土地活用を始める動機はどのようなものがある?目的別おすすめ活用法
公開日: 2023.07.24
最終更新日: 2023.11.28
土地オーナーにとって、土地という貴重な財産を活用した賃貸経営は単なるお金稼ぎ以上のやりがいやメリットがあります。
一口に土地活用と言っても、その種類は賃貸住宅や商業ビル、駐車場など多岐にわたります。土地活用を行う理由は人によって違うため、その動機に応じた最適な活用法を行うのが重要です。
このコラムでは、地主が土地活用を考える主な動機と、その目的に応じたプランを紹介します。
後半では土地活用を検討する際に押さえておきたいポイントも解説します。
最後までぜひチェックしてください。
>>関連記事:「土地活用の方法16選|運用を行うメリットや実際の進め方」
目次
1.土地活用を考える主な動機は?
まずは、土地活用を考える動機について、主要な物を紹介しましょう。
1-1.固定資産税・都市計画税の対策がしたい
土地は、保有しているだけでコストがかかります。固定資産税や都市計画税の他、雑草処理費などの管理費用が発生します。土地活用で収益性を上げ、これらのコストを賄うことが動機として挙げられます。
コストの中でも大きいのが土地にかかる固定資産税・都市計画税です。土地の上に居住用の家屋が建っている場合は軽減できる特例があることから、賃貸住宅を建築することで税額を低くすることが可能です。
この特例は、「小規模住宅用地の特例」「一般住宅用地の特例」と言います。
例えば、土地面積が300㎡の更地を活用しマンションを建てた場合、その土地にかかる固定資産税は200㎡分(小規模住宅用地の特例)は6分の1、100㎡分(一般住宅用地の特例)は3分の1に軽減されます。
もちろん、建物の固定資産税は別途発生してしまいますが、収益が得られるので収支がプラスとなり、固定資産税の負担感が軽減されます。
特例 |
対象の住宅用地 |
固定資産税 |
都市計画税
|
小規模住宅用地の特例 |
200㎡以下の部分 |
6分の1 |
3分の1 |
一般住宅用地の特例 |
200㎡を超える部分 |
3分の1 |
3分の2 |
1-2.住宅ローンの返済負担を減らしたい
家賃収入を得て、住宅ローンの返済負担を減らしたいという方もいらっしゃいます。
住宅ローンは金利が低いというメリットがあります。しかし、自己の居住用住宅に利用するという目的に限られるため、収益を獲得する土地活用においては原則住宅ローンを利用できません。
しかし、自らの住居の一部を貸し出し賃料を得る「賃貸併用住宅」であれば、面積の内50%以上を自宅にすることで住宅ローンを利用することができる場合があります。家賃収入をローン返済の元手とすることで、ローンの返済負担を減らすことができます。
1-3.相続税の対策がしたい
土地活用は、相続税対策としても有効です。
不動産は路線価方式や倍率方式など独自の評価方法で相続税評価額を決定します。例えば、5,000万円の現金で土地活用を行うための建物を建築したとします。相続発生時にその建物が4,000万円と評価された場合、差額の1,000万円分、相続税の課税対象が減ったこととなります。
また、不動産の評価額は時価より2割~3割程度下がることが多いため、仮に購入時の価格と時価が同程度だったとしても、現金で相続するよりは軽減されるでしょう。
このように、土地活用の建物を建設することで、相続人にかかる相続税の負担が軽くなる場合があります。
ただし、こういった節税効果は必ずしも発揮される訳ではないことから、税理士などの専門家と相談するとともに、あくまで副次的な効果として考えておくのがよいでしょう。
1-4.副業収入を得たい
本業のサイドビジネスとして土地活用を行うケースもあります。
賃貸マンションを始めとする土地活用は、物件管理の専門業者やサブリースを行う企業が存在し、オーナーが手間をあまりかけずに行うことができる仕組みが整っています。
企業に勤める会社員や個人事業主など、仕事や職種問わず、安定収入を得ることができる土地活用は、副業として取り組みやすいと言えます。
1-5.老後に向けて資金を貯めたい
土地活用は、老後の資産形成にも役立ちます。
若い頃に賃貸物件を購入しておけば、老後になるまでに賃料収入を得ることができます。不動産投資は手元の自己資金が少なくても融資を活用すれば高額な物件を購入できるため、経営が順調に進めば、少ない資金から大きな収益を生み出せます。
そういったことから、若い頃から長期的な視点で土地活用を行う方もいます。
1-6.既にある物件を新しくしたい
築年数が経過した建物を建て替えたいという動機も挙げられます。
老朽化した実家でも、リノベーションにより新たな価値を付加すれば、収益物件として借主が見つかる可能性があります。リノベーションにより利回りを高め、より多い利益を稼ぐためにも土地活用は良い手段となります。
2.【動機別】土地活用の選択肢
ここまでは、土地活用の主要な動機を紹介しました。
続いては、動機別におすすめできる具体的な活用方法について説明します。
2-1.まとまった収益を得たい人におすすめの活用法
定期的に収入を得たい人は、賃貸住宅の建築がおすすめです。
なかでもアパート経営やマンション経営は戸数が多いことから空室や家賃滞納のリスクを分散させることができます。
多くの入居者が集まれば毎月多額の家賃を得られるでしょう。
賃貸住宅のほかにもコンビニエンスストアや商業ビルなど、テナント施設を建設することもおすすめです。
これらは借主が企業となり、室内の内装設備工事は借主が店舗営業に合わせておこなうため、条件によってはオーナー側の建築費を抑えることができます。入居者ごとの賃料設定も住宅と比較し高く設定できるため、集客が見込める立地であれば成功しやすい土地活用です。
2-2.相続税対策をしたい人におすすめの活用法
土地活用で相続税対策をしたい場合は、その活用方法が税の特例を受けることができるかどうかが選択の基準になります。
税の負担が軽減できる特例として、「小規模宅地等の特例」が挙げられます。
小規模宅地等の特例とは、被相続人が住居や事業のために使っていた宅地に関して、その評価額を減額できるものです。
この特例を適用できる対象となる宅地と、その適用条件は以下の通りです。
<特定居住用宅地>
被相続人が居住する目的で使っていた宅地。
適用条件として、宅地を相続した相続人が被相続人の配偶者もしくは同居親族であること、申告期限までにその宅地に居住し、宅地を所有していることが必要となります。
330㎡までの面積について、課税価格の80%が減額されます。
<特定事業用宅地>
被相続人が事業を営む目的で使っていた宅地。
適用条件として、宅地を相続した相続人が申告期限までにその事業を引き継ぎ営んでおり、宅地を所有していることが必要となります。相続人が行っていた個人事業に用いていた事務所や工場などが対象です。
400㎡までの面積について、課税価格の80%が減額されます。
<貸付事業用宅地>
被相続人が貸付事業を営む目的で使っていた宅地。
適用条件として、宅地を相続した相続人が申告期限までにその貸付事業を引き継ぎ営んでおり、宅地を所有していることが必要となります。この貸付事業には賃貸アパートやマンションなど、不動産賃貸業が広く当てはまります。
200㎡までの面積について、課税価格の50%が減額されます。
ただし、特定同族会社に貸し付けている宅地の場合は、400㎡までの面積について、課税価格の80%が減額されます。
※特定同族会社とは、被相続人および被相続人の親族等が法人の発行済株式の総数または出資の総額の50パーセント超を有している法人のこと
2-3.なるべく初期費用を抑えたい人におすすめの活用法
遺産分割などで土地を取得した場合、あまり費用をかけずに土地活用をしたいという方もいらっしゃいます。
そんな方におすすめなのが、初期投資を抑えられる活用法です。
具体的には、コインパーキング経営、トランクルーム経営、太陽光発電の設置などが挙げられます。これらは建物を建てる必要がないことも多く、高額な資金を必要としない傾向にあります。
それ以外にも、店舗や賃貸住宅等の運営事業者、高齢者施設・介護施設経営者などに土地を貸して、地代収入を得る方法もあります。
この場合は事業者側が建物を建築するため、地主側は土地を貸すだけでかまいません。
3.土地活用を検討する際のポイント
ここまでは、動機ごとにおすすめの活用法について説明してきました。
しかし、その土地に最適な活用法は、その土地の性質や周辺の需要などの要件によって変わります。
活用法を検討する際のポイントをチェックしていきましょう。
3-1.事前に情報収集を行う
土地活用や不動産を取り巻く環境は日々変化します。
新しい情報を取り入れ、土地活用の参考にすることが重要です。
情報収集の方法としては、書籍学習の他、不動産投資会社が主催するセミナーへの参加や、専門家のメルマガ購読などが挙げられます。
それ以外にも、所有している土地のニーズや周辺エリアのことを深く知ることも重要です。周辺施設を調査したり、地域の不動産会社からどういった賃貸ニーズがあるのかをヒアリングしたりするのも良いでしょう。
その際は、なるべく複数の情報源から知識を集めるようにしましょう。比較することで、最適な情報を見極める判断力を養うことができます。
3-2.不動産経営に潜むリスクを把握する
どの土地活用方法でも何かしらのリスクは必ず存在します。
大切なのはリスクを把握し、事前に対処法を考えておくことです。
不動産経営で発生するリスクは、主に空室リスク、家賃滞納リスク、家賃下落リスク、原状回復費・修繕費リスク、ローンの支払金利の変動リスクなどが挙げられます。
賃貸経営に関するこれらのリスクについて、対策を知っておくのは非常に重要です。
これらのリスクの詳細とその対策については、以下のコラムで詳しく解説しています。
関連記事>>賃貸経営の5つのリスクとは
3-3.土地活用に詳しいプロに相談する
土地活用を検討する上では、土地活用に詳しい相談先を持っておくのも重要です。不動産を専門的に扱う会社では土地活用に関する相談を受け付け、その土地に応じた提案を行っています。
用途地域をはじめとするその土地にかかる法的な制限を調べ、具体的なシミュレーションも無料で行ってくれるところがほとんどです。
土地活用をするかどうか決めかねている段階で相談しても問題はありません。まずは一度相談してみるとよいでしょう。
4.動機を大切にして、最適な土地活用を検討しよう
今回は、土地活用を始める動機と、動機ごとのおすすめ活用法について紹介しました。
土地活用を始める動機はさまざまです。自らの目的と、初期投資をどれだけかけることができるのかという前提を押さえるだけでなく、所有する土地についてより詳しく知っておく必要があります。
その土地が持つ法的制限や周辺施設、賃貸ニーズなどの基本的な情報については、不動産会社に相談することで教えてもらうことができます。信頼できる不動産会社からのサポートを得て、理想の土地活用を実現させましょう。
■監修者プロフィール
宅地建物取引士/FP2級
伊野 文明
宅地建物取引士・FP2級の知識を活かし、不動産専門ライターとして活動。賃貸経営・土地活用に関する記事執筆・監修を多数手掛けている。ビル管理会社で長期の勤務経験があるため、建物の設備・清掃に関する知識も豊富。
【保有資格】
・宅地建物取引士
・FP2級
・建築物環境衛生管理技術者
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