土地活用でコンビニを選ぶメリットとデメリット|向いている土地の傾向
公開日: 2024.01.15
最終更新日: 2024.01.29
土地オーナーにとって、所有する土地の収益性を最大にする活用法を選ぶことは大切です。
人口密度や車の交通量がある50坪以上の整地を所有している場合におすすめなのが、コンビニエンスストア事業者に物件を貸し出し、賃料収入を得る方法です。
この記事では、土地活用としてのコンビニ運営について説明します。
3種類のビジネスモデルと、コンビニ経営のメリット・デメリット、コンビニ経営に有利な土地の特徴など、具体的に紹介します。ぜひ参考にしてください。
>>関連記事:「土地活用の方法19選|運用を行うメリットや実際の進め方」
目次
1.コンビニの土地活用のビジネスモデル
土地活用として、コンビニ経営には3種類のビジネスモデルがあります。まずはこれらを比較検討しながら、自身に合ったプランを考えてみましょう。
1-1.リースバック方式
リースバック方式とは、土地所有者が建物を建築し、コンビニ事業者に一棟貸しする契約方式です。
所有者と事業者の間には建物賃貸借契約(借家契約)が締結され、事業者から所有者に対して、建物を利用していることに関する家賃収入が振り込まれます。
リースバック方式の場合、建物を建てる建築資金を調達しなければなりません。調達方法としては、三つの方法があります。
・自己資金
・金融機関の融資を受ける方法
・テナントとなるコンビニ事業者から建設協力金を借り入れる方法
三つ目の建築協力金は、テナントから建物を建築する協力金という名目で建築費の全部または一部を借り入れるものです。
借りたお金は、テナントから支払われる家賃収入を減額する形で少しずつ大家からテナントへ返済されます。
例えば、1億円の建物を建築するにあたり、1億円の建築協力金を借りたとします。
この建物を事業者に家賃100万円・20年間の契約期間で貸す場合、1億円を契約期間で割り、毎月41万円ずつ賃料を減額する形で返済します(テナントからは相殺後の59万円が家賃として振り込まれます。また、建築協力金は無利息であることが通例です。)。
万が一コンビ二が中途解約で退去となる場合、建築協力金は返済しなくてよいという契約にすることも可能です。
このように、建築協力金は土地所有者が負担する初期費用を抑えるメリットがあります。
リースバック方式のメリットは、建物を建築する分、後述する借地方式より高い賃料を得ることができる点です。
また、建築協力金を借り受けることができれば、実質的な出費なく自ら名義の建物を所有することができます。
一方デメリットですが、建築協力金を借りずにリースバック方式を行ったときに起こり得ます。もしコンビニチェーンが中途解約した場合、撤退時に負債と建物が残ってしまうケースがあることです。建物が返還された際の後継誘致を考えなければならないので、途中解約の場合の契約条件はきちんとチェックしておく必要があります。
1-2.事業用定期借地方式
事業用定期借地方式は、土地オーナーがコンビニに土地を貸し、コンビニ経営者が建物を建築する経営方式です。
オーナーとコンビニ経営者の間には土地の賃貸借契約書が締結され、オーナーは毎月地代家賃を受け取ります。
事業用定期借地方式のメリットは、オーナーが負担する費用が少ないことです。
リースバック方式と違い、建物建築に関する費用が発生せず、更地をそのまま貸すだけなので、建設費や手間がかかりません。
デメリットとしては、契約が通常10年以上の長期間にわたるため、その間土地を使うことができないことが挙げられます。
また、リースバック方式に比べると、建物の初期投資をしない分、賃料は安い傾向にあります。
1-3.自分で経営する方式
土地オーナーが自らコンビニのフランチャイズ契約を結び、経営者として店舗を運営する方法です。
この場合、オーナー自身がコンビニの店主として建物を建築し、顧客が購入した商品を売上とし、光熱費や人件費、FC本部へのフランチャイズフィーなどの費用を支払い、残った利益を手取りとします。
自主方式のメリットは、経営がうまくいった場合最も手取り収入が多くなることです。
一方、初期投資とコンビニ経営にかかる多くのことを自らの手で行わないといけないため、経営状況が芳しくない場合のリスクを全て負うこととなります。そのため、近隣の競合調査など、情報収集をしっかりし、判断することが大切です。
2.土地活用でコンビニを選ぶメリット
土地活用でコンビニを選ぶメリットは、事業者に賃貸する方式と、自ら運営する方式それぞれにあります。メリットを見ていきましょう。
2-1.安定した収入を長期間得られる
リースバック方式と事業用定期借地方式の場合、長期的に賃料収入が得られることがメリットです。
一般的に、リースバック方式で借家契約を締結する場合の契約期間は10年以上、事業用定期借地方式で借地契約を締結する場合の契約期間は、10年以上50年未満で設定されます。
契約を結んでいる間は賃料が定期的に入ってくるため、長期間安定した賃料を得ることができます。
ただし、事業者の収益の変化によっては、賃料の見直しが発生する可能性があるので注意が必要です。契約書に賃料変更についてどのように取り決めされているかは確認しておきましょう。
2-2.高いブランド力による集客が期待できる
自分で経営する方式の場合、土地オーナーの収益は店舗売上に依存します。
コンビニの場合、もともと取り扱っている商品・サービスが多く顧客層が幅広いです。
それだけでなく、フランチャイザーのブランド力があるため、高い集客力が期待できます。
本部の専門部署による広告宣伝や、顧客ニーズやトレンドに沿った商品展開も行われるため、集客に関しては特別な工夫は不要です。このように、コンビニは集客能力が高いというメリットがあります。
3.土地活用でコンビニを選ぶデメリット
続いては、土地活用でコンビニを選ぶ際の注意点を確認していきましょう。
3-1.税金対策の効果が薄い
コンビニは、その方式により、アパートやマンションなどの賃貸経営に比べて、税金対策の効果が薄いというデメリットがあります。
相続税の計算において、土地は利用形態に応じて評価が代わります。
・リースバック方式の場合:貸家の敷地として使用されている土地である「貸家建付地」
・事業用定期借地方式の場合:借地権が設定されている土地である「貸宅地」
・自ら運営する方式の場合:自分で利用している自己所有の土地である「自用地」
相続税評価額が最も低くなるのが「貸宅地」、次いで「貸家建付地」となり、「自用地」は最も高くなります。
相続対策として課税される額を少なくしたいのなら、なるべく第三者に貸している状態を作れる土地活用が望ましいでしょう。
3-2.本社の業績に左右されやすい
自分で経営する方式の場合、フランチャイザー本体の業績の影響を受けやすいことが挙げられます。
同じコンビニチェーンで大きな問題が起き、ブランドイメージが低下した場合はコンビニの売上にも悪影響を及ぼします。
本体の都合による企業の統合や商品改変などで店舗の売上が悪化したとしても、フランチャイズ加盟店である店舗オーナーが意見することはできません。
4.コンビニの土地活用に向いている土地は?
コンビニは建築できない用途地域があります。こういった前提条件に加え、コンビニに向いている立地条件や、エリアについて説明します。
4-1.コンビニの経営が可能な土地
出店形態や立地によって異なるものの、コンビニの店舗面積は、一般的に50~60坪程度は必要です。
郊外店の場合は広めの駐車場が必要になるため、敷地面積も広く求められます。
コンビニは建築基準法上の店舗に該当し、法律により建築できる地域が決められています。
都市計画法において、第一種低層住居専用地域と設定されている地域は、戸建ての住宅街を形成することを目的としているため、コンビニを原則建てることができません。
ただし、住居環境を害さない、公益の観点からやむを得ないといった条件があれば、出店は可能です。
土地活用方法を検討するにあたって、このあたりの法的な条件は事前に確認しておきましょう。
4-2.コンビニの需要が高い場所の特徴
コンビニは駅前など、土地前の人通りの交通量が確保されており、人口密度が高い場所が有利です。
オフィス街や公共施設、教育施設の周辺、駅やバス停の近くなど、商圏内に交通や商業の要素がある地域は、コンビニの利用者も多い傾向にあるからです。
反対に、人口密度は低くても、周辺に競合店が少ない場合はコンビニの需要も高くなります。
どちらの場合でもそのエリアの周辺人口を現状だけでなく、将来にわたってまで予測しておく必要があるでしょう。
4-3.コンビニ経営に適した道路環境
幹線道路沿いのロードサイド物件にコンビニ店舗を誘致する場合は、前面道路の環境も重要です。
コンビニは、視認性が高く、多方面から容易に乗り入れできる場所が理想です。
例えば、直線上の道路にある場所や、渋滞が少ない場所、角地や交差点は乗り入れしやすい立地と言えます。
反対に、カーブ近くの土地は乗り入れしにくく、中央分離帯がある道路の土地は反対側から来店しづらいため、避ける方がよいでしょう。
5.所有する土地に最適な活用方法を調べてみよう
今回は、土地活用としてのコンビニ経営について説明しました。
リースバック方式や借地方式でコンビニ事業者に賃貸する場合、安定した家賃収入を長期間得ることができるのがポイントです。
しかし、長期の契約となるため、契約締結より前に、中途解約や賃料変更などの契約内容について、業者側としっかり協議しておくことが重要です。
そういったことから、まずは所有する土地に向いている活用方法を検討することが重要です。その場合には、土地活用に長けた不動産会社などに話を聞くと良いでしょう。
■監修者プロフィール
有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。
【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者
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