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ついに発表!令和5年度、税制改正によって保有税・所得税・相続税はどう変わる?

公開日: 2022.12.28

最終更新日: 2023.05.09

令和5年度税制改正要望から読み解く『今から備える税制改正』とは!?にて税制改正の内容を予測し、リスク対策を促しましたが、把握・準備はできましたか?

本コラムでは、いよいよ発表された税制改正大網について解説していきます。

目次

1. 令和5年度の税制改正大網の中身は?

2. 賃貸オーナーが注目すべき改正内容は?

2-1.相続・資産承継関連

2-2.保有税関連

2-3.所得税関連

2-4.環境関連

2-5.その他、賃貸オーナーも知っておくべき税制改正ポイント

2-5-1.NISAの抜本的拡充・恒久化

2-5-2.極めて高い水準の所得に対する負担の適正化

2-5-3.相続時精算課税制度の使い勝手向上・暦年課税における相続前贈与の加算

2-5-4.適格請求書等保存方式の円滑な実施について

2-5-5.課税・徴収関係の整備・適正化

3. 税制改正によってどのようなメリットや注意点が出てきたか?

4. まとめ

5.セミナーのご案内⇒おかげさまで好評うちに終了致しました。

1.令和5年度の税制改正大網の中身は?

そもそも税制改正大網とは、端的に言えば・・・以前にお伝えした税制改正要望を元に作られた「税制改正案の試作品・たたき台」のことを言います。

政府与党に続き、財務省(政府)で作成された税制改正大網を元に国会で議論され、次年度・・・令和5年度の税制改正が法案として成立・決定・・・翌年令和5年度から施行されるのが基本の流れです。

このため、このまま内容が固まる可能性が極めて高い一方、まだここから変化する可能性も踏まえたうえで、内容を確認していきたいと思います。

 

全体として、令和5年度の税制改正大網の基本的な考え方は以下のようになっています。

重要ポイント(賃貸オーナーが注目すべき内容)は後述しますが、まずはざっくりとでも、どのような改正が行われそうなのか?目を通しておきましょう。

1:成長と分配の好循環の実現

    • NISAの抜本的拡充・恒久化

...NISA(非課税投資制度)の大幅拡充 (※一部後述2-5-1)

    • スタートアップ・エコシステムの抜本的強化

...創業者への投資家(エンジェル投資家)への優遇強化、その他

    • 研究開発税制

...研究開発税制へのインセンティブ(メリット)強化

    • 企業による先導的人材投資

...学校への寄付金の全額損金算入、新たな研究開発税制の創設

    • その他考慮すべき課題

...EBPM(証拠に基づく政策立案)の徹底

2:経済のグローバル化・デジタル化・グリーン化への対応

    • 新たな国際課税ルールへの対応

...市場国への新たな課税権の配分、法人税の引き下げ競争防止、

...所得合算・軽課税所得ルールの法制化

    • プラットフォーム課税

...国境を越えた役務の提供に係る消費課税のあり方

    • 経済と環境の好循環の実現

...「2050年のカーボンニュートラル実現」に向けての取り組み

    • 車体課税

...「モビリティ(自動車関係)産業」に向けて、電動車の普及と競争力強化

    • 森林環境税・森林環境譲与税

...森林の持つ公益的機能の維持・増進のための税制創設

3:地域における活力と安全・安心な暮らしの創造

    • 中小企業税制等

...軽減税率の特例その他の延長、賃上げ等への特例措置の創設

    • 酒税の特例措置の見直し

...中小事業者への酒税の軽減措置、新たな特例措置の創設

    • 災害による被害へのきめ細かな対応

・1:個人所得課税における災害に係る損失の繰越控除制度の見直し

   ...雑損失・純損失の繰越期間を3年から5年に延長

2:相続時精算課税の下で受贈した土地・建物の取扱い

   ...相続税の課税価格を再計算

    • IRに関する税制

...仕入れ税額控除の適用を認めない一方、調整措置を講ずる

    • 野外分煙施設等の整備の促進

...野外分煙施設等のより一層の整備

 

4:経済社会の構造変化も踏まえた公平で中立的な税制への見直し

    • 個人所得課税のあり方

1:極めて高い水準の所得に対する負担の適正化

   ...極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める (※一部後述2-5-2)

2:諸控除の見直し

   ...配偶者控除・給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の見直し

3:私的年金等に関する公平な税制のあり方

   ...退職所得や私的年金に関する新たな税制の検討

4:記帳水準の向上等

   ...複式簿記による記帳の普及、青色申告制度の見直し

    • 資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築

1:相続時精算課税制度の使い勝手向上

   ...暦年課税と同水準の基礎控除の創設 (※一部後述2-5-3)

2:暦年課税における相続前贈与の加算

   ...贈与財産の相続財産への加算期間を3年から7年に延長 (※一部後述2-5-3)

3:贈与税の非課税措置

   ...教育資金の一括贈与、結婚・子育て資金の一括贈与の制度廃止も含めた検討

    • 外形標準課税のあり方

   ...外形標準課税の適用対象法人を含めた制度の見直し

 

5:円滑・適正な納税のための環境整備

    • 適格請求書等保存方式の円滑な実施について(2-5-4にて後述)

1:インボイス発行事業者となる免税事業者の負担軽減

  ...免税事業者がインボイス発行事業者になった場合、納税額を売上税額の2割に

2:事業者の事務負担軽減

  ...一定の小規模事業者の少額取引を、帳簿のみで仕入税額控除を可能とする

    • 電子帳簿等保存制度の見直し

...優良な電子帳簿の一層の普及・一般化のための要件緩和

    • 税務手続のデジタル化・キャッシュレス化による利便性の向上

...申告手続きの簡素化、申告・納付手続きの一体化、マイナポータル等の改修

    • 課税・徴収関係の整備・適正化

...無申告や税務調査への非協力に対応、免税制度における横流しへの対策 (※2-5-5にて後述)

    • マンションの相続税評価について

...市場価格と相続税評価額の乖離に対する適正化を検討

 

6:防衛力強化に係る財源確保のための税制措置

    • 法人税

...法人税額に対し44.5%の新たな付加税。法人税額から500万円控除して計算

    • 所得税

...復興特別所得税を1%下げ、1%の新たな付加税を課す。

    • たばこ税

...13円相当の引き上げ。

 

結論から言えば、この中で賃貸オーナーが注目しておくべき内容については、ほぼ要望通りの改正となる見込みです(詳しくは後述)。

すでに何らかのリスク対策をされている、または対策しようとされている賃貸オーナーは、安心して事を進めていきましょう。

2.賃貸オーナーが注目すべき改正内容は?

政府与党の令和5年度の税制改正大網は130ページ近くもあるのですが、すべてを把握しておく必要はありません。賃貸オーナーが注目しておくべき改正内容についてのみ、しっかり把握しておきましょう。

2-1.相続・資産承継関連

相続・資産承継関連としては、要望にもあった「土地の所有権移転登記等に係る特例措置の延長(登録免許税)」が挙げられています。

改めて簡単に解説すると、これは現在、土地を登記する際に必要な登録免許税の税率が下げられている(所有権移転登記:本則2%、特例1.5%/信託登記:本則0.4%、特例0.3%)という特例です。

 

そしてこの制度は、要望では2年間の延長だったのですが、なんと3年間、延長されることになりました。

2-2.保有税関連

保有税関連としては、要望にもあった「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する特例措置の創設(固定資産税)」が挙げられています。
改めて簡単に解説すると、これは一定の要件を満たすマンションが、必要な修繕積立金を確保して、長寿命化に資する一定の大規模修繕工事を実施した場合、工事完了の翌年度分の固定資産税を1/3減額する制度です。

 

まずこの制度が、正式に創設されました。ただし、対象となる固定資産税額は「1戸あたり100㎡相当分まで」に限られます。また基本的には13減額ですが、16以上12以下の範囲で、具体的な減額金額は各条例で定められることになりました。さらにそれに伴い、工事完了後にマンション管理士等が発行する証明書等を添付して、自治体に申告しなければならないという内容です。

 

また同じく、要望にもあった「耐震改修が行われた耐震診断義務付け対象建築物に係る税額の減額措置の延長(固定資産税)」も挙げられています。
改めて簡単に解説すると、これは一定の建築物において耐震改修をした場合、工事完了の翌年度から2年間、改修工事費の2.5%を限度として、固定資産税を1/2減額する制度です。

 

この制度は要望通り、3年間、延長されることになりました。

2-3.所得税関連

所得税関連としては、要望にもあった「空き家の発生を抑制するための特例措置(3000万円控除)の拡充・延長(所得税・個人住民税)」が挙げられています。
改めて簡単に解説すると、これは一定の空き家を相続した相続人が、耐震改修した家屋または家屋を除去した土地を売却した場合、家屋または土地の譲渡所得から3000万円を特別控除できるという制度です。

 

 

従来

改定後

期限

令和51231

令和91231

要件

工事が完了済み

翌年215日までに工事完了

補足

・・・

相続人が3人以上なら控除額は2000万円

 

この制度は要望通り、4年間、延長されることになりました。
また従来は一定の工事を売却前にした場合に限って適用できましたが、要望に沿って翌年215日までに工事が終われば適用できるように拡充するという内容です。なお、該当する敷地等を取得した相続人が3人以上の場合、特別控除額は2000万円になります。

 

また同じく、要望にもあった「低未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例措置(100万円控除)の拡充・延長(所得税・個人住民税)」も挙げられています。
こちらも改めて簡単に解説すると、これは都市計画区域内にある一定の低額な土地を売却した場合、長期譲渡所得から100万円を控除できるという制度です。

 

 

従来

改定後

期限

令和41231

令和71231

要件

譲渡価格500万円以下

譲渡価格800万円以下

補足

・・・

コインパーキングは対象外

 

この制度も要望通り、3年間、延長されることになりました。
また、従来は譲渡価格500万円以下の場合に適用できましたが、これを要望通り800万円にまで拡充するという内容です。ただし、いわゆるコインパーキングについては適用除外とされました。

2-4.環境関連

環境関連としては、要望では「税制全体のグリーン化」が挙げられていました。
改めて簡単に解説すると、これは税制を全体的に「環境負荷に応じたものにする」といった内容です。もう少し言えば、環境に負荷をかける可能性があるあらゆるものに税金をかけ、逆に環境に優しいものは優遇する、といった方向性の内容になっていました。

 

これについては、今回の大網においては見送られた様子です。
ただし、この要望は平成17年度から毎年、環境省から要望されています。また直接的には大網に反映されなかったものの、代わりに「車体課税」などが強化されている傾向です。そもそも今の国は「2050年のカーボンニュートラルの実現」に向けて積極的に動いていますから、今後も何らかの形で反映される可能性があります。十分に注意しておきましょう。

2-5.その他、賃貸オーナーも知っておくべき税制改正ポイント

今回の大網では、汎用的な改定も多くされました。
賃貸オーナーが個人的に関係してくる可能性がある部分についても、簡単に知っておきましょう。

2-5-1NISAの抜本的拡充・恒久化

今回の大網の目玉として、NISA(非課税投資制度)が抜本的に改正されました。
従来のNISAと比べて特に変わったポイントとしては、以下が挙げられます。

 

・制度も非課税期間も無期限に、途中の出し入れも自由になった

・非課税限度額が一人1800万円(うち成長投資枠は1200万円まで)に大幅拡充。

・つみたて投資枠は年120万円、成長投資枠は年240万円まで利用可能、かつ併用可。

 

改正項目

つみたてNISA

一般NISA

 

NISA

年間投資上限

40万円

120万円

 

つみたて枠120万円

成長投資枠240万円

非課税限度額

800万円

600万円

1800万円

成長投資枠1200万円まで

投資可能期間

令和24年まで

令和5年まで

 

恒久化(令和6年から)

非課税期間

20年間

5年間

 

無期限

 

なお、施行は令和611日からという点には注意しましょう。

 

賃貸オーナーの中には、賃貸経営と並行して証券関連の投資を行っている方も多いと思われます(少なくとも、私のお客さまでは多いです)。

 

そこで、今回の税制改正の目玉であるこのNISAの抜本的拡充・恒久化により「賃貸経営より証券関連の投資比重を高めた方が得か?」というご相談も頂きます。

結論として、投資自体の性格や目的自体が違うはずなので、制度か変わったからと言って、ご自身の投資のマスタープランであるライフプランを変えるのは本末転倒・・・とお伝えしています。
もちろん、ライフプラン自体がこのNISA改正にマッチするのであれば、大いに活用すべきです。

2-5-2.極めて高い水準の所得に対する負担の適正化

富裕者層がいわゆる証券も含めた金融資産を中心とした20%課税を活用し、相対的に負担割合が下がっているという問題の解消のために行われるモノです。
文字通り、極めて高い水準の所得に対する課税が強化されました。


具体的には、以下の計算式の金額が所得税額を上回る場合、差額分が追加で課税されます。

 

・(基準所得金額(合計所得金額)-33000万円)×22.5

 

つまり実質的に、3億3000万円を上回る所得には最低でも22.5%の税率が課せられる理屈です。
これは令和7年分以降の所得税が対象になります。

 

こちらも賃貸オーナーの中にも該当者がいらっしゃるかもしれませんが・・・かなり限定されると思われます。注目すべきは、今後の展開です。
個人的な見解ですが、今後、このバー=所得水準を下げようという議論が税制改正の度に出てくると思われます。

2-5-3.相続時精算課税制度の使い勝手向上・暦年課税における相続前贈与の加算

相続時精算課税制度を使った場合、課税価格から毎年110万円の基礎控除が使えるようになりました。
さらに相続時に精算する際には、過去の基礎控除額分を差し引けることになります。これは令和611日以降の贈与についての適用です。

 

また相続開始前3年以内の贈与財産が相続財産に加算される点について、相続開始前7年以内に改定されました。ただし延長になった4年分については、総額100万円までは加算されません。これは令和611日以降、適用されます。

2-5-4.適格請求書等保存方式の円滑な実施について

令和5101日から開始される適格請求書発行制度(インボイス制度)において、一部の事業者は、課税標準額(売上)に対する消費税額の2割を納付すれば良いことになりました。しかもこれは、インボイス発行事業者なら確定申告書に、適用を受ける旨を書くだけで使えます。この制度については他の要素も含め、まだ変更の可能性がありますから注意が必要です。

2-5-5.課税・徴収関係の整備・適正化

無申告加算税について、50万円以下15%、50万円超20%に加えて、新たに300万円超30%が追加されました。また期限後申告や修正申告に基づく無申告加算税も、50万円以下10%、50万円超15%に加えて、新たに300万円超25%が追加されました。

 

さらに期限後申告または一部の修正申告が3回(3年)続くと、無申告加算税または重加算税が10%加重されることにもなりました。ちなみにこれらの措置は、近年よく騒がれている、いわゆるパパ活やユーチューバー、副業などでの無申告が目立つようになった影響と言われています。これらは令和611日からの適用です。

3.税制改正によってどのようなメリットや注意点が出てきたか?

今回の税制改正では、土地所有者や賃貸オーナーにデメリットや不利益となるようなものは特に見当たりません。そして、一定の工事や不動産の購入・売却において有利となる制度の創設・延長・拡充が目立ちますから、土地所有者や賃貸オーナーにはメリットの多い改正といえます。

 

ただし、いずれの改正も基本的には「制度の延長」です。
つまり、あくまで今回は延長されたものの、いつまで延長が続けられるか分からない点に注意が必要といえます。不動産に関係する何らかの判断・決断をしようとしているなら、少し急いだほうが賢明です。

 

合わせて、一般的な賃貸オーナーの事情を考えると、「相続時精算課税制度の使い勝手向上・暦年課税における相続前贈与の加算」の改正によって、より早い時期から相続を考えるメリットが強まりました。これから賃貸経営を始めるか検討中の方も含めて、より早い時期から、相続の方法について考えていくことをおすすめします。

 

一人での判断・決断が難しいなら、必要に応じて頼れる不動産業者などにも相談しつつ、制度が使えるうちに行動を起こしましょう。

4.まとめ

今回の税制改正でもわかる通り、毎年税制は変わっている状況です。
このため円滑・効果的な資産承継や節税などの観点から、こうした変化を常にとらえ続けることが重要といえます。また改正された税制を当てはめた場合に、具体的にどのような影響が出るのか、シミュレーションによる課題発見を行っていくことも重要です。必要に応じて不動産業者にも協力してもらい、常に変化に対応できるよう準備を続けていきましょう。

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コラムだけではわからないことも、この記事の筆者の株式会社優益FPオフィスの佐藤先生がわかりやすく解説します。

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■監修者プロフィール

株式会社優益FPオフィス 代表取締役
佐藤 益弘

マイアドバイザー®
Yahoo!Japanなど主要webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供や、主にライフプランに基づいた相談を顧客サイドに立った立場で実行サポートするライフプランFP®として活動している。
NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などTVへの出演も行い、産業能率大学兼任講師、日本FP協会評議員も務める。
【保有資格】CFP®/FP技能士(1級)/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/住宅ローンアドバイザー(財団法人住宅金融普及協会)