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相続で遺産の一部を放棄できる?放棄したい時の対処法と生前対策

公開日: 2022.12.14

最終更新日: 2022.12.14

相続手続きにおいて悩みとなるのが、故人(被相続人)が借金や売れない不動産などのマイナスの遺産を持っていた場合です。相続したくない財産がある場合、一部放棄することは可能なのでしょうか。また、そのメリット・デメリットはどういったものがあるのでしょうか。本記事では、そのような不安を解決するための相続の一部放棄について詳しく説明します。

 

1.相続の一部を放棄することは可能?

財産の相続方法には単純承認・限定承認・相続放棄3つの種類があります。
相続した財産には管理責任を負わなければならないのですが、果たして相続財産の一部だけを相続放棄することは可能なのでしょうか?

 

原則として、一部の財産のみを相続放棄することはできません。

まず、相続の対象となる遺産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。

・プラスの財産の例:現金や預貯金、土地や家屋、金、家財など

・マイナスの財産の例:借入金、未払金、保証債務、連帯債務など

 

    

しかし、プラスの財産でも、買い手がつく見込みがほとんどなく利用や管理をしきれない田舎の農地や山林、倒壊リスクの高い建物といったように、プラスとは言いにくい財産もあります。

 

相続発生時、相続人は以下3つの選択肢から自ら選ぶ必要があります。

・単純承認:プラスの財産もマイナスの財産も全て相続すること

・限定承認:プラスの財産の範囲でマイナスの財産を相続すること

・相続放棄:相続における法律上の地位である相続権の一切を放棄し、
      プラスの財産もマイナスの財産も全てを一切相続しないこと

 

もし、相続放棄が一部の財産について認められてしまうとなると、お金を貸した債権者の権利が不当に害されてしまいます。こういったことから、マイナスの遺産だけを相続しないという選択はできません。

なお、相続放棄ができる期間(熟慮期間)は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3カ月とされています。この期限までに家庭裁判所に対し、申述書や申述者の戸籍謄本、被相続人の住民票などの必要書類を提出し、申し立てを受理される必要があります。

 

相続放棄の詳細や流れについては以下のコラムで説明しています。

 

2.相続の一部を放棄したい時の対処法

一部の財産だけを相続放棄することはできませんが、それ以外の方法で相続する財産を選ぶことは可能です。ここでは、その具体的な対応方法を3つご紹介します。

2-1.財産の一部を他の相続人に相続してもらう

相続人が複数人いる場合は、遺産分割協議で他の相続人の合意を得ることで、財産の一部を相続しないことができます。

遺産分割協議とは、法定相続人(民法で定められた被相続人の遺産を相続できる被相続人の配偶者や子、父母などのこと)の全員で財産の分割について協議することです。相続開始時、遺言書が見つかった場合は原則遺言書通りに相続人が取得する遺産が決定します。しかし、その内容と異なる遺産分割を行う場合や、遺言書がない場合には、遺産をどのように分割するのかを決定する遺産分割協議が必要となります。

 

遺産分割協議書には、遺産の一覧である財産目録と、その財産を誰がどのように相続するのかの協議内容が記載されます。

例えば、「自宅や家財は長男である自分、それ以外の預金は次男」など、遺産相続する対象を他の法定相続人と交渉することができます。

 

2-2.相続する債務の範囲を限定する

限定承認を選ぶことによって、相続する債務の弁済義務の一部を負わなくて済む場合があります。

限定承認とは、相続したプラスの財産の範囲でのみ、マイナスの財産の債務を負う相続方法のことです。遺産の内容が全部分かっておらず、プラスの財産とマイナス財産のどちらが多いのかを判断しづらい場合に利用されます。

例えば、借金の有無が定かではない状況で預貯金600万円を相続した場合、限定承認をしておけば、その後借金1,000万円が発覚したとしてもプラスの財産である600万円の範囲内でのみ弁済すれば良いということです。

 

2-3.相続の一部を他の相続人や第三者に譲渡する

債務の返済義務が残るという問題点があるものの、自らの相続分を第三者へ譲渡することも選択肢として挙げられます。


相続分の譲渡とは、自らの法定相続分を第三者へ譲り渡すことです。譲り渡す相手は法定相続人以外の誰でも良いため、相続で発生する問題から抜けたいと考えている人の相続放棄に代わる選択肢と言えます。

 

ただし、この方法には2つ留意点があります。
1つ目は、相続分の譲渡を行っても、それはあくまで自分と譲り受けた人との間の話であることから、借金の相続債権者から支払い請求を受けた場合は同様に返済せざるを得ないということです。

 

2つ目は、相続分の譲渡という行為に対して、贈与税や所得税などの税金が発生する点です。無償で譲渡した場合は譲り受けた人に贈与税が課税され、有償の場合は自分に譲渡所得税が課税される場合があります。相続分の譲渡は、これらのことを慎重に検討した上で選択する必要があります。

3.相続の一部を放棄したい時の生前対策

相続対策において一番重要なのが、生前から家族間でよく話し合い、生前贈与や生命保険への加入などの対策を行っておくことです。
ここではおすすめの生前対策を2つご紹介します。

 

3-1.必要な財産のみ生前贈与を受けておく

一番有効なのは、必要な財産を生前贈与しておくということです。
生前贈与とは、所有者である被相続人が生きている間に財産を対価なく譲り渡すことを指します。所有者の意思で特定の個人に財産を譲れるため、相続時の遺産分割で争いを避けやすくすることができます。生前贈与によって相続放棄ができなくなることはないため、借金が多い場合は、先に生前贈与を済ませておいて相続放棄を行うというのも選択肢の1つです。

 

なお、一定額を超える生前贈与には贈与税が課税されます。贈与税の非課税枠は年間110万円で、一人の人が11日~1231日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円を超えた場合、残りの金額に対して申告と納税が必要です。また、贈与後3年以内に死亡した際にはその金額は相続税の課税対象となることから、こちらも注意しましょう。

 

生前贈与に関しての概要や、いくら税金がかかるのかは以下のコラムで説明しています。

 

また、土地を生前贈与する際の手続き(司法書士事務所へ依頼した名義変更登記など)については以下のコラムで説明しています。

3-2.生命保険で借金の返済に備える

法定相続人を受取人に指定した生命保険に加入するのも1つの選択肢です。

生命保険金は民法上相続財産ではなく、相続人固有の財産と見なされます。限定承認や相続放棄を行った場合でも、その枠外で受け取ることができることから、生前に現金の一部を用いて生命保険に加入するのは有効な相続対策です。

また、家族の生活保障の意味合いから、被相続人が保険料を支払い法定相続人が受取人に指定された生命保険金は、一定額が相続税非課税となります。
その非課税金額の計算方法は「500万円×法定相続人の人数」であることから、例えば法定相続人が兄弟姉と自己の計4人であれば、合計で2,000万円は非課税となります(ただし、相続放棄の場合は最初から相続人としていなかったことと見なされるため、この非課税枠を利用することができません)。

4.生前から入念な相続対策を行っておこう。

今回は、相続したくない財産があった場合の具体的な対応について説明しました。

相続はその後の家族関係や生活を左右する重要な問題です。生前に家族間でよく話し合い、家族間で財産の整理や、継承の仕方を検討することが何より大事です。またその際には、税理士や弁護士などノウハウを持った専門家に相談するのも良いでしょう。

大東建託では、生前贈与も含め、不動産を中心とした資産運用に関するご相談を無料で受け付けております。ぜひお気軽にご相談ください。

■監修者プロフィール

有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一

関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。

【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者