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山林ではどのような土地活用ができる?成功させるポイント

公開日: 2025.03.24

最終更新日: 2025.03.31

山林を相続したものの、管理方法がわからず、放置したままの方も多いのではないでしょうか。
山林の放置は深刻な問題を引き起こすリスクがあります。立木の手入れや間伐などがしっかりと管理されていない山林は、大雨による土砂崩れで被害が拡大する要因になり得ます。
また、所有者には、放置・管理など状態は関係なく固定資産税の税負担が発生します。山林を適切に活用すれば、リスクやデメリットの軽減が可能です。

本記事では、山林の具体的な活用方法と重要なポイントなどを解説します。山林の土地活用を検討したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

1. 山林で行う土地活用の特徴

山林の活用を検討する際には、一般的な土地活用とは異なる特徴の理解が必要です。
ここでは、山林の土地活用における需要状況と知っておくべき法的規制について解説します。

1-1. 需要が特殊

山林を土地活用する需要は林業や林産物業など特定の業界に偏る傾向があります。整備された都市部の土地と異なり、山林は地形や立地の制限から用途が限定されるためです。
また、山間部では人の行き来が少ないため、賃貸住宅やテナント物件といった一般的な不動産の活用は適していません。
地元のニーズや地域特性を見極めた活用プランの策定が重要です。

1-2. 土地に法的規制が設けられている

山林には自然環境の保護や災害防止を目的とし、さまざまな法的規制が設けられています。
特に保安林や市街化調整区域に指定された区域では、都市計画法による厳格な制限が課されており、開発が制限されます。
主な法規制を下表にまとめました。

主な法律・条例・都市計画法の名前

主な内容

宅地造成等規制法

・宅地造成に伴う土砂崩れ災害防止を目的

・一定規模以上の土地の造成工事を規制

急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律

・急傾斜地の崩壊による災害防止を目的

・傾斜度30度以上の急傾斜地を規制

都市緑地法

・都市内の緑地保全を目的

・都市緑地保全地区を定めて建築や伐採を制限

地すべり等防止法

・地すべり災害の防止と被害を軽減する目的

・防止区域内での開発や建築を制限

土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律

・土砂災害の危険がある地域の安全確保を目的

・指定区域内での開発行為や建築物の構造を規制

森林法

・森林の保続培養と森林生産力の増進を目的

・森林の適正管理と伐採を制限


このような法規制のため、土地の造成や樹木の伐採には、自治体(市町村)への確認や許可申請が必要となるケースが多くあります。
山林の活用計画は法規制の確認から始めることが賢明でしょう。

2. 山林でできる土地活用の例

山林の活用方法は地形や立地条件によって、さまざまな選択が可能です。
ここでは、実際に行われている具体的な活用事例を紹介します。

2-1. 林業者や林産業者への貸し出し

山林を林業者や林産業者へ貸し出すことで、専門家による管理と賃料収入を得られます。
自分では難しい山林管理を専門知識があるプロの事業者に任せる効果的な活用法です。ヒノキやスギなど価値の高い木が育つ山であれば需要が見込まれ、賃貸契約期間中は事業者に管理を任せられます。

ただし、契約終了後の管理責任や伐採された後の土地活用についても考慮しておきましょう。

2-2. 農園

近年、農業体験や市民農園の需要が高まっているため、山林を農園とする活用も有効です。

例えば、土地を区画整備し、農具の貸し出しや栽培指導によって、魅力的な体験農園を運営できます。
ただし、農地転用の許可や地目変更の登記など手続きが必要です。

また、給水設備や駐車場の整備などの初期投資も必要になり、綿密な事業計画の策定が重要になります。

2-3. 太陽光発電

日当たりの良い山林は、太陽光発電による活用が有効です。再生可能エネルギーへの注目があり、適切な条件下では安定的な事業として期待できます。
実際に、南向きの斜面を利用して太陽光パネルを設置して発電事業をする事例も見られます。

ただし、10kW以上50kW未満の低圧区分では、自家消費型の地域活用要件が設定、50kW以上の高圧・特別高圧区分では、入札制度適用区分が設定されているなど、2025年2月現在は新規参入は事実上不可能になっています。

>>関連記事:土地活用で太陽光発電を選ぶメリットは?向いている土地の特徴

2-4. キャンプ場

自然豊かな山林は、キャンプ場として多くの集客が見込める活用方法です。
近年のアウトドアブームにより、キャンプの人気は高く、多くの人が楽しんでいます。

特に、テントサイトのみのオートキャンプ場の運営であれば、整地は必要ですが、特別な宿泊施設を必要とせずトイレや炊事場など最低限の設備投資で開業が可能です。

ただし、施設やサービスによって営業許可が必要になりますし、集客にかかる費用も考えておく必要があります。

施設

必要な営業許可

バンガローやコテージ

旅館業

食材や料理を提供する施設

飲食店業


上記のような建物を併設して経営する場合は各種営業許可が必要になるため、計画する際には注意が必要です。

2-5. サバイバルゲーム場

起伏のある山林は、サバイバルゲーム場としての活用がおすすめです。
山林を活かせるため、設備投資を抑えたフィールド作りができます。

例えば、自然の斜面や立木を障害物として活用し、安全フェンスで区画されたフィールドを整備すれば、本格的なサバイバルゲーム場として運営できます。
なお、以下の安全対策が必須です。

・施設賠償責任保険などの万一に備えた保険加入
・防護ネットを設置
・野生動物の対策

利用者が安心して利用できる環境作りが必要になります。

3. 山林の土地活用を成功させるポイント

山林の土地活用を成功させるためには、適切な計画と準備が欠かせません。
ここでは、山林の土地活用を検討する際に重要なポイントを解説します。

3-1. 土地の需要を見極める

山林の土地活用が成功するかどうかは、地域のニーズに合った活用方法を選択できているかが重要です。
自分が希望する活用方法を単純に採用するのではなく、周辺地域の実情を考慮する必要があります。

例えば、最寄り駅や幹線道路から近い立地でも、周辺地域に同様の施設が多ければ新規参入は難しくなります。
また、人口減少が進む地域では、設備投資の大きい活用法は慎重に検討すべきでしょう。
地域の特性や産業構造を調査し、需要に沿った実現可能な活用プランを立てることが重要です。

3-2. 相談できる専門家の力を借りる

山林の土地活用は、専門家のサポートを受けることで失敗のリスクを大きく減らせます。
市街地とは異なるノウハウや地域特有の課題を求められ、自分だけで解決することは時間のかかる難しい内容のため、知識の豊富な専門家の力が必要です。
なお相談先の主な専門家は以下のとおりです。

・不動産会社
・森林組合
・土地活用のコンサルタント

それぞれの分野に精通した専門家に相談すれば、より具体的な活用プランを計画できます。
ただし、専門家選びの際は、山林活用の実績や経験が豊富な担当者がいるかどうかを確認しましょう。

4. 山林の手放し方

山林の活用方法が見つからない場合、最後の選択肢として土地を手放すことも検討できます。
ここでは、山林を手放す際の主な方法とそれぞれの特徴を解説します。

4-1. 土地の売却

山林の売却は、土地の評価額に基づいて現金化できる方法です。
立地条件や地形、木材の品質などによって評価額が大きく変わるため、適切な査定が重要です。
一般的な不動産売却と同様、不動産会社による買取や仲介が可能で、売却先が決まれば不動産売買により手放すことができます。

立地条件が悪く一般の不動産会社で取り扱いが難しい場合は、地元の森林組合に仲介を相談すると、独自のネットワークで買い手が見つかる可能性があるので持ち込んでみましょう。

4-2. 相続放棄の行使

相続放棄により山林を引き継がない判断もできます。相続放棄とは、被相続人から引き継ぐ財産の権利を一括して放棄できる制度です。相続した山林の管理負担や税金負担を回避できます。

例えば、遠方に住んでいて相続しても山林の管理が難しい場合や、相続争いを避けたい場合に検討される選択肢です。

ただし、相続放棄は相続対象になる財産を選んで放棄できません。預貯金など流動性の高い財産を含めたすべての相続権を失うため、慎重な判断が必要です。

>>関連記事:不要な土地は相続放棄できる?放棄するまでの手続きや注意点

4-3. 相続土地国庫帰属制度の利用

2023年からスタートした相続土地国庫帰属制度は、一定の条件下で相続した土地を国に譲渡できる新しい選択肢です。
相続した土地の放置や所有者不明土地が問題となり、相続した土地の維持管理が困難な場合の受け皿として設けられました。

例えば、相続した山林の管理費用が負担になる場合、他の相続財産は保持したまま、土地だけを国に帰属させることが可能です。

ただし、崖地や土砂災害の危険性が高い土地は対象外となり、申請には審査や手数料が必要であるため、事前に条件を確認するなど慎重な判断が重要です。

【出典】:相続土地国庫帰属制度の概要(法務省)

5. 山林の土地活用は適切な調査と見極めが成功への鍵

山林の土地活用方法について、さまざまな面から紹介しました。山林の活用方法は、立地状況によって最適な選択肢が変わってきます。

土地の地形や周辺環境、法的規制、地域のニーズなど、さまざまな要素を十分に調査することが大切です。
他の山林で成功した事例が、ご自身が所有する山林の最適な活用法とは限りません。
山林の土地活用が成功するかどうかは、地域の人口動態や産業構造、将来的な発展性とも密接に関係しているためです。

土地の状況に応じた活用方法を選択することで、持続可能な運営が可能になります。

一方、条件によっては売却や国庫帰属制度の利用も検討する必要があります。
専門家のアドバイスも参考にしながら、慎重に調査を重ね、その結果に基づいて活用方法を選択することが、成功への近道となるでしょう。

■監修者プロフィール

株式会社アース・リーグ代表取締役
森田一成

15年間の住宅・不動産専門新聞社の経験、不動産投資セミナーの企画・運営、不動産団体広報誌の企画・取材・原稿執筆などを経て、Webメディア制作・編集、不動産関連のセミナー企画などを行っている株式会社アース・リーグを設立し代表を務める。 

 

【保有資格】宅地建物取引士