土地活用で病院を選ぶメリットは?向いている土地の特徴
公開日: 2023.12.25
最終更新日: 2023.12.25
近年、あなたの周りでも高齢者の数が増えてきたのを感じていませんか?高齢化が急速に進んでいる現代、医療施設へのニーズは今後さらに高まると予想されます。この背景から、土地オーナーの中には病院やクリニックの建築を検討する方もいるのではないでしょうか。
この記事では、土地活用で病院を選ぶメリットや、その選択がなぜ注目されているのかを詳しく解説します。読むことで、土地活用の新しい選択肢や、その収益性・社会貢献の側面を理解する手助けとなるでしょう。
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目次
1.病院事業の概要
医療は私たちの生活に欠かせない要素であり、その中心となるのが病院です。
病院は医療サービスの提供だけでなく、社会的な役割も果たす大事業です。
この章では、病院事業の基本や土地活用のモデル、そして適した土地の特徴を詳しく解説します。
1-1.事業の面から見る病院の種類
医療施設は運営や経営スタイルにより、単独のクリニックから大規模な医療モールまでさまざまです。
単独で開業するクリニックは、一人の医師がオーナーとして経営する形です。
これらのクリニックは、特定の地域や患者層に焦点を当てた診療を行い、ニーズに合わせたサービスを提供します。
一方、医療モールは、異なる診療科のクリニックや調剤薬局が一つの建物に集まる形態を指します。医療ビルもこれに含まれ、患者は一つの場所で多岐にわたる診療を受けられるため、利便性が高いと言えるでしょう。
1-2.病院の土地活用のビジネスモデル
医療業界の変化に伴い、土地活用の選択肢も増えています。病院やクリニックの土地活用には、特に2つの主なビジネスモデルが考えられます。
まずは、土地だけを貸し出す方法です。
こちらは、土地オーナーが医師や事業者に土地を提供し、地代を得る形です。
建物の建築は事業者が担当するため、オーナーは初期費用を負担する必要はありません。契約終了後、土地を更地で返却してもらう点も魅力ですが、建物の所有権が事業者にあるため、再貸し出しで土地を返却してもらうまで時間がかかる可能性があるので注意してください。
次に、施設を建てて貸し出す方法です。
こちらは、土地オーナーが建物の建築費を負担し、完成後に事業者に貸し出す形です。
賃料はオーナーが設定するため、高収益を期待できます。建物を持つことで「貸家建付地」として評価され、相続税の軽減も見込めるでしょう。
ただ、初期投資や空室リスクなどのデメリットも念頭に置く必要があります。ニーズやリスクをしっかりと検討し、最適な方法を選ぶことが、安定した収入を得るための重要な要素となるでしょう。
1-3.病院の土地活用が向いている土地の特徴
クリニックや医療モールの成功は、サービスの質だけでなく、選択された立地にも影響されます。
立地は、患者の来院数やアクセス性に大きく関わる要因です。では、どのような土地が医療施設に最適なのでしょうか?
医療施設としての土地活用を成功させるための土地には、次のような特徴が考えられます。
- 人の往来がある土地
- 周囲に住宅が立ち並ぶ土地
- 中高層の建物が建てられる土地
- 比較的広めの土地
それぞれ見ていきましょう。
・人の往来がある土地
医療施設の成功はサービスの質はもちろん、立地が重要です。理想的な土地は、人通りが多く、駅やバス停、調剤薬局などの施設が近い場所です。
大通り沿いで公共交通へのアクセスが良い場所は、来院者から見て魅力的な立地と言えるでしょう。
しかし、墓地や葬儀場の近くは、来院者に不快感を与える恐れがあるため、適していません。
また、多くの医療施設が集まる地域では、新しい施設の需要が少なく不向きと言えるでしょう。
成功する医療施設経営のためには、土地の選び方や周辺環境を考慮し、地域のニーズを把握することが欠かせません。
・周囲に住宅が立ち並ぶ土地
住宅地は、医療施設経営の魅力的なエリアとして注目されています。
多くの人々は近隣の医療施設を利用する傾向があり、特に子供や高齢者が多い地域では、小児科や内科のような診療所が特に求められます。
賃貸経営が困難な住宅地でも、医療施設の土地活用は大きな機会を提供してくれるでしょう。そのため、多くの住宅が密集している地域であっても、診療所経営は効果的な選択肢と言えるのです。
ただ、同じエリアに多くの医療施設がある場合、患者獲得の競争が激しくなるため、事前の調査や診療科目の選択が欠かせません。
・中高層の建物が建てられる土地
土地活用で医療施設を開業する際、都市計画法の「用途地域」は欠かせない要素です。
この規定は土地の特性や位置に応じて、建築可能な建物の種類を定めています。
住宅地や交通の便が良い場所では医療施設の需要が高まりますが、どの土地でも開業できるわけではありません。診療所は多くの用途地域で許可されていますが、大規模な病院や老人ホームは制限される場合があります。
具体的には、第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域では、診療所や老人ホームは許可されていますが、病院の建築は認められていません。
しかし、第一種中高層住居専用地域や第二種中高層住居専用地域では、さまざまな医療施設が許可されています。
土地オーナーは、自身の土地の用途地域を確認し、医療施設経営の適性を検討すべきです。また、土地活用の専門業者に相談することで、最適な活用方法や施設の種類を提案してもらえるでしょう。
・比較的広めの土地
医療施設の運営では、土地の広さがサービスの範囲や質に影響を与えます。
特に、診療所と病院の土地要件は異なります。
診療所は特定の診療科目に焦点を当てた小規模施設のため、限られた土地での運営が可能です。
一方、病院は多岐にわたる診療や設備を提供するため、広い土地が求められます。
土地の広さがあると、設備や治療室の数を増やすことができ、患者の受け入れ能力や治療の質を向上させることが可能です。広い土地は、駐車場や緑地などの付加価値を提供することもでき、患者からの信頼や満足度を高める要因となるでしょう。
2.土地活用の視点から見るほかの医療介護施設との違い
土地活用の際、医療施設だけでなく、介護施設も選択肢として考えられます。
ここでは、土地活用の観点から、医療施設と介護施設の違いを詳しく探っていきましょう。
2-1.グループホームとの違い
グループホームは、認知症の高齢者向けの介護施設で、家庭的な雰囲気で少人数が共同生活を楽しむのが特徴です。
5人から9人の利用者が生活し、専門スタッフが24時間サポートを提供します。
日常の介助やレクリエーション活動を通じて、利用者の生活の質を向上させることを目指しています。
収益の面では、グループホームの主要な収入源は、利用者からの利用料と、国からの給付金です。建物の規模に関しても、病院と比較すると、グループホームは一般的に小規模であることが多いです。
立地条件についても、都心部から離れた場所や交通の便があまり良くない場所でも、送迎サービスなどを活用して運営が可能です。
2-2.サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)との違い
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者の自立生活を支える賃貸住宅として設計されています。
その目的は、高齢者が必要なサポートを受けつつ、自分らしい生活を続けることです。
主な特徴として、バリアフリーの設計や、安否確認、生活相談、食事や清掃のサポートがあります。さらに、オプションで介護サービスも選べますが、医療行為は限られており、病院とは異なります。
収益の面では、サ高住の主な収入源は、入居者からの月々の賃料です。建物の規模や設備に関しても、病院よりも賃貸物件の色合いが強く、規模は比較的小さいことが一般的です。
2-3.診療所との違い
診療所は、入院ベッドが19床以下またはベッドを持たない小規模な医療施設を指します。
一般的に「クリニック」や「医院」とも呼ばれますが、これらは「診療所」として法的に扱われます。
主に日常的な医療ニーズ、例えば風邪や軽いケガ、慢性疾患の治療を担当するのが特徴です。初期投資が比較的少なく、狭い土地でも開業が可能なため、土地活用の選択肢として考えられます。しかし、その一方で、病院と比べて提供できるサービスの範囲や収益性には限りがあることも事実です。
土地活用の観点から見ると、診療所は狭い土地でも開業が可能であり、広大な土地を持っていない方でも医療施設としての活用が考えられます。
3.土地活用で病院を選ぶメリット
土地活用の選択肢として「病院」を考えることは、多くのメリットを持ちます。
ここでは、土地活用で病院を選ぶ際の主なメリットについて詳しく解説します。
3-1.長期的な収益が期待できる
日本の高齢化が進む中、医療施設の需要は増加しています。
病院は、この安定した需要により、土地活用の際の長期的な収益源として注目されています。特に、高齢者人口の増加は、病院の周辺での利用者が絶えず存在することを示唆しており、一度地域に根付いた病院は収益の安定が期待できるでしょう。
さらに、病院は固定客化しやすく、患者との長期的な信頼関係が築けるため、景気の変動に影響されにくいという特性も持っています。
これにより、土地活用の選択肢として病院は非常に魅力的です。
3-2.地域貢献できる
医療施設は、人々の健康を支える不可欠な存在で、地域のライフラインとも言えるものです。
土地を活用し医療施設を設立することは、地域の健康をサポートするだけでなく、生活の利便性の向上に貢献することになるでしょう。
特に、医療施設が不足している地域での土地活用は、住民からの感謝や信頼を得ることができ、土地所有者の社会的信用を高める要因となります。その理由として、医療施設の存在は、高齢者や子供たちの安全な生活をサポートし、地域のコミュニティ形成にも寄与するからです。
このような社会貢献を通じて、土地の資産価値も向上する可能性があるでしょう。
4.土地活用で病院を選ぶデメリット
土地活用において病院を選択することは、メリットをもたらす一方でデメリットも考慮する必要があります。
土地活用を検討する際のデメリットをしっかりと理解し、慎重に検討しましょう。
4-1.施設の転用性が低い
医療施設の土地活用は、特定の設計や設備を必要とするため、他の用途への転用が難しい点が挙げられます。
特に、異なる診療科目や業態への変更は大きな手間とコストがかかる可能性が高いです。
そのため、医療施設としての土地活用を選択する際は、長期的な運営を視野に入れ、慎重な計画と事前のリサーチが不可欠です。
4-2.初期費用が多くかかる
医療施設の設立には、特有の設備や設計が求められるため、初期投資が大きくなることが一般的です。
特に、賃貸住宅と比較すると、医療機器の導入や専門的な設備の整備、さらには医療法や関連法規の要件を満たすための設計変更など、多くのコストが発生します。
これらの要因から、土地活用の選択肢として医療施設を検討する際は、初期費用の高さを十分に考慮する必要があります。
5.土地の特性や地域のニーズに合った計画が大事
土地活用の選択肢として病院を検討する際、メリットとデメリットが存在します。
長期的な収益の安定性や、高齢化社会による医療施設の需要増加への対応、さらには地域社会への貢献といった利点が挙げられます。
一方、初期投資の大きさや施設の転用の難しさは慎重に考慮すべき点です。
また、病院以外の医療・介護施設との違いを理解し、土地の特性や地域のニーズに合わせた適切な活用方法を選択することが重要です。
■監修者プロフィール
有限会社アローフィールド代表取締役社長
矢野 翔一
関西学院大学法学部法律学科卒業。有限会社アローフィールド代表取締役社長。不動産賃貸業、学習塾経営に携わりながら自身の経験・知識を活かし金融関係、不動産全般(不動産売買・不動産投資)などの記事執筆や監修に携わる。
【保有資格】2級ファイナンシャルプランニング技能士(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者
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