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アパート一棟買いでよくある失敗は?経営に成功するコツ

公開日: 2024.09.09

最終更新日: 2024.09.12

土地活用の中でも、アパート一棟経営はメリットが多い選択肢です。部屋を複数所有するので空室リスクが分散でき、多くの入居者から賃料が得られます。
また、区分所有マンションの一室を購入する場合と異なり、建物の修繕の内容や時期をオーナー自ら決めることができますし、税金対策としてもおすすめです。住宅用地であることから「小規模宅地の特例」による固定資産税減税や、相続税・贈与税の節税効果を受けることができます。

しかしほかの不動産投資や賃貸経営と同じく、失敗しない可能性がないとは言い切れません。
それでも経営を始める前に過去の失敗例を把握しておけば、そこから回避策を練ることができます。

この記事では投資用マンション経営やアパート経営などの賃貸住宅経営を検討されている方に向けて、アパート一棟経営で発生しやすい失敗を、経営に成功するコツとともに紹介します。

目次

1. アパート一棟買いの経営で起きがちな失敗

1-1.エリア選定を誤った

1-2.管理体制に不備があった

1-3.資金計画の見通しが甘かった

1-4.税金対策のためだけに購入した

2. 失敗しやすいアパートの一棟買いの特徴

2-1.必要な準備や知識が足りていない

2-2.メンテナンスと修繕に備えていない

2-3.長期的な運用シミュレーションができていない

3. アパート一棟買いで失敗しないコツ

3-1.賃貸需要の調査を行う

3-2.アパートの管理を賃貸管理会社に委託する

3-3.資金計画は余裕を持って立てる

3-4.税金対策ではなく収益化を第一の目的にする

3-5.信頼できる不動産会社の力を借りる

4. アパート一棟買いの失敗は回避できる

1.アパート一棟買いの経営で起きがちな失敗


アパート一棟買い経営で損失が出てしまうパターンはいくつかのパターンに分類できます。
回避策を考える上で、まずそれらの失敗事例を見ていきましょう。

1-1.エリア選定を誤った

賃貸経営は立地が重要です。
入居者が見込みづらい地域で賃貸アパート経営を行うと、入居者が集まらず収益が上がらないということが起きかねません。

現在が良くても、人口の減少が進んでいる地域であれば、空室率がだんだん増えていくことが予測できます。
将来の周辺環境も考慮した場所選びが重要です。

1-2.管理体制に不備があった

アパートには、管理業務が欠かせません。
具体的には、共用部の清掃・点検などのメンテナンスや、設備の修繕、住民から家賃徴収、入居者のトラブル対応、退去者の対応などが挙げられます。

いずれも手間がかかるため、すべてオーナーがやろうとすると対応しきれずに入居者の満足度が低下する可能性があります。
結果、入居者にとって住みづらい物件となり月々の収益の悪化につながるでしょう。

1-3.資金計画の見通しが甘かった

収支シミュレーションは不動産投資において物件選びの判断軸ともなる重要な要素です。
相場を把握した上で適切な家賃を計算し、収益物件ごとに比較検討します。

また、その際は初期費用(購入費用)やランニングコストを細かく算出し、精度の高い長期的な経営計画を立てることが必須です。

収支計画が甘いと、以下のような失敗が引き起こされます。

・想定していた賃料が周辺の家賃相場から離れており、賃料設定を下げることになり、賃料収入を十分に得ることができなかった。

・ローン返済額やランニングコストが賃料収入を上回り、利益がなくなり赤字経営となってしまった。

・常に部屋が満室になっていることを前提に利回りを計算していたため、空室が発生したことで見込んでいた収支が出なくなった。    

・想定外の突発的な経費を想定に入れていなかった。

 

1-4.税金対策のためだけに購入した

アパートやマンション投資は、節税効果が高いことがメリットです。

不動産投資では、初期投資で資産として計上した建物や設備を、法定耐用年数に従い減価償却していきます。

この際、「減価償却費」として費用計上することになるため、その分だけ所得を圧縮することが可能です。
減価償却費は投資時にキャッシュアウトした額を徐々に経費として計上していくものであるため、2年目以降は手元の現金を減らさずに赤字を作ることができます。

 

所得税の計算においては不動産所得で出た赤字をその他の所得から差し引くことができます(損益通算)。
例えば本業の給与所得が1,000万円の黒字、不動産所得が200万円の赤字であれば、合計所得は800万円とすることが可能です。

このように、減価償却を活用して手元の現金を残しながら所得の圧縮をすることができるのは大きな魅力です。

しかし、このような節税対策に目を奪われて投資物件を選ぶと、収益力の下落した物件も選んでしまう恐れがあります。
検討時の一つの要素として捉えておく程度が大切です。

2.失敗しやすいアパートの一棟買いの特徴

見出し1ではアパート経営で起きがちな失敗を取り上げました。
これらの失敗の原因には、いくつか共通点があります。

ここからは、アパート一棟買いをして失敗しやすい状況について解説します。

2-1.必要な準備や知識が足りていない

アパート経営は事業計画や税金、経営の過程で起こり得るリスクなどの知識が求められます。
不動産投資では、経営に関わる意思決定はオーナーが行います。

土地の購入からローンを借りる金融機関の選定、建物建築業者の選定、入居募集の不動産仲介会社の選定、入居審査、修繕の実施判断など、こういった意思決定をする上で、知識が足りていないと、誤った判断を行い、トラブルや赤字が出てしまう恐れがあります。

すべてを正確に理解する必要はないですが、万が一何かあった際に専門家に相談できる程度の資産運用に関する知識を得るための情報収集はしておいた方が良いでしょう。

>>関連記事:アパート経営を始めたいときはどこに相談する?主な相談先について

2-2.メンテナンスと修繕に備えていない

地震や台風などの災害リスクや、入居者による共用部の破損など、アパート経営に突発的な修繕はつきものです。
突発的な設備故障が発生したときに修繕ができないと、物件の安全性のリスクが高まり、入居者が不安を感じて退去することも起こり得ます。

対策として、資金に余裕を持たせ、修繕積立金を作っておくことで突発的な支出にも対応できます。

また日常のメンテナンスや適切な修繕に備えるという意味では、経験豊富な管理会社に委託することも対策の1つです。

しっかりと物件の管理を行っていれば入居者の退去につながるような建物、設備の不備は防ぐことができます。
加えて入居者の窓口となり、要望に応えるサービス(24時間のサポートセンターなど)などがあれば入居者の満足度は高まり、空室へのリスクを減らすことにつながります。

災害に対しては、地震保険・火災保険などに加入することが対処法として挙げられます。

2-3.長期的な運用シミュレーションができていない

アパート経営は長い目で先を見据えながら行うものです。

不動産投資ローンの金利上昇リスクや経年劣化による家賃下落リスクなど、さまざまな変化を予測した運用シミュレーションがないと、予想外の赤字転落などの 事態に陥ってしまいます。

物件選びの際、よく収益性の判断に利用されるのが「表面利回り」です。
これは年間家賃収入を物件価格で割ったもので、パーセンテージの形で表します。ただし表面利回りにはかかる費用が考慮されていないため、管理や運営に関して考慮せず、これが高利回りだからという理由だけで物件を選んでしまうのは危険です。

対策としては、諸経費を考慮した「実質利回り」判断することが挙げられます。
これは実際の諸経費を差し引いた金額で利回りを計算するもので
、購入後の安定した経営ができるかを確かめることができます。    

 

実質利回り(%)=(年間家賃収入-年間諸経費)÷(物件購入価格+購入時諸経費)

 

運用シミュレーションの作成が困難に感じるときは、土地活用のプロである不動産会社に依頼するのもおすすめです。

3.アパート一棟買いで失敗しないコツ


最後に、失敗の原因を踏まえ、アパート一棟買いで失敗しないコツを説明します。

3-1.賃貸需要の調査を行う

「必要な準備や知識が足りていない」という失敗に対しては、購入前に賃貸需要の調査を行うことで対策できます。

不動産は売買にそれなりのコストがかかることから、一つの物件を長期的に運用するのが一般的です。

アパートが位置するエリアの賃貸需要を調べて、入居者が集まりそうかどうかを見極める市場調査を通して行いましょう。ターゲットとする地域の人口や世帯数の動向、景気の良し悪し、近隣の施設や交通機関、賃貸需要の傾向などを調べます。

不動産仲介会社であれば普段からその地域のことを分かっているため、ヒアリングするのが良いでしょう。

なお、購入後や中古物件であっても、部屋内をリノベーションすることで資産価値を上昇させることもできます。
建築会社にも提案してもらって、ノウハウを得ましょう。

3-2.アパートの管理を賃貸管理会社に委託する

「メンテナンスと修繕に備えていない」という失敗に対しては、アパートの管理を賃貸管理会社に委託することで対策できます。
委託する業務としては、入居者の募集や原状回復工事の手配、入居者からの賃料振込の確認などの一連の管理業務が挙げられます。

これらの業務にかかる手間を省け、アパートに付きっきりでいる必要がなくなります。また、多くの知識と経験を持つ管理会社が管理を担当するので、トラブル発生時にも安心して任せられます。

アパートの管理については、以下のコラムで詳しく説明しています。

 

>>関連記事:アパートの管理ではどのようなことをするの?委託方式の違い

3-3.資金計画は余裕を持って立てる

「長期的な運用シミュレーションができていない」の失敗については、余裕を持った資金計画を立てることで対策できます。
今回ご説明した通り、リスクに直面した際、冷静に対処できるようになるためには事前の資金計画が大切です。

例えば、入居者が集まらない時期が続く空室リスクに対しては、賃料が多少減ってもローン返済に影響しないように少しずつ積み立てをしておくことが対策となります。

また、建物は老朽化するため、十数年に一度のタイミングで、屋根・外壁塗装を中心とした大規模修繕費用が必要です。
管理コストを含め、こういった大きな支出も見込んでおきましょう。

3-4.税金対策ではなく収益化を第一の目的にする

前述した通り、アパート経営は所得税の計算などの場面で高い節税効果を発揮することがあります。

しかし、アパート経営はあくまで利益を生み出すために行う事業です。税金対策を最優先し赤字を作ろうとして経費を計上しすぎた結果、利益が出ないのでは本末転倒です。アパート経営でもしっかり収益化できるよう、収益を拡大し、支出を縮小する取り組みは必ず行いましょう。

3-5.信頼できる不動産会社の力を借りる

不動産投資は、信頼できる会社の力を借りることで安定した運営を行うことができます。

前述した管理業務については、専門の管理会社に委託すれば賃貸経営の経験やノウハウが豊富な担当者のサポートを受けることができ、オーナーが管理する手間を省くことが可能です。

事業計画の作成から融資の相談だけでなく、定期的な巡回や、入退去時の契約締結手続き、空室対策の提案なども行ってくれます。

4.アパート一棟買いの失敗は回避できる


今回は、アパート一棟買いの失敗について説明しました。

アパート一棟買いはオーナー自らが物件全体のプランや、修繕内容や時期を決めることができることから、自由度の高い投資方法です。

しかし、戸数が多く管理の手間がかかることから、不動産会社の助けを借りながら運営することをおすすめします。

アパート経営にかかる失敗の多くは、プロのアドバイスを借りること、知識を得てリスク対策を行っておくことで対策できます。安定したアパート経営を目指しましょう。

■監修者プロフィール

有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一

関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。

【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者