アパートローンにおける担保評価とは
公開日: 2025.01.20
最終更新日: 2025.01.21
アパートローンは、賃貸用不動産の購入や建築を目的とした融資で、アパート経営を行う際に個人や法人が利用します。
一般的な住宅ローンと異なるのは、返済能力に加えて物件の収益性や担保価値が審査のポイントになる点です。
本記事では、アパートローンの中でも担保評価に関する情報をまとめました。担保評価の仕組みや算出基準について詳しく解説します。
>関連記事:アパートローンとは?住宅ローンとの違いや融資を申し込む流れ
1. アパートローンにおける担保評価とは
アパートローンの審査では、物件の担保価値が重要です。
担保評価は、物件の価値や収益性をもとに融資額を決定する金融機関の業務のことを指します。
1-1. 担保評価とは
担保評価とは、融資時に担保として提供される不動産の価値を金融機関が査定する手続きです。
不動産の種類や所在地、状態、収益性などを総合的に評価し、担保としての適格性を判断します。借入可能額や融資条件を決める基準となる重要な作業です。
金融機関が担保評価を行う目的は2つあります。
まず、融資可能額の上限を設定し、貸し倒れリスクを軽減するためです。不動産の担保価値を明確にすることで、融資額が適切な範囲内に収まるよう管理します。
次に、返済不能時に資金回収を確保し、融資リスクを最小限に抑えることです。
不動産は市場価値が変動するため、適切な担保評価がリスク管理に欠かせません。
1-2. 担保評価額の決め方
担保評価額とは、金融機関が融資のために担保とする不動産の価値を定量化したもので、その算出方法は金融機関ごとに異なります。
一般的には、不動産の評価額に「担保掛目(不動産評価額に基づいて設定される融資可能額の比率)」を掛けて計算されます。
不動産の評価額は、国税庁が公表する路線価をもとに算出される場合があります。
路線価は特定地域の土地価格を示す指標で、これを利用することで不動産のおおよその価値を把握できます。
また、国土交通省が提供する「不動産情報ライブラリ」などのWebサイトを活用すれば、より詳細な金額を確認することも可能です。
【参考】 「不動産情報ライブラリ」 (国土交通省)
担保掛目は通常60%~80%の範囲で設定され、金融機関の基準やローンの用途によって変動します。リスクが低い融資案件では高めに設定される一方、不確実性が高い場合には低めの掛目が適用されることがあります。
1-3. 担保評価額を求める計算式
アパートローンの担保評価額は、以下の計算式によって求められます。
担保評価額 = 不動産評価額 × 担保掛目
例えば、不動産評価額が5,000万円で、担保掛目が70%の場合、以下のように担保評価額が求められます。
担保評価額 = 5,000万円 × 0.7 = 3,500万円
この場合、金融機関は担保評価額をもとに融資可能額を検討しますが、5,000万円の物件であっても実際の評価額は3,500万円となり、それが融資額の基準となります。
ただし、アパートローンの融資額は担保評価額だけで決まるわけではありません。融資額を決定するには、以下の要素も判断材料となります。
- 保有資産、事業内容、返済能力などの属性
- 担保となる不動産の時価は、不動産鑑定士が算出することが一般的
- 現地調査による評価が行われる場合もある
担保評価額は融資審査の一部なので、総合的な判断が必要です。
2. アパートローンで融資を受ける際の担保評価額を算出する方法
アパートローンで融資を受ける際の担保評価額は、主に3つの方法によって算出されます。
2-1. 積算価格(原価法)
積算価格(原価法)は、不動産の価値を土地と建物に分けてそれぞれを評価し、その合計を求める方法です。土地の担保評価額は以下の計算式で求められます。
担保評価額=路線価×土地面積
路線価は土地の場所ごとに定められており、その金額に土地の面積を掛けることで担保評価額を算出します。
建物の担保評価額は以下の計算式を用います。
担保評価額=建物総床面積×再調達価格×(耐用年数-築年数)÷耐用年数
再調達価格とは、建物を新たに建設するために必要な費用です。建物の総床面積にこれを掛け、さらに建物の耐用年数と築年数に基づく減価分を反映することで、建物の現時点での価値を算出します。
耐用年数は建物の構造により異なり、木造建築は22年、鉄筋コンクリート造建築は47年のように決まっています。
土地の計算方法:担保評価額=路線価×土地面積
建物の計算方法:担保評価額=建物総床面積×再調達価格×(耐用年数-築年数)÷耐用年数
【参考】 「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」 (国税庁)
2-2. 比準価格(取引事例比較法)
比準価格(取引事例比較法)は、過去の取引事例をもとに、不動産の評価額を算出する方法です。
まず、評価対象物件と立地、面積、築年数、構造などの条件が近い物件を選定します。
次に、その物件の成約価格を参考にし、対象物件の条件に応じて調整を行うことで、評価額を算出します。これにより、市場の需要と供給を反映した価格が算出できます。
比準価格は、特に市場での不動産取引が活発なエリアにおいて有効であり、透明性と信頼性の高い評価方法とされています。
ただし、過去の取引データが不足している場合や、類似物件が少ない場合には、正確な評価が難しくなる点に留意が必要です。
2-3. 収益価格(収益還元法)
収益価格(収益還元法)は、不動産から得られる将来の収益性をもとに評価額を算出する方法です。
この手法は、不動産が生む収益を評価に反映できる点が特徴です。収益還元法には「直接還元法」と「DCF法」の2つの手法があります。
直接還元法では、不動産が生む純収益(年間の賃料収入から経費を引いた額)を一定の還元率で割り戻して評価額を算出します。
計算が簡単で、安定した収益が期待できる物件に適した方法です。
一方、DCF法では、将来のキャッシュフローを割引率で現在価値に換算し、その合計で評価額を求めます。収益が変動する場合や、長期的な収益性を考慮する際に有効な方法です。これらの方法により、収益物件の適切な価値をより正確に評価することが可能です。
3. アパートローンの返済が滞った場合のリスク
次にアパートローンの返済が滞った場合に生じるリスクを説明します。
アパートローンの返済が遅延すると、最終的には担保となるアパートが競売にかけられ、失う可能性があります。
競売での売却価格がローン残債を下回る場合、その差額の返済義務は引き続き残ります。
さらに、返済遅延が続くと金融機関からの信用度が低下し、将来の借入れや新規融資において不利な条件を提示されることもあります。
競売で所有者が変われば、入居者にも影響が及びます。
新しい所有者の方針次第では契約条件の見直しや住環境の変化が生じる可能性があり、入居者とのトラブルが賃貸経営全体の信用に影響を与える場合もあります。
返済が困難な場合は、放置せず早めに金融機関に相談することが重要です。
多くの場合、返済条件の見直しやスケジュール調整といった対応策が提案される可能性があります。
早期の対応により、競売や信用低下などの深刻なリスクを回避できる可能性が高まります。
4. アパートローンにおける担保評価の重要性とリスク回避
アパートローンを検討する際には、担保評価が融資可能額や返済条件を決定する重要な基準となるため、その仕組みを正確に理解することが不可欠です。
適切な担保評価に基づく返済計画を立てることで、融資リスクを最小限に抑え、安定した賃貸経営を実現できます。
また、返済が滞った場合のリスクを理解し、早期に対応する姿勢が重要です。
まず、複数の金融機関に相談し、それぞれの担保評価や融資条件を比較検討することが大切です。これにより、自身の状況に合った最適な融資プランを選ぶことが可能になります。
また、土地活用や賃貸経営の専門家に相談することで、より確実な計画を立てることができます。
土地活用のプロフェッショナルである大東建託では、豊富なノウハウを活かし、個々の状況に応じた最適な土地活用プランを提案しています。専門家のアドバイスを受けることで、複雑な融資や運営の課題もスムーズに解決し、安定した収益性を確保することが可能です。
■監修者プロフィール
有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。
【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者
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