居を開始するための準備期間として設定される期間です。原状回復や入居者募集を行うなど、次の入居者を入居させるために必要な期間であると同時に、入居者を住まわせることができない期間となるため、免責期間は家賃保証の対象外となります。また、免責期間中に新しい入居者が入居したとしても、契約時に定められた免責期間は変わらないため、家賃は保証されません。
自主管理の場合には、入居者が入居したその日から家賃が発生することを考えると、サブリースのデメリットということができるでしょう。しかし、免責期間を過ぎれば、入居者募集などがうまくいかずに多くの空室があったとしても、一定の家賃が回収できることを考えると、一概にデメリットばかりとはいえません。
デメリット③ 一定期間ごとに家賃の見直しがある
一括借上は、20~30年と長期にわたって行われることがほとんどです。この借上期間中は、ずっと同じ家賃が保証されると考えがちですが、実際はそうではありません。
一般的な一括借上では、一定期間ごと(多くの場合2~3年ごと)に家賃の見直しが行われます。エリアの活性度や人気度、その時々の経済情勢、それまでの管理状況にもよりますが、築年数の経過や設備の老朽化や入居者の集客力不足などにより、建物自体の競争力が下がってしまっている場合、家賃見直しのタイミングで家賃の減額を提案されることがあります。
家賃の減額を容認しないこともできますが、「その家賃では賃貸経営が立ち行かない」とサブリース事業者に判断されると、契約解除を申し入れられる場合もあります。
解約手続きについては、
>「連載第3回:サブリース契約までの流れ」をご確認ください。デメリット④ オーナーが入居者を選べない
管理業務を一括して委託しているため、入居者の募集、審査、契約はすべてサブリース事業者が行います。
そのためオーナーは、契約時に入居条件に関する要望を伝えることができても、入居者を選ぶことはできません。
自主管理による賃貸経営であれば、入居希望者に対し、最終的な可否判断を行うのはオーナーになります。ですがサブリースの場合、どのような入居者が入ってきたかは、オーナーに知らされないこともあります。サブリース事業者に聞いたとしても、個人情報保護の観点から、聞き出せない情報も多くあります。
契約期間中であれば、入居者からの問い合わせ対応や家賃の滞納などについても、サブリース事業者が対応をしてくれるため問題ありませんが、契約期間終了後は、その入居者をオーナー自身が管理していかなければならない可能性があることを念頭に置いておきましょう。
【ポイント】
「サブリースのデメリット」で説明してきた「借上手数料」「免責期間」「家賃の見直し期間」「入居者の審査方法」は、いずれもサブリース事業者によって大きく異なります。また、契約内容を履行できる仕組みやノウハウ、実績を持っているかどうかもサブリース事業者によってかなり大きな差があります。
まずは自分なりに理想の賃貸経営のイメージをしっかり持ったうえで、それぞれのメリット・デメリットに向き合い、サブリース事業者を選ぶ際の基準としましょう。
まとめ
面倒な管理業務を大きく軽減できるほか、空室や家賃滞納のリスクを軽減できるなど、賃貸経営の不安や負担をクリアにできるサブリース。しかし、当然ながら、メリットだけを享受できるわけではありません。
長期にわたる賃貸経営においてさまざまな環境変化があるなかで、安定経営を実現できるサブリース事業者を選択することが大前提となります。オーナーには客観的な視点を持ちながら、適切なパートナーを選定し、サブリースのメリット・デメリットを十分に理解したうえで契約することが求められます。とはいえ、サブリースについての客観的な意見や実際の事例を個人で集めるのはなかなか難しいものです。
そのようなオーナーのために、国土交通省や消費者庁では、サブリースに関する相談窓口を設けています。トラブルなどの事例も公開していますので、具体的にどのようなリスクがあるのかを知りたい場合は、このような公的な資料を参考にすると良いでしょう。
賃貸経営のさまざまなスタイルを理解して、自分にぴったり合う方法を見つけることが大切です。
大東建託の一括借上「賃貸経営受託システム」では賃貸経営において避けることのできない、収支変動リスクに対応します
大東建託では、独自の賃貸経営受託システム『35年一括借上』により、サブリースのデメリットの軽減に努めています。
例えば、サブリースのデメリットとしてあげた「家賃の見直し」。マンション・アパート等の居住用建物の場合、周辺家賃相場や建物設備などを考慮し、借上賃料は当初10年間固定で、以降5年ごとに更新します。
大東建託の家賃設定
全国に配置された市場調査専門スタッフが、需給動向や地域の家賃情報を収集。
自社約19万棟、他社約70万件の賃貸建物データが一括管理された独自の土地情報システム「DK MAP」を活用し、エリアごとのマーケティングを行うことで、データに裏付けられた適正な賃貸住宅供給と家賃設定を実現しています。
大東建託の賃料見直し
大東建託の借上賃料は、初めの10年間は変更されません。その後の賃料の見直しも5年ごととしています(居住用の場合)。周辺家賃相場が変動しても、見直し期間が長期で固定されているため安心です。
※賃料更新時は、周辺家賃相場や建物設備などを考慮し、借上賃料の見直しを行います
※賃料固定期間中でも、借地借家法第32条1項(借家における家賃の増減額請求)の規定により、借上賃料が減額される場合があります。
家賃維持のために
「雨水で外壁に付着した汚れが流れ落ち、美観が保てる外壁」「キズが付きにくく、部分貼り換えが可能なフローリング」など、47年にわたり賃貸住宅専門会社として蓄積したノウハウにより実現できる、高品質とメンテナンス性を両立させた資材や設備の開発で、建物の競争力を維持します。
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