市街化調整区域は土地活用できる?建物の有無別の具体的な方法
公開日: 2024.07.17
最終更新日: 2024.07.19
市街化調整区域の土地には、建物建設などの制約があります。
しかし、工夫次第で有効活用は可能です。本記事では、建物を建てない場合と建てる場合に分けて、土地の活用方法を詳しく解説します。
また、建物の建設が可能な場合の法的手続きの流れも合わせてお伝えします。市街化調整区域であっても、さまざまな活用術があることを知っていただき、皆さまの土地の有効活用をサポートできれば幸いです。
目次
1.市街化調整区域の概要
市街化調整区域は、市街化を抑制するために建築が制限されている区域です。
しかし、一定の条件を満たせば、さまざまな方法で土地活用することが可能です。
この章では、市街化調整区域の概要について解説します。
1-1.市街化調整区域とは
市街化調整区域とは、市街化が抑制される区域のことで、都市計画法で定められた都市計画区域の1つです。
都市計画区域は都市の健全な発展と整備を図るために設けられており、次の3つに区分されます。
-
- 市街化を推進する市街化区域
- 年の外縁部や農地・山林が広がる市街化調整区域
- 市街化区域や市街化調整区域に該当しない非線引き区域
市街化調整区域では、実施できる土地活用が限られており、原則として建物の建築が制限されています。
1-2.市街化調整区域で土地活用が制限されている理由
市街化調整区域で土地活用が制限されている理由は、指定地域の自然や農業を守るため、そして市街地を無秩序に拡大させないためです。
市街地が際限なく広がると、道路や水道、電気などのインフラ整備が難しくなり、整備が市街地の拡大に追いつかないケースも考えられるためです。
1-3.市街化区域・非線引き区域との違い
市街化区域・非線引き区域との違いは、課せられている制約にあります。
都市計画法では市街化区域、市街化調整区域、非線引き区域の3つの区域区分が決められており、それぞれで適用される制約や規制が異なります。
市街化区域は市街地や優先的に市街化が図られる区域で、商業施設や住居の建築が問題なくできる地域です。
一方、非線引き区域とは、市街化区域と市街化調整区域のどちらにも区分されていない地域を指します。
1-4.市街化調整区域に該当しているか確認する方法
市街化調整区域に該当しているか確認する方法は、各自治体が用意している都市計画図で確認することです。
自治体がデジタルデータで公開している場合は、自治体のwebサイト上で調べることができます。
2.【建物の有無別】市街化調整区域でできる土地活用の方法
市街化調整区域といえども、土地の活用方法はあります。
建物を建設しなければ、さまざまな活用ができます。また、建物を新築したい場合でも、適切な許可を得ることで土地活用することも可能です。
この章では、市街化調整区域における土地の有効活用方法を建物の有無別に解説します。建物を建設する場合の許可要件についても後述します。
2-1.建物を建てない土地活用の例
・駐車場
建物を建設せずに土地を活用する方法の一つが、駐車場経営です。
駐車場には、月極駐車場とコインパーキングの2つの形態があります。
駐車場経営のメリットは、初期投資が比較的抑えられる点です。駐車スペースを確保し、案内看板やゲートを設置するだけで事業を始められます。建物を建設するよりも必要な設備が少なく済みます。
一方でデメリットは、収益性がやや低めになることです。駐車場の賃料は建物の賃料に比べて安価な水準となる傾向にあるためです。
ただし、実際の収益性は地域の需要に大きく左右されます。
そのため、駐車場経営を検討する際は、事前に周辺地域の駐車場需要を十分に調査し、その結果に基づいて慎重に判断することが重要です。
需要が高い地域であれば、安定した収益が見込める可能性があります。
・太陽光発電
太陽光発電所は、市街化調整区域での有力な土地活用法です。
太陽電池モジュールを設置し発電した電力を売電するビジネスモデルですが、設備投資が必要な一方で、太陽光の自然エネルギー源を活用できます。
メリットは、発電所の維持管理が比較的簡単で、長期的な売電収入が続くこと、再生可能エネルギー事業として環境にも優しいことです。
デメリットは、初期投資が必要なこと、発電量が天候に左右されること、買取価格変動のリスクなどです。
さらに、近年の傾向として売電価格が年々下がっていることにも注意が必要です。
そのため、太陽光発電システムの導入を検討する際は、現在の売電価格や将来の予測、投資回収期間などを事前に十分調査しておくことが重要です。
これにより、長期的な採算性をより正確に見積もることができます。
15年から20年の長期にわたる減価償却期間で設備投資を回収できる点が太陽光発電の強みです。
立地選定が重要ですが、市街化調整区域の土地を最大限活用できる選択肢の一つと言えます。
・資材置き場
資材置き場は、市街化調整区域の土地を一時的に活用する選択肢の一つです。
建設現場の近隣で資材を仮置きできれば収益化できますが、恒常的な収入源にはなりません。
メリットは、建物を建設する必要がないため初期投資を抑えられること、短期間でも収益を得られることです。
一方でデメリットは、利用期間が限られていること、立地条件に左右されやすいことです。
とはいえ、参入コストが低く、他の土地活用に向けた一時的な運用手段として有力な選択肢と言えます。
建設ラッシュの地域であれば、需要も高まる傾向にあります。
・墓地・霊園
墓地や霊園も、市街化調整区域における土地活用の一つの選択肢です。
墓地や霊園を経営する事業者に土地を賃貸または売却し、そこに永代供養のための施設を建設してもらう形になります。
メリットは、長期にわたる安定した収入が見込めることです。
墓地や霊園は永代供養を前提としているため、一度契約が結ばれれば、長期の賃貸収入や土地売却による一時金が得られます。
建物を建設する必要もないため、初期コストを抑えられます。
一方で、立地の良し悪しが経営に大きく影響するという点がデメリットです。
墓地や霊園の利用者は、交通のアクセスや周辺環境を重視する傾向にあります。人里離れた場所では需要が見込めない可能性が高くなります。
市街化調整区域に指定されている土地は、人の往来がそれほど多くない場所が多いため、利用者が見込めるかどうかの見極めが重要です。
土地の立地条件や周辺地域の人口動態など、事前の市場調査が不可欠です。適切な需要予測ができるかどうかが、この土地活用の成否を分けるポイントになるでしょう。
2-2.建物を建てる土地活用の方法の例
市街化調整区域であっても、自治体から開発許可を得られれば建物を建設することができます。
許可を得る具体的な流れは次の見出しで解説します。
・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、市街化調整区域での建物建設による有力な土地活用法の一つです。
サ高住は高齢者専用の賃貸住宅で、入居者への生活支援サービスを提供する施設です。
施設内で必要な設備が一通り揃うため、周辺環境の影響を受けにくいメリットがあります。
高齢化の進展で需要が見込めるサ高住は、自治体から開発許可が下りれば、市街化調整区域でも建設が可能です。
初期投資はかかりますが、長期的な安定収益が期待できるビジネスモデルです。
・医療施設
医療施設の建設も、市街化調整区域での土地活用方法の一つです。
ただし、市街化調整区域での建設には自治体からの開発許可が必要となります。許可取得の手順は地域によって異なり、条件によっては時間と労力を要する場合があります。
医療施設のメリットは、高齢化に伴い医療・介護需要が見込めること。
特に高齢者施設では長期的な安定収益が期待できます。人口が少ない地域でも一定の需要が続く可能性があります。
一方、デメリットは建設費用が高額になること、医療従事者の確保が難しいことなどが挙げられます。
施設の立地次第ではスタッフ確保に課題が残る点にも注意が必要です。
需要への期待は高い分野ですが、多額の初期投資が必要になるデメリットもあります。
建設費用の捻出が課題となりますが、安定収益の見込める選択肢の一つと言えるでしょう。
・コンビニエンスストア
コンビニエンスストアの出店も、市街化調整区域での土地活用方法の一つですが、特定の条件を満たす必要があります。
具体的には、「市街化調整区域に居住している者の日常生活に必要な店舗に係る建築行為等」として認められる必要があります。
この条件を満たす場合、自治体からの開発許可が得られる可能性が高まりますが、許可申請の内容が自治体の定める基準に合致している必要があります。
許可取得プロセスは地域によって異なり、時間と労力を要する場合があります。
メリットは、一定の住民需要があり日用品の販売などに需要が見込めることです。
一方、デメリットとして来店客数が伸び悩むリスク、治安面での課題、加盟金などのコストがかさむことなどが挙げられます。
また、開発許可の取得に時間がかかる場合、出店計画全体に影響を与える可能性があります。
需要と採算性の見極めが重要です。適切な立地を選べば収益源となりますが、リスクも伴うため十分な検討が必須です。
>>関連記事:土地活用の方法19選|運用を行うメリットや実際の進め方
3.市街化調整区域で建物ありの土地活用を行う方法
市街化調整区域に建物を建設するには、原則として自治体の許可が必要不可欠です。
法的な規制がかかっているため、開発行為を行う際は所定の手続きを経る必要があります。
この章では、市街化調整区域で建物を新築する際の手順や要件について、わかりやすく解説していきます。
3-1.開発許可を得る流れ
市街化調整区域で建物を建設するためには、自治体から開発許可を受ける必要があります。
許可を得るための一般的な流れは以下の通りです。
1.開発を行う旨を自治体に報告する
2.自治体の担当者から規制の有無や申請に必要な書類の説明を受ける
3.近隣住民への事前説明を行う
4.必要書類を自治体に提出する
5.開発審査会で審査や協議が行われる
6.開発許可の申請を行う
7.許可が降りたら建物を建築する
まずは自治体に開発の意思を伝え、手順を確認します。規模により必要な手続きが変わり、大規模開発ほど要件は厳しくなります。
そして、重要なのが近隣住民への事前説明です。理解を得られないと許可が下りにくくなります。
書類を提出し、開発審査会での審査を経て、自治体が最終的に開発許可の可否を判断します。許可が下りれば建設工事に着手できます。
3-2.土地活用を行う際の注意点
市街化調整区域で土地活用を行う際の注意点は、農地の場合は別途「農地転用の許可」が必要になることです。
農地を宅地や事業用地など農地以外の用途に使うには、農地法に基づき以下の手続きが義務付けられています。
これにより、農地を他の用途に転用する際の適切な許可を得ることができます。
>>関連記事:農地転用して土地活用する方法
4.市街化調整区域でも土地活用はできる
市街化調整区域は建物の建設などが制限されている地域ですが、土地活用の選択肢はいくつかあります。
建物を建てない活用方法としては、駐車場経営や太陽光発電所、資材置き場、墓地・霊園などが挙げられます。
比較的低コストで始められますが、収益性には限界があります。
一方、建物を建てる場合は自治体の開発許可が必要不可欠です。
サービス付き高齢者向け住宅や医療施設、コンビニエンスストアなどが選択肢として考えられます。
建設費用の負担は大きくなりますが、長期的な安定収益も見込めます。
事前の調査を十分に行い、自身のニーズと投資可能額に合わせて、適切な選択をすることが重要となります。
■監修者プロフィール
有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。
【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者
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