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土地や建物などの不動産で相続税対策ができる?土地活用の方法や注意点

公開日: 2025.09.27

最終更新日: 2025.09.29

土地や不動産を活用した相続税対策を検討している人の中には、「相続税の負担を少しでも軽くしたい」「どのような方法が税金対策に効果的なのか」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

不動産を活用して相続税対策をすると、現金で保有するよりも相続税評価額を下げられることがあります。加えて、土地活用をすれば賃料収入を得られるというメリットがあります。

この記事では、土地や建物を活用した相続税対策が有効な理由から具体的な仕組み、効果的な活用方法、実践する際の注意点までわかりやすく解説します。土地活用による相続税対策を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。

1. そもそも相続税対策とは何か


相続税は、親や配偶者が亡くなって財産を引き継ぐとき、相続した財産に課せられる税金です。
原則として「現金一括納付」であり、相続開始を知った日の翌日から10
カ月以内に現金で納税する必要があります。相続開始を知らない期間が長い場合には、申告期限が延びるケースもありますが、基本は相続開始を知った翌日から10ヶ月と押さえておきましょう。

相続税は累進課税という仕組みなので、相続する財産が大きいほど税率も高くなります。
そのため、引き継ぐ財産が多いときはかなりの負担になりかねません。相続財産の内容によっては、相続税を支払うために、ほかの財産を売却せざるを得ないケースがあります。

このような事態を防ぐために、生前から計画的に行う取り組みが相続税対策です。
具体的には、相続税を納税する資金の準備や、課税対象となる財産の評価額を圧縮する取り組みなどを指します。

2. 建物や土地で相続税対策ができる理由


建物や土地を使った相続税対策が注目される背景には、現金とは評価方法が異なり、相続税負担を軽減しやすい点があります。
また、特例制度の活用により相続税評価額をさらに下げることも可能です。

ここからは、建物や土地を活用した相続税対策の仕組みについて見ていきましょう。

2-1. 評価額の出し方が異なる

相続税の計算では、現金は額面通りで課税額が評価されます。
しかし、不動産は実際の取引価格よりも低い評価額で計算されます。不動産の評価は時価(実際の取引価格)ではなく、国税庁が定めた「財産評価基本通達」という統一ルールに基づいて計算されるからです。
計算ルールが統一されているのは、刻々と変化する時価によって相続のタイミングで課税が不公平にならないようにするのが目的となっています。

こうした仕組みがあるため、同じ価値の財産でも不動産で保有した方が相続税負担を抑えられる可能性があります。

なお建物と土地によって相続税評価額は異なり、それぞれの出し方は以下の通りです。

・建物の相続税評価額の出し方

建物の相続税評価額は、市町村が算定する固定資産税評価額がそのまま用いられます。固定資産税評価額は、取得価格の70%程度が目安とされており、実際の建築価格や市場価格よりも低い価額になります。

・土地の相続税評価額の出し方

土地の相続税評価額の計算方法は、地域によって「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。

特例名

対象

減額割合

適用要件

小規模宅地等の特例

自宅や事業で使用していた土地

50~80%

・配偶者が相続

・同居していた家族が相続 など

貸家建付地

賃貸物件(アパート・マンション等)の敷地

20

・第三者に建物を賃貸している状態

・土地の所有者が自由に使用できない状況



相続税路線価は市場価格の8割程度に設定されているケースが多いです。

【出典】:No.4602 土地家屋の評価(国税庁)

2-2. 評価額を下げられる特例制度が設けられている

一定の要件を満たした場合、相続税評価額が下がる特例制度が設けられています。
主な特例制度は、以下のとおりです。

評価方法

適用地域

計算方法

路線価方式

相続税路線価が定められている地域

相続税路線価 × 面積

倍率方式

相続税路線価が定められていない地域

土地の固定資産税評価額 × 倍率

※倍率は国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認



※上記のうち、貸家建付地の評価については、原則的な評価方法であり、税法上の特例ではありませんが、評価減を受けられるという意味で本記事では取り上げています。

【出典】:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(国税庁)

【出典】:No.4614 貸家建付地の評価(国税庁)

ちなみに、更地のままの所有は現金と比べれば相続税対策になりますが、効果は限定的です。

土地の価格は目的に応じて4種類に分けて評価されます。
実際に売買する土地価格である「実勢価格」、土地取引や不動産鑑定の基準価格となる国土交通省が公表する土地価格の「公示価格」、固定資産税や都市計画税などの計算の基準になる「固定資産税評価額」などがありますが、そのなかでも「相続税路線価」による評価は公示価格の約8割になるよう設定されているため、実際の価格より2割~3割ほどの評価減少が期待できます。

ただし、固定資産税の軽減措置を受けられないため、税負担は重くなる傾向にあります。
加えて、土地の上に住宅が建っている場合に適用される「住宅用地の特例」が使えないため、更地の固定資産税は最大で6倍にもなり、所有期間中の税負担は重くなる傾向にあります。

また、上記で紹介した小規模宅地等の特例や貸家建付地による評価減少も適用できません。土地を有効活用した場合と比べると節税効果は劣ると言えるでしょう。

更地についての理解を深めたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

>>関連記事:更地の定義とは?放置しておくデメリットや有効的な土地活用の例

3. 相続税対策の効果が期待できる主な土地活用の方法


土地を活用した相続税対策には複数の方法があります。
ここでは、節税効果が期待できる主要な土地活用方法について詳しく解説します。

3-1. マンション・アパート経営

土地活用の1つであるマンション・アパート経営は、所有する土地に賃貸物件を建設するか、購入した土地付きの賃貸物件に入居者を募集して家賃収入を得る方法です。
貸家建付地扱いになるため相続税評価額を下げられるうえ、入居者が増えるほど家賃収入が得られます。
そのほかのマンション・アパート経営のメリットとしては、アパートローンを活用できれば、自己資金を抑えて資産形成につなげられることなどが挙げられます。

一方、借り手つかず収入が減少してしまう「空室リスク」など、対策すべき項目も存在するため、専門家によるサポートを含めたしっかりとした事前の計画と準備が求められます。

>>関連記事 アパート経営完全ガイド|建築プラン立てから完成後の業務まで

3-2. 戸建て賃貸経営

戸建て賃貸経営は、一戸建て住宅を建築して賃貸に出す土地活用方法です。
アパートやマンションと同様に貸家建付地としての相続税評価額を下げられるため、有効な相続税対策になります。

戸建て賃貸の大きな特徴は、広い居住空間を重視するファミリー層をターゲットにできる点です。
テレワークの普及によって通勤の必要性が減り、都市圏から離れた戸建てを借りたいと考えるファミリー層も一定数います。

ファミリー層は一度入居すると長期間住み続けるケースが多く見られるため、一度入居者が決まったら安定して家賃収入を得られる可能性があります 。
ただし、退去後の入居者募集に苦戦する場合もあるので注意が必要です。また空室リスクの分散ができないところは注意です。

戸建て賃貸経営の詳細を知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

>>関連記事賃貸経営で戸建てを選ぶメリットとデメリットは?注目される理由

3-3. 賃貸併用住宅経営

賃貸併用住宅経営は、自宅部分と賃貸部分を併せ持った住宅を建築する土地活用方法です。

賃貸併用住宅の自宅部分については、小規模宅地等の特例で相続税評価を最大80%減額できます。
また、賃貸部分は貸家建付地として相続税評価を減らせます。相続税対策として高い効果が期待できるでしょう。

賃貸併用住宅のメリットは、自宅を確保しながら家賃収入も得られる点にあります。
また、賃貸部分の割合が一定以下であれば住宅ローンを利用できる場合があり、アパートローンよりも低金利で資金調達できる可能性があります。

賃貸併用住宅の詳しい内容は、以下の記事で解説しています。

>>関連記事:賃貸併用住宅とは?賃貸部分を設けるメリットや建築するまでの流れ

3-4. サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)経営

サービス付き高齢者向け住宅は、60歳以上の高齢者を対象とした賃貸住宅に、安否確認や生活相談などのサービスを提供する住宅です。高齢化社会の進展により需要が拡大しています。

サ高住も貸家建付地として相続税評価を減少でき、相続税対策として有効です。さらに建設時には国や自治体からの補助金制度があり、建築費の一部補助を受けられる場合があります。

ただし、介護事業者との連携や専門的な運営知識が必要になるため、事前の十分な検討が欠かせません。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の経営や制度などは、以下の記事を参考にしてみてください。

>>関連記事サ高住を経営するメリットは?利用できる補助制度と税の優遇制度

4. 土地や不動産を活用して相続税対策をする際の注意点


土地活用による相続税対策は大きな効果が期待できる一方で、いくつかの注意すべき点があります。
事前にリスクを理解し、適切に対策しましょう。

4-1. 相続人同士で土地活用について話し合う

相続財産が不動産のみで法定相続人が多い場合、遺産分割時に揉めてしまうおそれがあります。
不動産は現金と違って等分するのが難しく、相続時に問題になりやすいです。

相続後に慌てることがないよう、生前に法定相続人となる人との間で土地活用について以下のような内容を話し合っておきましょう。

● どのような土地活用を選ぶか

● 将来的な管理と運営は誰が行うか

● 収益の分配はどうするか

● 権利関係はどうするか

土地活用するうえでの方向性を決めて共有しておけば、相続トラブルを防止できます。

4-2. 土地活用のリスクも理解しておく必要がある

相続税対策とは少し離れますが、賃貸住宅を経営する場合は空室リスクを考慮しましょう。
賃貸経営は入居者からの家賃収入が主な収入です。入居者が退去すると収入が減少します。そして、空室で家賃収入が減少してもローンの返済や税金、管理費といった支出は発生し続けます。

また、建物のメンテナンスや修繕にも費用がかかります。

具体的には

● 外壁の塗り替え

● 設備の交換

● 大規模修繕など

が挙げられます。こうした出費の発生に備えておく必要があることは覚えておきましょう。

事業として計画する際には、事前に起こりうるリスクを把握し、収支シミュレーションを行ったうえでの立案が欠かせません。

4-3. 相続の専門家に相談する

相続税の計算や相続税対策は複雑で判断が難しいため、専門家への相談がおすすめです。
不動産を活用した相続税対策では、税制上の特例や評価方法、将来的な税制改正の影響なども考慮する必要があります。


具体的には、税理士など法律の専門家や賃貸経営の専門会社に相談すると安心です。
現在の財産状況を分析し、適切な相続税対策や土地活用に関するプランの提案や具体的なアドバイスも受けられます。


複数の専門家に相談し、比較検討することで適切なパートナーを見つけられるでしょう。

5. 土地活用により相続税対策を成功させよう


土地や建物を活用した相続税対策は、現金で保有するよりも税金対策が期待できる有効な手段です。
小規模宅地等の特例や貸家建付地により相続税評価を減らすことが可能になります。

土地活用の方法はそれぞれに特徴とメリットがあるため、所有する土地の立地条件や予算、目的に応じて適切な方法を選択しましょう。ただし、土地活用には空室リスクや維持管理費用などのリスクも伴うため、十分に検討して長期的な事業計画を立てる必要があります。

また、相続人間での事前の話し合い、相続時のトラブルを防ぐ準備も欠かせません。土地活用による相続税対策をご検討の際は、早めに専門家へ相談するといいでしょう。

土地活用・賃貸経営のことなら大東建託へお気軽にお問い合わせください。
土地活用に関するさまざまな相談を受け付けており、宅地建物取引士や鑑定士など経験豊富なスタッフが対応させていただきます。

■監修者プロフィール

公認会計士
梶本 卓哉

税務署法人課税部門(税務大学校首席卒業)、大手監査法人や大手投資銀行勤務等を経て公認会計士・税理士事務所開設。税務のみならず会計監査やIPO(新規株式公開)実務に強みを有する。