ローンを利用して土地活用を始められる?種類や選び方
公開日: 2025.03.26
最終更新日: 2025.03.31
土地活用を考える際、多くの人が直面するのが資金調達の問題です。
収益性の高い活用方法には多くの初期投資が必要となるため、せっかく土地を所有していても、自己資金だけでは挑戦が難しい場合があります。
このような場合、土地活用に利用できるローンにより資金調達をする方法があります。月々の収益から計画的に返済することによって、安定して土地を収益化することも可能です。
本記事では、土地活用に利用できるローンの種類や選び方、利用の流れやポイントについて詳しく解説します。
1. 土地活用で利用できるローンの概要
土地活用にはさまざまな方法があり、それに応じて利用できるローンにもいくつか種類があります。
ここでは土地活用に適したローンの種類と、ローンを活用するメリット・デメリットについて解説します。
1-1. 土地活用に利用できるローンの種類
・不動産担保ローン
不動産担保ローンとは、所有する土地や建物を担保に融資を受けるローンをいいます。
このローンの大きな特徴は、融資された資金の使途に制限が基本的にはありません。
土地活用では、その土地の立地や形状などによりさまざまな活用方法が存在しますが、ローンの中にはその活用方法が制限されているものもあります。
その一方で、不動産担保ローンにはそうした制限が基本的にはなく、多くの土地活用に対応できるローンといえます。
また、担保にする不動産の価値によっては多額の資金を調達することもできます。
・アパートローン
アパートローンとは、アパートやマンションなどの賃貸経営に必要な資金を借りるためのローンです。
融資された資金の使途は、賃貸経営を始めるための費用(例:アパートの建築費用など)に制限されます。
融資条件によっては、自己資金がなくても利用できる場合があります。
・プロパーローン
プロパーローンとは、金融機関による独自の融資です。
保証会社の保証を付けずに金融機関とローン契約ができることが多いです 。
アパートローンなどの融資条件はどの金融機関においてもおおむね決まっていますが、プロパーローンは独自の基準で融資が行われるため、融資条件は契約ごとに決まります。
・公的ローン
いわゆる政府系金融機関(政府が出資する金融機関)による融資にも、土地活用に使えるものがあります。
比較的低金利でローンを組むことができますが、公的ローンである以上、政策に合わせた特有の条件を満たさなければなりません。
以下、住宅金融支援機構と日本政策金融公庫のローンを紹介します。
【住宅金融支援機構の融資】
住宅金融支援機構とは、住宅金融市場の安定的な資金供給を目的とする独立行政法人です。
代表的なマイホーム購入時に利用できる「フラット35」以外にも賃貸住宅向けの融資制度として、「子育て世帯向け省エネ賃貸住宅」や「サービス付き高齢者向け賃貸住宅」などの建設資金を対象とした融資が利用できます。
資金の使い道が制限されるほか、建築する賃貸住宅に関する要件も多い融資制度ですが、最長35年で全期間固定金利型が選べるため、安定した返済計画を立てやすいといえます。
【日本政策金融公庫が提供する融資】
日本政策金融公庫とは、中小企業や個人事業主向けの事業などに融資を行う金融機関です。
土地を活用して始める事業に対するローンであり、「不動産賃貸業」なども対象になり得ます。
ただし、一定の自己資金が必要になるケースが多く、融資限度額や融資期間(返済期間)などの条件はやや厳しめです。
1-2. ローンを利用して土地活用を始めるメリットやデメリット
・ローンを利用して土地活用を始めるメリット
1. 自己資金が少なくても土地活用を始められる
土地活用の方法によっては多くの資金が必要になりますが、ローンを利用すれば、自己資金が少なくても土地活用を始めることができます。
特に土地の所有者であれば、それを担保にすることで、より多くの資金を融資してもらえる可能性があります。
2. レバレッジ効果を得られる
ローンを利用することで、自己資金だけでは難しい大規模な投資が可能になります。
たとえば、土地にアパートやマンションを建築する際、投資額が大きいほど部屋数を増やせたり、魅力的な設備を導入して周辺物件と差別化したりすることができ、安定した家賃収入につなげることが可能です 。
このように、ローンを活用した「レバレッジ効果」( 借入等を活用し、自己資本以上の投資利益を得られる効果)によって、所有する土地の収益化を効率的に進めることができます。
・ローンを利用して土地活用を始めるデメリット
1. 審査費用などの手数料が高い
ローン契約には、融資審査のための手数料や保証料、登記費用など、さまざまな費用が発生します。
特に大規模な資金融資を受ける場合、これらの費用だけで数十万~数百万円にのぼることもあります。
ローンを契約する前に必ず説明があるため、こうした諸費用も確認しておくことが大切です。
2. 審査に時間がかかる
ローンを申し込むと、金融機関において審査が行われます。
この審査にはある程度の時間が必要で、約2週間程度のものから3か月ほどかかるものもさまざまです 。
審査に時間がかかればその分だけ収益化の時期も遅れます。
後述する審査のスケジュールなどを確認し、余裕のある計画を立てることが大切です。
2. 土地活用に利用するローンの選び方
土地活用にローンを利用する際、どのような視点で選ぶべきかを知ることが大切です。
ここでは、土地活用に適したローンの選び方について解説します。
2-1. 金融機関で選ぶ
ローン契約ができる金融機関には、都市銀行、地方銀行、信用金庫、ノンバンクなどがあります。
それぞれ審査基準などが異なるため、自分の状況に合った金融機関を選ぶことが重要です。
以下に、金融機関ごとの一般的な傾向をまとめましたので、参考にしてください。
【金融機関のローンの一般的な傾向】
・都市銀行:融資額が大きい傾向にあるが、審査では高い信用力が求められる。
・地方銀行、信用金庫:地域の中小企業や個人を対象にした融資が特徴。都市銀行より柔軟な審査を受けられる場合がある。
・ノンバンク(銀行以外):審査基準が比較的緩やかで借りやすいが、金利が高めに設定されることが多い。
2-2. 土地活用の種類で選ぶ
土地活用の種類や規模によって、必要な資金額や適したローンの種類が異なります。
【土地活用の種類と初期投資の目安】
・アパート経営:5,000万円~
・マンション経営・高齢者施設:1億円~
・駐車場経営:数十万円~(コインパーキングなど設備を要するもの:100万円~)
・トランクルーム経営:200万円~
・太陽光発電:数百万円~
各種ローンの融資限度額は、ローンの種類によって基準が異なります。
たとえば、不動産担保ローンでは不動産評価額が重視され、その6~8割が目安とされます。
アパートローンでは評価額に加え、さらにその収益性が重視されます。
よく「年収の10倍」が目安とされていますが、あくまでも審査の主眼はアパートの価値と収益に向けられています。
事業向けのローン(金融機関のビジネスローン、日本政策金融公庫の各種融資など)の場合は、借り手の返済実績等を含む信用力も重視されます。
限度額の目安は数百万円程度であり、特に初めての借り入れで大きな資金調達を成功させることには向いていません。
ご自身の土地活用の方法に合わせてローンを選ぶと良いでしょう。
2-3. ローンの金利で選ぶ
金融機関やローンの種類によって、ローンの金利も異なります。
まずは金利の種類を知り、どちらを選ぶかを考えておく必要があります。
・変動金利:借入後に市場の金利変動に応じて、ローンの金利が変更される。金利が下がれば支払い負担が軽減されるが、逆に上昇すると返済額が増えるリスクがある。
・固定金利型:借入時に設定した金利が変わらない。安定した返済計画を立てられるが、変動金利よりも初期の金利が高めに設定されることが多い。
金利は、融資の審査が緩く「借りやすい」ローンほど高めに設定されます。
20年、30年にわたり数百万円から数千万円の融資を返済する場合、年間数パーセントの金利の違いが非常に重くなりますので、ローンの申し込み先を選ぶ際は、金利の視点も重要です。
3. 土地活用でローンを利用するときの流れ
ローンを組んだ経験がない方にとっては、どのような流れで融資が進むのか分かりにくいかもしれません。
本項では、土地活用でローンを利用する際の一般的な流れを解説します。
Step1. ローン申し込みの準備をする
希望する金融機関に連絡し、担当者から融資の申し込みに必要な書類などの案内を受けます。
本格的な申し込みの前段として「仮審査」の申し込みをインターネットから行い、それを通過した後の「本審査」の申し込みにおいて、必要な書類の提出を求められる場合もあります。
Step2. 必要書類を準備する(追加)
ローン申し込みに必要な書類を準備します。
一般的には下記のような書類が求められますので、参考にしてください。
【必要な書類の例】 ・事業計画書 投資物件の収益性などの情報をまとめた計画書。建物や土地の情報のほか、賃料収入、資金計画などがまとまっている。 ・登記簿謄本 物件の所在地や面積、所有者、物件の権利関係などが記載された書類。 ・物件概要書 物件の名称、所在地、構造、敷地面積といったさまざまな情報を記載した書類。 ・公図、用途地域図 ・建物図面 ・固定資産税評価証明書 ・勤務先の会社概要 ・職歴書 ・家族関係図 ・資産背景 銀行の預貯金、不動産のほか、株式・債券などの現金化可能な金融資産のエビデンス。通帳、株式証書、不動産の登記簿謄本のコピーなど。 ・保有物件一覧 ・生命保険、損害保険加入一覧 |
上記のうち、特に重要となるのが「事業計画書」です。どのように土地を活用し、どのように収益を得るのかを具体的にまとめた書類であり、申し込み先の金融機関が求める内容にしたがって作成します。
単に融資を成功させるための書類の一つと思われがちですが、作成にあたって土地活用のために必要な事項を整理することができ、さらには融資後の収支管理や返済計画を熟考する機会になるため、しっかり作成しましょう。
Step3. 金融機関にローン審査を申し込む
必要書類をそろえたら、金融機関にローンの審査を申し込みます。
インターネットから申し込める場合もありますので、申し込み先の金融機関のルールをよく確認しましょう。
Step4. 担当者と面談をする
提出した書類の確認を中心に、担当者が審査に必要な事項について面談を行います。
主に融資の借入希望額や返済計画が妥当かどうか、事業が安定して収益を生み出せるかなどを確認します。(提出書類の内容で、そのまま審査に進む場合もあります。)
Step5. 金融機関がローン審査を開始する
提出された書類や面談の結果から、ローン審査が開始されます。
借入希望額に対する事業計画の妥当性や本人の返済能力を含めた信用力などの基準により、融資の可否や条件が決定されます。
審査期間は、金融機関などによって異なりますが、2週間以上かかる場合が多いです。
Step6. 融資の手続きを行う
審査を通過したら、融資の契約手続きに進みます。
契約の際には、金利や返済期間、返済方法などの条件をしっかり確認し、不明点があれば必ず担当者に相談しましょう。
融資が実行された後は、提出した事業計画に沿って提供された資金を活用します。
4. 土地活用にローンを利用する際のポイント
最後に、土地活用にローンを利用する際に押さえるべきポイントをまとめます。
4-1. 自己資金を用意する
金融機関や融資の額によって、必要な自己資金の金額は異なります。
一般的に、借入金額が大きくなるほど必要な自己資金も多くなります。
自己資金を全く用意せずに借りるローンは「フルローン」と呼ばれますが、審査が非常に厳しく、返済負担が大きくなるため、現実的ではありません。
ある程度の自己資金を準備し、適切な借入額を設定しましょう。
4-2. 返済計画をしっかり立てる
ローンを利用する際は、返済期間と毎月の返済額をしっかり管理することが重要です。
収益を予測し、事前に返済シミュレーションを行うことで、実現可能な計画を立てる必要があります。
また、返済中は返済額以外の収益をすべて生活費に使い切るのではなく、収益が想定より低くなった場合や、アパートや設備等のメンテナンス・修繕費に備えて資金を確保しておくことが大切です。
4-3. 金利タイプと返済方法を理解する
前述のとおり、ローンには固定金利と変動金利の2種類があります。
担当者に相談しながら、どちらを選ぶかを決めましょう。
また、返済方法には元利均等返済(毎月の返済額が一定になる)と元金均等返済(元金の返済額が一定で利息分の返済額が減少していく)があります。それぞれの特徴を理解し、自分の土地活用計画に合う方法を選びましょう。
5. 土地活用でローンを活用し、成功へつなげよう
土地活用にローンを利用することで、自己資金が少なくても大規模な事業を始めることが可能になります。
しかし、ローンを活用する際には、適切な金融機関の選定、返済計画の策定、金利や返済方法の理解が重要です。
事前にシミュレーションを行い、無理のない資金計画を立てることで、安定した収益化を実現できます。
また、事業計画書の作成を通じて、自身の土地活用の方向性を明確にすることも大切です。
しっかりと準備を整え、ローンを活用した土地活用を成功へと導きましょう。
■監修者プロフィール
有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。
【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者
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