不動産投資にはどのようなリスクがある?失敗しないためできることは
公開日: 2023.10.04
最終更新日: 2023.10.05
資産運用を始める投資家にとって、投資商品や投資方法が持つリスクを理解し、比較した上で実施することは重要です。アパート・マンション投資に代表される不動産投資においても、当然リスクは存在します。
このコラムでは、不動産投資において発生するリスクを解説します。後半では、オーナーが知っておきたいリスク対策方法についても紹介するので最後までチェックしてください。
目次
1.不動産投資の魅力
不動産投資では、リターンを得る方法が二種類あります。
一つは、インカムゲインとして家賃収入を得る手法、もう一つが、キャピタルゲインとして物件売買の売却益を得る手法です。
まずは、不動産投資に期待できるメリットを紹介します。
1-1.不労所得に近い収益が得られる
賃貸経営で賃料収入を得る投資法の場合、入居者が確保できれば月々固定の金額を受け取ることができます。
アパートやマンションには清掃・点検などの管理業務が発生しますが、その多くは不動産賃貸管理会社やサブリース会社へ委託できます。
これらの業者を活用すれば、オーナーが自分で行う手間が少なくなり、不労所得に近い状態となります。
例えば会社員でも、副業として取り組むことができるのが、不動産投資の良いところと言えるでしょう。
1-2.税金対策になる
不動産投資を行うことで、所得税・住民税と固定資産税、相続税などの税負担を抑えられる可能性があります。
まず、個人の所得に対して発生する所得税・住民税については、不動産投資による収益が赤字であり、かつ他に給与所得などで納税した税金がある場合、赤字分だけ課税所得を差し引くことが可能です。
不動産投資は建物の投資金額を少しずつ経費として計上する減価償却費が認められるため、帳簿上は赤字にしながらも、現金の手残りを残すことができます。
課税所得が少なくなれば、結果として所得税・住民税の負担も少なくなるでしょう。
次に、土地や建物に対して発生する固定資産税については、更地を所有している場合、その上に建物を建てることで土地にかかる固定資産税を少なくできます。
最後に、相続税については、算出における現金と不動産の資産価値の計り方が異なるため、現金を不動産にすることで、相続税評価額を下げられるでしょう。
1-3.生命保険と同じ効果を得られる
不動産投資でローンの借入契約を締結する際、団体信用生命保険(団信)に加入できる場合があります。
団信とは、加入者に死亡などの万一のことがあった場合、保険会社が残りのローンを全額弁済する保障制度のことです。
家族に残債を残すことなく不動産という資産を残すことができます。
家族は不動産から得られる家賃収入で生計を立てることができるため、その点で不動産投資は生命保険と似た効果を得ることができると言えます。
1-4.景気に左右されにくい
不動産投資は、株式投資などの他の投資手法と比較し、賃料収入の相場が景気の悪化に影響されにくい特徴があります。
特に、賃貸住宅においては不景気においても入居者が少なくなりにくく、安定した収入源となりえます。
現金の価値が下がるインフレ―ションにおいても、現物資産である不動産は価値が下がりにくいです。
インフレ化では現金の価値が下がり、相対的に物の価値が上がります。現物資産である不動産価格は上昇する傾向にあるため、インフレリスクに備えるための資産として、金や不動産などは有力な選択肢として選ばれます。
2.不動産投資にありがちなリスクと対処法
不動産投資は劣化が生じる現物資産であること、賃料を支払ってくれる入居者が必要という特徴から、空室や家賃減少などのリスクを抱えています。
ここでは不動産投資にありがちなデメリットについて触れつつ、それぞれの対策方法を説明します。
2-1.空室リスク
賃貸物件の投資で起こり得るリスクとして、空室期間が発生しキャッシュフローが低下してしまうことが挙げられます。
どれだけ人気の新築物件であっても、老朽化するにつれて入居希望者は減少します。入居者募集を行っても入居者が見つからず、空室率が上がってしまい、想定通りの賃貸収入が発生しないリスクです。
このリスクへの主な対策としては、購入時の物件選びで賃貸需要が高い地域を選んでおくことや、周辺需要に合った物件を建築することが挙げられます。また、入居者を斡旋する不動産会社との関係性も大切です。立地選びとパートナー選びはよく検討しましょう。
2-2.家賃下落リスク
経年劣化で周囲の物件との競争力に差が生まれると、設定家賃を下げないと入居率が上がらないという事態が発生する可能性があります。入居者との賃貸借契約の期間中、オーナー側からの家賃値上げ交渉を通すことは難しく、一度家賃を下げてしまうと、しばらく収益性が下がってしまうでしょう。
このリスクへの主な対策としては、適切なタイミングで建物のリフォームを行い、物件の魅力度を維持・向上することが挙げられます。
2-3.建物修繕リスク
建物の修繕費用が発生する点もリスクと言えます。
例えば、アパートやマンションなどの賃貸住宅では、原則、入居者の故意や過失による建物への破損でなければ、入居者へ修繕費用を負担してもらうことができません。
部屋内の経年劣化は入居者の入れ替えのタイミングで、建物の屋根や外壁は十数年に1度のタイミングで、オーナー側で修繕する必要があります。これらのランニングコストを見込んでいないことで、資金繰りに困ることになることもあるので注意してください。
このリスクへの主な対策としては、事前に収支予測を作成しておくことが挙げられます。特に、物件価格などの初期費用だけでなく、修繕や清掃、点検などのランニングコストを細かく整理し、どのタイミングでどれだけのお金が必要になるかを把握しておきましょう。
2-4.災害リスク
修繕リスクと並んで、天災により建物が倒壊などの損害を被るリスクが挙げられます。
このリスクへの主な対策としては、購入前にハザードマップを確認し、地震・台風・津波などのリスクが高い物件・エリアを選ばないようにすることが挙げられます。
また、中古物件であれば新耐震基準を満たしているものを選ぶようにしましょう。購入後であっても、火災や地震リスクに備えた保険として、地震保険・火災保険に加入することでリスクヘッジすることができます。
2-5.家賃滞納リスク
入居者の家賃滞納にも注意しなければなりません。
滞納が発生した際、まずは管理会社を通じて督促を出します。この際、内容証明郵便を利用すればその内容を公的に証明することができます。それでも振込がなければ連帯保証人や家賃保証会社へ連絡し、代わりに家賃を振り込んでもらう必要があります。
ただし、滞納者に振込や退去をさせることは容易ではなく、経験の浅い大家では対応が難しいのが実情です。
このリスクへの主な対策としては、入居時に家賃支払能力があるかきちんと審査を行うこと、また家賃保証会社との保証契約を入居の条件にしておくことが挙げられます。
特に、家賃保証会社との契約を入居の条件とすれば、保証会社が入居者の支払能力を代わりに審査してくれるだけでなく、滞納が発生した際も家賃の立て替え払いを行ってくれるため、おすすめです。
2-6.金利上昇リスク
金融機関から変動金利の不動産投資ローンを活用して物件購入を行った場合、借入金利の上昇リスクがあります。
金利が上昇すると毎月のローン返済額が増えてしまい、資金繰りが悪化するでしょう。家賃収入より借入の支払いが上回ってしまうと、給与など他の収入から補填しなければならなくなる可能性もあります。
このリスクへの主な対策としては、やはり計画時に余裕のある収支プランを立てておくことが挙げられます。もちろん、借入期間中金利が変わらない固定金利を選択することで金利上昇リスクを回避することは可能です。
固定金利は変動金利よりも当初の設定金利が高い傾向にあります。金利上昇のリスクをどれだけ引き受けられるのか、収支シミュレーションを立てて判断しましょう。
3.不動産投資で失敗しないためのポイント
ここまでは、不動産投資で発生するリスクへの対策方法について前述しました。
ここでは、それらの対策方法から読み取れる、不動産投資で失敗しないためのポイントをまとめます。
3-1.収益のシミュレーションを行う
前述した通り、投資を始める前に収入と支出の想定をしておくことは重要です。不動産投資では目先の不動産価格や利回りだけに目がいきがちですが、実際は長期間にわたって様々なコストが発生します。前述したリスクを織り込んだ収支計画を立てることで、想定外の事態が発生した場合でも余裕のある計画になるでしょう。
3-2.自己資金を用意する
自己資金を用意しておくことも必要です。自己資金の用途は、主にローンの頭金と諸費用です。
諸費用には、仲介手数料や登記にかかる費用、不動産所得税、火災・地震保険料等が挙げられます。
これ以外にも、想定外のコストが発生した場合に備えて、購入したい物件の価格にあわせ必要な金額を用意しておきましょう。
3-3.投資に関する知識を学ぶ
不動産投資全般の知識を学んでおくことも重要です。
適切な投資を行うために、普段から情報収集を欠かさないようにしましょう。情報収集の方法には、こういったコラムの他、書籍学習、無料セミナーへの参加、専門家のメルマガ購読などがあります。
書籍は不動産投資を体系的に学ぶのに向いていますが、最新の情報をチェックしたいのであればWEB上のコラムなどがおすすめです。
しかし、実際の物件を購入する段になっては、不動産投資会社へ相談し、購入を検討する地域の景況感や、どういった物件が入居者の好まれるのかなどを教えてもらうのがよいでしょう。
日々物件を扱う不動産管理会社の担当はノウハウが豊富です。
アドバイスを受け、最適な選択を行いましょう。
4.事前の準備で不動産投資のリスクは減らすことができる
今回は、不動産投資に関するリスクとその対策について説明しました。
投資にはリスクが伴いますが、そのほとんどは事前に備えておくことで軽減することができます。
不動産投資に関する知識を蓄え、信頼のおけるパートナーを選び、そのパートナーと綿密な収支計画を立てることが大切です。また、建築後においても、不動産賃貸管理会社や家賃保証会社、火災・地震保険などをうまく活用し、リスクに対応できる体制を整えましょう。
■監修者プロフィール
有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。
【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者
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