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相続手続きには期限がある?大切な資産を引き継ぐために重要なこと

公開日: 2023.09.20

最終更新日: 2023.09.20

相続が発生した際、期限のある手続きがあります。期限を守らなければ、法的罰則や軽減税制が適用できないなど、経済的な損失が起こる可能性があります。

 

この記事では、相続手続きの種類、期限、注意点などを詳解します。手続き期限の把握を通じて、大切な資産をスムーズに引き継ぐために必要な行動が理解できます。相続手続きに関心がある方は、ぜひ参考にしてください。

目次

1. 相続手続きの種類と期限

1-1.相続開始7日以内に済ませること

1-2.相続開始3カ月以内に済ませること

1-3.相続開始4カ月以内に済ませること

1-4.相続開始10カ月以内に済ませること

1-5.相続開始3年以内に済ませること

2. 相続手続きの期限を守れないとどうなるか

2-1.相続に関する軽減制度が適用されなくなる

2-2.延滞税や無申告加算税が発生する

2-3.引き継ぎたくない資産まで相続することになる

3. 相続手続きを期限内に完了させるために大事なこと

3-1.専門家の力を借りる

3-2.各手続きの期日を相続人の間で共有する

3-3.遺産分割協議がまとまらない場合は調停や審判を検討する

4. 相続手続きの期限を守るためにはスケジュールを把握することが大切

1.相続手続きの種類と期限

 

家族が亡くなると、そのときから相続について考えなければなりません。
亡くなった後にすべき手続きは多く、それぞれに期限があります。そのため財産を引き継ぐ相続人は、被相続人が亡くなった翌日から相続手続きの完了に向けて手続きを進める必要があります。

 

それでは、相続手続きの種類と期限についてみていきましょう。

 

1-1.相続開始7日以内に済ませること


身内が亡くなり、相続が発生してから7以内に済ませなければならないこととして、死亡届の提出や公共料金の名義変更があります。

 

・死亡届の提出

死亡届とは、死亡の事実を亡くなった人の本籍地か死亡地、または届出人の住所地のいずれかにある市区町村役場に提出する必要書類です。
市区町村役場に死亡届を提出する際は、医師の作成する死亡診断書または死体検案書も添付します。

 

死亡届と同時に火葬許可申請書を提出し、火葬の許可を得なければなりません。
死亡届を市区町村役場に提出しなければ火葬や埋葬の許可書がもらえないので注意が必要です。

 

・公共料金の名義変更

故人が取引していた金融機関の口座が利用不能になると、口座から公共料金の支払いが自動的に引き落とされなくなります。
そのため、公共料金の支払いが滞らないように、早急に名義変更や支払方法の変更手続きが必要です。

 

名義変更などの手続きは、自動引き落としが止まる前に忘れずに行いましょう。

 

1-2.相続開始3カ月以内に済ませること


ここでは、相続開始3カ月以内の手続きを解説します。
相続財産の特定や相続人の確認など、重要な手続きがありますので、一つずつ進めていきましょう。

 

・遺言書の有無の確認

相続発生時、遺言書の存在と内容のチェックが必要です。
遺言書は、財産の配分を決定する重要書類で、被相続人が財産を誰に、どのように残すかを記載します。

 

遺言書が存在する場合、相続人は原則としてそれに従い財産を分配します。
しかし、遺言書が見つかる前に財産の分割が行われた場合、遺言書発見時に手続きを再度行う必要があり、時間の浪費となります。

 

また、遺言書が封筒に入っていた場合は、自分で開けて中身を見ることはできません。
法律で決まっているように、相続人または代理人の立会いのもと、家庭裁判所で開封と検認を行う必要があります。
また、家裁での検認が必要なケースは、本人保管の自筆証書遺言と秘密証書遺言であることです。

 

・相続人の確定

被相続人の遺産を相続できる人は法律で定めらており、法定相続人といいます。
遺産を分割するにあたって、まずは法定相続人を確定しなければなりません。そのためには亡くなった人の戸籍謄本が必要です。

 

被相続人の再婚前にいた子どもや認知した子どもが知られていない場合もあります。
故人の生死、結婚、親子関係などが記載された戸籍謄本で、未知の相続人の存在を調べます。

 

相続人が全員揃っていないと、遺産分割協議は原則として無効になりますので、注意が必要です。

 

・遺産と負債の調査

故人が生前に所有していた財産は、基本的には相続人や遺言書で指定された人が引き継ぎます。
遺産には現預金や株式、不動産などのプラスの財産もありますが、住宅ローンなどの借入金といったマイナス財産も含まれます。

 

遺産と負債の調査は、遺産分割協議や相続税の申告に必要です。
知らないうちに借金を相続していた、ということがないように金融機関や信用情報機関に確認して、十分に調査しましょう。

 

・財産目録の作成

財産目録とは、亡くなった人が残した遺産と負債を調査したものを一覧にまとめた文書のことを指します。
財産目録の作成は、相続人全員が遺産の全体像を理解するために重要のもので、遺産分割協議や相続税の申告の際に重要な役割を果たします。

 

亡くなった人の資産と負債をすべて調べてリストアップし、まとめなければならないため財産目録の作成は煩雑な作業となるケースもあります。
遺産のすべてを把握するのが困難な場合は、弁護士や税理士などの専門家の助けを借りることも一つの方法です。

 

・相続放棄や限定承認の申述

上記で解説したとおり、相続人はプラスだけでなくマイナスの財産も引き継ぐ点に注意が必要です。
遺産が赤字である場合、すべての財産を引き継ぐ単純承認ではなく、相続放棄や限定承認を選択することもあります。

 

亡くなった人の遺産と負債を調べるのに時間がかかって3カ月を過ぎてしまうと、相続放棄や限定承認ができなくなってしまうので期限には注意が必要です。

 

財産調査が3カ月以上かかることが予想されるときには、あらかじめ家庭裁判所に申し立てをすることによって、期限をさらに3カ月延長してもらうこともできるので覚えておくとよいでしょう。

 

1-3.相続開始4カ月以内に済ませること


相続が開始されたら、相続人は準確定申告をする必要があります。
準確定申告とは、亡くなった人の死亡した年の所得税を申告することです。
準確定申告は、法律で申告期限が定められており、亡くなったことを知った日の翌日から4カ月以内に行わなければなりません。

 

1-4.相続開始10カ月以内に済ませること


続いて相続開始10カ月以内に済ませることを解説します。
10か月以内とはいえ、あっという間に過ぎていきますので期限に注意しながら進めていきましょう。

 

・相続財産の確定と評価

相続財産の確定と評価とは、相続税の計算をするために、相続や贈与などにより取得した財産の種類や価額を明らかにすることです。
普通預金などは相続開始日の残高が評価額となり、土地は路線価や倍率方式、家屋は固定資産税評価額が基本となります。

 

相続財産の確定と評価額を計算するには専門的な知識が必要なので、相続専門の税理士に依頼することをおすすめします。

 

・特別代理人の選任(未成年者がいる場合のみ)

特別代理人は、未成年の相続人に対する相続税の手続きを担当します。
親権者や後見人などが任命し、相続開始から最長10カ月以内に指定すべきです。

 

・遺産分割協議

遺言がなければ、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分け方を決める必要があります。
遺産分割協議とは、相続人が相続財産の分け方について話し合うことです。

 

遺産分割協議が合意に至った場合、その詳細を協議書に記入し、相続人全員で署名・捺印します。
合意が困難な場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることも可能です。裁判官や調停委員の介入により、公平な分割が目指されます。

 

・不動産の移転登記、財産の名義変更

遺産の分割が決まれば、各相続人が受け継ぐ財産の名義変更や不動産の移転登記を進めます。
移転登記を怠ると、不動産の売却や担保設定が難しくなるほか、相続税の特例が受けられない可能性もあります。
また、名義変更を怠ると税金や公共料金の支払いに影響が出ることがあるので注意が必要です。

 

・相続税の申告

相続人は相続した財産に応じた相続税の申告をしなければなりません。
相続税の申告は、法律で申告期限が定められており、原則として相続開始日の翌日から10カ月以内に行います

 

納税資金の準備ができないなどの正当な理由がある場合には、税務署に申請することで延納が認められることがあります。

 

1-5.相続開始3年以内に済ませること


土地や家屋などの不動産を相続したときには、相続登記をしなければなりません。
これまで相続登記は義務化されてのですが、名義変更がされないことで所有者不明の土地が生じたり空き家が放置されたりする原因となって社会問題となりました。

 

そこで、2024年度から相続後3年以内に登記することが義務付けられることとなりました。
相続登記しなかった場合には10万円以下の過料が課せられますので、不動産を相続した場合は必ず名義変更を行いましょう。

 

2.相続手続きの期限を守れないとどうなるか

 

相続手続きの申告期限や納付期限を守れなかった場合、法的な問題が生じます
遺産分割や相続税申告、負債の承認など、各手続きの遅延は罰則や追加費用を招くおそれがあるので注意が必要です。

 

2-1.相続に関する軽減制度が適用されなくなる


相続税には様々な軽減制度が存在しますが、その適用を受けるためには特定の条件を満たす必要があります。
相続の申告期限を守れない場合、一部の軽減制度が利用できなくなります。

その例として以下の通りです。

 

・小規模宅地等の特例

・配偶者の税額軽減

・農地等の納税猶予の特例

・非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例

 

これらの制度はそれぞれ一定の条件を満たすことで適用され、相続税の負担を軽減する役割を果たします。
しかし、申告期限を守れないとこれらの軽減制度が利用できなくなり、その分相続税が増加するおそれがあるので注意が必要です。

 

2-2.延滞税や無申告加算税が発生する


期限までに相続税を納めないと、遅延ペナルティとして延滞税や無申告加算税が発生します。
これらのペナルティは納税の遅れた日数に応じて増加するので、手続きは迅速に進めましょう。

 

2-3.引き継ぎたくない資産まで相続することになる


相続放棄や限定承認の法的手続き期限を過ぎると、マイナスの資産も含めた全財産の相続が必要になることがあります。
相続開始後3カ月以内に相続放棄を行うと、マイナスの資産は引き継がずに済むのですが、期限を過ぎると単純承認とみなされ全財産を相続することになります。

 

したがって、借入金などのマイナスの財産がある場合は特に期限に注意が必要です。

 

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3.相続手続きを期限内に完了させるために大事なこと

 

相続手続きは、法律で定められた期限内に完了させるのが望ましいです
期限内に円滑に完了するためには、専門家の助言や全体的な計画が不可欠です。

 

3-1.専門家の力を借りる


仕事や家事などで忙しい、専門知識が不足していると、相続の手続きは負担が大きいものです。
手続きによっては多くの書類作成が必要なものもあるので、その道の専門家に依頼すること安心かつ確実です。

 

例えば、相続税の申告や遺産分割に必要な資料作成であれば税理士、法律の観点から相続に関するトラブルの相談であれば弁護士、登記に関する必要書類の作成や申請手続きを依頼するなら司法書士です。

 

相続税の申告や登記申請などは相続した本人でもできますが、申告書やその他の添付書類を整えて、正確に行うことは困難なことが多いので、期限内に手続きを完了させるためには専門家の力を借りることをおすすめします。

 

3-2.各手続きの期日を相続人の間で共有する


相続の手続きは申告期限や納付期限、請求期限を守ることが重要です。
相続人が複数いる場合には、各手続きの期日を相続人全員で共有している状況が理想的です。

 

遺産分割協議のように全員の参加が必要な手続きがあるので、相続人全員が手続きの全体スケジュールを把握し、特定の人だけが手続きのスケジュールを把握している状況は避けましょう。

 

3-3.遺産分割協議がまとまらない場合は調停や審判を検討する


いわゆる「争続」、つまり相続に関する争いが発展しそうな場合には、家庭裁判所の力を借りることが有効です。
調停委員会が話し合いを促進し、円滑な解決を目指します。
それでも問題が解決しない場合は、裁判所が最終的な決定を下すこととなり、相続問題は法的に終結します。

 

4.相続手続きの期限を守るためにはスケジュールを把握することが大切

 

法定期限内に相続税申告や不動産移転登記など、相続手続きを順調に進めるには、スケジュールの把握が欠かせません。

 

具体的には、相続開始日から期限を逆算し、各手続きの日程を設定し、書類や情報の準備に余裕を持って取り組むことが求められます。
スケジュールを相続人全員で共有することで、手続きはスムーズに進みます。

 

そして、相続手続きは、故人の意志を尊重し、財産を適切に引き継ぐ重要なプロセスであるため、その遂行には故人を想う気持ちを忘れてはなりません。

 

各手続きの期限を守るために全体スケジュールを理解し、遺産分割や管理に関する適切な判断をするための時間を十分に確保することが大切です。    

■監修者プロフィール

税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表
宮川 真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上。

現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っている。

また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事。

【保有資格】 税理士、CFP®