住宅ローンは賃貸併用住宅に使える?ローンの特徴や組むときの流れ
公開日: 2022.10.28
最終更新日: 2025.03.27
賃貸併用住宅は、近年注目を集めている土地活用の一つで、自宅として利用しながら賃貸スペースを併設し、家賃収入を得られる住宅形態です。
特に、家賃収入をローン返済に充てることで、住宅購入に伴う返済負担を軽減できる点が大きな魅力です。
本記事では、賃貸併用住宅の概要やメリット・デメリット、利用できるローンの種類や返済計画のポイント、さらには活用事例について詳しく解説します。
初心者でも理解しやすいように具体的なシミュレーションや条件を交えて説明していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
3-1.金利が低めに設定されている
3-2.長期返済のローンが組みやすい
3-3.住宅ローン控除が受けられる
3-4.融資を受けられる上限額は低め
1.賃貸併用住宅の概要
賃貸併用住宅は、住居としての安定を確保しつつ、家賃収入を得られる効率的な資産運用方法として注目されています。
土地活用や収益物件の選択肢を広げるこの形式は、特に自宅部分の間取りや設計を工夫することで、将来的なローン返済負担の軽減や、税制上のメリットも得られる可能性があります。
1-1.賃貸併用住宅とは
賃貸併用住宅とは、一部を自宅としてオーナーが居住し、残りの部分を第三者に貸し出すことで家賃収入を得ることを目的とした住宅です。
この形式は、自己資金や融資条件に基づいて建築計画を立てることが重要で、特に広めの敷地や規模の大きな建物が建築できる土地に適しています。
1-2.賃貸併用物件の種類
・一戸建てタイプ
一戸建てを賃貸併用住宅にする場合、長屋形式で玄関をオーナーの居住部分と賃貸部分で分け、2階~3階建てなどの上階部分を賃貸として貸し出し、下階部分を自宅として使用するようなタイプの賃貸併用住宅です。
また、一戸を縦割りにし、右半分を賃貸、左半分を自宅とするような賃貸併用形式も選択肢となります。 いずれのプランにおいても、収益物件としての収入を得る一方で、プライバシーも確保する観点で設計が求められます。住居部分の面積や間取りを工夫して、より快適な居住環境を作るだけでなく、この場合、空室リスクや収益性を確保するために、家賃の設定や審査基準をしっかりと検討し、借入金額や返済負担に配慮することが求められます。
・マンションやアパートタイプ
マンションやアパートを賃貸併用住宅にする場合、1棟全体を賃貸として貸し出し、その中の一室を自宅として居住する形態やワンフロアを自宅とするなどのタイプの賃貸併用住宅です。 この場合は賃貸部分が多いため、管理会社と連携して、収益を最大化するための方策を講じることが重要です。また、賃貸契約の条件や管理方法も慎重に決定し、トラブルの防止やリスク管理に注意を払うことが求められます。
2.賃貸併用住宅で利用できるローンの種類
賃貸併用住宅で利用できるローンの種類は、大きく住宅ローンと不動産投資ローンの2つに分かれます。
それぞれの特徴を解説します。
2-1.住宅ローン
マイホームの購入を主な目的とする住宅ローンは、一定の条件を満たすことで賃貸併用住宅でも利用することができます。
住宅ローンは本来、マンションやアパート経営などの賃貸を目的にした事業用では利用できません。
しかし、賃貸併用住宅はオーナー自身が居住用として利用することから、条件を満たすことで住宅ローンを利用できます。
多くの金融機関が、「住宅全体の面積のうち、居住用のスペースが50%以上を占めていること」を適用条件としています。
金利の低い住宅ローンを利用できるのは賃貸併用住宅の大きなメリットです。
そのため、この要件を満たす割合で設計した場合の計画を一度は検討するのがよいでしょう。
2-2.不動産投資ローン
住宅ローンが適用されない賃貸併用住宅については、不動産投資ローンを活用することとなります(「アパートローン」などとも呼ばれます。)。
不動産投資ローンは、賃貸用のマンションやアパートを購入する際に使う事業用のローンです。
一般的に、住宅ローンより金利が高く、かつ審査が厳しい傾向にあります。
そういった特徴から、賃貸部分の割合を50%以上に高めたい場合に活用を検討しましょう。
3.賃貸併用住宅で利用できる住宅ローンの特徴
他の不動産投資手法と異なり、賃貸併用住宅は金利の低い住宅ローンを利用できることが大きなメリットです。
住宅ローンの特徴をチェックしておきましょう。
3-1.金利が低めに設定されている
住宅ローンは、不動産投資ローンと比較して低い金利が設定される傾向にあります。
不動産投資において、低い金利で資金調達を行うことは重要です。低い金利で借りればその分返済金額は減り、手元に残る資金は多くなります。
住宅ローンは低いもので金利が1%以下に設定されているものもあります。
3-2.長期返済のローンが組みやすい
最長35年までと、長期間の返済期間を設定できるのも住宅ローンの特徴です。
住宅ローンは、あらゆる審査基準を元に融資の可否を決定します。
その基準は金融機関により異なるものの、多くの金融機関は債務者の年収や勤続年数、属性、完済時の年齢、健康状態、自己資金の額などを指標にし、「債務者が完済時まで安定して返済能力を確保し続けることができるか」を見ています。
そういった複数の基準で審査するため、債務者がローンを返済できないほどの額を借りてしまうリスクは低いと言われています。
3-3.住宅ローン控除が受けられる
所得税や住民税にかかる額を住宅ローン控除によって抑えられるのも、住宅ローンの特徴です。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを使って住宅を購入した人に対して、毎年末のローン残高もしくは住宅の取得対価(土地の購入価格や建物の建築費)のうちいずれか少ない方の金額の0.7%を13年間(中古住宅の場合は10年間)に渡り所得税の額から控除する制度です(控除しきれない場合は住民税からも一部控除)。
※なお、本制度は令和4年度(2022年度)の税制改正により、大きな見直しが行われました。従来は毎年末のローン残高もしくは住宅の取得対価のうち、少ない方の1%を10年間に渡り控除される制度でしたが、税制改正により控除率は0.7%に減少、期間が13年(新築のみ)に延長となっています。
ただし、住宅ローン控除の対象となるのは、自己の居住部分に限ります。例えば自宅の50%を賃貸として貸し賃料を得ている場合は、住宅ローン控除の対象となるのは残りの50%です。
※事業として使用する割合が10%以下の場合、全て住居として住宅ローン控除の対象とできます。
昨今は金利1%を切る住宅ローンが多く、変動金利では0.5%を切る場合もあるため、支払った利息より所得税の控除額の方が大きくなるというケースも考えられます。
3-4.融資を受けられる上限額は低め
住宅ローンは居住用であることから、融資を受けられる借入金額の上限は低めに設定されています。
例えば、固定金利型の商品「フラット35」における借入金額は最大8,000万円、一般的な民間銀行では1億円に設定されています。
上限額が低めに設定されている理由は、居住用住宅の取得という用途には十分な額であること、上限額が高すぎると無理な借入を行う場合があるためです。
4.賃貸併用住宅のメリットとデメリット
賃貸併用住宅には、家計や土地の活用、税制面での利点は大きいですが、プライバシーや管理面の懸念も無視できません。これらのメリットとデメリットをよく理解しておくことが大切です。
4-1.賃貸併用住宅のメリット
・収入源が増える(自宅のみと比較した場合)
賃貸併用住宅の最大の利点の一つは、家賃収入が得られることです。この家賃収入を活用して、自宅のローンを返済することができるため、自己資金の負担が軽減されます。
長期的に見ても、賃貸収入は安定した収入源となり、生活費を補助することも可能です。
・敷地の有効活用ができる
広い土地を持っている場合、その土地を自宅用だけに使うのはもったいないかもしれません。自宅より大きめの賃貸併用住宅を建てれば自宅を得られてなおかつ土地を最大限に活用できます。都市部で土地が限られている中、賃貸併用住宅なら、住まいと収入源の両方を手に入れることができるのです。
・税負担を軽減できる
賃貸併用住宅には税制上のメリットもあります。
まず、固定資産税については、更地のまま所有していると税負担が大きくなります。
しかし、土地の上に住宅を建てることで「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が最大6分の1に軽減されます。 さらに、賃貸部分にも同じ特例が適用されるため、土地全体の税負担を抑えることが可能です。
また、かかる相続税についても、更地と比較して評価額が下がって税の負担を抑えられることが期待できます。賃貸併用住宅のうち、賃貸として貸している部分は「貸家建付地」として評価されます。貸家建付地は所有者が自由に使うことができない部分とみなされ、評価額が実際の価値が低くなることが多いです。相続税は相続する対象の価値の高さによって決まりますから、評価額が低くなった結果、税負担を抑えやすくなるということになります。
4-2.賃貸併用住宅のデメリット
・プライバシーの確保が難しい
賃貸併用住宅では、オーナーと入居者が同じ建物内に住むため、完全にプライベートな空間を確保するのが難しくなることがあります。特に、庭や駐車場などの屋外スペースが共用の場合、入居者と頻繁に顔を合わせることになります。また、玄関を隣り合わせに配置すると出入りのタイミングが重なりやすくなるため、戸建て住宅のような独立性を求める人にとってはストレスになることもあります。
こうしたデメリットを解消するためにも、賃貸併用住宅は設計段階で動線を工夫し、できるだけ生活スペースを分離してプライバシーを確保しやすくすることが求められます。
・生活音や居住環境の影響を受けやすい
賃貸併用住宅は上下階の間取りによっては、足音や会話の声、テレビの音などが直接響くこともあります。建築時に防音対策を施さないと、住環境の快適さが損なわれる可能性があります。
・入居者のトラブル対応が心理的負担になる
一般的な賃貸物件では、入居者からのクレームや修理依頼は管理会社が対応します。しかし、賃貸併用住宅では、オーナーが建物内に住んでいるため、入居者が直接要望を伝えてくるケースが多く、心理的な負担になりやすい傾向があります。
例えば、「エアコンが故障した」「騒音が気になる」といった問題が発生した際に、入居者は近くに住むオーナーに直接相談するかもしれません。トラブルを避けるためには、管理会社を介した対応の仕組みを整えることが重要になります。
・売却時に買い手が限られる
賃貸併用住宅は、一般的な住宅や賃貸アパートとは異なり、購入を検討する層が限られています。そのため、売却の選択肢が狭くなるというデメリットがあります。出口戦略が立てづらいのはデメリットと言えるでしょう。
5.賃貸併用住宅で利用できる金利の種類
住宅ローンでは、金利のタイプを以下の3種類から選択することができます。
- 全期間固定金利型:完済まで金利が変わらず一定
- 変動金利型:市中の変化によって金利が変動
- 固定期間選択型:一定期間は固定型だが、その後は変動金利となる
それぞれの違いや選び方を順に説明します。
5-1.固定金利型
固定金利型は、返済期間中の金利が変わらないタイプのローンです。
市場の金利が変動するリスクを回避でき、契約時に総返済額が確定するため安心できるというメリットがある一方、変動金利より金利は高く設定されています。
職業や勤務形態等の制限が少ない点で人気の住宅ローン「フラット35」も、固定金利型の商品です。フラット35は独立行政法人である住宅金融支援機構と、民間の金融機関が提携しており、様々な銀行が販売しています。
固定金利(フラット)で最長35年の長期契約を結ぶことができ、保証料が不要、繰上返済手数料も無料などの利点が画一的に設けられているため、住宅ローンを借りるならば一度検討の価値はあるでしょう。
5-2.変動金利型
変動金利型は、返済期間中の適用金利が変動するタイプのローンです。
変動金利は3つのタイプの中で適用金利が最も低いというメリットがある一方、市場の金利が上昇すればそれに応じて金利も上がるため、返済額が想定以上に増える可能性があるというデメリットもあります。
一般的に、見直しは半年に一度行われます。
日本では、景気活性化の為にマイナス金利政策を行っていることから、長く低金利の時代が続いています。
しかし、将来の金利動向を長期間にわたり予想するのは困難であるため、ある程度リスクを許容しつつも支払金額を下げたい人におすすめです。
5-3.固定期間選択型
固定金利型と変動金利型の中間に位置するのが、固定期間選択型です。
固定期間選択型は、当初の一定期間を固定金利、期間終了後を変動金利にするタイプのローンです。
期間は3年・5年・10年・10年超などと選択することができます。
固定金利型よりは金利が低く、当初期間の金利変動リスクを避けることがメリットとして挙げられます。
しかし、変動金利より金利が高く、かつ期間が終了すると変動金利になるというデメリットがあります。
住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査(2021年4月調査)」によると、住宅ローンを組んだ人が選んだ金利タイプの割合は以下のとおりです。
- 固定金利型:11.2%
- 変動金利型:68.1%
- 固定期間選択型:20.7%
出典:住宅ローン利用者の実態調査
自らのリスク許容度に応じて、最適なプランを選択しましょう。
6.住宅ローンを組むときの流れ
金利タイプの理解が深まったところで、次は家づくりの際の住宅ローンを利用するときの流れについて解説していきましょう。
Step1.利用したい住宅ローンを探す
住宅ローンは都市銀行だけでなく、地方銀行や信用金庫、ネット銀行なども取り扱っています。
インターネットや住宅ローンの相談会などを活用し、複数の金融機関から情報を収集するのがポイントです。
また、不動産会社によっては提携している金融機関を紹介してくれることがあります。
プロのアドバイスを受けながら候補先を選ぶことができるため、比較材料としても話を聞いてみるのもおすすめです。
Step2.金融機関に仮審査を申し込む
住宅ローンが決まれば、借りることができるかの審査を申し込みます。
住宅ローンの審査は、仮審査と本審査の2段階に分かれていることが一般的です。
仮審査では、源泉徴収票や物件の概要が分かる資料を元に、融資利用者の収入や物件、借入金額を把握し、返済計画に無理がないか簡易的な審査を行います。
仮審査は2~3日と比較的短期間で結果が出ます。
Step3.本審査で必要な書類を用意する
仮審査が通れば、次は本審査の申し込みを行います。
金融機関により多少違いはあるものの、本審査の申し込みに必要な書類は以下の通りです。
- 住宅ローン申込書(本審査用)
- 団体信用生命保険 申込書兼告知書
- 住民票の写し(家族全員が記載されており、かつ本籍地・マイナンバーの記載がないもの)
- 実印・印鑑登録証明書
- 対象の物件に関する書類(売買契約書の写し、重要事項説明書の写し、見積書や間取り図、土地の公図など)
- 土地登記事項証明書(発行後3カ月以内のもの)
- 建物登記事項証明書(発行後3カ月以内のもの)
- 収入が分かる証明書(源泉徴収票・個人事業主の場合は確定申告の写しなど)
Step4.金融機関に本審査を申し込む
本審査では、Step3でご説明した資料を元に、信用保証機関がより詳しい審査を行います。
その確認項目は多く、勤め先へ電話しての在籍確認や、取引関係人の反社会的勢力の有無、物件の瑕疵確認なども行われます。審査には約1週間程度かかります。
Step5.金融機関と住宅ローン契約を結ぶ
本審査に通ると、金融機関との間で契約を締結します。
締結する契約は金銭を借り受けることに対する金銭消費貸借契約と、担保となる土地・建物に抵当権を設定するための抵当権設定契約です。
契約書類に不備がなければ、契約書で定めた日時に融資が実行され、口座に資金が振り込まれます。この資金は同日に不動産会社やハウスメーカーへの支払いに充てられます。
そのため、融資実行日と支払い日、物件の引渡し日は同日になるのが一般的です。
7.住宅ローンを活用した賃貸併用住宅で家賃収入を得よう
今回は、賃貸併用住宅について説明しました。
賃貸併用住宅では、住宅部分の間取りや配置を工夫し、生活スペースと賃貸部分のバランスをとることが、賃貸経営の成功に繋がります。
自宅部分の割合によっては、賃貸併用住宅は金利の低い住宅ローンを活用することができることが大きな強みですが、返済計画を意識して、安定した月々の支払いを確保することも大切な要素です。
賃貸経営のノウハウを持つ専門家のアドバイスを受けながら、適切なプランを練ることが成功のカギです。まずは一度、大東建託へご相談ください。
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■監修者プロフィール
有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。
【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者
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