不動産における等価交換とは?メリット・デメリットと実際の流れ
公開日: 2022.10.28
最終更新日: 2024.01.29
公開日:2017.07.20
不動産における等価交換は、土地所有者と開発会社による共同事業方式の一種です。
具体的には土地所有者が開発会社に土地を提供し、開発会社が建築費などを負担して賃貸マンションやオフィスビルなどの建物を建築、その後それぞれの出資比率に応じて完成後の建物と土地の所有権を配分するといった仕組みになります。
本記事では不動産における等価交換にはどんなメリットやデメリットがあるのか、また実際の流れについて解説します。
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目次
1.不動産における等価交換の仕組み
初めに等価交換の定義や、不動産における等価交換の仕組みを解説します。
1-1.等価交換とは?
等しい価値を有するものを相互に交換することを「等価交換」と呼びます。特に、土地オーナーと開発会社が協力し合って土地に建物を建て、完成後の土地の所有権の一部と建物の所有権の一部を等価になるように交換し合って取得する土地の開発方式を「等価交換方式」と言います。この仕組みを利用すると、土地オーナーは建築自己負担なしで土地を活用することが可能です。詳しくは以下の3つのステップで進められます。
1-2.等価交換方式の3つのステップ
①土地オーナー(土地所有者)が開発会社(ディベロッパー)に土地を提供する
②開発会社がその土地の上に建物を建てる
③土地オーナーと開発会社は、それぞれの負担割合に応じて完工した建物と土地の所有権を分ける
土地オーナーの視点で見れば、土地の一部を開発業者に提供する見返りとして、完成した建物の一部を提供してもらうという「交換」のイメージです。
1-3.土地の単純売却との違い
土地を単純売却した場合は、手元から土地を完全に手放すことになるので、その土地との縁は切れてしまいます。
一方、等価交換でも実質的には土地を手放すことになりますが、共有持分として一部は手元に残り続けます。
そのため、土地の上の建物を活用し続けることが可能です。また、後述するように、税制面での優遇を受けることができる場合もあるなど、土地の単純売却とは異なる点がいくつかあります。
>>関連記事:「土地売却の手順と考え方」
2.不動産において等価交換がおすすめな理由
等価交換は土地活用でおすすめできる方法です。
以下に具体的な理由を紹介します。
2-1.等価交換方式がおすすめな理由
・自己資金がなくても自己の費用負担なしで土地の有効活用ができる
等価交換の場合、建物の建設費用は開発会社が負担するため、土地オーナーが建設費用のための借金を負う必要はありません。
・土地譲渡所得税が繰り延べられる
土地オーナーが土地を開発会社に提供することは、「譲渡」という扱いになり、原則として、譲渡益に対して所得税がかかります。
その際、一定の要件を満たせば、「立体買換えの特例」が適用され、土地の譲渡による所得税を将来売却する時まで100%繰り延べることができます。
・開発会社のノウハウを活用できる
等価交換を用いた事業は開発会社が主体となって進めます。
経験豊富な開発会社が、これまでのノウハウを活かして事業を進めてくれるので、知識のないオーナーでも安心して土地活用に取り組めます。
また、建物竣工後も開発会社のブランド力を活用して、賃貸経営を優位に進められるメリットもあります。
特にオフィスビルや賃貸マンションといった高層建築物の賃貸経営では、高度な知識が必要になるので、心強いパートナーとなるでしょう。
2-2.等価交換方式の注意点
・実質的な土地の所有権が失われる
等価交換によって、土地の所有権は開発会社と共有することとなり、単独での所有権は失われます。
思い入れのある土地を親族以外の組織と共有することに抵抗がある場合には、等価交換ではない土地活用の方法を検討しなければなりません。
・自己資金で建てるよりも利回りが低くなる
通常、「等価交換」において土地と交換するのは「完成品としての建物」であり、建築費用原価で計算する場合よりも高い販売価格で評価されます。
そのため、自己負担で建物を建てて賃貸経営をする場合よりも、利回りは低くなります。
・交換が成立するまで時間がかかる
等価交換は建物の所有権や配分について、土地の所有者と開発会社で交渉します。
両者が納得して合意できるまで何度も交渉を重ねることもあり、交換が成立するまで時間がかかる可能性があります。
土地の所有権は所有者と開発会社の共有になりますが、お互いに所有する持分を増やしたいと考えがちで、利害の衝突が起きることが多いためです。
どこかで妥協できるポイントが見つからなければ、交渉が長期化したり、決裂したりするケースもあるでしょう。
3.等価交換を行う流れ
実際に等価交換する手順はケースバイケースです。
ここでは基本的な6つの手順を紹介します。
Step1. 開発会社との打ち合わせ
まず等価交換を行う開発会社を探します。
建築プランを立てつつ、どのような建物を建てるのか決めるため、オーナー自身もイメージを固めておく必要があります。
Step2. 等価交換方式の決定
次に等価交換方式を決めます。
等価交換方式には全部譲渡方式、部分譲渡方式の2種類があるため、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
全部譲渡方式とは、土地の全部の所有権を開発会社に譲渡する方法です。
自己資金や借入金なく土地活用ができるほか、相続などで土地の所有者が複数人いる場合、権利を巡りトラブルになるリスクを避けられるメリットがあります。
ただし、建物の完成後、土地と建物の所有権はそれぞれ出資比率に応じて配分します。
土地は再購入となる関係上、不動産取得税や登録免許税など、課税される税金が多い点がデメリットです。
一方、部分譲渡方式は土地の一部の所有権を開発会社に譲渡する方法です。
全部譲渡方式と違い、土地を再購入することがないので、不動産取得税などの税金が課税されないというメリットがあります。
しかし、土地の所有権の配分を開発会社との間で話し合うため、時間がかかったり、交渉が難航したりする可能性も考えられます。
Step3.契約の合意
等価交換の条件に合意できたら、等価交換契約書を結びます。
土地と建物の出資比率や配分も決まるため、内容に問題がないか、しっかりと確認するようにしましょう。
また、契約書の条文だけでなく、面積や図面なども目を通すことが大切です。
Step4.土地の売却
等価交換方式が全部譲渡方式の場合、契約締結後、開発会社へ土地の売却を実行します。
土地を売却して利益が出ると、譲渡所得税が発生するのが基本です。
ただし、等価交換方式の場合、「買換え特例」や「交換特例」を利用することで、譲渡所得税等の課税を繰り延べられる場合があります。
詳しくは税理士などの専門家へ確認するようにしましょう。
Step5.建物の設計、建築の開始
建物の設計、建築の段階に移ります。
賃貸マンションやオフィスビルのような大規模な建物の場合、工期も長期に渡るので、余裕を持ったスケジュールを組むようにしましょう。
また、開発会社任せにならないように、オーナー自身もできるだけ工事の進捗を聞いたり、現場へ足を運んだりする意識が大切です。
Step6.所有権の譲受
最後に所有権の譲受のため、所有権移転登記を申請します。
所有権移転登記は法務局に提出する登記申請書や添付書類などで行われるので、必要書類を事前に確認しておきましょう。
法務局が所有権移転登記の審査を行い、問題がなければ登記簿に変更が記録され、手続き完了となります。
>>関連記事:「不動産投資で融資を活用する流れや必要な書類は?」
4.等価交換を検討したいケース
等価交換を検討することが多い、3つのケースについて紹介します。
4-1.金融機関からの借り入れをせずに建物を建てたい
建設に必要な資金を十分に確保できないときに等価交換は有効な手段になります。
土地を提供する代わりに建築費などは開発会社が負担するためです。
また、ローン返済リスクを抱えることなく土地活用が始められます。
まとまった資金がない方や、ローンの返済リスクを抱えたくない方には、検討できる方法といえるでしょう。
4-2.土地の権利を手放してもよいと考えている
等価交換を行うと土地の権利は開発会社に移るため、土地を管理する手間がなくなります。
土地の権利がなくなっても、自身が所有者であることにこだわりがなければ、むしろメリットになるでしょう。
特に土地を管理する時間がないなど、不動産管理にかける時間の乏しいオーナーにとってはおすすめの方法といえます。
4-3.広い土地を所有している
等価交換は土地の所有者と開発会社の利益が一致して実現するものです。
好立地で面積の広い土地は、開発会社からも歓迎されやすい傾向があります。
最低でも100坪以上の土地であることが一つの目安になります。
もし面積が広く、なおかつ好立地でありながら、有効活用できていない土地を所有している場合は、等価交換を検討することをおすすめします。
5.等価交換によって賃貸経営を始める場合
多くの場合、賃貸経営を始めるときにローンを組んで建設費を調達するのが一般的です。
その際、家賃の下落や金利変動などによって収支のバランスが崩れて収益が悪化することは、賃貸経営における大きな不安点とされています。
一方で、等価交換によってアパート・マンションを建てる場合には、建設費の負担がないため、多額の借り入れを行う必要がなく、返済できなくなるリスクも軽減されます。これは等価交換によって賃貸経営を始めることの最大の魅力とも言えるでしょう。
しかし、等価交換はあくまでも開発業者が建築費用を提供することで賃貸経営を始めることができる方法です。ローリスクローリターンになるということをきちんと理解しておく必要があるでしょう。
6.不動産における等価交換は仕組みの理解が大切
等価交換は資金を必要とせずに土地の有効活用を図ることができる、魅力的な方策です。
しかし、どの土地でも実現可能なものではなく、事業として採算性が合わない場合は等価交換を利用することができません。土地の活用方法はたくさんありますので、その方法の一つと考え、自分の思いにあった上手な土地の活用方法を探してみると良いでしょう。
また、等価交換だけでなく、賃貸経営にはその土地や周辺環境に見合う需要と供給のバランスに合わせた建物を建てる必要があります。開発業者や建築業者のアドバイスや提案にきちんと耳を傾け、将来も安心して運営できる賃貸住宅をしっかりと建てることが大切なポイントです。
■監修者プロフィール
宅地建物取引士/FP2級
伊野 文明
宅地建物取引士・FP2級の知識を活かし、不動産専門ライターとして活動。賃貸経営・土地活用に関する記事執筆・監修を多数手掛けている。ビル管理会社で長期の勤務経験があるため、建物の設備・清掃に関する知識も豊富。
【保有資格】
・宅地建物取引士
・FP2級
・建築物環境衛生管理技術者
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