アパート経営に対するイメージはどのようなものがある?
公開日: 2024.07.23
最終更新日: 2024.07.24
アパート・マンション経営をはじめとする不動産投資は、毎月安定した収入が得られる、インフレの影響を受けづらい、税金対策ができるなど、いくつかの大きなメリットがある投資方法です。
良いイメージのある賃貸経営ではありますが、リスクが全くないわけではありません。
リスクへの印象が強く伝わっていることが理由で、特にアパート経営のような不動産投資に対してネガティブなイメージを持っている人が一定数います。
では、こうしたイメージと実際の経営にはどれくらいのギャップがあるのでしょうか。
今回は、オーナーが知っておきたい不動産投資におけるリスクの基礎知識を中心に説明します。
後半では、不動産投資に向いている人の特徴や、ありうるさまざまな失敗例、落とし穴の回避策を説明します。
最後までぜひチェックしてください。
目次
1.アパート経営に対して持たれがちなイメージは?
資産形成や相続対策として選ばれがちなアパート経営ですが、一方でネガティブなイメージを持っている人もいます。
まずはアパート経営が持たれがちなイメージと、実際はどうなっているのかを併せて解説します。
1-1.経営を始めるのに多額の初期費用が必要?
不動産投資は多額のお金が必要なイメージがあります。
確かに物件価格は数千万円にも及ぶこともあり、初期投資額の高さはアパート経営が敬遠される一因です。
しかし、賃貸経営は株式投資や投資信託など他の資産形成方法と異なり、銀行などの金融機関から融資を受けられるため、自己資金が少なくても始めることが可能です。
手元の資金が少なくても、借入金額を活用して大きな投資をすることで、手元資金の収益性を高めることができます。また、状況によっては自己資金なしのフルローンを組むことも可能です。このように、小さい手元資金で大きなリターンを得ることを、てこの原理になぞらえて「レバレッジ効果」と呼びます。
1-2.入居者の維持が大変?
アパート経営の収入源は入居者の家賃です。
安定して収入を得るには、入居者を多く集めることが求められます。入居者募集の実務は仲介会社が行うため、オーナーの手間はほぼありません。
しかし、物件に合ったターゲットを選定し、ターゲットが求める設計(戸数や間取り、設備)を用意するためには、オーナーが意思決定し、投資する必要があります。適切な意思決定を行うことができるノウハウはもっておかなければなりません。
1-3.専門的な知識が必要?
アパート経営には、専門的な知識が求められることがあります。
法務的な知識が求められる場面として、各種契約締結が挙げられます。
不動産の売買契約、賃貸借契約、不動産管理会社との管理委託契約、サブリース業者とのサブリース契約など、契約を締結する場面は多いです。こういった場合に、自身に不利な条文がないか確認する必要があります。
また、収益シミュレーションを立てる際には、さまざまなコストや税金の知識なども必要になるでしょう。
関連する内容の多さから、アパート経営に対するハードルの高さを感じる人もいます。
昨今ではインターネットでこういった知識を得ることが容易になりましたが専門資格が必要な部分もありますので、不動産会社の助けを借りながら対処しましょう。
1-4.経営を続けるのに手間がかかる?
不動産投資は全くの不労所得という訳ではありません。
共用部の清掃・点検、家賃回収、入居者からの連絡への対応などの管理業務を行う必要があります。
しかし、こういった業務は、管理会社に委託することができます。管理費用は賃貸物件から得られる家賃収入の5%程度が相場です。
不動産業者に管理を委託すれば、仮にアパートや入居者のトラブルが発生しても、委託先が対応してくれます。
オーナーが時間や手間を取られることほとんどありません。
これまで説明したような理由からアパート経営を投資の選択肢から外す人もいますが、これらの多くは自身が知識を付けること、もしくは専門知識を有するプロ力を借りることで解決もしくはリスクを最小限に抑えることが可能です。
相談先の例としては、投資物件に関する全般的な相談はハウスメーカーや不動産仲介会社、不動産管理会社の営業マン、税金対策のことなら税理士などの専門家がよいでしょう。また昨今では、SNSを通じて他の大家さんからも情報収集できるようになりました。
主な相談先については以下の記事でも説明しています。
>>関連記事:アパート経営を始めたいときはどこに相談する?主な相談先について
2.アパート経営に向いている人の特徴
見出し1では、アパート経営に対するイメージを解説しました。
確かに難しそうなイメージがある投資方法の1つですが、それぞれ明確な解決策があることを理解いただけかなと思います。
ここからは、そんなアパート経営に向いている人の特徴を解説します。いくつか特徴を挙げますので、自分が合致するものがあるかどうか、ぜひ確かめてみてください。
2-1.資産形成をしたい人
近年は銀行からの利子も多くないことから、投資を考える人も一定数います。
見出し1で解説した通り、融資が活用できるアパート経営の特徴はレバレッジ効果が効かせられる点です。
つまり、現金をそのまま所有しているより多くの利益を得られる可能性があります。
さらに、増やした資産を新たな物件の購入費用に充てたり、別の投資方法への資金に回したりすることもできるので、さらに速いスピードで資産を増やすことも可能です。
2-2.相続対策をしたい人
資産を相続する際、財産に対して相続税が課されます。
しかし現金を相続するのと土地や建物のなどの不動産を相続するのでは、不動産のほうがかかる税金が低くなります。
これは、現金と比べて不動産が時価よりも相続税評価額が低くなることが理由です。
また、同じ不動産でも賃貸として第三者に貸し出している建物はさらに評価が下がるため、課せられる税金が押さえられます。
>>関連記事:賃貸アパートが相続対策になる理由は?実際の数字でシミュレーション
2-3.自分の考えを伝えられる人
アパート経営は、不動産会社や建築会社などさまざまな人たちとの協力する場面があります。
成功率を高めるためには、資産運用や賃貸住宅等に関する知識を勉強し、自分の意図を的確に伝える能力があるとよいでしょう。
地域のニーズや賃料相場などの情報は、詳しい担当者に聞くことでリサーチできます。
彼らのアドバイスを受け、投資の判断や出口戦略について意思決定しましょう。
2-4.長期的な視野を持てる人
アパート経営は長期的なプランを組んで行う投資方法です。
いくつかの資産運用と比べると、賃貸経営は結果が出るまでに時間がかかる特徴があります。
経営が成功するまでに一定の期間がかかるものの、毎月安定した利益が得られます。
目先の資金変動にとらわれず、長い目で経営を考えられる人が向いていると言えるでしょう。
2-5.入居者の立場に立てる人
入居者の立場に立ってアパート経営ができることも重要です。入居者に長い期間住んでもらうためには、入居者が住みやすい環境に整える必要があります。そのためには、常に入居者の立場に立ち、物件の状態を適正に保っていくことが必要です。清掃・点検・修繕などの管理業務は委託する場合が多いため、物件の魅力が下がらないよう、管理会社の仕事ぶりをチェックするようにしましょう。
2-6.リスク管理能力が高い人
詳しくは次の見出しで解説しますが、アパート経営には様々なリスクがあります。
こういったアパート経営に存在するリスクは、ほとんどは事前に対策ができるものです。リスクの存在を正しく理解して、前もって準備ができる人は向いていると言えるでしょう。
3.アパート経営に潜むリスクと対策
アパート経営の理解度が深まってきたところで、次はアパート経営に潜むリスクについて見ていきます。
アパート経営に対するマイナスなイメージを持っている人が気になっているのが、経営上のリスクなのではないでしょうか。
確かにアパート経営にはいくつかのリスクがありますが、それぞれ明確な対処法があるのも特徴です。
3-1.空室リスク
物件の入居者が見つからず、賃貸収入が満室時より下がってしまうリスクです。
入居率が下がった状態が続くと、支出が収入を上回り経営にも影響する可能性があります。
主な対策として、新築アパートならば周辺環境のニーズをとらえた賃貸住宅を建設することが挙げられます。
入居希望者のニーズが押さえられている物件であれば空室リスクは抑えやすく、住民が退去しても次の入居者がすぐに決まりやすいためです。
また、入居者を斡旋(あっせん)する不動産会社との関係性も大切です。
アドバイスを貰い、競合物件の特徴や所有物件の強み・弱みを把握しましょう。近頃であれば、宅配ロッカーなど付加価値が高い設備を導入するのも有効です。入居率が上がる施策を判断し実施していきましょう。
3-2.家賃滞納リスク
何らかの理由で入居者からの家賃支払いが滞るリスクです。
本来得られるはずの収入が得られなくなってしまうだけでなく、場合によっては立ち退きなどの交渉がうまくいかず長期間物件を活用できなくなる場合があります。
主な対策は2つです。
まずは、入居時に家賃支払能力があるかきちんと審査を行い、支払能力を確認することが挙げられます。
もう1つは、家賃保証会社との保証契約を入居の条件にしておくことが挙げられます。
そうしておけば、万が一滞納が発生しても、家賃保証会社が家賃の立て替え払いを行ってくれます。入居者への督促も保証会社が代わりに行ってくれるため、手間がかかりません。
3-3.賃料下落リスク
アパートの家賃は、築年数の経過に伴い低下していく傾向にあります。
これは建物が古くなると、最新の設備を備えた新築物件と比較され、同じ賃料で入居者が集まらなくなることが要因です。
賃料下落のリスクは空室リスクと関係性が強いです。
したがって空室リスクを対策すれば賃料の下落リスクに備えることができます。
ほかには、入居者のニーズをとらえたリフォームを行うことも対策として挙げられます。
昨今では、築古でも室内をリノベーションすることによって、新築物件にはない魅力を引き出すことに成功した物件も多々あります。費用対効果を考えながら、そういった事例を参考にしてみるとよいでしょう。
3-4.建物修繕リスク
アパートは経年劣化や自然災害によって老朽化が進行します。老朽化が進むと入居者から見て魅力を感じづらい物件になるので、定期的な修繕を行います。アパートはオーナー側で修繕を行う必要があることから、想定外の設備投資費用が発生する可能性があります。
主な対策は、事前に正確な収支予測を作成しておくことです。不動産会社などにアドバイスをもらいながら、ランニングコストを細かく整理し、どのタイミングでどれだけのお金が必要になるかを把握しましょう。
だいたい10年目を超えると、屋根や外壁塗装が劣化し雨水を防ぐ効果が弱くなります。このタイミングで大規模修繕が実施できるよう、事前にお金をためておきましょう。
3-5.金利上昇リスク
月々のローン返済額はランニングコストの中でも多くの割合を占めます。変動のローン金利を選択していた場合、社会情勢の変化に従い、金利上昇で負担が大きくなるリスクがあります。
主な対策は、あらかじめ固定金利(全期間固定型)のローンを選択することです。そうすれば、金利の上昇があっても影響を受けずに済みます。ただし、一般的に固定金利のローンは変動金利より利率が高いため、利率を優先するのであれば変動金利を選択するのもよいでしょう。この場合は、金利上昇が起こった際にも対処できるよう、手元資金に余裕をもちましょう。
4.リスク対策で失敗しないアパート経営を
今回は、アパート経営に対して持たれがちなイメージと、実際はどうなっているのかを中心に解説しました。
アパート経営にも、他の投資手法と同じように固有のリスクが存在します。
しかし、きちんとした知識があれば、回避または最小化することができます。アパート経営には不動産会社などサポートしてくれる存在を見つけやすいため、彼らとともに検討を進めましょう。
■監修者プロフィール
有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。
【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者
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