【オーナー向け】アパート経営の家賃保証とはどのような制度か?
公開日: 2023.08.18
最終更新日: 2024.06.04
アパートやマンション経営を営む不動産経営者にとって、借主の家賃滞納への対策は検討しておかなければならない重要な問題です。
家賃滞納リスクに備える一つの手法として、家賃保証会社のサービスを利用することが挙げられます。家賃保証は賃借人による支払いの滞納が発生した際、保証会社が代わりにオーナーに対して家賃を立て替え払いするサービスです。
そこで今回は、土地活用を検討するオーナー様が知識として持っておきたい家賃保証について解説します。
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1.アパート経営における家賃保証とは
入居者に対して家賃保証会社との保証契約締結を条件とすることで、オーナーは家賃滞納時でも確実に家賃を得ることが可能です。
まずは、家賃保証のサービスの概要を説明します。
1-1.保証会社が入居者の家賃を立て替えてくれるサービス
家賃保証とは、保証会社が入居者の連帯保証人のような役割を担い、滞納時に大家に対して賃料を立て替え払いするサービスです。
かつて、借地借家の賃貸借契約を締結する際、入居者は親などの親族を連帯保証人にするのが一般的でした。
しかし、家族関係の価値観の変化によって親族に保証人を頼まないケースが増えており、こういった背景から、家賃滞納のリスクを請け負うサービスが発展しました。
家賃保証会社への加入は、大家が入居者への入居の条件として設定することが一般的です。
入居者は保証会社に審査の申し込みを行い、その審査に通った場合、保証会社との間で賃貸借保証委託契約を締結します。
家賃保証にかかる保証料は、入居者がそのコストを負担します。
保証料の相場はプランにより異なるものの、家賃の0.5~1か月分の初回保証料、のち1年ごとに1万円程度の更新手数料が発生するのが一般的です。
賃貸住宅の募集ウェブサイトでは、物件概要の欄に家賃などと合わせて「保証会社利用必要・初回家賃保証料総賃料等の50%・更新時10,000円/年」のような記載があるので、確認してみるとよいでしょう。
入居者にとっては保証料の負担があるものの、親族等を連帯保証人に設定しなくてよいメリットがあります。
このことから、家賃保証の仕組みがあれば入居者が賃貸物件を利用しやすくなると言えます。
1-2.家賃保証で回避できるリスク
家賃保証会社との契約を入居条件とすることで、大家(オーナー)は家賃の滞納リスクを回避することができます。
オーナーにとって、家賃は賃貸経営の収入源です。家賃保証があれば、滞納の影響を抑え安定した賃貸経営が可能になります。
また、滞納時の入居者との交渉も保証会社が実施してくれるため、トラブル対応の手間を省くことができます。
ただし、家賃保証の対象となるのは契約を締結した対象の入居者の家賃や共益費等の不払いです。
賃借人からの家賃減額の請求や交渉に対応してくれるわけではありません。
また、空室になっている部屋の家賃は得られないため、物件の空室対策は別途必要となることを注意点として覚えておきましょう。
1-3.家賃保証の種類
家賃保証の仕組みは大きく分けて2種類あります。
・一般保証型
一般保証型は、家賃の滞納が発生した時、オーナーからの請求をもって保証会社が家賃を立て替え払いするものです。
一般保証型では、毎月の家賃の支払い(口座振替)は入居者とオーナー(もしくは家賃の収受代行を行う賃貸管理会社)との間で直接行われます。
滞納が発生した際、オーナーは家賃保証会社へ家賃の立て替え請求を行います。
保証会社はオーナーへ立て替え払いを行ったのち、入居者へその立替分の家賃を督促します。
・支払委託型
支払委託型は、毎月の家賃の収受代行から保証会社が行う方法です。
家賃の滞納の有無にかかわらず、保証会社が毎月の家賃を入居者から収受し、オーナーに支払います。
支払委託型では、保証会社からオーナーへ一括で家賃が振り込まれる特徴から、オーナーが家賃の振込確認を行う手間を最小限にすることができます。
滞納時の立て替え請求も必要なく、管理業務を効率化したいオーナーにおすすめです。
1-4.家賃保証の必要性が高まっている理由
家賃保証の必要性が高まっている理由として、2020年の民法改正で賃貸借契約の連帯保証人制度が変更されたことが挙げられます。
この法律改正により、個人が保証人となる場合は、保証する極度額(上限の額)を「○○円」と明確に書面で明記することが義務化されました。
その極度額の設定がない場合、その保証契約は無効となります。
こういった民法改正や、前述した家族関係の価値観の変化から、建物の賃貸借において保証人を設定するというケースが少なくなっています。
2.アパート経営の家賃保証とサブリースは何が違う?
家賃保証という言葉は、サブリース方式で賃貸住宅を運営する際にも用いられます。
ともに安心して家賃収入が得られる仕組みであることから混合されやすいですが、家賃保証会社とサブリース業者ではその意味する内容が異なります。
ここではそれぞれの違いについて説明します。
2-1.契約を結ぶ相手が異なる
サブリースはオーナーとサブリース会社の間で賃貸借契約(マスターリース)を結び、契約で定められた期間、サブリース会社がアパートを一括借り上げするというものです。
サブリース会社は借り上げたアパートの1室1室を入居者へ転貸し、家賃を得ます。
オーナーとサブリース会社の間のサブリース賃料は入居者から得られる家賃のおよそ80~90%程で設定され、差し引いた10~20%が不動産会社の取り分となります。
サブリースのメリットは、オーナーが入居者ごとに募集や契約締結、苦情対応などの管理業務を行わなくてよく、契約相手のサブリース会社に全て任せることができる点です。
一方、不動産会社の取り分だけオーナーの利益が減額してしまうほか、入居者への賃料設定をサブリース会社が行うことからオーナーが収益をコントロールしづらい傾向にあります。
一方、家賃保証では、建物の賃貸借契約はオーナーと入居者で直接契約します。保証会社は、入居者との間で貸借保証委託契約、オーナーとの間で賃貸借保証契約を締結し、滞納発生時の家賃保証のみを行います。
2-2.それぞれの指している内容が異なる
サブリースで用いられる「家賃保証」という言葉は、空室のリスクを保証するという意味です。
サブリースでは、サブリース会社が転貸する際に入居者がいなくても、オーナーに賃料を支払うという取り決めを指します。
一般的なサブリース契約では、2~4年に一度契約内容の更新があります。契約更新まで、空室が発生しても設定した賃料をオーナーへ支払うというのがサブリースにおける「家賃保証」です。
一方、家賃保証会社の「家賃保証」は、保証契約を締結した入居者が家賃滞納した際に代わりに支払うということを表わします。
|
家賃保証 |
サブリース |
契約を結ぶ相手 |
保証会社 (賃貸借保証契約) ※建物賃貸借契約は入居者とオーナーが直接契約 |
サブリース会社 (建物賃貸借契約) ※サブリース会社から入居者へ建物が転貸される |
契約を結んだ相手がやってくれること |
家賃の立て替え |
アパートの転貸及び管理業務 |
アパートの運営・管理 |
オーナーの自主管理 もしくは 不動産管理会社へ管理委託 |
サブリース会社が行う |
入居者が支払う 家賃 |
オーナーが決める |
サブリース会社が決める ※別途、サブリース会社とオーナーの間の家賃が設定されます。 |
サブリースに関する詳細な説明については、以下のコラムで詳しく説明しています。
>>関連記事:不動産投資でサブリース契約を活用するメリット・デメリットは?
3.アパートのオーナーが家賃保証の契約を結ぶにあたって確認したいこと
家賃保証会社と保証契約を締結する上で、契約内容をよく確認しないとトラブルにつながる可能性があります。
ここでは、家賃保証契約で確認すべきポイントを紹介します。
3-1.契約を結ぶ会社の評判や財務基盤
まず確認したいのが、安心して業務を任せられる会社かどうかです。
保証会社が倒産すると、保証契約が消滅し家賃保証が受けられなくなります。
可能な範囲で、その会社の決算書や口コミを確認するようにしましょう。
特に支払委託型で行う場合には、賃借人からの賃料を保証会社が管理することになりますので、倒産リスクに注意しなければなりません。
3-2.解約に関する規定
次に確認しておきたいのが、契約書の解約に関する規定です。
原則、家賃保証契約の解約は入居者からできないようになっており、貸主が保証会社に申し入れる必要があります。
家賃保証はオーナー側の費用負担がなく滞納リスクを下げられるものであるため、オーナー側から進んで保証を解約するというのはあまりありません。
しかし、入居者からの希望で、連帯保証人を新たに設定する代わりに家賃保証契約を解約するというケースはありえます。
そういった場合にどのような手続きが必要なのか、違約金の有無は確認しておくようにしましょう。
3-3.保証してくれる内容の範囲
契約を結ぶ会社によって保証対象は変わります。
保証範囲は広ければ広いほどよいため、その内容を確認しておきましょう。
家賃以外にも更新料や共益費、入居者が早期に退去した際の違約金なども保証に含まれる場合があります。
保証会社にその範囲を確認するようにしましょう。
4.家賃保証を活用してアパート経営のリスクを下げよう
今回は、アパート経営で活用できる家賃保証について説明しました。
家賃保証は、オーナーが入居時の条件として設定することができます。
保証会社への保証料は入居者が支払うため、オーナーとしてはコストなく家賃滞納のリスクを抑えることができます。
ただし、入居者からすると、物件を借りる上のコストが増えることとなります。
競争力を失わないよう、家賃・敷金・礼金などその他の要素とともに条件設定を検討するのがよいでしょう。
■監修者プロフィール
弁護士
南陽輔
大阪大学法学部、関西大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2021年3月に独立開業し、契約書チェックや起業前のリーガルリスクチェックなどの予防法務を中心に業務を行っている。
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